この記事のポイント
- 取得費の書類探しと譲渡費用の領収書の整理は、年内に始めます
- 所得税は原則翌年3月15日まで、住民税は原則翌年6月以降に納めます
- 3,000万円控除は、税額がゼロでも申告書への記載と添付が要件です
- ふるさと納税は12月31日まで。家族の控除も年末の現況で判定します
まず結論:年内にするのは、書類集め・納税資金・特例と家族の確認です
不動産を売った年は、12月31日までに書類集め・納税資金・特例と家族の確認を始めます。
申告は原則として、売った年の翌年2月16日から3月15日までに行います(No.3102)。
No.は、国税庁のタックスアンサー(税の解説ページ)の番号です。
所得税の納付の期限も、原則として翌年3月15日です(No.2020)。
| 時期 | すること |
|---|---|
| 年内(12月31日まで) | 書類集め・納税資金の確保・特例と家族の控除の確認 |
| 年明け〜2月15日 | 書類をそろえ、申告書の作成に入る |
| 2月16日〜3月15日(原則) | 申告書を出し、所得税などを納める |
| 6月以降(原則) | 住民税の納付が始まる |
年内の準備が、翌年の税額と納付の段取りを左右します。

年内①:取得費の書類は、申告の前に探し始めます
取得費の書類は、年内に探し始めます。
取得費は、買ったときの購入代金や購入手数料などです(No.3202)。
建物は、所有期間中の減価償却費相当額(年数に応じた目減り分)を差し引きます(同)。
業務に使っていない不動産なら、購入時の登記費用や不動産取得税も取得費に入ります(No.3252)。
相続した不動産は、亡くなった方が買ったときの代金などを基に計算します(No.3270)。
取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(No.3258)。
ただ、実際の取得費が5%より多いのに5%で申告すると、税額が増えることがあります。
探し方は、相続した不動産の取得費の調べ方と取得費が分からないときの記事で扱っています。
年内②:譲渡費用の領収書と精算書は、売った直後にまとめます
譲渡費用(売るために直接かかった費用)の領収書は、売った直後にまとめて保管します。
主な譲渡費用は、次のとおりです(No.3202・No.3255)。
- 仲介手数料
- 測量費
- 売買契約書の印紙代(売主が負担した分)
- 売るときに借家人などに払った立退料
- 建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用
修繕費や固定資産税など、維持や管理の費用は譲渡費用になりません(No.3255)。
注意
売った日から年末までの固定資産税などの相当額を受け取ったら、売った金額に含めます(No.1440)。精算書で金額を確かめます。

年内③:売却代金から、翌年に納める税金の分を先に分けます
売却代金は、3月と6月以降に納める税金の分を先に分けてから使います。
売った年の1月1日で所有期間が5年を超えれば長期、5年以下なら短期です(No.3202)。
長期の税率は、所得税15%と住民税5%です(No.3208)。
短期は、所得税30%と住民税9%です(No.3211)。
さらに令和8年分は、所得税額の2.1%の復興特別所得税(所得税に上乗せされる税)がかかります。
計算例
例:令和8年中に長期の土地を3,000万円で売却(取得費900万円・譲渡費用100万円)
課税長期譲渡所得金額 3,000万円 -(900万円 + 100万円)= 2,000万円 所得税 2,000万円 × 15% = 3,000,000円 復興特別所得税 3,000,000円 × 2.1% = 63,000円 翌年3月15日までに納める額 3,063,000円 住民税 2,000万円 × 5% = 1,000,000円(原則として翌年6月以降)令和8年中の売却で、特例を使わない一定の前提を置いた目安です。
年内④:使う特例の要件と、申告が要ることを確かめます
特例を使う予定なら、年内に要件と添付する書類を確かめます。
ポイント
住んでいた家を売ったときの3,000万円控除は、申告が要件です。確定申告書への記載と明細書などの添付がある場合に限り適用されます(租税特別措置法35条12項)。
税額がゼロになる場合も、申告が必要です(No.3302)。やむを得ない事情がある場合の扱いは、同条13項にあります。
相続した空き家の特例は、売った家の所在地の市区町村長が交付する確認書が要ります(No.3306)。
令和6年1月1日以後の譲渡なら、売った後に耐震基準を満たす改修や取壊しをする形も対象になり得ます。
その場合、改修や取壊しは売った年の翌年2月15日までに終えることが要件です(No.3306)。
買換えの特例は、買い換える時期と住み始める期限が要件に含まれます(No.3355)。

年内⑤:12月31日が区切りになる3つのことを確かめます
ふるさと納税・家族の控除・年をまたぐ売却は、12月31日が区切りです。
寄附金控除は、その年中に支出した分で計算します(所得税法78条1項)。
売った年の控除にするふるさと納税は、12月31日までに済ませます。
上限は、売った年のふるさと納税の記事で扱っています。
家族の配偶者控除や扶養控除の対象の方は、売ったことを年内に家族へ伝えます。
売った方の合計所得金額次第で、家族が控除を受けられないことがあります(国税庁の手引き)。
合計所得金額は控除の判定に使う所得で、判定は12月31日の現況によります(所得税法85条3項)。
詳しくは合計所得金額と扶養の記事をご覧ください。
契約と引渡しが年をまたぐ売却は、原則として引き渡した日の年分です。
契約の効力発生の日で申告することもできます(No.3102)。選び方は引渡日と契約日の記事で扱っています。
年明けから6月まで:申告と納付、その後の住民税に備えます
年明けは書類をそろえ、原則として2月16日から3月15日までに申告と納付をします。
給与や年金の源泉徴収票など、ほかの所得の書類もそろえます。
納期限までに納めないと、原則として延滞税(利息に当たる税)が自動的にかかります(No.9205)。
補足
令和8年分の確定申告書は様式が変わり、控用(複写式)が廃止されます。必要に応じて、控えをご自身で作って保管します(国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」)。
住民税は、原則として翌年6月以降に納めます(地方税法320条・321条の5)。
納期と納め方は、住民税の納付の記事で扱っています。
国民健康保険に加入の方は、売却と国民健康保険料の記事もご覧ください。
譲渡所得は、翌年の予定納税(所得税の一部の前払い)の基準額から除いて計算します(No.2040)。
年内の準備を飛ばすと、税額や手続に響くことがあります
準備が遅れると、例えば次のことが起こり得ます。
- 取得費の書類が間に合わない ― 5%で申告すると、税額が増えることがあります
- 売却代金を先に使う ― 3月15日までに納められないと、原則として延滞税がかかります
- 税額ゼロだからと申告しない ― 3,000万円控除は、原則として受けられません
- 寄附を年明けにずらす ― 売った年の寄附金控除の対象になりません
- 家族に売却を伝えない ― 税額がゼロでも、家族が受ける配偶者控除や扶養控除に響くことがあります
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
書類を集め、事実を書き出すところまでは、ご自身で進められます。
- 売ったときの売買契約書・精算書・領収書をひとまとめにする
- 買ったときの契約書と領収書を探す(相続なら亡くなった方の資料)
- 売却代金のうち、納税に充てる分を分けておく
- 使う予定の特例と、家族の扶養の状況をメモする
書類の一覧は、必要書類チェックリストの記事にあります。
取得費の組み立て、特例の選択、申告する年分の判断は、資料と事情で結論が変わります。

税理士に頼むと変わるのは、年内の見込み計算と書類の段取りです
年内に頼むと、申告の前に税額の見込みと書類の不足を確かめられます。
小松公認会計士・税理士事務所では、不動産を売った年に次の作業を行います。
- 取得費・譲渡費用の資料の探し方のご案内と、根拠の整理
- 3月と6月以降に分けた、納税額の見込みの計算
- 使える特例の要件と、添付書類の確認
- 家族の控除とふるさと納税への影響の確認
- 譲渡所得の内訳書と申告書の作成・提出、控えのお渡し
資料の共有から提出まで、全国どこからでもオンラインで完結します。
ご自身で申告するか迷う方は、頼むかどうかの見分け方もご覧ください。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 3,000万円控除で税金がゼロになりそうです。それでも申告は必要ですか?
必要です。租税特別措置法35条12項は、確定申告書への記載と明細書などの添付を適用の条件にしています。国税庁も、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要としています(No.3302)。税額がゼロでも、売った年の翌年に申告します。
Q2. 売却代金のうち、税金の分はいつ、どれくらい必要ですか?
一般の場合、長期は所得税15%・住民税5%です(No.3208)。短期は所得税30%・住民税9%です(No.3211)。令和8年分は、所得税額の2.1%の復興特別所得税も加わります。所得税と復興特別所得税は原則として翌年3月15日まで、住民税は原則として翌年6月以降に納めます。
Q3. 契約は今年、引渡しは来年です。どちらの年分で申告しますか?
売った日は、原則として資産を買主に引き渡した日です。売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして申告することもできます(No.3102)。効力発生の日は、一般的には契約締結の日です。どちらにするかで、申告と納付の年が変わります。
Q4. ふるさと納税は、年明けにしても売った年の控除になりますか?
なりません。寄附金控除は、その年中に支出した分で計算します(所得税法78条1項)。売った年の控除にするなら、12月31日までに寄附を済ませます。確定申告をすると、ワンストップ特例(申告不要の手続)の申請は無効になります(No.1155)。寄附の分も申告書に含めます。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法78条1項・85条3項・120条1項・128条、租税特別措置法35条12項・13項、地方税法320条・321条の5、国税庁タックスアンサー No.1155・No.1440・No.2020・No.2040・No.3102・No.3202・No.3208・No.3211・No.3252・No.3255・No.3258・No.3270・No.3302・No.3306・No.3355・No.9205、国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」(はじめに・【参考1】)の内容を扱っています。各特例の適用要件の細目と添付書類、空き家の特例の確認書の申請窓口と期間、買換えの特例の取得期限と居住期限の細目、建物の償却費相当額の計算、相続税の取得費加算の特例、譲渡所得の内訳書の書き方、配偶者控除・扶養控除の所得の基準額と合計所得金額の計算、ふるさと納税の控除の上限額、住民税の徴収方法の選び方、国民健康保険料の計算、延滞税の割合、予定納税の細目、令和9年分以後の復興特別所得税の税率の引下げと防衛特別所得税、令和8年分の確定申告の具体的な受付日程、弊所の料金は扱っていません。記事中の計算例は令和8年中の売却を前提とした一定の前提を置いた目安であり、実際の税額は取得費・譲渡費用・所有期間・使う特例・ほかの所得によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.3102 譲渡所得の申告期限https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3258 取得費が分からないときhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3258.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3255 譲渡費用となるものhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(35条)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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