不動産譲渡所得

マイホーム売却の3,000万円特別控除と取得時期の落とし穴
判例で読み解く不動産譲渡所得

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 自分が住んでいた家を売ると、利益から最高3,000万円を差し引けます(租税特別措置法35条)。年数は問いません
  • 贈与・相続は取得時期を引き継ぎ、財産分与は引き継ぎません。税率が15%か30%か変わります
  • 期限は住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 夫婦共有なら1人につき3,000万円、最大6,000万円まで差し引けます

まず結論:住んでいた家を売ったら、利益から3,000万円を引けます

住んでいた家(とその敷地)を売ったときは、利益から最高3,000万円を差し引けます。年数は問いません。

正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」(租税特別措置法35条1項)。ただし要件を満たす必要があります。

マイホームの鍵の引き渡し
3,000万円特別控除は要件の確認が第一歩です

使えるかどうかのチェックリスト(7項目)

次の7項目すべてに「はい」と答えられれば、この特例を使えます。

  1. 自分が住んでいる家(または家と敷地)を売ったか
  2. 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ったか
  3. 売った相手が配偶者・親子等の特別関係者でないか
  4. 前年・前々年に同じ特例を受けていないか
  5. 住宅ローン控除と重ならないか(前後2年に新居でローン控除なら併用不可)
  6. 「居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用に関する明細書」を添付したか
  7. 取り壊して土地だけ売る場合、1年以内の契約か(貸していないか)

注意

「3年」は住民票でなく、実際に住まなくなった日から数えます。住民票だけ残すと、電気・水道の使用量等で実態を調べられることがあります。

戸建ての外観
取得時期の判定が特例の適否を分けます

「いつ手に入れたか」で税率が変わります——判例から学ぶ

家の取得時期はとても重要です。持っていた期間が5年・10年を超えるかで、税率は15%・20%・30%・39%と大きく変わります。

取得時期を引き継ぐケースと引き継がないケース

取得原因 取得時期の取扱い 根拠
相続・包括遺贈 被相続人の取得時期を引き継ぐ 所得税法60条1項
贈与(個人間) 贈与者の取得時期を引き継ぐ 所得税法60条1項
離婚に伴う財産分与 分与時を取得時期とする(引き継がない) 最高裁S50.5.27判決ほか
売買・新築・建売 引渡日または契約効力発生日 所得税基本通達36-12

最高裁昭和50年5月27日判決(民集29巻5号641頁)により、財産分与は渡す側がその時点の時価で譲渡、もらう側がその時点で新規取得となります。

計算例

夫名義の家を妻が財産分与でもらい、5年以内に売った場合

持っていた期間は「もらった時から売った時まで」。結婚していた20年間は含まれず、短期譲渡(39.63%)になることがあります。

利益5,000万円(控除後の課税対象2,000万円)で税率を比べると

10年超軽減税率:2,000万円 × 14.21%(所得税10.21%・住民税4%)= 約284万円 長期譲渡(5年超):2,000万円 × 20.315%(所得税15.315%・住民税5%)= 約406万円 短期譲渡(5年以下):2,000万円 × 39.63%(所得税30.63%・住民税9%)= 約792万円

取得時期の判定ひとつで500万円以上の差が出ます。

取得時期を書類で確認する手元
取得時期しだいで税率が変わります

税金の計算は5ステップで進みます

譲渡所得の計算は5ステップで進みます
譲渡所得の計算は5ステップで進みます

売って出た利益(譲渡所得)の計算は、次の5ステップです。

  1. 売った金額を確定する(契約書の金額。固定資産税の精算金も含む)
  2. 取得費=購入代金+購入時の費用-建物の値下がり分
  3. 譲渡費用=仲介手数料・印紙代・測量費・解体費など
  4. 譲渡所得=売った金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
  5. 税額=譲渡所得 × 税率(持っていた期間で決まります)

ポイント

買った値段が分からないときは、売った金額の5%を取得費にする方法が認められています(租税特別措置法31条の4)。実額の方が大きいことがほとんどのため、契約書・領収書等の記録を探すことをお勧めします。

住み替え・離婚・相続で見落としやすいポイント

1. 夫婦共有なら、1人につき3,000万円

夫婦で半分ずつ持つマイホームなら夫と妻がそれぞれ3,000万円控除を受けられ、最大6,000万円が非課税になります(確定申告は別々)。

2. 相続した実家を売るなら「空き家特例」も検討を

亡くなった方が一人暮らし等の要件を満たせば「空き家」の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)も候補です。耐震基準を満たすか取り壊すことが条件で、期限は令和9年12月31日の売却まで(令和8年5月時点)。

3. 「買換え特例」との選択

10年超持ち住んだマイホームなら「特定の居住用財産の買換え特例」(租税特別措置法36条の2)も選択肢ですが、税金を先送りするだけで消えません。当事務所では両方を試算します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 単身赴任中のマイホームを売っても3,000万円控除は使えますか?

A. 家族が住み続けていれば原則対象です。空き家になった場合、その日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。

Q2. 別荘やセカンドハウスにも適用できますか?

A. 適用できません。3,000万円控除は「主に住んでいる1つの家」に限られ(租税特別措置法施行令20条の3)、週末だけの別荘は対象外です。

Q3. 売却損が出たときはどうなりますか?

A. 要件を満たせば売却損は給与など他の所得と相殺でき、相殺しきれない損は翌年から3年間繰り越せます(租税特別措置法41条の5)。住宅ローン残高が売却額を上回る等の要件があります。

免責事項

本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。税法は頻繁に改正され、また個別事案により取扱いが異なるため、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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