この記事のポイント
- 換地を受け取っただけなら譲渡がなかったものとみなされます
- 課税されるのは清算金・保留地の対価に対応する部分だけです
- その清算金は「収用等」に当たり、特例の対象になり得ます
- 換地は元の土地の取得の時期を引き継ぎます(措法33の6①)
まず結論:換地を受け取っただけなら、譲渡はなかったものとみなされます
土地区画整理事業で換地(従前の土地に代わって割り当てられる土地)を受け取っただけなら、税金の心配は原則としていりません。法律が「譲渡がなかったものとみなす」と定めているからです。
根拠は租税特別措置法33条の3第1項です。原文を挙げます。
(換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例)第三十三条の三 個人が、その有する土地等につき土地区画整理法による土地区画整理事業、新都市基盤整備法による土地整理、土地改良法による土地改良事業又は大都市地域住宅等供給促進法による住宅街区整備事業が施行された場合において、当該土地等に係る換地処分により土地等又は…を取得したときは、第二十八条の四、第三十一条若しくは第三十二条又は所得税法第二十七条、第三十三条若しくは第三十五条の規定の適用については、換地処分により譲渡した土地等(土地等とともに清算金を取得した場合又は…保留地が定められた場合には、当該譲渡した土地等のうち当該清算金の額又は当該保留地の対価の額に対応する部分以外のものとして政令で定める部分)の譲渡がなかつたものとみなす。(租税特別措置法33条の3第1項・抜粋)
ポイント
換地処分で土地が別の土地に変わっても、それだけでは譲渡所得の課税は起きません。そのため、その年に譲渡所得の申告が出てこないのが原則です。

対象になるのは4つの事業です
この特例が働くのは、条文に挙げられた事業に限られます。対象は次の4つです。
- 土地区画整理法による土地区画整理事業
- 土地改良法による土地改良事業
- 大都市地域住宅等供給促進法による住宅街区整備事業
- 新都市基盤整備法による土地整理
そのうえで条文は、当該土地等に係る「換地処分により土地等…を取得したとき」と書いています。つまり換地処分によって土地等を取得したことが要件です。隣地と話し合いで交換した、任意に売ったといった場面は、この条文の対象ではありません。
補足
措置法33条の3には第2項以下もあり、市街地再開発事業などの権利変換についても同じ考え方の規定が置かれています。この記事は第1項の換地処分に絞って説明しています。

課税されるのは清算金などに対応する部分です
ここが本題です。33条の3第1項のかっこ書きは、清算金や保留地の対価に対応する部分を、譲渡がなかったものとみなす範囲から外しています。
言いかえると、換地に対応する部分は課税されません。清算金の額や保留地の対価の額に対応する部分だけが、譲渡があったものとして扱われます。どこまでが対応する部分かは、政令で定められています。
清算金は、従前の土地と換地の価値の差を金銭で調整するものです。清算金を受け取った年は、譲渡所得の申告が必要になり得ます。
注意
「土地が土地に変わっただけだから申告は不要」と考えて、清算金の受取りを見落とす例があります。通帳への入金と、施行者からの支払通知を必ず確認してください。
その清算金は「収用等」に当たります
清算金は、ただの売却代金とは扱いが違います。措置法33条1項3号が、換地処分により清算金を取得するときを「収用等」に位置づけているからです。
三 土地又は土地の上に存する権利(…「土地等」という。)につき土地区画整理法による土地区画整理事業、…による住宅街区整備事業、新都市基盤整備法による土地整理又は土地改良法による土地改良事業が施行された場合において、当該土地等に係る換地処分により土地区画整理法第九十四条…の規定による清算金(土地区画整理法第九十条…の規定により換地…を定められなかつたこと…により支払われるものを除く。)又は土地改良法第五十四条の二第四項…に規定する清算金(同法第五十三条の二の二第一項…の規定により地積を特に減じて換地…を定めたこと又は換地…を定められなかつたことにより支払われるものを除く。)を取得するとき(政令で定める場合に該当する場合を除く。)。(租税特別措置法33条1項3号・抜粋)
大事なのは、かっこ書きで除かれる清算金があることです。土地区画整理法90条により換地を定められなかったことにより支払われる清算金などは、この3号から除かれています。
収用等に当たるなら、代替資産の特例や公共事業で土地を売ったときの5,000万円特別控除の対象になり得ます。ただしそれぞれ要件があり、使えると決まっているわけではありません。受け取ったお金の名目ごとの扱いは補償金の名目ごとの所得区分で整理しています。
特別控除を使わない前提で、税額の目安を置いてみます。
計算例
例:清算金800万円を受け取り、対応する取得費と譲渡費用の合計が100万円だった場合
課税長期譲渡所得金額 8,000,000円-1,000,000円=7,000,000円 所得税 7,000,000円×15%=1,050,000円 復興特別所得税 1,050,000円×2.1%=22,050円 住民税 7,000,000円×5%=350,000円 合計1,422,050円長期譲渡所得に当たり、特別控除を適用しない前提で計算しました(国税庁タックスアンサーNo.3208)。一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。

受け取った換地を将来売るときに効いてきます
換地は「新しくもらった土地」に見えます。しかし税務では、元の土地の取得の時期を引き継ぎます。
(収用交換等により取得した代替資産等の取得価額の計算)第三十三条の六 第三十三条、第三十三条の二第一項若しくは第二項又は第三十三条の三の規定の適用を受けた者…が代替資産又は交換処分等、換地処分若しくは権利変換…により取得した資産(…「代替資産等」という。)について…譲渡…があつた場合において…譲渡所得の金額…を計算するときは、政令で定めるところにより、…規定の適用を受けた資産(…「譲渡資産」という。)の取得の時期を当該代替資産等の取得の時期とし…(租税特別措置法33条の6第1項・抜粋)
長期譲渡所得か短期譲渡所得かは、所有期間で分かれます。換地処分の年を起点に数えて短期になる、ということはありません。
ポイント
取得価額も、政令で定めるところにより引き継ぎます。先祖代々の土地なら、その古い取得費を引き継ぐことになります。換地処分の通知に書かれた価額が、そのまま取得費になるわけではありません。

実務で確認すること
やることは多くありません。まずは施行者から届く書類を、捨てずに保管することです。
- 換地処分の通知を保管する(従前の土地と換地の対応が分かります)
- 清算金の支払通知と入金記録を保管する(金額と受取りの時期が分かります)
- 清算金がある年は譲渡所得の申告が必要になり得ると考え、早めに確認する
- 元の土地の取得費が分かる資料(売買契約書など)を探しておく
ここまでは、ご自身でもできます。ここから先、清算金のうち課税される部分の計算や、収用等の特例を使えるかどうかの判断は個別判断になります。土地改良事業では農地が対象になることも多く、その場合は農地の売却の考え方も併せて確認します。
小松公認会計士・税理士事務所では、届いた通知と過去の資料を拝見して、そもそも申告が必要かどうかから整理してお伝えしています。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 換地を受け取っただけです。確定申告は必要ですか?
換地処分により土地等を取得しただけなら、その譲渡はなかったものとみなされます(措法33の3①)。そのため譲渡所得の申告は原則として出てきません。ただし清算金を受け取っている場合は、別に確認が必要です。
Q2. 清算金を受け取りました。税額はどう決まりますか?
清算金の額に対応する部分について、譲渡があったものとして譲渡所得を計算します。長期譲渡所得なら15%(住民税5%)で、これに復興特別所得税として所得税額の2.1%が加わります(国税庁タックスアンサーNo.3208)。
Q3. 清算金に5,000万円特別控除は使えますか?
換地処分により清算金を取得するときは収用等に当たります(措法33①三)。そのため対象になり得ますが、要件があり、条文上除かれる清算金もあります。使えると決まっているわけではないため、個別に確認します。
Q4. 受け取った換地をすぐ売ると、短期譲渡になりますか?
なりません。措置法33条の6第1項により、元の土地の取得の時期を引き継ぎます。取得価額も政令で定めるところにより引き継ぐため、換地処分の年を起点に所有期間を数えるわけではありません。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。租税特別措置法33条1項3号、33条の3第1項、33条の6第1項、国税庁タックスアンサーNo.3208の範囲を扱っています。仮換地の指定を受けた段階の課税関係、清算金や保留地の対価の額に対応する部分の按分計算の方法、収用等の場合の5,000万円特別控除および代替資産の特例の要件・限度額の細目、措置法33条の3第2項以下の権利変換に関する細目、土地区画整理事業の減歩や保留地の仕組み、相続税・固定資産税の取扱いは扱っていません。本記事の税額の計算は、長期譲渡所得として一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(第33条・第33条の3・第33条の6)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- e-Gov法令検索 所得税法(第33条 譲渡所得)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
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