この記事のポイント
- 放置して増えるのは本来の税金ではなく、無申告加算税と延滞税という上乗せ部分です
- 無申告加算税は「いつ申告したか」で5%/10〜25%/15〜30%の3段階に変わります
- 本税300万円の例で、自主申告なら150,000円。調査後だと575,000円で約3.8倍の差です
- 延滞税は令和8年中年2.6%(2か月まで)・年8.9%(それ以後)。日数分だけ増えます
まず結論:放置して増えるのは「上乗せ部分」です
放置して増え続けるのは、本来の税金(本税)ではなく、無申告加算税と延滞税という上乗せ部分です。この上乗せは早く動くほど小さくでき、放置して有利になることは一つもありません。
- 無申告加算税……期限内に申告しなかったことへの上乗せ。いつ申告したかで割合が変わります
- 延滞税……納付遅れの利息のようなもの。何日遅れたかで増えます
無申告加算税は早く申告すれば割合が下がり、延滞税は1日でも早く納めれば止まります。売上を隠す等の仮装・隠蔽があれば、代わりに重い「重加算税」がかかります。本記事はそれ以外の場合が前提です。
無申告加算税は「いつ申告したか」で3段階に変わります
次の表のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.2024)。
| 申告のタイミング | 納付すべき税額のうち 50万円までの部分 | 50万円超 300万円までの部分 | 300万円を 超える部分 |
|---|---|---|---|
| ①調査の通知を受ける前に 自主的に期限後申告 | 5% | ||
| ②調査の通知を受けた後・ 更正または決定を予知する前 | 10% | 15% | 25% |
| ③調査を受けた後 (更正・決定を予知した後) | 15% | 20% | 30% |
300万円を超える部分の割合(25%・30%)は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(令和5年分以降)に適用されます。前年・前々年も無申告加算税等があれば、割合にさらに10%が加わります。
無申告加算税がかからない場合もあります
ポイント
次をすべて満たせば無申告加算税はかかりません。法定申告期限から1か月以内に自分から申告し、期限内申告の意思が認められ、税額の全額を法定納期限までに納付していて、過去5年間に無申告加算税等がないことです。
「数日過ぎた」程度なら、この救済に入れる可能性があります。
延滞税は日数で増えます(令和8年中の割合)
延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納付する日までの日数に応じて計算されます。割合は年ごとに見直され、令和8年中は次のとおりです。
| 期間 | 令和8年中の割合 |
|---|---|
| 納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 年2.6% |
| それ以後 | 年8.9% |
2か月を過ぎると割合が3倍以上に跳ね上がります。今すぐ動くべき理由です。
数字のイメージ:本税300万円を申告していなかった場合
前提
- 令和7年分の所得税。法定申告期限は令和8年3月16日(3月15日が日曜日のため翌開庁日)
- 納付すべき税額(本税)は3,000,000円
- 過去5年間に無申告加算税等を課されたことはなく、仮装・隠蔽の事実もない
無申告加算税の比較
| 申告のタイミング | 計算 | 無申告加算税 |
|---|---|---|
| ①自主的に期限後申告 | 3,000,000円×5% | 150,000円 |
| ②調査通知後・更正予知前 | 500,000円×10%+2,500,000円×15% | 425,000円 |
| ③調査後 | 500,000円×15%+2,500,000円×20% | 575,000円 |
①と③の差は425,000円、率にすると約3.8倍です。納める本税は同じでも、動くタイミングだけで変わります。
延滞税(令和8年11月30日に納付した場合)
| 期間 | 日数 | 割合 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 令和8年3月17日〜5月16日 | 61日 | 年2.6% | 13,035円 |
| 令和8年5月17日〜11月30日 | 198日 | 年8.9% | 144,838円 |
| 合計(100円未満切捨て後) | 157,800円 | ||
合計負担
| ケース | 本税 | 無申告加算税 | 延滞税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| ①自主的に期限後申告 | 3,000,000円 | 150,000円 | 157,800円 | 3,307,800円 |
| ③調査後 | 3,000,000円 | 575,000円 | 157,800円 | 3,732,800円 |
計算例
例:本税5,000,000円で調査後に申告した場合の無申告加算税
500,000円 × 15% = 75,000円 2,500,000円 × 20% = 500,000円 2,000,000円 × 30% = 600,000円合計1,175,000円です。
期限後申告の進め方(4ステップ)
- 対象の年分を洗い出す。期間は原則5年(偽りその他不正の行為があれば7年)。分かる資料から着手します
- 資料を集める。通帳・請求書・領収書・支払調書・源泉徴収票・年間取引報告書などを年分ごとに集めます。領収書がなくても通帳の入出金から組み立て直せます。
- 申告書を作成して提出する。古い年分から順に、その年分の様式で作成します
- 納付する。延滞税は納付するまで増え続けるため、一括で納付できなくても申告そのものは先に済ませてください。申告を遅らせても加算税・延滞税は減りません。納付が難しい場合は税務署に納税の猶予を相談できます
注意
やってはいけないこと――実際と違う金額で申告する(重加算税の対象)、調査後に慌てて出す(加算税の割合が上がる)、1年分だけ出して放置する(他の年分は残ったまま)。
放置すると、税金以外にも影響が出ます
- 青色申告特別控除が10万円になる——65万円・55万円の控除は期限内申告が条件で使えません
- 戻るはずの税金を取り戻せない——医療費控除や住宅ローン控除の還付は申告して初めて受けられます
- 融資・賃貸・各種手続で所得を証明できない——確定申告書の控えや納税証明書が要る場面があります
- 不動産売却時の「お尋ね」に答えられない——売却の事実は登記情報等から把握されます。詳しくは税務署から「お尋ね」が届いたときの正しい対応手順をご覧ください
よくある質問(FAQ)
Q1. 期限を過ぎてしまいましたが、今から申告できますか?
できます(期限後申告)。税務調査の通知が来る前に自分から出すほうが無申告加算税の割合は低くなります(国税庁タックスアンサーNo.2024)。
Q2. 無申告加算税がまったくかからない場合はありますか?
あります。①期限から1か月以内に自分から申告、②期限内に申告する意思があったと認められる、③税額全額を法定納期限までに納付、④過去5年間に無申告加算税等がない場合です(国税庁タックスアンサーNo.2024)。
Q3. 何年分さかのぼって申告する必要がありますか?
納めるべき税金がある年分は申告義務が残ります(原則5年、偽りその他不正の行為があれば7年)。
Q4. 青色申告をしていますが、期限後申告になると影響はありますか?
あります。青色申告特別控除の65万円・55万円は期限内の申告が条件です(国税庁タックスアンサーNo.2072)。期限後申告では使えず、控除は10万円にとどまります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・国税庁公表資料に基づく一般的な解説です。記事中の加算税・延滞税の金額は前提を置いた試算であり、実際の金額は本税額・申告時期・納付日・過去の申告状況によって変わります。延滞税の割合は各年で改定され、計算期間の特例が適用される場合もあります。仮装または隠蔽があると認められる場合は重加算税の対象となり、本記事の説明とは異なる取扱いになります。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
- 国税庁「延滞税の割合」https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 国税通則法66条(無申告加算税)・68条(重加算税)・60条(延滞税)(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/
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