この記事のポイント
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出していれば確定申告は原則不要です
- 出していないと支給額に20.42パーセントが源泉徴収されます(国税庁タックスアンサーNo.2732)
- 勤続28年・退職金2,000万円の例で、差額3,856,828円を確定申告で取り戻せます
- 取り戻す申告(還付申告)は翌年1月1日から5年間できます
まず結論:退職金の税金は「もらう時点」で終わるのが原則です
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出していれば、退職金の税金は天引き(源泉徴収)で精算が終わり、原則として確定申告はいりません。国税庁タックスアンサーNo.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」も同じ内容を案内しています。
住民税も同じく退職金の支払時に天引きされます。問題は、この申告書を出していなかった場合です。
退職所得の計算方法
計算式
(収入金額(源泉徴収される前の金額) − 退職所得控除額)× 1/2 = 退職所得の金額
退職金の税金が軽いのは、控除額が大きいうえに控除後の金額を半分にしてから税率を掛けるためです。「特定役員退職手当等」に当たる場合は半分にする計算を使えません。
退職所得控除額
| 勤続年数(Aとします) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A − 20年) |
障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、上の計算に100万円を足します。
計算例
例:勤続28年・退職金2,000万円
退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 ×(28年 − 20年)= 1,360万円 退職所得の金額 =(2,000万円 − 1,360万円)× 1/2 = 320万円課税退職所得金額320万円を所得税の速算表(国税庁タックスアンサーNo.2260)に当てはめます。1,950,000円から3,299,000円までの区分は、税率10パーセント・控除額97,500円です。
所得税 = 3,200,000円 × 10% − 97,500円 = 222,500円
所得税+復興特別所得税 = 222,500円 × 1.021 = 227,172円(1円未満切捨て)
2,000万円の退職金に対して、所得税・復興特別所得税は約22万7千円。これが正しい税額です。
申告書を出し忘れると20.42パーセントが天引きされます
申告書を出していないと、国税庁タックスアンサーNo.2732によれば、退職金の支給額そのものに20.42パーセントを掛けた所得税・復興特別所得税が天引きされます。
| 項目 | 申告書を提出した場合 | 提出しなかった場合 |
|---|---|---|
| 計算の基礎 | 退職所得控除1,360万円を控除し、2分の1にした後の320万円 | 支給額2,000万円そのもの |
| 源泉徴収税額 | 227,172円 | 4,084,000円 |
| 差額 | 3,856,828円 | |
20,000,000円 × 20.42% = 4,084,000円です。退職所得控除も半分にする計算も反映されないため、これだけの差が生まれます。
この場合、本人が確定申告で精算します。確定申告をしなければ差額は戻ってきません。「退職金にはこれくらい税金がかかるものだ」と思い込むと、385万円を取り戻す機会をそのまま逃してしまいます。
取り戻すための確定申告
用意するもの
- 退職所得の源泉徴収票(退職金の支払者から交付)
- 給与所得の源泉徴収票(その年に給与があった場合)
- 所得控除に関する資料(生命保険料控除証明書等)
いつまでにできるか ― 5年間さかのぼれます
確定申告の期限は翌年3月15日ですが、取り戻すための申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。例えば令和3年に退職された方なら令和4年1月1日から5年間、つまり令和8年12月31日まで提出できます。
退職した年は確定申告をしたほうが得なことが多い
年の途中で退職し再就職しなかった場合、年末調整を受けておらず、生命保険料控除等が反映されないまま年が終わります。
退職金の部分に精算の余地がなくても、給与の部分だけで還付になることは珍しくありません。
転職・複数回の退職があるときは要注意
同じ年に複数、または過去にも退職金を受け取った場合、退職所得控除額の計算が調整されることがあります。
注意
勤務先は他社の退職金受給を自動では知りません。申告書に書いていなければ計算に反映されず、天引き税額が本来よりずれることがあります。
企業型確定拠出年金の老齢一時金や小規模企業共済の一時金も、受け取り方次第で退職所得として扱われます。心当たりがあれば確定申告での精算が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「退職所得の受給に関する申告書」はどこに出すのですか?
提出先は勤務先(退職金の支払者)です。税務署ではありません。出さないまま受け取ると、支給額の20.42パーセントが天引きされます。
Q2. 申告書を提出していれば、確定申告をしてはいけないのですか?
そんなことはありません。医療費控除やふるさと納税で還付を受けられる場合は申告できます。年途中で退職し再就職しなかった方は特に有利です。
Q3. 何年前の退職金まで取り戻せますか?
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。退職所得の源泉徴収票が手元にあるか確かめてみてください。
Q4. 退職金にも住民税はかかりますか?
かかります。退職金の住民税はほかの所得と分けて計算され、支払時に天引きされます(標準税率は道府県民税4パーセント・市町村民税6パーセントの合計10パーセント)。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。退職所得控除額は勤続年数や過去の退職手当等の受給状況によって調整されることがあり、記載した計算例も端数処理を一部省略した簡略なものです。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2732「退職手当等に対する源泉徴収」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 総務省「個人住民税」(所得割の標準税率)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
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退職所得の源泉徴収票を拝見すれば、正しい税額との差額があるかどうかはすぐに判断できます。5年以内であれば還付申告が可能です。退職した年の給与の精算も併せて行いますので、退職金と給与の源泉徴収票をお持ちのうえ、まずは無料相談をご利用ください。
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