この記事のポイント
- 取得価額10万円未満なら、その年に全額を必要経費にできます
- 10万円以上20万円未満なら「一括償却資産」として3年間で均等に経費にできます
- 青色申告の中小事業者なら10万円以上30万円未満の資産を年間300万円までその年の経費にできます
- 令和8年度税制改正の大綱で、対象が40万円未満に引き上げられる予定です
金額で処理が3段階に分かれます
買った備品の値段が10万円・20万円・30万円のどの区分に入るかで、経費にできるスピードが変わります。
まず「減価償却」とは何か
事業用の資産は、買った年に全額を経費にはできません。使える期間(法定耐用年数)に分けて少しずつ経費にするのが原則です(国税庁タックスアンサーNo.2100)。
そこで、金額の小さい資産には次の3つの簡単な取扱いが用意されています。
| 取得価額 | 使える方法 | 必要経費にできるスピード | 青色申告が必要か |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 (または使用可能期間1年未満) | 全額必要経費 | その年に全額 | 不要 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産 | 3年間で均等(毎年3分の1) | 不要 |
| 10万円以上30万円未満 | 少額減価償却資産の特例 | その年に全額(年間300万円まで) | 必要 |
| 上記以外 | 通常の減価償却 | 耐用年数にわたって分割 | 不要 |
10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産と少額減価償却資産の特例のどちらも選べます(青色申告の場合)。ここが判断の分かれ目です。
少額減価償却資産の特例の要件
国税庁タックスアンサーNo.2100によれば、対象は青色申告を行う中小事業者で、取得価額10万円以上30万円未満の資産です。
- 対象者:青色申告を行っている中小事業者
- 対象資産:取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産
- 取得時期:平成18年4月1日から令和8年3月31日までに取得したもの
- 限度額:その年に取得した合計額のうち300万円に達するまで
青色申告承認申請書の提出期限は原則その年の3月15日、その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内です(国税庁タックスアンサーNo.2070)。
ポイント
令和8年度税制改正の大綱では40万円未満に
対象資産の取得価額を40万円未満(現行30万円未満)に引き上げ、適用期限を3年延長すると記載されています(所得税も同様)。適用時期は大綱に明記がないため、購入前に最新の公表資料をご確認ください。
数字で見る:24万円のパソコンを10月に買った場合
次の前提で3つの方法を比較します。
- 取得価額:240,000円(税込経理・免税事業者を前提とします)
- 資産の種類:パーソナルコンピュータ(サーバー用を除く)=耐用年数4年
- 定額法の償却率:0.250(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第八)
- 10月から事業に使い始めた(その年の使用月数は3か月)
| 方法 | 計算 | 初年度の必要経費 | 2年目以降 |
|---|---|---|---|
| 通常の減価償却 | 240,000円×0.250×3か月/12か月 | 15,000円 | 4年目まで年60,000円ずつ |
| 一括償却資産 ※20万円未満のみ選択可 | 240,000円÷3 | (この事例では選べません) | ― |
| 少額減価償却資産の特例 | 全額 | 240,000円 | なし |
24万円は一括償却資産(20万円未満)の対象外のため、通常の減価償却か特例のどちらかです。初年度の必要経費の差は225,000円。所得税20%・住民税10%なら初年度の税負担で67,500円の差になります。
18万円のパソコンだった場合(一括償却資産との比較)
取得価額が180,000円であれば、3つとも選べます。
| 方法 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 |
|---|---|---|---|---|
| 通常の減価償却(4年) | 11,250円 | 45,000円 | 45,000円 | 45,000円 |
| 一括償却資産(3年均等) | 60,000円 | 60,000円 | 60,000円 | ― |
| 少額減価償却資産の特例 | 180,000円 | ― | ― | ― |
合計で経費になる金額は、どの方法でも同じです。違うのはどの年に経費が乗るかだけです。
「全額経費にする」が正解とは限りません
所得税は所得が多いほど税率が上がる累進課税です。所得が低い年に経費を積んでも、低い税率の部分を減らすだけです。
開業初年度に備品をすべて特例で経費にすると、翌年以降に所得が伸びたとき使える経費が残っていない状態になります。一括償却資産や通常の減価償却は、経費を将来に残す方法でもあります。
注意
判断の目安
・今年の所得が例年より大きく来年は落ち着く見込み → 特例で今年に寄せる
・今年は赤字または所得が小さく来年以降に伸びる見込み → 一括償却資産や通常償却で後年に残す
・毎年の所得が安定している → 事務負担の軽い方法(特例)でよい
「経費にできるものは全部その年に落とす」という判断は、いつでも正しいわけではありません。
手続きと帳簿上の注意点
確定申告書に取得価額の明細書を添付する等の手続きが必要です。青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄への記入でも構いません。
補足
金額の判定は、ふつう1単位として取引されるまとまりごとに行います。所得税の取扱いと、市区町村が課す償却資産税(固定資産税)の取扱いは別です。資産のある市区町村にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 白色申告でも少額減価償却資産の特例は使えますか?
使えません。対象は青色申告を行っている中小事業者です(国税庁タックスアンサーNo.2100)。白色申告で使えるのは10万円未満の全額経費算入と、10万円以上20万円未満の一括償却資産です。
Q2. 取得価額の10万円・30万円は、消費税込みで判定しますか?
経理処理によります。税抜経理なら税抜金額、税込経理なら税込金額で判定します。免税事業者は税込経理のため、税込金額で判定します。
Q3. 30万円未満なら何台でも全額経費にできますか?
年間の合計額に上限があります。その年に買った少額減価償却資産の合計のうち300万円に達するまでです(国税庁タックスアンサーNo.2100)。超える部分は通常の減価償却や一括償却資産で処理します。
Q4. 赤字の年でも特例を使って一気に経費にしたほうが得ですか?
そうとは限りません。所得が少ない年に経費を積んでも税率の低い部分を減らすだけです。翌年以降に所得が増える見込みなら、一括償却資産や通常の減価償却で後の年に残すほうが有利なこともあります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。令和8年度税制改正の大綱に基づく改正内容は、施行時期や適用対象の詳細が確定していない部分があるため、実際の適用にあたっては国税庁の最新の公表資料をご確認ください。本記事の設例における税負担の軽減額は、所得税20%・住民税10%と仮定した説明のための試算です。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2106「定額法と定率法による減価償却」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2106.htm
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(No.2100 添付資料)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第八(定額法及び定率法の償却率表)e-Gov法令検索
- 国税庁タックスアンサー No.2070「青色申告制度」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
この記事のお悩みは、小松公認会計士・税理士事務所にご相談ください
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。相談だけで終えていただいて構いません。
どの処理を選ぶかは、その年だけの問題ではありません
少額減価償却資産の特例で一気に経費化するか、3年・4年に分けるかは、その年の所得だけでなく翌年以降の所得の見通しによって最適解が変わります。開業間もない方、所得が年によって大きく振れる方こそご相談ください。代表税理士が直接ご対応します。
無料相談を申し込む 確定申告の丸投げサポートを見る 約60秒で料金を自動見積り