この記事のポイント
- ひとり親控除は35万円。子の所得58万円以下(令和7年分)など3要件です
- 寡婦控除は27万円。死別なら扶養親族がいなくても対象です
- 障害者控除は27万円・40万円・75万円。家族が対象でも本人が受けられます
- 勤労学生控除は27万円。所得基準は85万円以下(令和7年分)です
まず結論:この4つは「申告しないと受けられません」
基礎控除と違い、この4つは自分で申告しないと一切反映されません。
- ひとり親控除(35万円)
- 寡婦控除(27万円)
- 障害者控除(27万円・40万円・75万円)
- 勤労学生控除(27万円)
税務署は離婚・死別・手帳の取得を把握していません。書かなければ控除はなく、該当すれば金額も大きいのが特徴です。
医療費控除のような集計の手間はなく、要件を確認して申告書に印を付けるだけです。
4つの控除を一覧で確認します
まずは全体像です。当てはまりそうな控除があれば、該当の章から読んでください。
| 控除の名前 | 控除額 | 主な要件 | 誰が受けられるか |
|---|---|---|---|
| ひとり親控除 | 35万円 | 婚姻をしていないことなど/生計を一にする子がいる/合計所得金額500万円以下 | 要件に当てはまる本人 |
| 寡婦控除 | 27万円 | ひとり親に該当しない/離婚後は扶養親族が必要、死別後は不要/合計所得金額500万円以下 | 要件に当てはまる本人 |
| 障害者控除 | 障害者27万円 特別障害者40万円 同居特別障害者75万円 |
本人、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまること | 納税者本人(家族が対象でも本人が受けます) |
| 勤労学生控除 | 27万円 | 勤労による所得がある/合計所得金額75万円以下(令和7年分からは85万円以下)で勤労以外の所得10万円以下/特定の学校の学生、生徒 | 要件に当てはまる本人 |
1点だけ順番に注意してください。ひとり親控除と寡婦控除は、先にひとり親から判定します。寡婦の定義に「ひとり親に該当せず」という条件が入っているためです。
ひとり親控除 35万円
国税庁タックスアンサーNo.1171によれば、ひとり親控除は35万円です。今回の4つのなかで最も大きい金額です。
「ひとり親」とはどんな人か
その年12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つすべてに当てはまる人です。
- ① その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
- ② 生計を一にする子がいること
- ③ 合計所得金額が500万円以下であること
3つすべてが必要で、ひとつでも欠けると受けられません。
②の「子」には所得の基準があります
②でいう子は、その年分の総所得金額等が48万円以下(令和7年分からは58万円以下)で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
お子さんのアルバイト収入が基準を超えた年や、別れた配偶者がそのお子さんを扶養親族としている場合は、この要件を満たしません。
令和7年分から基準が変わりました
この「子」の所得基準は令和7年分から58万円以下に引き上げられました(もとは48万円以下)。
③の合計所得金額500万円以下にも注意
③は収入ではなく所得で判定します。ご自身の所得が500万円を挟むあたりにある方は、年末の見込みで一度確認しておくと安心です。
注意
①の「事実上婚姻関係と同様の事情」について
この判定の細目は個別性が高く、本記事では立ち入りません。判断に迷う場合は、国税庁タックスアンサーNo.1171でご確認いただくか、税理士にご相談ください。
寡婦控除 27万円
国税庁タックスアンサーNo.1170「寡婦控除」によれば、控除額は27万円です(令和2年分以後)。
まずひとり親に当たらないことが前提です
寡婦とは、その年12月31日の現況で「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人をいいます。ひとり親に当たるならひとり親控除(35万円)が先です。
離婚と死別で要件が違います
ここが最も間違えやすい部分なので、表で整理します。
| ① 離婚の場合 | ② 死別などの場合 | |
|---|---|---|
| どんな状況か | 夫と離婚した後婚姻をしていない | 夫と死別した後婚姻をしていない、または夫の生死が明らかでない一定の人 |
| 扶養親族 | 扶養親族がいることが必要 | 扶養親族の要件はありません |
| 合計所得金額 | 500万円以下 | 500万円以下 |
いずれの場合も、事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないことが必要です。
死別の方は、扶養親族がいなくても対象になります
死別の場合、扶養親族がいることは要件ではありません。お子さんが独立していても、夫と死別した後婚姻をしておらず合計所得金額が500万円以下であれば、寡婦に当たります。離婚と死別で扱いが違う点を覚えてください。
「夫」とは民法上の婚姻関係にある人です
No.1170は、ここでいう「夫」とは民法上の婚姻関係にある人をいうと明記しています。届出をしていない関係の解消は、この条文でいう離婚・死別には当たりません。
障害者控除 27万円・40万円・75万円
国税庁タックスアンサーNo.1160「障害者控除」によれば、納税者自身、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に受けられます。ご家族が対象になる場合も、納税者であるあなたが控除を受けます。
控除額は3段階です
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 障害者 | 27万円 |
| 特別障害者 | 40万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 |
同居特別障害者に当たる場合の75万円は、所得控除のなかでも大きな金額です。
対象となるのはどんな人か
No.1160が挙げている主なものは次のとおりです。
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
- 児童相談所・知的障害者更生相談所などの判定により知的障害者と判定された人
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
- 身体障害者手帳に記載されている人
- 65歳以上で市町村長等の認定を受けている人
- 戦傷病者手帳の交付を受けている人
- 原子爆弾被爆者として厚生労働大臣の認定を受けている人
- その年の12月31日の現況で引き続き1年以上寝たきりの状態で複雑な介護を必要とする人
手帳がなくても対象になる場合があります
手帳の交付を受けている人だけが対象ではなく、65歳以上で市町村長等の認定を受けている人も対象になり得ます。ご高齢の親御さんを扶養に入れている方は、この項目に当てはまらないか一度ご確認ください。認定の手続や要件は、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
勤労学生控除 27万円
国税庁タックスアンサーNo.1175「勤労学生控除」によれば、控除額は27万円です。

3つの要件すべてに当てはまることが必要です
- ① 給与所得などの勤労による所得があること
- ② 合計所得金額が75万円以下(令和7年分からは85万円以下)で、かつ、①の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
- ③ 特定の学校の学生、生徒であること
②の基準が令和7年分から85万円以下になりました
合計所得金額の基準はもとは75万円以下でしたが、令和7年分からは85万円以下になっています。勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下という基準もあわせてご確認ください。
③の「特定の学校」とは
No.1175が挙げている主なものは次のとおりです。
- 学校教育法に規定する小学校・中学校・高等学校・大学・高等専門学校
- 国等の設置した専修学校・各種学校のうち一定の課程
- 認定職業訓練を行う職業訓練法人
専修学校や各種学校は「一定の課程」という限定が付きます。ご自身の通う学校が当たるかどうかは、国税庁タックスアンサーNo.1175の該当ページでご確認ください。学校の事務局に尋ねるのも確実です。
どこに書くか
- 給与所得者は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に記載して勤務先へ提出します
- 確定申告をする場合は、確定申告書に記載します
なお、専修学校等の生徒は在学証明書等の添付が必要な場合があります。
数値例:控除35万円で所得税はいくら変わるか
控除の金額そのものが手元に戻るわけではなく、控除額に税率を掛けた金額だけ所得税が減ります。
前提:課税される所得金額が300万円、所得税の税率が10パーセントの方が、ひとり親控除35万円を受けたとします。
計算例
例:所得税の軽減額
350,000円 × 10パーセント = 35,000円(復興特別所得税を除く)
申告書に印を付けるだけの手続としては、35,000円は小さくありません。所得税の税率は課税される所得金額によって異なるため、この35,000円は税率が10パーセントの場合の目安です。
よくある使い忘れ

実際にご相談を受けるなかで、繰り返し出会う4つのパターンを挙げます。
1. 年末調整で書き漏れた
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を毎年書き写し、今年から当てはまる控除が抜け落ちるケースが最多です。年の途中で状況が変わった年はとくに注意してください(判定は原則その年12月31日の現況)。
2. 障害者手帳を取得した年に申告していない
手帳が届いても、税務署から連絡が来ることはありません。ご自身で申告書に書かない限り、控除は反映されません。ご家族が取得された場合も同じで、65歳以上で市町村長等の認定を受けている場合も対象になり得ます。
3. 親の扶養に入れている子が学生アルバイトをしている
勤労学生控除は学生ご本人の所得から控除するものです。アルバイト先で年末調整を受けている学生さんは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の勤労学生の欄をご確認ください。お子さんの所得の大きさは扶養控除・配偶者控除の記事の判定にも関わります。
4. 死別後に要件を満たしていることに気づいていない
死別の場合は扶養親族がいることが要件になっていません。「子どもが独立したから、もう関係ない」と思い込み、長く申告していないケースがあります。
ポイント
いま確認していただきたい4点
① 直近の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で、ひとり親・寡婦・障害者・勤労学生の欄に記載があるか
② ご家族が障害者手帳を取得された年に、申告に反映しているか
③ 65歳以上のご家族について、市町村長等の認定を受けていないか
④ 死別後、扶養親族がいないことを理由に寡婦控除を見送っていないか
使い忘れに気づいたときは
年末調整で書き漏れても、確定申告をすればこれらの控除を受けられます。ひとり親控除・寡婦控除・障害者控除・勤労学生控除とも、申告書の該当欄に記載します。
過去の年分についても、さかのぼって申告できる場合があります
過去の年分から当てはまっていた場合も、さかのぼって申告できる場合があります。期限や進め方には決まりがありますので、還付申告の記事をあわせてお読みください。
準備しておくとよいもの
ご相談の前に、次のものをお手元にご用意いただけると話が早く進みます。
- 源泉徴収票(漏れがあった年分のもの)
- お子さんやご家族の所得が分かるもの
- 障害者手帳、または市町村長等の認定に関する書類
- 在学証明書等(勤労学生控除の場合)
すべてが揃っていなくてもかまいません。まずは、当てはまりそうかどうかの確認からで十分です。
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よくある質問(FAQ)
Q1. ひとり親控除と寡婦控除は、両方受けられますか?
両方は受けられません。先にひとり親に当たるかを判定し、当たらない場合に寡婦の要件をみます。控除額はひとり親控除が35万円、寡婦控除が27万円です(国税庁タックスアンサーNo.1170)。
Q2. 子どもがアルバイトをしています。ひとり親控除は受けられますか?
子の所得の大きさによります。その年分の総所得金額等が48万円以下(令和7年分からは58万円以下)で、他の人の扶養親族等になっていない子に限られ、基準を超えるとその年は受けられません(国税庁タックスアンサーNo.1171)。
Q3. 夫と死別しました。扶養している親族はいませんが、寡婦控除は受けられますか?
受けられます。死別の場合は扶養親族がいることは要件になっていません。夫と死別した後婚姻をしておらず、合計所得金額が500万円以下であれば寡婦に当たります(国税庁タックスアンサーNo.1170)。
Q4. アルバイトをしている学生です。勤労学生控除を受けるにはどんな条件がありますか?
勤労による所得があること、合計所得金額が75万円以下(令和7年分からは85万円以下)で勤労以外の所得が10万円以下であること、特定の学校の学生、生徒であることの3つです。控除額は27万円です(国税庁タックスアンサーNo.1175)。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.1171、No.1170、No.1160およびNo.1175は、いずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。本記事は所得税の取扱いを対象としており、住民税における取扱いは扱っていません。また、扶養控除・配偶者控除・配偶者特別控除の要件および控除額も扱っていません。本記事の数値例は、課税される所得金額が300万円で所得税の税率が10パーセントの場合の目安であり、復興特別所得税を除いた金額です。所得税の税率は課税される所得金額によって異なるため、実際の税額は本記事の数値例と一致しません。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1170「寡婦控除」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1170.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1160「障害者控除」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1175「勤労学生控除」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
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ひとり親控除・寡婦控除・障害者控除・勤労学生控除は、申告して初めて受けられる控除です。年末調整で書き漏れても、確定申告で受けられます。過去の年分についても、さかのぼって申告できる場合があります。まずは状況をお聞かせください。代表税理士が直接ご対応します。
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