この記事のポイント
- 使用人の給与は原則として全額が損金です
- ただし役員の親族などは、不相当に高額な部分が損金になりません
- 判定は職務の内容・会社の収益・他の使用人・同業他社の4つで行います
- 金額の基準は法令にありません。説明できる根拠を残すことが要です
まず結論:使用人の給与は全額が経費。ただし家族は別枠です
「妻を経理として雇っています。役員ではありません。給与はいくらまで払えますか」。よくいただくご質問です。
使用人に払う給与は、原則として全額が損金になります。役員給与のような定期同額・事前確定といった縛りもありません。
ただし例外が1つあります。法人税法36条です。
内国法人がその役員と政令で定める特殊の関係のある使用人に対して支給する給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。(法人税法36条)
つまり、役員の家族など特定の使用人だけが、金額の相当性を問われます。

「特殊関係使用人」に当たるのは4種類です
範囲は法人税法施行令72条が定めています。
| 区分 | 該当する人 |
|---|---|
| ① | 役員の親族 |
| ② | 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者 |
| ③ | ①②以外で、役員から生計の支援を受けているもの |
| ④ | ②③に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族 |
③の「生計の支援を受けているもの」について、国税庁は、その役員から給付を受ける金銭その他の財産、またはその財産の運用によって生ずる収入を生活費に充てている者をいう、としています(法人税基本通達9-2-40)。
補足
④の「生計を一にする」の判定は、法人税基本通達9-2-41により、同通達1-3-4を準用します。同居しているかどうかだけでは決まりません。
「不相当に高額」は何で判断されるのか
法令に「月○万円まで」という金額の基準はありません。判定の物差しは、法人税法施行令72条の2が定めています。
毎月の給与・賞与の場合
- その使用人の職務の内容
- その会社の収益の状況
- 他の使用人に対する給与の支給の状況
- 同種の事業を営み、事業規模が類似する法人の使用人に対する給与の支給の状況
これらに照らして、職務に対する対価として相当と認められる金額を超える部分が損金不算入です。
退職金の場合は物差しが変わります
退職給与については、業務に従事した期間、退職の事情、同種・類似規模の法人の退職給与の支給の状況で判定します。
注意
法人税基本通達9-2-42は、退職した特殊関係使用人が厚生年金基金・確定給付企業年金・企業型確定拠出年金・中小企業退職金共済などからの給付も受ける場合、その給付額も勘案して不相当に高額かを判定するとしています。会社が直接払う退職金の額だけを見ればよい、というわけではありません。

その家族、そもそも「使用人」ですか
ここまでは使用人であることを前提にしてきました。ところが実務では、家族が税務上は役員(みなし役員)に当たっていた、という入口の取り違えが起きます。
みなし役員に当たると、法人税法36条ではなく役員給与のルールが働きます。賞与は事前確定届出給与の届出がなければ損金になりません。持株割合などの要件はみなし役員の3つの持株要件で整理しています。
ポイント
順番は「①この人は使用人か、みなし役員か」→「②使用人なら、特殊関係使用人か」→「③特殊関係使用人なら、金額は相当か」です。①を飛ばすと、②③の検討がまるごと無駄になります。

説明できる根拠を、支給を始める前に残す
金額の基準がない以上、あとから説明できるかどうかがすべてです。次のものを整えてください。
- 職務の内容を書き出す(担当業務・勤務日数・勤務時間・責任の範囲)
- 他の使用人との比較を残す(同じ職務の従業員がいれば、その給与水準との関係)
- 勤務の実態を示すもの(タイムカード、業務日報、社内で使うメールやチャットの記録)
- 給与規程に沿って支給し、他の従業員と同じ手続で支払う
あわせて、経済的な利益にも目を配ってください。法人税法36条の「給与」には債務の免除による利益その他の経済的な利益が含まれます。会社が家族名義の支出を負担している場合、その分も金額に足して判定されます。
とくに問われやすいのは、勤務の実態が薄いのに給与だけが高いケースです。逆に、実際に働いていて記録も残っているなら、金額が高めでも説明はできます。
なお、個人事業主が家族に払う給与は、この記事とは別の制度(青色事業専従者給与)です。家族に払う給与は経費になるかをご覧ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 妻や子に払う給与は、いくらまでなら安全ですか?
法令に金額の基準はありません。職務の内容、会社の収益、他の使用人への支給状況、同種・類似規模の法人の状況で判定されます(法人税法施行令72条の2)。
Q2. 役員の親族でなければ、この規定の対象外ですか?
親族以外でも、役員から生計の支援を受けている人などは対象になります(法人税法施行令72条3号・4号)。同居しているかどうかだけでは決まりません。
Q3. 家族に退職金を払うときも同じ判定ですか?
物差しが変わります。業務に従事した期間、退職の事情、同種・類似規模の法人の支給状況で判定します。企業年金や中退共からの給付も勘案されます。
Q4. 家族を役員登記していなければ、使用人として扱ってよいですか?
登記の有無では決まりません。経営に従事し持株要件を満たすと、税務上は役員(みなし役員)になり、役員給与のルールが適用されます。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法36条、法人税法施行令72条・72条の2、法人税基本通達9-2-40〜9-2-42の範囲を扱っています。役員給与(定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与)の要件、みなし役員の判定の詳細、個人事業主の青色事業専従者給与、源泉徴収や社会保険の手続、使用人兼務役員の賞与の取扱いは扱っていません。特定の給与額が不相当に高額に当たるかどうかは個別の事案ごとの判断であり、本記事はその当てはめを行うものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 法人税法(第36条 過大な使用人給与の損金不算入)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(第72条 特殊関係使用人の範囲、第72条の2 過大な使用人給与の額)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
- 国税庁 法人税基本通達 第8款 使用人給与(9-2-40〜9-2-44)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_08.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
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