確定申告

副業の確定申告はいくらから必要?
「20万円ルール」の正しい理解と落とし穴

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 「20万円以下なら申告不要」は所得税だけの話です。しかも条件付きです
  • 判定に使うのは「収入」ではなく「所得」です。所得とは、収入から必要経費を引いた残りの金額です
  • 住民税に20万円ルールはありません。金額にかかわらず、市区町村への申告が原則必要です
  • 医療費控除やふるさと納税で還付申告をするなら、20万円以下の副業の所得も申告書に含めます

まず結論:「20万円以下なら申告不要」は半分だけ正しい

「副業が20万円以下なら申告しなくていい」は、所得税だけの話で条件付きです。判定に使うのも「収入」ではなく「所得」(収入から経費を引いた残り)です。

20万円ルールの正確な要件

もとになっているのは、国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」です。

「2 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」

「3 給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人」

かみ砕くと、20万円ルールが使えるのは次のすべてに当てはまる場合です。

  • 給与をもらっている人であること(個人事業のみの方は対象外です)
  • その給与から税金が天引き(源泉徴収)され、勤務先が年末調整をしていること
  • 給与と退職金以外の所得の合計が20万円以下であること

給与の年間収入が2,000万円を超える人は、副業の有無にかかわらず確定申告が必要です。

給与が2か所以上ある場合の条件

「給与の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く。)を差し引いた金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円以下の人は、申告は不要です。」

勤務先が2か所以上ある方は、この150万円の基準も確認してください。

「収入」ではなく「所得」で判定します

20万円と比べるのは「所得」、つまり収入から必要経費を引いた残りの金額です。

ケース収入必要経費所得判定
A350,000円180,000円170,000円20万円以下(他の要件を満たせば申告不要)
B250,000円30,000円220,000円20万円(確定申告が必要)

収入はAのほうが多いのに、申告が必要になるのはBです。経費を集計しないと判定できないのです。

夜の副業のデスク
副業の所得が20万円以下でも住民税の申告は必要です

落とし穴①:住民税には20万円ルールがありません

20万円ルールは所得税だけの決まりで、住民税に同じ制度はありません。

たとえば東京都港区は、給与のほかに原稿料が15万円ほどあった場合について、次のように案内しています。

「住民税(特別区民税・都民税)は、他の所得と合算して翌年度課税されますので、金額の多少にかかわらず必ず申告しなければなりません。」

出典:港区「給与の他に原稿料が15万円ほどありました。住民税(特別区民税・都民税)の申告はする必要がありますか。」

注意

所得税の確定申告をしない場合は、市区町村への住民税の申告で副業の所得を届け出ることになります。手続きは市区町村ごとに違うため、お住まいの自治体のページでご確認ください。

所得税の確定申告をした場合は情報が市区町村に送られるため、あらためての住民税申告は不要です。「所得税は申告不要でも住民税は申告が必要」となるのは、20万円ルールを使ったときだけです。

落とし穴②:還付申告をするなら副業分も申告に含めます

「還付の分だけ申告して、20万円以下の副業は書かない」ということはできません。20万円ルールは「申告しなければならない人」を決めるルールで、申告する所得を選べる制度ではないためです。

数字で見る影響

副業の所得が17万円あり、医療費控除のために確定申告をする場合、所得税率20%の区分では増える税金は次のとおりです。

項目金額
副業所得170,000円
所得税(170,000円×20%)34,000円
復興特別所得税(34,000円×2.1%)714円
合計34,714円

医療費控除の還付より多ければ、差し引きで納付になることもあります。事前に試算しておくのがおすすめです(住民税の申告義務は別に残ります)。

※税率20%の区分の概算です。実際の税額は他の所得や所得控除の状況で変わります。

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判定は「収入」ではなく経費を引いた「所得」で行います

落とし穴③:その副業所得は「事業所得」か「雑所得」か

副業の所得が「事業所得」か「雑所得」かで、税金の扱いが変わります。経費の範囲や、赤字を給与と相殺できるか(損益通算)に影響するためです。

国税庁タックスアンサーNo.1500によると、雑所得とは他のどの所得区分にも当たらない「その他」の所得で、副業に係る所得(原稿料など)もこれに該当します。

仕事として行う副業の雑所得には、次の決まりがあります。

  • その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります
  • その年の前々年分の収入金額が1,000万円を超える方が確定申告書を提出する場合には、収支内訳書などの添付が必要です
  • 前々年分の収入金額が300万円以下である方は、現金主義の特例を選択できます

「雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。」

出典:国税庁タックスアンサーNo.1500「雑所得」

赤字を給与と相殺できるのは、事業所得と認められる場合だけです。判断基準と裁判例は 事業所得の確定申告完全ガイド|フリーランス・個人事業主必見 で解説しています。

注意

赤字の相殺だけを目的に事業所得として申告することはおすすめしません。後から税務署に認められないと、加算税・延滞税の負担が生じるためです。実態に合った区分で申告するのが有利です。

申告しないまま放置するとどうなる

申告が必要なのにしていなかった場合、期限後申告として扱われ、「無申告加算税」がかかります。割合は、いつ動くかで変わります。

期限後申告のタイミング無申告加算税の割合
調査の事前通知のに自主的に期限後申告5%
事前通知の後・調査による決定を予知する前50万円までの部分10%/50万円超300万円までの部分15%/300万円超の部分25%
調査を受けた後(決定を予知した後)50万円までの部分15%/50万円超300万円までの部分20%/300万円超の部分30%

※令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)の割合です。

ポイント

延滞税も別途かかりますが、期限から1か月以内に自分から申告し、一定の要件を満たせば無申告加算税はかかりません。早めに動く価値があります。

自分でやるか、依頼するかの目安

フリーランスの仕事場
フリーランスの仕事場

次のような場合は、ご自身での申告も十分に可能です。

  • 副業が1種類で、経費の範囲に迷いがない
  • 取引量が少なく、通帳と請求書だけで集計が終わる

一方、次に当てはまる場合は一度ご相談ください。

  • 所得区分(事業所得か雑所得か)に迷っている
  • 副業が赤字で、損益通算を検討している
  • 前々年の収入金額が300万円または1,000万円の基準に近い
  • インボイス登録をしていて消費税の申告が必要
  • 過去に申告していない年がある

費用の考え方は 確定申告を税理士に丸投げしたら費用はいくら? にまとめています。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 20万円は「収入」ですか「所得」ですか?

所得です。収入から必要経費を引いた後の金額のことです。収入が20万円を超えていても、所得が20万円以下なら条件を満たすことがあります(国税庁タックスアンサーNo.1900)。

Q2. 所得税の確定申告が不要なら、住民税の申告も不要ですか?

不要ではありません。20万円ルールは所得税だけの制度で、住民税に同じ制度はないためです。

Q3. 医療費控除の還付申告をする場合、副業の20万円以下の所得はどうなりますか?

確定申告書を出す以上、副業の所得も含めて書きます。申告する所得を選べる制度ではないためです。還付が少なくなったり、納付になったりすることもあります。

Q4. フリマアプリで不用品を売った収入も申告が必要ですか?

生活に必要な物を売って得た所得には課税されません(国税庁タックスアンサーNo.3105)。ただし貴金属や宝石などで1個または1組の価額が30万円を超えるものは対象になり、もうけ目的で仕入れて売り続ける場合は事業所得または雑所得として課税されます(同No.1906)。

免責事項

本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。住民税の申告手続は市区町村ごとに取扱いが異なるため、実際の手続はお住まいの自治体の案内をご確認ください。記載した設例は前提を単純化した試算であり、実際の税額を保証するものではありません。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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