この記事のポイント
- 調査の前には「事前通知」があります(国税通則法74条の9)。11項目が知らされます
- 出張や繁忙期など理由があれば日程変更を申し入れられます
- 隠蔽仮装と認定されると重加算税35%(無申告なら40%)という重いペナルティです
- 通知が来たら早めに税理士へ相談し、帳簿・領収書を整理します
まず結論:慌てなくて大丈夫。調査は「事前通知」から始まります
税務調査の多くは、ある日突然始まるわけではありません。始まる前に税務署から「事前通知」という連絡があります(国税通則法74条の9)。平成25年施行の改正国税通則法で、法律上の義務になりました。
通知は原則、税務署から電話で行われます。税務代理権限証書(代理を頼んでいる証明の書類)を出していれば税理士に連絡が入ります(同法74条の9第5項)。
事前通知の11項目と通知方法
国税通則法74条の9第1項は、次の11項目を通知事項と定めています。
- 調査開始日時
- 調査開始場所
- 調査の目的
- 調査対象税目
- 調査対象期間
- 調査対象帳簿書類その他の物件
- 調査担当職員の氏名・所属官署
- 開始日時・場所の変更を求める場合の手続き
- 非違が疑われる場合の調査範囲拡大の可能性
- 納税義務者の氏名・住所
- 税務代理人がある場合はその氏名・住所
ポイント
通知を受けたら「対象税目」「対象期間」「対象帳簿書類」を必ず確認してください。範囲を広げるには合理的な理由が必要です。当事務所では内容を整理し、調査当日に臨みます。
調査の種類(任意調査と強制調査)
| 種類 | 根拠法令 | 特徴 |
|---|---|---|
| 任意調査 | 国税通則法74条の2〜74条の6 | 事前通知あり、納税者の協力を前提とする質問検査権 |
| 強制調査(マルサ) | 国税犯則取締法(現在は国税通則法第11章) | 裁判官の許可状に基づく臨検・捜索・差押え。重大な不正の嫌疑が前提 |
| 無予告調査 | 国税通則法74条の10 | 違法行為の発見・帳簿改ざんのおそれ等の合理的な理由がある場合 |
中小企業や個人事業者の調査は、ほとんどが任意調査です。「強制調査」は悪質性が高い場合に限られます。
隠蔽仮装と認定されると重加算税35%・40%
単なる申告もれと、意図的な所得隠しではペナルティの重さがまったく違います。「隠蔽仮装(いんぺいかそう)」とは事実を隠したり偽ったりすることです。国税通則法68条1項は、隠蔽仮装があれば35%、無申告なら40%の重加算税を課すと定めています。
| 事案 | 加算税率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 過少申告(自主修正・調査前) | 0% | 通則法65条5項 |
| 過少申告(調査の事前通知後・調査前) | 5%(50万円超部分10%) | 通則法65条1項 |
| 過少申告(調査による更正) | 10%(50万円超部分15%) | 通則法65条1項・2項 |
| 隠蔽仮装による過少申告 | 35% | 通則法68条1項 |
| 隠蔽仮装による無申告 | 40% | 通則法68条2項 |
参考になる判例:隠蔽仮装の認定
最高裁平成7年4月28日判決(民集49巻4号1193頁)は、重加算税の要件を「故意に納税義務を免れる目的で仮装隠蔽し、それを原因として過少申告をしたこと」としました。記帳ミスや解釈の違いでは重加算税はかかりません。二重帳簿・架空仕入・売上除外は典型的な隠蔽仮装です。
注意
「社長が税理士の知らないところで二重帳簿を作っていた」場合でも、認定されれば会社に重加算税がかかります。経営者個人と会社のお金の境界、家事費の混入、現金売上の管理は重点的に確認されます。
事前通知から調査終了までの流れ(手順7ステップ)
- 事前通知の受領(電話)― 11項目を確認、必要なら日程変更を申入れ
- 税理士への即時連絡 ― 代理権限証書の確認と方針協議
- 事前準備 ― 対象期間の帳簿・証憑・契約書・通帳等を整理
- 想定問答の検討 ― 論点を税理士と整理
- 実地調査(通常2〜3日) ― 事実に基づき正確に回答。曖昧な点は「確認します」で可
- 調査結果の説明 ― 修正点の説明。見解が違えば反論します
- 修正申告 or 更正処分 ― 納得できれば修正申告、できなければ更正処分を受け不服申立てへ
よくある質問(FAQ)
Q1. 事前通知の日程は変更してもらえますか?
A. 出張や繁忙期など合理的な理由があれば可能です(国税通則法74条の9第2項)。
Q2. 税務調査は何年分が対象ですか?
A. 通常は3年分です。不正の疑いは5年分、偽りその他不正の行為は7年分さかのぼります(国税通則法70条1項・5項)。
Q3. 顧問税理士がいない場合でも調査に立ち会ってもらえますか?
A. はい、スポットでの立会いも可能です。できるだけ早くご相談ください。
免責事項
本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。税法は頻繁に改正され、また個別事案により取扱いが異なるため、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁「税務調査手続に関するFAQ」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/zeimu-chosa/
- 国税通則法74条の9(事前通知)e-Gov法令検索
- 国税通則法65条・68条・70条(過少申告加算税・重加算税・更正の期間制限)
- 最高裁平成7年4月28日判決(民集49巻4号1193頁)重加算税の成立要件
- 裁判所ウェブサイト 判例検索https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
- 国税不服審判所 公表裁決事例https://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/
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