税務調査

税務調査の事前通知が来たら|国税通則法74条の9と隠蔽仮装判例を税理士が解説

公開: 2026年5月5日 / 更新: 2026年5月5日

この記事のポイント

  • 税務調査の事前通知は国税通則法74条の9に基づき、原則として調査開始前に11項目が通知される
  • 合理的な理由があれば日程変更を申し入れることができる
  • 隠蔽仮装行為があると重加算税35%(無申告の場合40%)が課される
  • 事前通知を受けたら、可及的速やかに税理士に相談し、帳簿・証憑を整理して準備することが重要

税務調査の事前通知とは?

結論: 国税通則法74条の9に基づき、税務署が実地調査を行う前に納税者または税務代理人に対して通知する手続きです。

2013年(平成25年)施行の改正国税通則法により、それまで運用上行われていた事前通知が法律上の義務として明文化されました。これにより、納税者は調査の対象期間・税目・場所等をあらかじめ把握したうえで対応できるようになりました。

事前通知は原則として税務署から電話で行われ、税理士に税務代理権限証書を提出している場合は税理士に連絡が入ります(国税通則法74条の9第5項)。

事前通知の11項目と通知方法

国税通則法74条の9第1項は、事前通知の項目を以下の11項目と定めています。

  1. 調査開始日時
  2. 調査開始場所
  3. 調査の目的
  4. 調査対象税目
  5. 調査対象期間
  6. 調査対象帳簿書類その他の物件
  7. 調査担当職員の氏名・所属官署
  8. 調査開始日時・場所の変更を求める場合の手続き
  9. 事前通知事項以外の事項について非違が疑われる場合の調査範囲拡大の可能性
  10. 納税義務者の氏名・住所
  11. 税務代理人がある場合はその氏名・住所

実務上のポイント: 通知を受けた段階で「対象税目」「対象期間」「対象帳簿書類」を必ず確認してください。たとえば「法人税の調査」と通知されたのに当日になって消費税・源泉所得税まで踏み込まれる、といった範囲拡大には合理的な理由が必要です。当事務所では事前通知の内容を顧問先と共有し、想定される論点の事前整理を行ってから調査当日に臨みます。

調査の種類(任意調査と強制調査)

種類 根拠法令 特徴
任意調査 国税通則法74条の2〜74条の6 事前通知あり、納税者の協力を前提とする質問検査権
強制調査(マルサ) 国税犯則取締法(現在は国税通則法第11章) 裁判官の許可状に基づく臨検・捜索・差押え。脱税の嫌疑が前提
無予告調査 国税通則法74条の10 違法行為の発見・帳簿改ざんのおそれ等の合理的な理由がある場合

一般の中小企業・個人事業者が受ける税務調査の大半は任意調査です。「強制調査」は脱税額が極めて大きい場合や悪質性が高い場合に限定されています。

隠蔽仮装と認定されると重加算税35%・40%

結論: 単なる申告漏れと、隠蔽仮装による脱税では加算税の率が大きく異なります。

国税通則法68条1項は、隠蔽または仮装により納税申告書を提出していた場合に過少申告加算税に代えて35%の重加算税を、無申告の場合は40%の重加算税を課すと定めています。

事案 加算税率 根拠
過少申告(自主修正・調査前) 0% 通則法65条5項
過少申告(調査の事前通知後・調査前) 5%(50万円超部分10%) 通則法65条1項
過少申告(調査による更正) 10%(50万円超部分15%) 通則法65条1項・2項
隠蔽仮装による過少申告 35% 通則法68条1項
隠蔽仮装による無申告 40% 通則法68条2項

参考になる判例: 隠蔽仮装の認定

最高裁平成7年4月28日判決(民集49巻4号1193頁)は、納税者が「故意に納税義務を免れる目的をもって、課税要件事実を仮装隠蔽し、その仮装隠蔽行為を原因として過少申告を行ったこと」を重加算税賦課の要件と判示しました。単なる記帳ミス・解釈誤りでは重加算税は課されませんが、二重帳簿の作成・取引先との通謀による架空仕入計上・売上の意図的な除外等は典型的な隠蔽仮装行為です。

実務上の盲点: 「税理士が知らないところで社長が二重帳簿を作っていた」というケースでも、当該事実が認定されれば法人に重加算税が課されます。経営者個人と法人の境界、家事費の混入、現金売上の管理などは、税務調査で重点的に検証されるポイントです。

事前通知から調査終了までの流れ(手順7ステップ)

  1. 事前通知の受領(電話)― 11項目を確認、必要なら日程変更の申入れ
  2. 税理士への即時連絡 ― 税務代理権限証書の確認、対応方針の協議
  3. 事前準備 ― 調査対象期間の帳簿・証憑・契約書・通帳等を整理
  4. 想定問答の検討 ― 過去申告で論点となり得る項目を税理士と整理
  5. 実地調査(通常2〜3日) ― 質問への回答は事実に基づき正確に。曖昧な記憶は「確認します」と回答
  6. 調査結果の説明 ― 修正事項の提示、見解の相違は説明・反論
  7. 修正申告 or 更正処分 ― 納得できれば修正申告、納得できなければ更正処分→不服申立て

よくある質問(FAQ)

Q1. 事前通知の日程は変更してもらえますか?

A. 業務上の都合等の合理的な理由があれば、日程変更を申し入れることができます(国税通則法74条の9第2項)。ただし「会社にとって都合が悪い」だけでは変更は認められにくいので、出張・繁忙期等の具体的な事情を伝えることが大切です。

Q2. 税務調査は何年分が対象ですか?

A. 通常は3年分が原則ですが、不正の疑いがある場合等は5年分・偽りその他不正の行為があれば7年分まで遡及できます(国税通則法70条1項・5項)。

Q3. 顧問税理士がいない場合でも調査に立ち会ってもらえますか?

A. はい、調査の段階からスポットでの立会いを依頼することができます。ただし、調査直前の依頼では準備時間が限られるため、過去の申告内容と帳簿の確認に十分な時間を確保するためにも、できるだけ早くご相談ください。

免責事項

本記事は2026年5月時点の情報に基づいて作成しています。税法は頻繁に改正され、また個別事案により取扱いが異なるため、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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