この記事のポイント
- 修繕費は12月31日までに債務が確定した年の経費。前払いだけでは足りないことがあります
- 家賃は原則契約上の支払日の年の収入。帳簿などの要件を満たせば、貸付期間で数える方法もあります
- 返済額のうち元本は経費になりません。赤字の年は土地取得の借入金の利息分を給与などと通算できません
- 令和9年分から青色申告特別控除が見直され、65万円以上はe-Taxが要件、紙は10万円までです
まず結論:年内は「工事が終わる日」と「家賃の支払日」を確かめます
家賃収入(不動産所得)がある方が年内に確かめたいことは、3つです。
- 修繕工事が、12月31日までに終わるか
- 12月分・1月分の家賃の、契約上の支払日はいつか
- 年明けに、管理会社や銀行から集める書類は何か
どれも、令和8年分と令和9年分のどちらに入るかに関わります。
修繕費は債務が確定した日、家賃は原則として契約上の支払日で年が決まります。

修繕費は、支払った日ではなく債務が確定した年の経費です
修繕費をどの年の経費にするかは、代金を払った日では決まりません。
所得税法37条1項は、償却費以外の費用で、その年に債務が確定しないものを必要経費から除いています。
債務が確定したといえるのは、12月31日までに次の3つを満たす場合です(所得税基本通達37-2)。
- その費用の債務が成立している
- 債務に基づいて、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
- 金額を合理的に算定できる
国税庁は、支払っても債務が確定していなければ、その年の経費にならないとしています。
逆に、支払っていなくても債務が確定していれば、その年の経費です(タックスアンサーNo.2210)。
注意
12月に代金を前払いしても、工事が年明けに終わるなら、令和8年分の経費にならないことがあります。工事の完了日と金額を、請求書などで確かめてください。
年内にするか翌年にするかは、両方の年の収入と経費の見込みで考えます。
工事によっては、修繕費ではなく資本的支出になります。
資産の価値を高めたり、使える期間を延ばしたりする部分の支出です。
資本的支出は、減価償却で各年に分けて経費にします(タックスアンサーNo.1379)。
修繕費か資本的支出かは、工事の名目ではなく実質で判定します。
区分の目安は、不動産所得の確定申告の記事で解説しています。

12月分・1月分の家賃は、原則として契約上の支払日で年が決まります
家賃をどの年の収入にするかは、原則として契約で決めた支払日によります。
契約又は慣習により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものとされているものについては、その請求の日)
(所得税基本通達36-5(1))
「翌月分を当月末までに払う」契約なら、12月31日が支払日の1月分は令和8年分の収入です。
支払日を過ぎていれば、入金が年明けになっても、支払日の年の収入です。
計算例
例:家賃は月80,000円。「当月分を当月末日までに払う」契約で、令和8年12月分が令和9年1月6日に入金された場合
支払日で数えた令和8年分 80,000円 × 12か月 = 960,000円 入金日で数えた場合 80,000円 × 11か月 = 880,000円 差額 960,000円 - 880,000円 = 80,000円の計上もれ令和7年12月分は12月中に入金された前提です。金額は一定の前提を置いた目安です。
例外もあります。継続的に記帳し、前受収益・未収収益を帳簿に付けているなどの要件を満たす場合です。
前受収益は前もって受け取った家賃、未収収益はまだ受け取っていない家賃です。
その場合は、貸付期間に対応する家賃をその年の収入にできます(昭和48年11月6日付の個別通達)。家賃の全部に、毎年続けて使うことも条件です。
礼金や更新料は、別の基準です(所得税基本通達36-6)。
物件の引渡しを伴うものは引渡しの日、伴わないものは契約の効力発生の日の収入です。
引渡しを伴うものでも、契約の効力発生の日で申告すれば認められます。
年をまたぐ家賃は、原則として入金日ではなく、契約書の支払日で振り分けます。

年明けは、管理会社や銀行から1年分の書類を集めます
年が明けたら、令和8年分の収入と経費の根拠になる書類をそろえます。
| 書類 | もらう先 | 使いみち |
|---|---|---|
| 年間の収支報告書・送金明細 | 管理会社 | 家賃・管理料・修繕費の集計 |
| 賃貸借契約書 | 手元・管理会社 | 家賃の支払日の確認 |
| 借入金の返済予定表 | 銀行 | 1年分の利息の確認 |
| 固定資産税の納税通知書 | 市町村(東京23区は東京都) | 租税公課の計上 |
| 火災保険料がわかる書類 | 保険会社 | 損害保険料の計上 |
| 工事の請求書・領収書 | 工事会社 | 修繕費と完了日の確認 |
借入金を返済しても、元本の部分は経費になりません。
借入金の返済額のうち元本に相当する部分の金額は必要経費になりません。
(国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」)
経費になるのは、物件の借入金の利息で、その年に支払うことが確定した分です(同)。
不動産所得が赤字の年は、土地を取得するための借入金の利息に当たる部分を、給与などと通算できません。
租税特別措置法41条の4が定める扱いです(タックスアンサーNo.1391)。
建物と土地をまとめて買った場合の負債の分け方は、政令で定められています(同条2項)。
ポイント
返済予定表で、1年分の利息の合計を確かめます。赤字の年は、借入金の使い道(土地・建物)がわかる契約書もそろえます。
間違えたときに起きること:申告のやり直しと加算税です
年の振り分けや経費の範囲を誤ると、所得を少なく申告してしまうことがあります。
たとえば、次のような誤りです。
- 12月に前払いしただけの工事代金を、その年の経費に入れる
- 家賃を入金日で数え、支払日が12月の分を翌年の収入に回す
- ローンの返済額を、元本ごと経費に入れる
- 土地の借入金の利息に当たる赤字まで、給与と通算する
- 資本的支出に当たる工事を、全額その年の修繕費にする
後から誤りが分かると、修正申告や更正で、不足する税金を納めることになります。
その際は、過少申告加算税や延滞税がかかることがあります(国税通則法65条・60条)。
直し方は、確定申告を間違えたときの直し方の記事にまとめています。
どれも、契約書や明細を年末から年明けに確かめれば、防ぎやすい誤りです。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身でできる確認は、次の4つです。
- 賃貸借契約書で、家賃の支払日を確かめる
- 予定している工事の完了日と金額を、見積書で確かめる
- 管理会社・銀行・保険会社に、1年分の明細を頼む
- 12月分と1月分の家賃の入金を、通帳で確かめる
修繕費か資本的支出か、どの年の経費になるかは、工事ごとの個別の判断です。
家賃を貸付期間で計上できるか、赤字の年の利息の計算も、事実ごとに判断が分かれます。
迷う工事は、発注する前に、見積書の段階で確かめるのが確実です。
補足
令和9年分から、青色申告特別控除が見直されます(令和8年度税制改正)。事業的規模(貸付けが事業といえる規模)で、取引をすべて詳しく記録している方の場合です。申告書と貸借対照表・損益計算書などを期限内にe-Taxで送ると、控除は最高65万円です。一定の電子帳簿の保存などもすると最高75万円になります。期限内にe-Taxで送らないと、控除は10万円までです。令和8年分は改正前の規定で判定し、期限内なら紙の提出でも55万円の控除を受けられます。根拠は改正後の租税特別措置法25条の2と、令和8年法律第12号附則33条です。
税理士に頼むと変わるのは、年の振り分けと経費の根拠です
小松公認会計士・税理士事務所では、家賃収入がある方の申告で、次の作業を行います。
- 賃貸借契約書から、家賃・礼金・更新料を年ごとに振り分けます
- 工事の前に見積書を見て、修繕費か資本的支出か、どの年の経費かを判断します
- 返済予定表から利息を抜き出し、赤字の年は土地の分を計算します
- 減価償却費を計算し、前年からの続きを引き継ぎます
- 収支内訳書または青色申告決算書と、確定申告書を作り、e-Taxで提出します
- 申告書の控えと根拠の資料を保管し、翌年の申告に引き継ぎます
書類のやり取りから申告まで、全国どこからでもオンラインで完結します。
料金は、所得の種類・取引の量・記帳の状態で決まり、60秒見積りでその場で分かります。
依頼の範囲の決め方は、税理士に任せるときの費用の記事も参考になります。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
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よくある質問(FAQ)
Q1. 12月に修繕費を前払いすれば、今年の経費になりますか?
前払いしただけでは、今年の経費になるとは限りません。必要経費になるのは、12月31日までに債務が確定した費用です(所得税法37条1項・所得税基本通達37-2)。工事が年明けに終わる場合は、令和9年分の経費になることがあります。完了日を確かめてください。
Q2. 12月分の家賃が1月に振り込まれました。どちらの年の収入ですか?
原則として、契約上の支払日がある年の収入です(所得税基本通達36-5)。支払日が12月なら、入金が1月でも令和8年分です。継続的な記帳と前受収益・未収収益の経理などの要件を満たす方は、家賃の全部を毎年、貸付期間に対応させて計上する方法もあります。
Q3. ローンの返済額は、全部経費になりますか?
返済額のうち、元本の部分は必要経費になりません。経費になるのは利息の部分です。また不動産所得が赤字の年は、土地を取得するための借入金の利息に当たる部分の赤字を、給与など他の所得と通算できません(租税特別措置法41条の4)。
Q4. 令和9年分から、青色申告特別控除はどう変わりますか?
事業的規模で、取引をすべて詳しく記録している方が対象です。期限内にe-Taxで申告書と決算書を送ると最高65万円です。一定の電子帳簿の保存などもすると最高75万円です。e-Taxで送らないと10万円までで、紙で受けられた55万円の控除はなくなります。
免責事項
本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法37条1項、所得税基本通達36-5・36-6・37-2、昭和48年11月6日付の個別通達「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について」(直所2-78)、租税特別措置法41条の4、令和8年度改正後の租税特別措置法25条の2と所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則33条、国税通則法60条・65条、タックスアンサーNo.1376「不動産所得の収入計上時期」・No.1379「修繕費とならないものの判定」・No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」・No.2210「必要経費の知識」、国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」の内容を扱っています。修繕費と資本的支出の区分の基準、減価償却費の計算、少額減価償却資産の特例、租税公課の計上時期の選択、敷金・保証金のうち返還を要しない部分の扱い、回収できない家賃の扱い、家賃の計上方法を変えた年の扱いと個別通達の要件の細目、土地と建物をまとめて取得した場合の負債の利子の計算方法、事業的規模の判定、青色申告特別控除の10万円の対象の見直しと電子帳簿の要件の細目、給与所得者の確定申告の要否、確定申告の期間、加算税と延滞税の割合、住民税・消費税は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 所得税基本通達〔収入金額〕(36-5・36-6)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/01.htm
- 国税庁 所得税基本通達〔債務が確定している費用〕(37-2)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/05.htm
- 国税庁 法令解釈通達「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/731106/01.htm
- 国税庁「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/pdf/019.pdf
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(25条の2・41条の4)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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