この記事のポイント
- 役員給与は3類型に当てはまらないと損金になりません。使用人兼務役員の「使用人としての給与」はこの対象から除かれます
- 使用人兼務役員とは部長・課長などの地位があり、かつ常時その職務に従事している役員です
- 代表取締役・専務・常務・監査役などは使用人兼務役員になれません。肩書きの段階で決まります
- 同族会社では持株割合の3要件を全て満たすと使用人兼務役員になれません。賞与も支給時期がずれると損金不算入です(法人税法施行令第70条第3号)
まず結論:役員でも「使用人としての賞与」なら損金になる余地があります
役員に払う給与は、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のどれかに当てはまらないと損金になりません。ただし使用人兼務役員に支給する、使用人としての職務に対する給与はこの対象から除かれます(国税庁タックスアンサーNo.5211の(注))。ご家族が該当すれば、部長・課長としての給与や賞与は3類型の枠外で判断されます。
関門は3つです。
- ①使用人としての職制上の地位があり、常時その職務に従事していること
- ②代表取締役・専務・常務など、そもそもなれない役員に当たらないこと
- ③同族会社では持株割合の3要件をすべて満たす役員でないこと
③でつまずく会社が多く、株の持ち方で結論が変わるため「家族を役員にすれば賞与が経費になる」とは言えません。

使用人兼務役員とは何か ―― 2つの条件を同時に満たす役員
使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいますが、次のような役員は、使用人兼務役員となりません。なお、同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者も使用人兼務役員となりません。(国税庁タックスアンサーNo.5205)
読みどころは「かつ」です。2つを同時に満たす必要があります。
ポイント
使用人としての職制上の地位(部長・課長など。「取締役」の肩書きだけでは不可)と、常時その職務に従事すること(名前だけの兼任ではない)の両方が必要です。
柱書の最後の一文も大切です。税務上みなし役員とされる者は、使用人兼務役員になれません。みなし役員とは、登記がなくても経営に従事し一定の持株の要件に当たるため役員として扱われる方です(みなし役員の3つの持株要件)。
関門① 肩書きの段階でなれない役員がいます
次の役員は、現場の仕事をしていても使用人兼務役員になりません。
1 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
2 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
3 合名会社、合資会社および合同会社の業務執行社員
4 取締役(指名委員会等設置会社の取締役および監査等委員である取締役に限ります。)、会計参与および監査役ならびに監事(国税庁タックスアンサーNo.5205/法人税法施行令第71条第1号から第4号)
注意
代表取締役である以上、営業の第一線に立っていても使用人兼務役員にはなれません。「専務」の肩書きだけで2号に当たることもあり、ご家族を任せがちな監査役も4号に入るためなれません。
関門② 同族会社では、持株割合の3要件が決め手になります
1号から4号に当たらない取締役営業部長でも、同族会社では、次の3つをすべて満たす役員は使用人兼務役員になれません。
(1)その会社の株主グループをその所有割合の大きいものから順に並べた場合に、その役員が所有割合50パーセントを超える第一順位の株主グループに属しているか、第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50パーセントを超える場合のこれらの株主グループに属しているか、または第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50パーセントを超える場合のこれらの株主グループに属していること。
(2)その役員の属する株主グループの所有割合が10パーセントを超えていること。
(3)その役員(その配偶者およびこれらの者の所有割合が50パーセントを超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5パーセントを超えていること。(国税庁タックスアンサーNo.5205/法人税法施行令第71条第5号)
要するに(1)支配株主グループの側にいるか、(2)そのグループが10パーセント超か、(3)本人と配偶者等で5パーセント超か、の3点です。「株主グループ」とは次のものをいいます。
「株主グループ」とは、その会社の一の株主等およびその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます。(国税庁タックスアンサーNo.5205(注2))
ご家族はまとめて1つのグループとして数え、3つすべて満たしたときだけ5号に当たります。1つでも外れれば当たりません。

持株の当てはめを3つの例で見る
以下は一定の前提を置いた目安です。株主はすべて個人、同族会社に該当し、記載した以外の株主はいないものとします。
| 例 | 株主構成(所有割合・パーセント) | 3要件の当てはめ |
|---|---|---|
| 例1 | 社長70/妻(取締役経理部長)20/第三者10 | 社長と妻の2人は同じ株主グループ(90)。3要件を満たし、使用人兼務役員になれません |
| 例2 | 社長グループ55/取締役営業部長D(社長と親族関係なし)4/その他41 | 第一順位は社長グループ。Dはそこに属さず(1)を満たさない |
| 例3 | 父である社長60/長男(取締役営業部長)3/第三者37 | 父と長男は同じグループ(63)で(1)(2)は満たすが、本人と配偶者は3で(3)を満たさない |
例1と例3の違いは、本人と配偶者が持つ株の割合だけです。株の贈与や相続で持株が動けば、判定もやり直しです。
使用人兼務役員に当たると、扱いはどう変わるのか
(注) 上記の給与からは、(1)退職給与で業績連動給与に該当しないもの、(2)使用人兼務役員に対して支給する使用人としての職務に対するものおよび(3)法人が事実を隠蔽し、または仮装して経理することによりその役員に対して支給するものは除かれます。ただし、(1)および(2)については不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されず、(3)についてはその全ての金額が損金の額に算入されません。(国税庁タックスアンサーNo.5211)
使用人としての職務給与は3類型の判定対象から除かれます。定期同額給与でなくても、それだけで不算入にはなりません。
注意
ただし不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されません。目安はありませんが、法人税法施行令第70条は「他の使用人に対する給与の支給の状況等に照らし、当該職務に対する給与として相当であると認められる金額」を基準とし、ほかの使用人と並べて見る考え方を示しています。
役員として払う分は従来どおり3類型で判断します。臨時払いの手続きは役員賞与を損金にする事前確定届出給与、月額の決め方は役員報酬の決め方にまとめています。
いちばん見落とされる要件 ―― 使用人分の賞与は「他の使用人と同じ時期に」
同じ法人税法施行令第70条は、損金の額に算入されない過大な役員給与の額に、次の第3号を挙げています。
三 使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で、他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額(法人税法施行令第70条第3号)
注意
金額が高いかどうかは関係ありません。支給時期がほかの使用人とずれている、それだけで損金の額に算入されなくなります。
- ほかの従業員は7月と12月なのに、その方の分だけ決算月に支給
- 資金繰りを理由に、その方の分だけ翌月に支給
- 未払金計上のみで、ほかの使用人と同じ時期に支給していない
いずれも支給時期がそろいません。決算の着地に合わせて賞与を動かす発想とは相性が悪く、決算期末の賞与は決算賞与を今期の損金にする要件で整理しています。
裏を返せば、賞与の支給日を全社でそろえることが出発点です。賃金規程・実際の支給・給与台帳の記録を、支給前にそろえておく必要があります。

自社を確かめる手順と、よくある失敗
確かめる手順
- ①登記簿で役職を確かめる(代表取締役・監査役に当たらないか)
- ②組織図と辞令で部長・課長などの地位があるか
- ③担当業務と勤務実態から常時従事しているか
- ④株主名簿とご親族の関係から株主グループの所有割合を計算する
- ⑤賃金規程と給与台帳で賞与の支給日がそろっているか
よくある失敗
- 肩書きを「専務」「常務」にしている。2号に当たります
- 役員分と使用人分を分けずに払っている
- 株の贈与で持株が動いたのに判定をやり直していない
- ほかの従業員と賞与の時期をずらしている。第70条第3号に当たります
- 登記がないから役員ではないと考えている。みなし役員なら該当外です
ここから先は、登記簿・株主名簿・組織図・賃金規程を拝見しないと判断できません。一般論としてお伝えできるのはここまでです。
使用人兼務役員について小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 妻を取締役経理部長にしています。賞与は経費になりますか?
株の持ち方次第です。地位・常時従事に加え、持株割合の3要件(支配株主グループ所属・10パーセント超・配偶者等で5パーセント超)を全て満たすと使用人兼務役員になれません(国税庁タックスアンサーNo.5205)。株主名簿を拝見のうえ確認します。
Q2. 専務取締役ですが、実際は営業部長として毎日現場に出ています。使用人兼務役員になりますか?
なりません。専務・常務など、これに準ずる職制上の地位を有する役員は対象から除かれます(法人税法施行令第71条第2号/国税庁タックスアンサーNo.5205)。実務にかかわらず肩書きの時点で対象外で、給与は全額を役員給与として判断します。
Q3. 使用人兼務役員だと認められれば、使用人分の給与はいくらでも損金になるのですか?
いいえ。使用人としての給与は除かれますが、不相当に高額な部分は損金不算入です(国税庁タックスアンサーNo.5211)。目安はなく、法人税法施行令第70条はほかの使用人と並べて相当性をみます。
Q4. 使用人分の賞与を、決算月にまとめて支給しても大丈夫ですか?
おすすめできません。法人税法施行令第70条第3号は、使用人としての賞与のうち他の使用人と支給時期が異なる額を損金不算入と定めています。金額の多寡は無関係です。賃金規程・実際の支給日・給与台帳の記録を、支給前にそろえておく必要があります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、使用人兼務役員の意義、使用人兼務役員とされない役員の範囲、および使用人としての職務に対する給与・賞与の損金算入に関する基本的な枠組みを扱っています。定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与それぞれの要件の詳細、みなし役員に該当するかどうかの判定の細目、使用人分の給与として相当と認められる金額の具体的な算定方法や金額の目安、使用人兼務役員に該当しないこととなった場合の退職給与の取扱い、給与とされた場合の源泉徴収税額の計算、社会保険や労働保険の取扱いについては、本記事では扱っていません。記事中の持株割合の例は一定の前提を置いた目安であり、実際の判定は株主名簿・親族関係・登記の内容によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5205「役員のうち使用人兼務役員になれない人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5205.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(70条 過大な役員給与の額・71条 使用人兼務役員とされない役員)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
賞与を出す前に、使用人兼務役員に当たるかを確かめませんか
ご家族を役員にしている会社では、その方が使用人兼務役員に当たるかどうかで賞与の扱いが変わります。判定に必要なのは肩書きだけではなく、株主名簿・組織図・賃金規程です。支給してしまってからでは、その事業年度の処理を変えることはできません。登記簿と株主名簿、直近の申告書、賃金規程をお手元にご用意いただければ、3つの関門のどこに当たるのかを整理してお伝えします。代表税理士が直接ご対応します。
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