この記事のポイント
- 令和元年7月8日より前に契約した保険は、加入時のルールがそのまま続きます
- 最高解約返戻率での資産計上は、原則その日以後の契約が対象です
- 取扱いは保険の類型×受取人の組合せで決まります
- 定期付養老保険は証券で区分がなければ全額を養老保険とみなします(No.5362)
まず結論:保険料の処理は「いつ契約したか」で分かれます
令和元年7月8日より前に契約した保険は、加入した当時のルールがそのまま続きます。答えの入口は保険の中身ではなく、いつ契約したかです。
数年前に話題になった「解約返戻率が高いほど保険料をすぐには経費にできない」という取扱いは、原則としてその日以後に契約したものが対象です。国税庁も旧契約を区別しており、表題に「令和元年7月8日前契約分」と明記したタックスアンサーが類型ごとに3本あります。
- 国税庁タックスアンサーNo.5360「養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」
- 国税庁タックスアンサーNo.5361「定期保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」
- 国税庁タックスアンサーNo.5362「定期付養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」
古い契約と新しい契約を両方お持ちの会社では、1社の中で2つのルールが並んで動いています。令和元年7月8日以後に契約したものは法人保険と税務の基本をご覧ください。この記事ではその日より前に契約したものだけを扱います。
旧契約は「保険の類型」×「受取人」の組合せで決まります
3本のタックスアンサーは、いずれも法人が契約者となり、役員または使用人(親族を含みます)を被保険者とする保険が対象です。まず保険の類型を見ます。
| 類型 | 国税庁の説明 |
|---|---|
| 養老保険 | 満期または死亡で保険金が支払われる生命保険(No.5360) |
| 定期保険 | 死亡時にのみ保険金が支払われ、生存保険金の支払はない(No.5361) |
| 定期付養老保険 | 養老保険に定期保険を付加したもの(No.5362) |
次に保険金の受取人を誰にしているかを見ます。組合せは次のとおりです。
| 類型 | 死亡保険金の受取人 | 生存保険金の受取人 | 保険料の取扱い |
|---|---|---|---|
| 養老保険 | 法人 | 法人 | 契約終了時まで資産に計上 |
| 被保険者・遺族 | 被保険者・遺族 | その役員・使用人への給与 | |
| 被保険者の遺族 | 法人 | 2分の1を資産に計上、残額は損金(※) | |
| 定期保険 | 法人 | ― | 期間の経過に応じて損金 |
| 被保険者の遺族 | ― | 期間の経過に応じて損金(※) | |
| 定期付養老保険 | 証券で区分されている | 養老・定期それぞれのルールで判断 | |
| 定期付養老保険 | 証券で区分されていない | 全額を養老保険の保険料とみなす | |
ポイント
(※)は共通の注記です。役員または部課長その他特定の使用人(親族を含みます)のみを被保険者とする場合、損金になるはずの金額はその役員・使用人の給与になります。読む順番は①類型→②受取人→③被保険者の範囲の3段階で、保険金額や商品名では判断しません。
定期保険は「受取人が法人でも遺族でも、期間の経過に応じて損金」
旧契約の定期保険は、受取人が法人でも遺族でも結論は同じで、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
1 死亡保険金の受取人が法人の場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
2 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合 その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。ただし、役員または部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含みます。)のみを被保険者としている場合には、その保険料の額は、その役員または使用人に対する給与となります。(国税庁タックスアンサーNo.5361)
結論を分けるのは受取人ではなく被保険者の範囲です。効いているのは「のみ」という一語で、全員が対象か一部だけかの違いだけで、会社の損金がその人の給与に変わります。役員のご家族が従業員として在籍していれば、その方も判定に入ります。
最大の落とし穴は、定期付養老保険の「区分されていない」場合
3本のうち、実務でいちばん見落とされやすいのが定期付養老保険です。
保険料が定期保険の保険料と養老保険の保険料とに区分されていない場合 支払った保険料の全額を養老保険の保険料とみなして、上記の「区分されている場合」の1により取り扱います。(国税庁タックスアンサーNo.5362)
本来なら期間の経過に応じて損金にできたはずの定期部分まで含め、全額が養老保険の保険料として扱われます。受取人の設定によっては、全額資産計上や2分の1しか損金にならない結果にもなります。
数値で確かめます
旧契約の定期付養老保険、年間保険料1,200,000円。死亡保険金の受取人は被保険者の遺族、生存保険金の受取人は法人。被保険者は従業員全員で、役員等のみではないものとします。一定の前提を置いた目安です。
計算例
例:年間保険料1,200,000円の定期付養老保険
区分あり(定期400,000円/養老800,000円)→ 資産計上400,000円・損金800,000円 区分なし → 全額を養老保険とみなし資産計上600,000円・損金600,000円 差額 = 200,000円(資産計上・損金算入とも)証券に区分の記載があるかどうかだけで、その期の損金が200,000円変わります。確かめるべきは、生命保険証券などに定期・養老の保険料が実際に区分して記載されているかどうかです。
養老保険については、契約日で結論が変わりません
養老保険の取扱いを定めた法人税基本通達9-3-4は、令和元年の通達改正でも内容が変わっていません。ここは誤解の多いところです。
(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。(法人税基本通達9-3-4)
通達の(1)(2)(3)は、旧契約向けタックスアンサーNo.5360の1・2・3と同じ内容です。養老保険は、契約日が令和元年7月8日の前でも後でも、この3区分で判断します。大きく動いたのは定期保険などの側です。
古い養老保険であれば契約日を調べる前に受取人を確かめれば足ります。定期保険や定期付養老保険は、まず契約日から入る必要があります。なお、養老保険で従業員の退職金を準備する設計や、保険料の払込みを止めて払済保険に変更したときの処理は、この記事とは別の論点です。
特約の保険料と、「給与」とされた保険料のゆくえ
傷害特約などが付いている場合、その特約部分の保険料は、期間の経過に応じて損金の額に算入できます。ただし、本体部分と同じ形のただし書きがあります。
注意
役員または部課長その他特定の使用人(親族を含みます)のみを傷害特約等に係る給付金の受取人としている場合、その特約部分の保険料はその役員・使用人の給与になります。本体部分は被保険者の範囲、特約部分は給付金の受取人で判断するため、分けて確かめてください。
給与とされた保険料には続きがあります。その役員または使用人の生命保険料控除の対象になり、法人が経常的に負担する分は定期同額給与になります。会社の帳簿の中だけで完結せず、給与・役員給与・所得控除の3つが連動します。1か所だけ直して、ほかを直し忘れる。これが実際にいちばん多い失敗です。
自社の古い契約を確かめる手順と、よくある勘違い
確かめる順番は、契約日→類型→受取人→被保険者の範囲→(定期付養老なら)区分の有無、です。
- ①生命保険証券で契約日を確かめます。令和元年7月8日より前か以後かで見るべきルールが分かれます
- ②保険の類型を確かめます。生存保険金の支払があるかどうかで見ます
- ③死亡保険金と生存保険金の受取人を、別々に確かめます
- ④被保険者の範囲を確かめます。役員または特定の使用人のみになっていないか、親族も含め一覧にします
- ⑤定期付養老保険なら、証券上で保険料が区分されているかを確かめます
- ⑥総勘定元帳と過去の申告書で、①〜⑤の結論と処理が合っているかを突き合わせます
補足
よくある勘違い
「あの改正で保険の扱いは全部変わった」(養老保険の9-3-4は内容が変わっていません)。「古い契約もいまのルールに直す必要がある」(その日より前の契約は当時のルールが続きます)。「定期保険は受取人が会社なら経費、遺族なら給与」(受取人ではなく被保険者の範囲で分かれます)。「定期付養老は定期の分だけ経費になる」(証券で区分されていなければ全額が養老保険の保険料とみなされます)。
当事務所は保険の募集代理店ではありません。税務上の取扱いと決算への影響という観点から検討をお手伝いする立場です。生命保険証券・被保険者の一覧・総勘定元帳・過去の申告書を拝見しないと判断できない論点が多く、一般論としてお伝えできるのは、ここまでです。
令和元年7月8日前に契約した法人保険について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
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よくある質問(FAQ)
Q1. 先代のころから続いている保険があります。いまのルールに合わせて処理を変える必要はありますか?
令和元年7月8日より前の契約なら、加入当時のルールが続きます。処理を組み替える作業は原則不要です。契約日・類型・受取人・被保険者の範囲の4点を、生命保険証券と総勘定元帳で突き合わせてください。
Q2. 定期付養老保険に入っています。証券に保険料の内訳が書かれていない場合はどうなりますか?
支払った保険料の全額を養老保険の保険料とみなします(No.5362)。たとえば年間1,200,000円のうち400,000円が定期分と区分されていれば資産計上は400,000円、区分がなければ600,000円です。
Q3. 役員だけを被保険者にしている定期保険があります。保険料は経費になりますか?
受取人が法人でも遺族でも、期間の経過に応じて損金です(No.5361)。ただし役員または特定の使用人のみを被保険者とする場合、その保険料はその役員・使用人の給与になります。
Q4. 養老保険は令和元年の改正で扱いが変わったのではないのですか?
変わっていません。養老保険の法人税基本通達9-3-4は改正後も同じ内容です。受取人の組合せに応じた3区分(資産計上・給与・2分の1資産計上)で、契約日にかかわらず判断します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、令和元年7月8日より前に契約した法人保険のうち、養老保険・定期保険・定期付養老保険の保険料について、保険金の受取人と被保険者の範囲による取扱いの違いという基本的な枠組みを扱っています。令和元年7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険に係る資産計上の取扱い、養老保険を用いて従業員の退職金や弔慰金を準備する場合の設計と要件、払済保険への変更や契約者名義の変更に伴う処理、解約返戻金を受け取ったときの益金の計算、保険金や給付金を受け取った側の所得税・相続税の取扱い、申告書や別表の記載手順、生命保険料控除の具体的な計算方法については、本記事では扱っていません。また、当事務所は保険の募集代理店ではなく、特定の保険商品を販売する立場ではありません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は契約の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5360「養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5360.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5361「定期保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5361.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5362「定期付養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日前契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5362.htm
- 国税庁 法人税基本通達 9-3-4(養老保険に係る保険料)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
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古い契約ほど、加入当時のご担当者もご提案の資料も残っていないものです。それでも、生命保険証券は会社に残っています。契約日・保険の類型・死亡保険金と生存保険金それぞれの受取人・被保険者の範囲。この4点が分かれば、毎期の処理はほぼ決まります。証券と総勘定元帳、直近の申告書をお手元にご用意いただければ、いまの処理が通達どおりになっているか、資産に計上したまま残っている金額がいくらあるかを整理してお伝えします。当事務所は保険の募集代理店ではありませんので、商品をおすすめすることはありません。決算を締める前のほうが、打てる手は多くなります。代表税理士が直接ご対応します。
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