法人税・節税

減価償却資産の取得価額に含めなくてよい付随費用
買った期の損金にできる5つ

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 取得価額は原則、購入代価+直接要した費用の合計です(法人税法施行令第54条)
  • 不動産取得税や登録免許税など5つは、取得価額に含めないことができます(国税庁タックスアンサーNo.5400)
  • 含めなければ初年度の損金は増えますが、翌期以降の償却費がその分減るだけで合計は変わりません
  • 償却が始まるのは「事業の用に供した日」から。搬入しただけでは足りません(No.5400-2)

まず結論:買った期の損金にできる付随費用があります

建物や社用車、機械を買うと、購入代金以外にも不動産取得税や登録免許税がかかります。これらの付随費用のうち一定のものは、取得価額に算入しないことができます。国税庁タックスアンサーNo.5400「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」が、その一覧を示しています。

大事なのは、これが「含めなければならない」ではなく「含めないことができる」という選択だという点です。選んでも、生涯を通じて損金になる合計額は変わりません。変わるのは、どの事業年度の損金になるかというタイミングだけです。

資産を買ったときの付随費用は、どこまでを取得価額に含めるかを最初に決めます
資産を買ったときの付随費用は、どこまでを取得価額に含めるかを最初に決めます

原則を押さえる ―― 取得価額は「購入の代価」+「直接要した費用」

減価償却資産の取得価額は、法人税法施行令第54条が定めています。

第五十四条 減価償却資産の(略)取得価額は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
 イ 当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(略)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
 ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額(法人税法施行令第54条)

「購入代金だけが取得価額」ではありません。イの購入の代価と、ロの事業の用に供するために直接要した費用の合計が、まずは広く取得価額に入ると押さえてください。

取得価額に算入しないことができる5つ

タックスアンサーNo.5400は、減価償却資産の取得に関連して支出した費用であっても取得価額に算入しないことができるものとして、次の5つを挙げています。

  • 不動産取得税または自動車取得税、新増設に係る事業所税、登録免許税その他登記または登録のために要する費用。実務で最も出番が多いのがここです
  • 建設計画の変更で不要になった調査・測量・設計・基礎工事等の費用
  • 契約を解除して他の資産を取得することにした場合の違約金
  • 取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)
  • 割賦購入で区分されている利息・費用相当額

7-3-1の2 固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、これを当該固定資産の取得価額に算入しないことができるものとする。
(注) 借入金の利子の額を建設中の固定資産に係る建設仮勘定に含めたときは、当該利子の額は固定資産の取得価額に算入されたことになる。(法人税基本通達7-3-1の2)

7-3-2 割賦販売契約(略)によって購入した固定資産の取得価額には、契約において購入代価と割賦期間分の利息及び売手側の代金回収のための費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合のその利息及び費用相当額を含めないことができる。(法人税基本通達7-3-2)

ポイント

使用開始前の借入金の利子は取得価額に算入しないことができますが、建設仮勘定に含めると算入したことになります。割賦の利息・費用相当額も契約で明らかに区分されていれば含めないことができます。1から3までは法人税基本通達7-3-3の2が例示しているものです。

数字で見る ―― 含めるか含めないかで、初年度の損金はどう変わるか

一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は資産の種類や耐用年数、事業の用に供した日によって変わります。

  • 建物の購入の代価 30,000,000円
  • 不動産取得税540,000円・登録免許税420,000円・登記のための司法書士報酬120,000円(合計1,080,000円)
  • 期首に事業の用に供し、取得価額を20年で均等に配分するという単純化した前提を置く
項目①全部を取得価額に含めた場合②含めないことができるものを含めなかった場合
取得価額31,080,000円30,000,000円
初年度の減価償却費1,554,000円1,500,000円
付随費用の損金算入1,080,000円
初年度の損金1,554,000円2,580,000円
2年目以降の毎期の償却費1,554,000円1,500,000円
20年間の損金の合計31,080,000円31,080,000円

計算例

初年度の損金は1,026,000円増えますが、2年目以降はその分だけ償却費が減ります

2年目以降は毎期54,000円ずつ償却費が少なくなる 54,000円 × 20年 = 1,080,000円(初年度に前倒しした金額と一致)

つまり節税ではなく前倒しです。損金の合計額は31,080,000円で変わりません。それでもその期の利益と翌期以降の見通しによって、望ましい形は変わります。

どの期の損金にするかは、利益の見通しを踏まえて決める設計です
どの期の損金にするかは、利益の見通しを踏まえて決める設計です

逆に、取得価額に算入しなければならないもの

「付随費用は損金にできる」と覚えてしまうと危険です。取得価額に算入すると定められているものもあります。3つ挙げます。

実質的に資産の代価を構成する寄附金・負担金

7-3-3 法人が都道府県又は市町村からその工場誘致等により土地その他の固定資産を取得し、購入の代価のほかに、(略)寄附金又は負担金の名義で金銭を支出した場合においても、その支出した金額が実質的にみてその資産の代価を構成すべきものと認められるときは、その支出した金額はその資産の取得価額に算入する。(法人税基本通達7-3-3)

「寄附金又は負担金の名義で」という一句がポイントで、勘定科目の名前だけでは結論は決まりません。

取得に際して支払う立退料

7-3-5 法人が土地、建物等の取得に際し、当該土地、建物等の使用者等に支払う立退料その他立退きのために要した金額は、当該土地、建物等の取得価額に算入する。(法人税基本通達7-3-5)

こちらは「算入する」と言い切っています。

当初から支出が予定されている住民対策費・公害補償費

7-3-7 新工場の落成、操業開始等に伴って支出する記念費用等のように減価償却資産の取得後に生ずる付随費用の額は、当該減価償却資産の取得価額に算入しないことができるものとするが、工場、ビル、マンション等の建設に伴って支出する住民対策費、公害補償費等の費用(略)の額で当初からその支出が予定されているもの(略)については、たとえその支出が建設後に行われるものであっても、当該減価償却資産の取得価額に算入する。(法人税基本通達7-3-7)

「支払った時期が後だから損金」とは限りません。なお、個人が自宅などを売るときの「取得費」とは考え方が違います(贈与や相続でもらった不動産を売るときの登記費用・不動産取得税の取扱い)。混同しないでください。

償却が始まるのは「事業の用に供した日」から

減価償却の対象は、事業の用に供している資産です。国税庁タックスアンサーNo.5400-2「事業の用に供した日」が説明しています。

「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいますので、例えば、機械等を購入した場合は、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したとはいえず、その機械を据え付け、試運転を完了し、製品等の生産を開始した日が事業の用に供した日となります。(国税庁タックスアンサーNo.5400-2)

搬入しただけでは足りません。決算月に慌てて機械を買っても、据付けが翌期にずれ込めば、その期の償却費は出ません。もっとも、賃貸マンションは建物が完成し入居募集を始めていれば、現実の入居がなくても事業の用に供したものと考えられます。

なお、期の途中で事業の用に供した場合、償却費は月割りになります(社用車を中古で買うと何年で経費になるか)。また、金額が小さい資産には別の取扱いがあります(少額減価償却資産の特例と一括償却資産の使い分け)。

据付けと試運転が終わって初めて、事業の用に供したことになります
据付けと試運転が終わって初めて、事業の用に供したことになります

土地とともに買った建物を取り壊すとき

土地を使いたくて建物付きの土地を買い、建物を取り壊した。この取壊費用と建物の帳簿価額は損金になるのか。国税庁タックスアンサーNo.5401が答えを示しています。

法人が建物の敷地を建物とともに取得した場合(略)で、その取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手するなど、初めからその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかな場合には、その建物の取壊しのときの帳簿価額と取壊費用の合計額(略)は、その土地の取得価額に算入することとされています。(国税庁タックスアンサーNo.5401)

この場合は土地の取得価額です。土地は減価償却しないため損金にもなりません。ただし続きがあります。

しかし、初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由が生じたことにより、その使用をあきらめなければならないような場合には、(略)その建物の帳簿価額と取壊費用の合計額は、土地の取得価額に含めないで、取り壊したときの損金の額に算入することができます。(国税庁タックスアンサーNo.5401)

つまり「1年以内に壊したから自動的に土地の取得価額」ではありません。当初の目的が何だったか、その後にやむを得ない理由が生じたのかを見ます(法人税基本通達7-3-6)。買った時点で、意図が分かる資料を残しておくことをおすすめします。

資産を買ったときに、決めておきたいこと

ここまでを実務の順番に並べ直します。

  • 支払った金額を費目ごとに分ける。購入の代価、引取運賃などの購入のための費用、据付けや試運転の費用、不動産取得税、登録免許税と登記のための費用、借入金の利子
  • 算入しないことができるものを拾い出す。入れ忘れを防ぐという意味で、この一覧を毎回当てはめることが有効です
  • 算入しなければならないものを取りこぼさない。実質的に代価を構成する寄附金・負担金、立退料、当初から予定されている住民対策費・公害補償費です
  • 割賦なら、契約書で購入代価と利息相当額が区分されているか、建設仮勘定に借入金の利子を含めていないかを確認する
  • 事業の用に供した日を記録する。据付け・試運転・生産開始、賃貸なら入居募集の開始です

どれを取得価額に入れ、どれを入れないかは、その期の利益と翌期以降の見通しを見て決める設計です。個社ごとに答えが違います。ご購入の予定が立った段階でご相談いただければ、契約書の書き方から記録の残し方までご案内できます。

減価償却資産の取得価額について小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 建物を買ったときの不動産取得税と登録免許税は、その期の経費にできますか?

取得価額に算入しないことができます。国税庁タックスアンサーNo.5400(法人税基本通達7-3-3の2も同内容を例示)が、不動産取得税・自動車取得税、登録免許税その他登記・登録のための費用などを挙げています。ただし「含めないことができる」という選択で、含めればその分翌期以降の減価償却費が減り、生涯の損金合計額は変わりません。

Q2. 資産を買うために借りたお金の利息は、取得価額に含めなければいけませんか?

含めないことができます。法人税基本通達7-3-1の2は、固定資産の使用開始前の期間に係る借入金の利子も取得価額に算入しないことができるとしています。ただし建設中の固定資産の建設仮勘定に利子を含めると取得価額に算入したことになるため、経理処理の入口でご確認ください。

Q3. 決算月に機械を買えば、その期に減価償却費を計上できますか?

購入しただけでは計上できません。国税庁タックスアンサーNo.5400-2は、機械を工場内に搬入しただけでは事業の用に供したといえず、据え付け・試運転を終え生産を開始した日が「事業の用に供した日」になるとしています。決算前の設備投資は据付けや稼働の日程まで含めてご相談ください。

Q4. 土地を使うために建物付きの土地を買い、建物を取り壊しました。取壊費用は損金になりますか?

当初の目的によって変わります。国税庁タックスアンサーNo.5401は、取得後おおむね1年以内に取壊しに着手するなど初めから土地利用が目的だったことが明らかな場合は、取壊しの帳簿価額と取壊費用の合計額を土地の取得価額に算入するとしています。一方、建物を事業に使う目的で取得した後にやむを得ず使用をあきらめた場合は、取り壊したときの損金の額に算入することができます。当初の目的が分かる資料を購入時に残しておくことが判断の支えになります。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、法人が購入した減価償却資産の取得価額の原則、取得価額に算入しないことができる付随費用、取得価額に算入しなければならない費用、事業の用に供した日の考え方、および土地とともに取得した建物を取り壊した場合の取扱いという基本的な枠組みを扱っています。修繕費と資本的支出の判定基準、少額減価償却資産の特例や一括償却資産の要件、中古資産の耐用年数の計算、特別償却や税額控除、圧縮記帳、消費税の経理方法、償却資産税の取扱い、資産の種類ごとの耐用年数や償却率、および個人の所得税における取得費の取扱いについては、本記事では扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は資産の種類・耐用年数・事業の用に供した日によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

資産のご購入が決まった段階で、一度ご相談ください

建物や機械、社用車を買ったときの付随費用は、取得価額に含めるか含めないかを選べるものがあります。ただし、含めなければ買った期の損金は増える一方で、翌期以降の減価償却費は減ります。合計は変わりませんので、どの期に損金にしたいかという設計の問題です。さらに、立退料や当初から予定されている住民対策費のように、取得価額に算入しなければならないものもあります。契約書の書き方ひとつで結論が変わる場面もあります。ご購入の予定、資金の借入れの有無、決算期との関係をお聞かせいただければ、費目の分け方から残しておくべき記録まで整理してお伝えします。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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