この記事のポイント
- 金地金やゴルフ会員権を売った利益は、給与などと合算する総合課税の譲渡所得です。株式や不動産の分離課税とは異なります
- 譲渡益から年間50万円の特別控除を差し引き、保有期間が5年を超えていれば残りの2分の1だけが課税対象になります
- 同じ利益でも、5年以内か5年を超えるかで税負担が2倍以上変わることがあります
- ゴルフ会員権を売って損が出ても、原則として給与などとの損益通算はできません(国税庁タックスアンサーNo.3158)
金地金・ゴルフ会員権は「総合課税の譲渡所得」です
金地金やゴルフ会員権を売った利益は、給与など他の所得と合算する「総合課税」です。株式や不動産の分離課税とは異なります。
譲渡所得の対象になる資産は幅広い
「譲渡所得」は資産を売って出た利益にかかる税金の区分です。国税庁(タックスアンサーNo.3105)では、土地・株式等のほか金地金、宝石、書画、骨とう、ゴルフ会員権、特許権、著作権などが挙げられています(貸付金や売掛金などの金銭債権は除く)。
課税方法は3通りに分かれます
| 資産 | 課税方法 | 他の所得との関係 |
|---|---|---|
| 土地・建物等 | 申告分離課税 | 合算しない(税率は原則20.315%または39.63%) |
| 上場株式等 | 申告分離課税 | 合算しない(税率は原則20.315%) |
| 金地金・ゴルフ会員権・貴金属・書画骨とうなど | 総合課税 | 給与・事業などと合算し、累進税率で課税 |
金地金(No.3161)・ゴルフ会員権(No.3158)とも総合課税の対象です。所得が高い人ほど、同じ利益でも税額が大きくなります。所得税率は課税所得に応じ5%から45%の7段階です(国税庁タックスアンサーNo.2260)。
注意
家具・衣服など生活に通常必要な動産の売却益は課税されません(No.3105)。ただし貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の値段が30万円を超えるものは非課税から外れます。「不要品のつもり」でも税金がかかることがあります。
計算の仕組み ― 50万円控除と「5年超なら2分の1」
保有期間5年が分岐点です
保有期間が5年を超えるかどうかで扱いが変わります(国税庁タックスアンサーNo.3152)。
- 短期譲渡所得:所有期間が5年以内
- 長期譲渡所得:所有期間が5年を超える
譲渡所得の金額 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 50万円
長期(5年超)なら、この金額の2分の1だけが課税の対象になります。短期は全額が対象です。
ポイント
50万円の特別控除は売却のたびではなく、その年の長期・短期の譲渡益の合計に対して年間50万円が上限です。譲渡益が50万円以下ならその金額までです。短期・長期の両方があれば、先に短期から引くのが有利です。
数字で見る:5年以内に売るか、5年を超えて売るか
次の前提で比較します。
- 金地金の売却代金:1,200万円/取得費:500万円/譲渡費用:20万円
- この人の他の所得(課税される所得金額)は400万円とします
- 復興特別所得税は基準所得税額の2.1%、住民税の所得割は10%として計算します
計算例
ステップ1:譲渡益と特別控除
1,200万円 −(500万円+20万円)= 譲渡益680万円 680万円 − 特別控除50万円 = 630万円ステップ2:保有期間で分岐します
| 項目 | 保有5年以内(短期) | 保有5年超(長期) |
|---|---|---|
| 特別控除後の金額 | 630万円 | 630万円 |
| 総所得金額に算入される額 | 630万円(全額) | 315万円(2分の1) |
| 加算後の課税される所得金額 | 1,030万円 | 715万円 |
| 所得税の増加額 | 1,490,500円 | 636,000円 |
| 復興特別所得税込み | 1,521,800円 | 649,356円 |
| 住民税(10%) | 630,000円 | 315,000円 |
| 負担増の合計 | 2,151,800円 | 964,356円 |
差額は1,187,444円です。同じ680万円の利益でも、5年を超えて売ったかどうかで負担が2倍以上変わります。売る時期をずらせば結果は変わりますが、相場は待ってくれません。
実務で見落としやすい4つのポイント
1. 取得費の資料は「買ったとき」にしか作れません
金地金は10年、20年と持つことも珍しくありません。購入時の計算書は売る日まで保管が必要です。見つからなければ取引店舗に記録がないか確認してください。
2. 同じ年にまとめて売ると、控除は1回分だけです
50万円の特別控除は1年間の合計が上限で、同じ年に何回売っても50万円までです。年をまたげば翌年また使えますが、相場変動のリスクと引き換えです。
注意
ゴルフ会員権の売却損は原則切り捨てです。給与など他の所得とは相殺できません(No.3158)。「損が出れば税金が戻る」との前提で時期を決めると想定が外れます。
年末調整だけで済んでいた給与所得者でも、売却益が出れば確定申告が必要になることがあります。基準は「売った金額」でなく「利益」(特別控除後・長期なら2分の1後)です。
当事務所の進め方
- ステップ1:取得費を確定させます ― 買ったときの計算書・通帳記録から取得費を固めます
- ステップ2:保有期間と売却時期を確認します ― 5年を境に税額は2倍近く動きます。売る前のご相談なら時期もご提案します
- ステップ3:他の所得と合わせて税額を計算します ― 給与・事業・年金など他の所得と合算して税額が決まります。ふるさと納税の上限額や住民税への影響もご説明します
よくある質問(FAQ)
Q1. 金の地金を何回かに分けて売りました。特別控除の50万円は売却のたびに使えますか?
使えません。特別控除50万円は、その年の長期・短期の譲渡益の合計額に対して年間50万円です(No.3152)。売却回数分は控除できません。
Q2. 30万円の腕時計を売りました。確定申告は必要ですか?
家具や衣服など生活に通常必要な動産の売却益は課税されません(No.3105)。ただし貴金属・宝石・書画骨とうで1個または1組30万円を超えるものは非課税から外れます。
Q3. 買ったときの領収書が残っていません。取得費はどう計算しますか?
取得費は実際に買ったときの金額が原則です。明細書、店舗の記録、通帳記録などで説明できないか検討します。土地建物の「概算取得費」(売却額の5パーセントを引く方法)はそのまま当てはまりません。
Q4. ゴルフ会員権を売って損が出ました。給与所得と相殺できますか?
できないのが原則です。国税庁(No.3158)は、ゴルフ会員権の譲渡損失は原則として給与所得など他の所得と損益通算できないとしています。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。譲渡所得の計算は資産の種類・取得の経緯・保有期間によって結論が異なり、本記事の設例は説明のための仮定です(実際の税額は他の所得や所得控除によって変わります)。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3161「金地金を売ったときの税金」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3161.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3152「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3158「ゴルフ会員権の譲渡による所得」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3158.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
この記事のお悩みは、小松公認会計士・税理士事務所にご相談ください
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
売却した年の確定申告は、まとめてお任せください
金地金やゴルフ会員権の譲渡は、給与や事業の所得と合算して税額を計算します。取得費の資料が古くて残っていない、複数回に分けて売却した、といったケースでも、まずは無料相談で状況をお聞かせください。代表税理士が直接ご対応します。
無料相談を申し込む 確定申告の丸投げサポートを見る 約60秒で料金を自動見積り