この記事のポイント
- 確定申告の義務がない人でも、納めすぎた所得税があれば還付申告で取り戻せます
- 還付申告書は確定申告期間と関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます
- 医療費控除・住宅ローン控除・雑損控除・寄附金控除などは過去の年分にさかのぼって申告できます
- 課税総所得金額300万円・医療費控除40万円の例で、負担減は約80,840円です
まず結論:「申告しなくてよい人」も、申告すれば取り戻せます
「年末調整で終わっているから確定申告は関係ない」と思っていませんか。
確定申告の義務がない人でも、納めすぎた所得税があれば申告して取り戻せます。これを還付申告といい、過去5年分までさかのぼれます。
国税庁の解説(タックスアンサーNo.2030「還付申告」)には、次のとおり示されています。
確定申告書を提出する義務のない人でも、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が年間の所得金額について計算した所得税額よりも多いときは、確定申告をすることによって、納め過ぎの所得税の還付を受けることができます。この申告を還付申告といいます。
給与の所得税は年末調整で精算されますが、年末調整では処理できない控除があり、そこを申告で拾うのが還付申告です。
還付申告ができる代表的なケース
国税庁の解説(No.2030)では、給与をもらっている方について次のような場合が挙げられています。
| ケース | なぜ還付になるのか |
|---|---|
| 年の途中で退職し、年末調整を受けていない | 源泉徴収は1年間給与が続く前提のため、途中で辞めると納めすぎになります |
| 住宅ローン控除の適用を受ける | 初年度は年末調整では処理できません |
| 特定の改修工事をした | 年末調整の対象外です |
| 災害や盗難で損害を受けた(雑損控除) | 年末調整の対象外です |
| 多額の医療費を支払った(医療費控除) | 年末調整の対象外です |
| 特定の団体などに寄附をした(寄附金控除) | 年末調整の対象外です |
| 上場株式等の譲渡損失について申告分離課税を選択する | 損益通算・繰越控除は申告が必要です |
件数が多いのは、年の途中で退職した年と医療費控除です。転職や家族の入院・手術があった年に何もしていない方は、確認する価値があります。
期限は「翌年1月1日から5年間」です
No.2030には次のとおり示されています。
還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
1. 2月16日を待つ必要はありません
確定申告の受付は例年2月16日から3月15日ですが、還付申告は翌年1月1日から提出でき、早く出せば還付も早まります。
2. 過去5年分をさかのぼれます
令和8年中なら令和3年分以降が対象です(各年分ごとに翌年1月1日から5年間で判定)。医療費控除等の出し忘れが、まだ間に合う可能性があります。
注意
5年ルールは確定申告の義務がない人の話です。不動産売却・事業所得等で確定申告の義務がある人は、法定申告期限(原則翌年3月15日)までの申告が必要で、過ぎれば無申告加算税・延滞税の対象です。申告済みの内容を直す場合は還付申告でなく更正の請求です。
数字のイメージ:医療費控除40万円でいくら戻るか
次の前提で計算します。
- 会社員の方(年末調整済み)
- 課税総所得金額:300万円(各種所得控除を差し引いたあとの金額)
- 医療費控除の金額:40万円
- 住民税の所得割は標準税率10パーセントとします
| 項目 | 医療費控除を適用する前 | 医療費控除を適用した後 |
|---|---|---|
| 課税総所得金額 | 3,000,000円 | 2,600,000円 |
| 所得税(速算表:10パーセント − 97,500円) | 202,500円 | 162,500円 |
| 復興特別所得税(2.1パーセント) | 4,252円 | 3,412円 |
| 所得税+復興特別所得税 | 206,752円 | 165,912円 |
- 所得税・復興特別所得税の還付額:40,840円
- 翌年度の住民税の減少額:40,000円(40万円 × 10パーセント)
- 合計の負担減:80,840円
所得税の40,840円だけでなく、翌年度の住民税も40,000円下がります。還付通知の金額だけでは効果を半分しか把握できません。
医療費控除額は「支払った医療費-保険金等の補填額-10万円(総所得金額等200万円未満は5パーセント)」で計算し、上の40万円はこの計算後の額です。
還付申告の進め方
- 源泉徴収票を集める。転職した年は前職・現職の両方が必要です。なくした場合は勤務先に再発行を頼みます
- 控除の証明書類を集める。医療費通知・領収書、寄附金の受領証、住宅ローンの年末残高等証明書など。年分ごとに整理します
- 年分ごとに申告書を作る。還付申告は年分ごとに1通で、「5年分まとめて1枚」にはできません
- 提出して還付を待つ。指定口座に振り込まれ、期間は提出方法や時期で異なります
源泉徴収票と医療費の領収書だけで済むケースはご自身でも進められますが、次は判断が必要です。
- 複数年分にまたがり、どの年分か迷う支出がある
- 他の所得(副業・株式・不動産など)も併せて申告が必要になる
- そもそも確定申告の義務があった疑いがある
- 既に提出済みで、還付申告でなく更正の請求になる
注意
還付を受けようとした結果、申告していなかった所得が明らかになり、かえって納付になることもあります。全体像を確認してから提出してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 5年前の医療費の領収書が出てきました。今から申告できますか?
翌年1月1日から5年以内なら提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。令和3年分なら令和4年1月1日から5年間で、令和8年中はまだ間に合いますが、早めにご準備ください。
Q2. 還付申告をすると、住民税も自動的に下がりますか?
確定申告書の内容は市区町村に通知され、住民税にも原則反映されます。ただし過去年分の還付申告では市区町村の判断によることがあるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
Q3. ふるさと納税のワンストップ特例を使った年に還付申告をしても大丈夫ですか?
ご注意ください。確定申告をするとワンストップ特例は無効になるため、その年のふるさと納税も寄附金控除として申告書に書く必要があります。書き忘れると控除が受けられません。
Q4. 還付申告をすると税務調査に来られやすくなりますか?
還付申告をしたこと自体が調査の理由になるわけではありませんが、申告内容の確認で税務署から問い合わせが来ることはあります。控除の根拠資料は申告後も保管してください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。還付申告ができるかどうか、また還付額がいくらになるかは、その年分の所得・控除の内容によって異なります。記事中の税額は記載した前提に基づく試算であり、実際の還付額を保証するものではありません。住民税の取扱いは市区町村の条例等によりますので、必ずお住まいの市区町村にご確認ください。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国税庁 確定申告書等作成コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jp/
- 所得税法122条(還付等を受けるための申告)、所得税法120条(確定所得申告)e-Gov法令検索
- 総務省「個人住民税」(所得割の標準税率)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_02.html
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初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
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「もう何年も前のことだから」と諦めていた控除が、まだ間に合うことがあります。5年分をまとめて確認し、還付になるかどうかを試算します。ご相談の時点で資料が揃っている必要はありません。初回のご相談は無料です。
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