この記事のポイント
- 通勤手当は限度額まで所得税がかかりません(所得税法9条1項5号)
- 電車・バスは「最も経済的かつ合理的な経路」で月15万円まで
- マイカーは片道の距離で決まり、片道2km未満は全額課税です
- 所得税は非課税でも、社会保険料の計算には含まれます
まず結論:限度額までは、会社の経費で本人に税金がかかりません
通勤手当は、限度額までなら本人に所得税がかからず、会社にとっては人件費として経費になります。
根拠は所得税法9条1項5号です。非課税になるのは「通常の給与に加算して受ける通勤手当」のうち、政令で定める部分に限られます。
注意
「通常の給与に加算して」と書かれています。基本給に含めて一律に支給している場合は、この規定にあてはまりません。給与明細で通勤手当として区分し、支給額の根拠を残してください。
限度額は、通勤の方法によって3つに分かれます。順に見ていきます。

電車・バス通勤 ― 月15万円が上限です
非課税になるのは、最も経済的かつ合理的な経路および方法による定期券などの金額です。上限は1か月15万円です(所得税法施行令20条の2第1号・第4号)。
新幹線は非課税、グリーン料金は対象外
国税庁は、新幹線や特急列車の運賃等について次のように説明しています。
新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合には非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため含まれません。(国税庁タックスアンサーNo.2582)
遠方から新幹線で通う社員がいる場合、運賃と特急料金は非課税でも、グリーン料金の部分は給与になります。
マイカー・自転車通勤 ― 片道の距離で金額が決まります
実際にかかったガソリン代ではなく、片道の通勤距離で限度額が決まります。片道2km未満の場合、通勤手当は全額が課税されます。
| 片道の通勤距離 | 1か月あたりの限度額 |
|---|---|
| 2km未満 | (全額課税) |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,300円 |
| 15km以上25km未満 | 13,500円 |
| 25km以上35km未満 | 19,700円 |
| 35km以上45km未満 | 25,900円 |
| 45km以上55km未満 | 32,300円 |
| 55km以上65km未満 | 38,700円 |
| 65km以上75km未満 | 45,700円 |
| 75km以上85km未満 | 52,700円 |
| 85km以上95km未満 | 59,600円 |
| 95km以上 | 66,400円 |
ポイント
見落とされやすいのが駐車場代です。一定の要件を満たす駐車場等の料金を負担している場合、上の金額に月5,000円を限度として上乗せできます(所得税法施行令20条の2第3号)。

電車とマイカーを併用しているとき
駅まで車で行き、そこから電車に乗る場合は、両方を合計します。
計算例
例:自宅から駅まで片道12km(車)、そこから電車の定期代が月18,000円
車の部分(10km以上15km未満)=7,300円 電車の部分=18,000円 非課税の限度額=7,300円+18,000円=25,300円合計した金額が1か月15万円を超えるときは、15万円が限度です(所得税法施行令20条の2第5号・第6号)。
限度額を超えたとき、社会保険はどうなるか
限度額を超えて支給した部分は、給与として源泉徴収の対象になります。
国税庁は「超える部分の金額は、通勤手当や通勤定期券などを支給した月の給与の額に上乗せして所得税および復興特別所得税の源泉徴収を行います」としています。年末調整でまとめて処理するのではなく、支給した月の給与で処理します。
社会保険料の計算では、非課税でも報酬に含まれます
注意
日本年金機構は、通勤手当は標準報酬月額の対象となる報酬に含まれるとしています。所得税が非課税でも、健康保険料・厚生年金保険料の計算からは外れません。所得税と社会保険では扱いが違うという点が、実務でいちばん誤解されます。
なお、非課税の限度額はパートやアルバイトについても月を単位にして計算します(国税庁タックスアンサーNo.2582)。

会社として整えておきたいこと
通勤手当は毎月支給するものなので、誤りがあると何年分もまとめて指摘されます。次の3つを整えてください。
- 通勤経路の届出書を全員から取り、通勤方法・経路・片道距離を記録する
- 賃金規程(通勤手当規程)で支給基準を定め、給与明細で通勤手当を区分して表示する
- 引っ越し・転勤・在宅勤務への変更があったら、その月から支給額を見直す
補足
在宅勤務が中心になった社員に定期代を払い続けているケースは、実務でよく見かけます。実際に通っていない期間の定期代は、非課税の通勤手当とはいえません。勤務形態を変えたときは、通勤手当もあわせて見直してください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 通勤手当を基本給に含めて一律に支給しています。非課税になりますか?
所得税法9条1項5号は「通常の給与に加算して受ける通勤手当」を対象としています。給与に含めて一律支給する形は、この文言にあてはまりません。
Q2. 新幹線通勤の費用は非課税になりますか?
国税庁は、その経路・方法が最も経済的かつ合理的と認められる場合の運賃等は非課税に含まれるとしています。ただしグリーン料金は含まれません。
Q3. 片道1.5kmを車で通う社員に月3,000円を払っています。
片道2km未満のマイカー通勤は、通勤手当の全額が課税されます。金額の大小にかかわらず、給与として源泉徴収の対象になります。
Q4. 通勤手当は社会保険料の計算から外れますか?
外れません。日本年金機構は通勤手当を標準報酬月額の対象となる報酬に含めるとしています。所得税と社会保険で扱いが異なります。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法9条1項5号、所得税法施行令20条の2、国税庁タックスアンサーNo.2582・No.2585の範囲を扱っています。通勤距離の測定方法、複数事業所に勤務する場合の取扱い、在宅勤務手当や出張旅費の取扱い、労働保険・社会保険の具体的な算定事務、転勤に伴う転居費用の取扱いは扱っていません。個別の事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2585「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm
- e-Gov法令検索 所得税法(第9条 非課税所得)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(第20条の2 非課税とされる通勤手当)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 日本年金機構「標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか。」https://www.nenkin.go.jp/section/faq/kounen/hyoujunhoushu/20140602-03.html
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