不動産所得

家賃収入の確定申告は自分でできる?
税理士に頼んだほうがよい5つの場面

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 1室で収支が単純なら、作成コーナーでご自身で申告できる場合があります
  • 買った年は、仲介手数料なども土地と建物の取得価額に入れて計算します
  • 相続した物件の家賃は、分割の確定まで法定相続分で各相続人が申告します
  • 赤字のうち土地を買うための借入金の利子の部分は、給与と通算できません

まず結論:1室で収支が単純なら、ご自身で申告できる場合があります

家賃収入の所得(不動産所得)は、収入から必要経費を引いて計算します(所得税法26条2項)。

国税庁の確定申告書等作成コーナーなら、案内に沿って申告書を作成・提出できます(No.1370)。

物件1つで2年目以降なら、前年の計算の続きで進められることがあります。

判断が増えるのは、物件を買った年・相続した年・共有・複数物件・赤字の年です。

家賃収入の申告は、物件の状況で自分でできるかが変わります
家賃収入の申告は、物件の状況で自分でできるかが変わります

会社員の大家は、まず給与以外の所得が20万円を超えるかを見ます

給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象の会社員の場合です。

給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です(No.1900)。

20万円と比べるのは、家賃収入から経費を引いた所得です(所得税法121条1項1号)。

ご自身で進めやすいかは、次の表が目安です。

場面進めやすさ主な理由
物件1つ・2年目以降・大きな工事なし進めやすい前年の計算の続きが中心
物件を買った年判断が増える代金の分け方と減価償却
相続した年判断が増える相続人ごとの申告と引継ぎ
共有の物件判断が増える持分での按分と各自の申告
複数の物件判断が増える事業的規模の判定
赤字の年判断が増える差し引けない利子の計算

物件を買った年は、代金を土地と建物に分けることから始まります

建物は、使える期間にわたって少しずつ経費にします(減価償却。No.2100)。

土地は時の経過で価値が減らないため、減価償却をしません(同)。

そのため、代金を土地と建物に分けてから計算します。

買うときの仲介手数料は、土地と建物それぞれの取得価額に入ります(質疑応答事例)。

売主に払う固定資産税などの清算金も、物件の取得価額に入ります(質疑応答事例)。

注意

貸し始めた年から青色申告にするなら、承認の申請が要ります。期限は開業の日から2か月以内で、1月15日以前の開業なら3月15日までです(No.1399)。

買った年の計算が、翌年以後の減価償却の土台になります。

建物は、使える期間にわたって少しずつ経費にします
建物は、使える期間にわたって少しずつ経費にします

相続した物件は、分割が決まるまで相続人それぞれが申告します

遺産分割が確定していない間の家賃は、各相続人が法定相続分で申告します(No.1376)。

分割が決まっても、それを理由に更正の請求や修正申告はできません(同)。

亡くなった方のその年の死亡日までの所得は、申告が必要なら相続人が申告します(所得税法125条1項)。

これを準確定申告といい、期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です(No.2022)。

ポイント

相続した建物の減価償却は、亡くなった方の金額と年数を引き継ぎます(限定承認の場合を除きます)。引き継ぐのは、取得価額・耐用年数・経過年数・未償却残高です。中古の建物の耐用年数を見積もる方法は使えず、償却方法は定額法です(質疑応答事例)。

相続した年は、亡くなった方の分と相続人の分に分けて計算します。

相続した年は、亡くなった方の分と相続人の分に分けて計算します
相続した年は、亡くなった方の分と相続人の分に分けて計算します

共有の物件と複数の物件は、分け方と規模の判定が加わります

共有の物件の家賃は、原則として持分の割合で各共有者の所得になるとした判決があります。

名古屋地方裁判所の令和4年6月2日の判決で、控訴審でも維持され確定しています。

この事案では、部屋ごとに分けた申告が、更正処分で持分どおりに直されていました。

事業かどうかは、原則として規模で実質的に判断します(No.1373)。

建物の貸付けは、次のどちらかに当たれば、原則として事業として扱われます(同)。

  • アパートなどは、貸せる独立した室数がおおむね10室以上
  • 独立家屋は、おおむね5棟以上

事業的規模に当たるかで、青色申告特別控除の上限などが変わります(同)。

令和9年分からは、書面で申告すると控除の上限が10万円になります(国税庁の案内)。

違いの全体は、不動産所得の確定申告の記事で解説しています。

物件が増えた年は、事業的規模に当たるかで、控除と手続きが変わります。

赤字の年は、給与と差し引けない部分の計算が要ります

不動産所得の赤字は、原則として給与などの黒字から差し引けます(所得税法69条1項)。

これを損益通算といいます。源泉徴収された所得税が納め過ぎなら、申告で戻ります(No.2030)。

ただし、次の赤字などは差し引けません(No.1391)。

  • 別荘など、主に趣味や保養のための不動産の貸付けの赤字
  • 土地などを取得するための借入金の利子に当たる部分(租税特別措置法41条の4)

計算例

例:不動産所得の赤字のうち、土地を買うための借入金の利子がある場合

赤字50万円・土地の分の利子30万円 50万円 − 30万円 = 20万円を給与と通算 赤字50万円・土地の分の利子60万円 通算できる赤字は0円

別荘などの貸付けではない前提で、収支内訳書の書き方の扱いに沿っています。

金額は一定の前提を置いた目安です。

赤字の年は、借入金を土地と建物のどちらに使ったかの資料が要ります。

間違えると、税金の不足や還付の取りこぼしにつながります

たとえば、次のような誤りです。

  • 仲介手数料や清算金を、買った年に全額経費にする ― どちらも取得価額に入ります(質疑応答事例)。
  • ローンの返済額を、元本ごと経費にする ― 元本に当たる部分は必要経費になりません(収支内訳書の書き方)。
  • 土地の分の利子に当たる赤字まで、給与と通算する ― 損益通算の対象外です(No.1391)。
  • 分割前の家賃を、管理する相続人だけが申告する ― 各相続人が法定相続分で申告します(No.1376)。
  • 差し引ける赤字があるのに申告しない ― 納め過ぎの所得税は、申告しないと戻りません(No.2030)。

修正申告や更正があると、過少申告加算税がかかることがあります(国税通則法65条)。

期限後の申告には、無申告加算税(同法66条)と延滞税がかかることがあります(No.2024)。

令和8年分の申告を期限後に出すと、青色申告の55万円・65万円の控除は受けられません。

この場合の控除は最高10万円です(No.2072)。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で進められるのは、次の5つです。

  1. 家賃・更新料などの入金を、物件ごとに1年分集計する
  2. 管理会社の収支報告書、固定資産税の通知書、保険料の書類を集める
  3. 借入金の返済予定表で、1年分の利息を確かめる
  4. 前年の申告書の控えで、減価償却の計算の続きを確かめる
  5. 買った年・相続・共有・複数物件・赤字のどれかに当たるかを確かめる

書類の集め方と年の振り分けは、家賃収入の年末の確認の記事にまとめています。

取得価額の分け方、相続の帰属、共有の按分、規模の判定、赤字の利子は個別判断です。

ご自身でできることと、個別に判断することの線を引いて進めます
ご自身でできることと、個別に判断することの線を引いて進めます

税理士に頼むと変わるのは、計算の根拠と翌年への引継ぎです

小松公認会計士・税理士事務所では、家賃収入の申告で次の作業を行います。

  • 売買契約書と精算書から取得価額を土地と建物に分け、減価償却を始める
  • 相続した物件は、相続分で収入と経費を分け、計算を引き継ぐ
  • 共有の物件は、持分で按分し、共有者それぞれの申告書を作る
  • 赤字の年は、借入金の使いみちから土地の分の利子を計算する
  • 収支内訳書か青色申告決算書と確定申告書を作り、e-Taxで提出する
  • 控えと計算の根拠を保管し、翌年の申告に引き継ぐ

全国どこからでも、オンラインで完結します。

依頼の範囲の決め方は、税理士に任せるときの費用の記事も参考になります。

料金の目安

基本料金32,000円(税込35,200円)に、当てはまる所得・控除ごとの単価を足した額が料金です。個人の確定申告は最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。

通常料金での計算例です。給与所得6,000円と、物件1つの不動産所得(家賃収入300万円まで)35,000円の方です。その他控除セット(社会保険料など)の6,000円も加えます。合計は32,000円+6,000円+35,000円+6,000円=79,000円です。税込では86,900円です。計算例は一定の前提を置いた目安です。

家賃収入が300万円を超える方の料金も、60秒見積りで確かめられます。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 家賃収入の確定申告は、自分でできますか?

1室で収支が単純で、物件を買った年や相続した年でなければ、ご自身でできる場合があります。国税庁の作成コーナーでは、案内に沿って申告書を作成・提出できます(No.1370)。買った年・相続・共有・複数物件・赤字の年は判断が増えるため、依頼をご検討ください。

Q2. 物件を買ったときの仲介手数料は、その年の経費になりますか?

全額をその年の経費にはできません。国税庁の質疑応答事例では、賃貸用の土地建物の仲介手数料は土地と建物それぞれの取得価額に入ります。建物の分は減価償却費として経費になり、土地の分は経費になりません。固定資産税などの清算金も取得価額に入ります。

Q3. 相続した賃貸物件の家賃は、遺産分割の前でも申告が必要ですか?

遺産分割が確定するまでは、各相続人が法定相続分に応じて申告します(No.1376)。特定の相続人が家賃を管理していても同じで、分割の確定を理由とする更正の請求や修正申告はできません。死亡日までの分は、申告が必要なら相続人が準確定申告をします。

Q4. 家賃収入が赤字の年は、給与の税金が戻りますか?

不動産所得の赤字は、原則として給与などの黒字から差し引けます(所得税法69条1項)。ただし、土地などを取得するための借入金の利子に当たる部分は除きます(No.1391)。別荘などの貸付けの赤字も同じです。納め過ぎの所得税は、申告すると戻ります(No.2030)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法26条2項・69条1項・121条1項・125条1項、租税特別措置法41条の4、国税通則法65条1項・66条1項、タックスアンサーNo.1370「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」・No.1373「事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」・No.1376「不動産所得の収入計上時期」(未分割遺産から生ずる不動産所得)・No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」・No.1399「新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など」・No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」・No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」・No.2024「確定申告を忘れたとき」・No.2030「還付申告」・No.2072「青色申告特別控除」・No.2100「減価償却のあらまし」、国税庁の質疑応答事例(賃貸用の土地建物の仲介手数料・賃貸用アパートの固定資産税等の清算金・相続により取得した減価償却資産の耐用年数・平成19年4月1日以降に相続により減価償却資産を取得した場合)、国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」、令和9年分以後の青色申告特別控除についての国税庁の案内、名古屋地方裁判所令和4年6月2日判決(税務訴訟資料第272号順号13724)と控訴審の名古屋高等裁判所令和4年11月15日判決(同順号13771・控訴棄却で確定)、弊所の料金表の内容を扱っています。住民税の申告、給与の収入が2,000万円を超える方などの申告の要否、減価償却費の具体的な計算(耐用年数・償却率・月割)と中古資産の耐用年数の見積り、不動産取得税・登録免許税の扱い、土地と建物をまとめて取得した場合の借入金の分け方、10万円未満の資産や一括償却資産の扱い(貸付けの用に供した資産の扱いを含む)、修繕費と資本的支出の区分、事業的規模の判定の細目、開業の届出と青色事業専従者給与、相続人の青色申告の承認申請の期限、青色申告特別控除の要件の細目と令和9年分以後の改正の細目(75万円の控除・簡易な記帳の10万円の控除の見直しなど)、加算税の割合と延滞税の計算、家賃の収入計上時期、相続した物件の固定資産税の振り分け、限定承認・相続税・遺産分割の手続、組合事業や国外中古建物に係る損益通算の特例、純損失の繰越し、不動産の売却、消費税、年金を受け取っている方の申告、料金の細目(家賃収入300万円超の計算・物件が複数のときの扱い・記帳代行)は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の判定と税額は物件や借入金の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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