この記事のポイント
- 所有期間10年超のマイホーム売却は軽減税率の特例が使えます(タックスアンサーNo.3305)
- 3,000万円の特別控除と重ねて適用でき、控除後の金額に軽減税率を掛けます
- 判定日は売った年の1月1日。家屋と敷地がともに10年超であることが必要です
- 課税長期譲渡所得4,000万円の例では、所得税と復興税の差が2,042,000円出ます
まず結論:3,000万円を引いてもまだ利益が残るなら、次に見るのが税率です
3,000万円の特別控除を引いてもまだ利益が残る場合、次に見るのが税率です。所有期間が10年を超えるマイホームには、税率そのものを下げる「軽減税率の特例」があります。
この特例は、3,000万円の特別控除と重ねて受けることができます。国税庁タックスアンサーNo.3305に明記されています。
計算の順番は、まず譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引き、次に特別控除額を差し引き、残った金額に軽減税率を適用します(国税庁タックスアンサーNo.3208)。
課税長期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
課税長期譲渡所得金額が4,000万円のケースでは、所得税と復興特別所得税だけで2,042,000円の差になります。内訳は後半でお示しします。要件を満たすかは個別の判断ですので、必ず事前にご確認ください。
補足
この記事が扱う範囲
本記事は軽減税率の特例に絞って解説します。3,000万円特別控除そのものの適用要件はマイホーム売却の3,000万円特別控除と取得時期の落とし穴|判例で読み解く不動産譲渡所得をご覧ください。住民税の税率・税額は扱っていません。
3,000万円控除と軽減税率は「重ねて使えます」
軽減税率の特例は、3,000万円控除と重ねて受けられます。国税庁タックスアンサーNo.3305には、両者は重ねて受けることができると記載されています。
大切なのは計算の順番です
軽減税率は、3,000万円を差し引いたあとの金額に掛けます。差し引く前の金額に掛けるのではありません。
たとえば譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額が7,000万円のとき、特別控除額3,000万円を引くと残りは4,000万円です。軽減税率は、この4,000万円に適用します。順番を取り違えると税額の見込みが大きくずれるので、ご注意ください。
なお、3,000万円特別控除そのものの適用要件(住んでいた家屋に当たるかなど)はこちらの記事で解説しています。まず3,000万円控除が使えるかを確認し、そのうえで軽減税率の特例も重ねられるかを見る順で検討してください。
軽減税率の特例の4つの要件
国税庁タックスアンサーNo.3305が挙げる主な適用要件は、次の4つです。
| 要件 | 確認するポイント |
|---|---|
| ① 売った年の1月1日において、売った家屋やその敷地の所有期間がともに10年を超えていること | 家屋と敷地の両方が10年超である必要があります |
| ② 現在住んでいる家屋、または住まなくなってから3年以内に売却した家屋等であること | 空き家のまま置いておくと期間が過ぎます |
| ③ 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと | 過去2年以内に使っていると、その年は使えません |
| ④ 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと | 身内への売却は対象になりません |
「ともに」という言葉がつまずきやすい点です
見落とされやすいのが、①の要件にある「ともに」という言葉です。家屋と敷地は同じ時期に手に入れているとは限りません。先に土地を買ってあとから家を建てた場合など、家屋と敷地で所有期間がずれます。どちらか一方でも10年以下であれば、この要件を満たしません。登記事項証明書や売買契約書で、それぞれの取得時期を確認してください。
「特別の関係がある人」への売却は対象外です
④の「特別の関係がある人」の範囲には細かい定めがあるため、個別の確認が必要です。身内への売却をお考えの場合は、契約前にご相談ください。契約後では選べる方法が限られます。
「売った年の1月1日で判定する」の意味
所有期間は、実際に持っていた年数ではなく「売った年の1月1日において」10年を超えるかどうかで判定します。売買契約日でも引渡日でもありません。国税庁タックスアンサーNo.3208でも、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地・建物が長期譲渡所得になるとされ、同じ考え方です。
年末に売るか年明けに売るかで、結論が変わることがあります
取得してから10年目に入っている物件では、売った年の1月1日時点で10年を超えていなければ①の要件を満たしません。年が明けてから売れば10年を超えている、ということも起こり得ます。売る時期が数か月ずれるだけで、特例を使えるかどうかが変わることがあるのです。
不動産の売却は買主の都合や住み替え先の事情で動くため、税金だけで時期を決められないことも多いはずです。ただ、「1月1日で判定する」という事実を知らないまま契約すると、あとから取り返しがつきません。売却時期を検討する段階で一度確認しておくことをおすすめします。
取得の時期そのものが論点になることもあります
相続や贈与で取得した不動産は、取得時期の引継ぎに別の定めがあるため個別の確認が必要です。詳しくはマイホーム売却の3,000万円特別控除と取得時期の落とし穴|判例で読み解く不動産譲渡所得もご覧ください。
税率はこうなります
国税庁タックスアンサーNo.3305によれば、課税長期譲渡所得金額をAとして、税額は次のとおりです。
| 課税長期譲渡所得金額(A) | 所得税額の計算 |
|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | A × 10パーセント |
| 6,000万円を超える部分 | (A - 6,000万円)× 15パーセント + 600万円 |
加えて、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントが上乗せされます。
特例を使わない場合と比べてみます
軽減税率の特例を使わない長期譲渡所得は、課税長期譲渡所得金額 × 15パーセントで計算します(国税庁タックスアンサーNo.3208)。こちらも復興特別所得税として基準所得税額の2.1パーセントが上乗せされます。
つまり、6,000万円以下の部分について15パーセントが10パーセントになる。これが軽減税率の特例の効果です。差は5パーセントですが、譲渡所得は金額が大きくなりやすいため、実額では大きな差になります。
注意
住民税について
本記事では住民税の税率・税額は扱っていません。住民税は所得税とは別に定められています。実際のご負担額は、住民税を含めた試算が必要です。弊所にご相談いただければ、住民税を含めた形で試算いたします。
数字で見る:課税長期譲渡所得金額4,000万円のケース
所有期間10年超のマイホームを売却し、3,000万円控除後の課税長期譲渡所得金額が4,000万円になったケースで比較します。所得税と復興特別所得税のみで、住民税は含んでいません。
| 項目 | 軽減税率の特例を使わない場合 | 軽減税率の特例を使う場合 |
|---|---|---|
| 所得税 | 40,000,000円 × 15% = 6,000,000円 |
40,000,000円 × 10% = 4,000,000円 |
| 復興特別所得税 | 6,000,000円 × 2.1% = 126,000円 |
4,000,000円 × 2.1% = 84,000円 |
| 合計 | 6,126,000円 | 4,084,000円 |
差額は次のとおりです。
6,126,000円 - 4,084,000円 = 2,042,000円
4,000万円は6,000万円以下の部分に収まるため、全額に10パーセントを適用しました。特例を使うかどうかだけで、これだけの違いが出ます。
6,000万円を超える場合の計算例
課税長期譲渡所得金額が6,000万円を超えるときは2段階で計算します。たとえば8,000万円のケースです。
(80,000,000円 - 60,000,000円)× 15% + 6,000,000円 = 9,000,000円
これが所得税の額で、復興特別所得税として基準所得税額の2.1パーセントが加わります(住民税は別に定められています)。6,000万円を超えた部分の税率は15パーセントで、特例を使わない場合と同じ率です。軽減の効果が及ぶのは6,000万円以下の部分まで、という構造です。
使えないケース・注意したいケース
「惜しい」と感じる場面を7つ挙げます。
- 住まなくなってから3年超:空き家のまま時間が経つと、この要件から外れます。住まなくなった日を早めに確認してください
- 家屋と敷地で所有期間がずれる:建て替えで家屋の取得時期が新しくなっている場合など、登記事項証明書や売買契約書で確認します
- 前年・前々年に特例を使用済み:過去2年分の確定申告書で確認してから検討してください
- 親族間の売買:「特別の関係がある人」の範囲は個別の確認が必要です。契約前にご確認ください
- 買換え特例との選択:住み替えの場合はどちらが有利か比較が必要です。マイホームの買換え特例と3,000万円控除はどちらが有利?令和9年12月31日まで2年延長をご覧ください
- 住宅ローン控除との関係:売却側の特例との関係を先に整理します。3,000万円控除と住宅ローン控除は併用できる?買い換え時に損しない制度の選び方で解説しています
- 申告に必要な資料:売買契約書は購入時・売却時の両方が必要です。不動産売却後の確定申告 必要書類チェックリストと申告までの流れにまとめています
課税長期譲渡所得金額を正しく出すことが先です
税率を掛ける相手、つまり課税長期譲渡所得金額そのものが正しく出ていなければ意味がありません。国税庁タックスアンサーNo.3208によれば、次の式で求めます。
課税長期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
取得費・譲渡費用の入れ忘れを防ぎます
入れられるはずの取得費・譲渡費用を入れ忘れると、課税長期譲渡所得金額が本来より大きく出て、税額も大きくなります。軽減税率で税率を5パーセント下げても、前段の金額が過大では効果が打ち消されます。
弊所では、購入時の契約書・領収書・登記関係の資料を一つずつ確認し、根拠づけて算入できるかどうかを検討します。入れ忘れを防ぎ、根拠なく入れないこと。この両方を大切にしています。取得費と譲渡費用の線引きは測量費・取壊し費用は取得費?譲渡費用?不動産売却でかかった費用の線引きで扱っています。
6,000万円のラインが近いときは、特に丁寧に
課税長期譲渡所得金額が6,000万円の前後になるケースは、金額の精度がそのまま税率の適用区分に効いてきます。6,000万円以下は10パーセント、超える部分は15パーセントです。「だいたいこのくらい」で進めず、資料に基づいて一つずつ積み上げる。これが適正申告の基本です。
マイホームの売却について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 3,000万円の特別控除を使ったあとでも、軽減税率の特例は使えますか?
使えます。まず譲渡価額から取得費・譲渡費用を差し引き、次に3,000万円を控除し、残った課税長期譲渡所得金額に軽減税率を適用します(タックスアンサーNo.3305)。両方の要件を満たすかは個別にご確認ください。
Q2. 所有期間が10年を超えているかどうかは、いつの時点で判定しますか?
売った年の1月1日において、家屋・敷地ともに10年を超えていることが要件です(タックスアンサーNo.3305)。契約日や引渡日では判定しません。年末に売るか年明けに売るかで結論が変わることがあります。
Q3. 課税長期譲渡所得金額が6,000万円を超えるときは、どう計算しますか?
6,000万円以下はA×10パーセント、超える部分は(A-6,000万円)×15パーセント+600万円です(タックスアンサーNo.3305)。Aが8,000万円なら9,000,000円です。
Q4. 前の年にもマイホームを売ってこの特例を使いました。今年も使えますか?
売った年の前年・前々年に適用を受けていないことが要件です(タックスアンサーNo.3305)。過去2年分の確定申告書で確認することをおすすめします。ご自身での確認が難しい場合は弊所でもお手伝いします。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.3305およびNo.3208は、令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。本記事は所得税および復興特別所得税のみを対象としており、住民税の取扱いは扱っていません。また、「特別の関係がある人」の範囲の細目、3,000万円の特別控除および買換え特例の適用要件、相続や贈与で取得した場合の所有期間の引継ぎについても、本記事では扱っていません。本記事の数値例は、課税長期譲渡所得金額を4,000万円または8,000万円と仮定した、所得税および復興特別所得税のみの計算上の目安であり、実際の税額を保証するものではありません。適用要件を満たすかどうかは個々の事情によって判断が分かれます。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3305「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
10年超のマイホーム売却は、売る前にご相談ください
3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を重ねられるかどうかは、家屋と敷地それぞれの取得時期、住まなくなってからの年数、過去2年の申告内容で決まります。売買契約書がお手元に見当たらない状態でも構いません。まずは無料相談で状況をお聞かせください。代表税理士が直接ご対応します。
無料相談を申し込む 不動産譲渡の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り