確定申告

先物取引・FXの確定申告
申告分離課税20.315パーセントと3年間の繰越控除

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 先物・FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」として20.315パーセントで課税されます
  • 同じ枠どうしの損益は相殺できますが、給与や事業の所得とは相殺できません
  • 損失は翌年以後3年間繰り越せますが、毎年申告を続けることが条件です
  • 株式の売買や暗号資産の所得とは課税の仕組みが別です。相殺できません

まず結論:対象になる取引

先物・オプション・FXの損益は、株式とも暗号資産とも別の「先物取引に係る雑所得等」という専用の枠で課税されます。税率は一律20.315パーセントで、損失は3年間繰り越せます(毎年申告を続けることが条件)。

国税庁タックスアンサーNo.1522によると、対象は次の差金等決済(差額だけをやり取りする決済)です。

  • 商品先物取引の決済(商品の受渡しがあったものを除きます)
  • 金融商品先物取引等の決済(金融商品の受渡しがあったものを除きます)
  • カバードワラントの差金等決済

FXは国税庁タックスアンサーNo.1521が同じ枠と案内しています。日経225先物・TOPIX先物・日経225オプション・店頭FXが対象です。

注意

商品の現物受渡しがあった取引はこの特例の対象外です。対象かは、取引報告書と証券会社・FX業者の年間損益報告書でご確認ください。

FX取引のトレーディング環境
FX・先物は申告分離課税20.315%で課税されます

税率と申告方法

税率は所得税15パーセント+住民税5パーセントに、復興特別所得税(所得税額の2.1パーセント)が加わります。

所得税 15% + 復興特別所得税 0.315%(15%×2.1%) + 住民税 5% = 20.315%

申告分離課税であることの意味

申告分離課税は、他の所得と合算せず一律の税率を掛ける方式です。

  • 利益がどれだけ大きくても税率は20.315パーセントで変わりません
  • 逆に、利益が少なくても税率は下がりません

損益通算できるもの・できないもの

ここが最も間違えやすいところです。

相手方通算の可否
他の「先物取引に係る雑所得等」(日経225先物とFXなど)できる
給与所得・事業所得・不動産所得などできない
上場株式等の譲渡損益・配当所得できない
暗号資産の売却益(総合課税の雑所得)できない

国税庁タックスアンサーNo.1521は、FXの損失は他の所得と損益通算できないと明記しています。「投資で損をしたから給与の税金が戻るはず」という考えは成り立ちません。

一方、日経225先物で損失、FXで利益という年は相殺して申告できます

3年間の繰越控除と「連続申告」の要件

申告書類一式
申告書類一式

その年に引ききれなかった先物・FXの損失は、翌年以後3年間繰り越せます。繰り越した年の利益から差し引ける仕組みです(国税庁タックスアンサーNo.1523)。

要件は「出し続けること」です

繰り越しには次の書類が必要です。

  • 所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
  • 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書

条件は「連続して申告書付表を添付した確定申告書を提出すること」です。

注意

取引をしなかった年も申告が必要です
「今年は取引していないから不要」と考えると繰越しが途切れます。取引がなかった年も申告を続けてください。3年分には3回の申告が必要です。

数字で見る:繰越控除でいくら変わるか

次の前提で計算します。

  • 令和8年分:先物取引に係る雑所得等が300万円の損失
  • 令和9年分:先物取引に係る雑所得等が200万円の利益
  • 令和10年分:先物取引に係る雑所得等が400万円の利益
  • 税率20.315パーセント
年分その年の所得繰越控除の充当課税される金額税額繰越控除をしなかった場合の税額
令和8年分△3,000,000円0円0円0円
令和9年分2,000,000円△2,000,000円0円0円406,300円
令和10年分4,000,000円△1,000,000円3,000,000円609,450円812,600円

2年分を合わせると、税負担の差は609,450円です。

3,000,000円 × 20.315% = 609,450円

損失が出た年に申告をしていなければ、この609,450円は戻ってきません。損失の年こそ申告する価値があります。

3年分の損益資料
損失は申告を続けることで3年間繰り越せます

間違えやすい3つのポイント

1. 株式の損失とは通算できません

株式は「上場株式等に係る譲渡所得等」、先物は「先物取引に係る雑所得等」と枠が違います。税率は同じ20.315パーセントでも、枠が違うため相殺できません。

2. 暗号資産の利益とも通算できません

暗号資産の売却益は総合課税の雑所得です。課税方式が違うため、先物の損失と相殺できません。

3. 会社員の方の「20万円」判定にご注意ください

給与・退職金以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要で、先物・FXの所得も含まれます。医療費控除等で申告する場合は20万円以下でも含めます。

申告に必要な資料

ご相談の際は次の資料をご用意ください。

  • 証券会社・FX業者が発行する年間損益報告書(すべての業者分)
  • 取引報告書または取引履歴(年間損益報告書が発行されない業者の場合)
  • 手数料の明細(必要経費になるもの)
  • 過去に繰越損失がある場合は、その年分の確定申告書控えと申告書付表
  • 給与所得がある方は源泉徴収票

複数の業者で取引している場合は、すべての業者の損益を合算して申告する必要があります。

当事務所の進め方

ステップ1:取引の枠分けから始めます

お持ちの取引が「先物取引に係る雑所得等」「上場株式等」「総合課税の雑所得」のどれかを業者ごとに仕分けます。

ステップ2:過去の繰越損失を確認します

過去3年分の申告書控えを確認し、使える繰越損失がないかを見ます。

ステップ3:付表を添えて申告し、翌年以降も継続します

損失が出た年は付表を添付して申告し、取引がない年も申告を継続します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. FXの損失を給与所得と通算して、源泉徴収された所得税の還付を受けられますか?

できません。FXの損失は「先物取引に係る雑所得等」の枠の中だけの損失です。同じ年の日経225先物など他の先物取引の利益とは相殺できます。

Q2. 株式投資の損失と先物取引の利益は通算できますか?

できません。株式と先物の損益はどちらも申告分離課税・税率20.315パーセントですが、別の枠として計算されます。

Q3. 損失が出た年の翌年は取引をしませんでした。申告しなくても繰越しは続きますか?

続きません。損失が出た年分に付表付きの確定申告書を提出したうえで、その後も同じ申告を続ける必要があります。

Q4. 暗号資産の利益と先物取引の損失は相殺できますか?

できません。暗号資産の売却益は他の所得と合算する総合課税の雑所得で、先物取引の損益は申告分離課税です。課税の方式が違うため、相殺できません。

免責事項

本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。ご自身の取引がこの特例の対象になるかどうかは、取引の種類や業者によって異なります。本文の数値例は説明のための仮定であり、実際の税額は個別の事実関係によって変わります。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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先物・FXの申告は、枠分けから始めます

複数の業者で取引されている方、株式や暗号資産と並行して取引されている方は、どの損益がどの枠に入るかの整理だけで結論が変わります。過去に使える繰越損失が残っていることもあります。年間損益報告書をお手元にご用意のうえ、まずは無料相談をご利用ください。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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