この記事のポイント
- 取るべき行動は「1日でも早く提出する」の一点です
- 1か月以内に自主申告・全額納付なら無申告加算税はかかりません
- 調査を受けた後の申告は135,000円と3倍以上に膨らみます
- 期限後申告は青色申告特別控除が10万円に下がります
まず結論:「1日でも早く出す」が最も損の小さい道です
期限に間に合わないとき取るべき行動は、完璧な申告書を目指すことではありません。1日でも早く提出することです。
確定申告は翌年2月16日から3月15日までに行います。期限後に出す「期限後申告」には、無申告加算税と延滞税の上乗せがかかり、その重さは「いつ出したか」で大きく変わります。
期限後申告の上乗せは3段階で重くなります
無申告加算税
無申告加算税は、期限内に申告しなかったことへの上乗せです。割合は「いつ申告したか」で変わります(令和6年1月1日以後に法定申告期限が来るもの=令和5年分以降の区分)。
| 申告のタイミング | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に自主的に期限後申告 | 5% |
| 調査の事前通知の後、調査による決定を予知する前の期限後申告 | 50万円までの部分10%/50万円超300万円までの部分15%/300万円超の部分25% |
| 調査を受けた後の期限後申告、または税務署から決定を受けた場合 | 50万円までの部分15%/50万円超300万円までの部分20%/300万円超の部分30% |
前年・前々年も無申告加算税等を課されていれば、納める税金の10%分が追加されます。
延滞税
延滞税は納付の遅れに対する利息です。期限後申告では申告書提出日が納期限になり、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税も納めます。
延滞税の割合は年ごとに見直され、令和8年1月1日から令和8年12月31日は2か月までが年2.8%、それ以後は年9.1%です(令和4年〜7年は年2.4%・8.7%)。かかるのは本税だけです。
数字のイメージ:自主申告と調査後の差
次の前提で比べてみます。
- 令和7年分の所得税。納付すべき税額は 800,000円
- 法定申告期限・法定納期限は令和8年3月16日(令和8年3月15日が日曜日のため)
- 令和8年8月31日に期限後申告書を提出し、同日に全額を納付
| 項目 | 調査の事前通知前に自主申告 | 事前通知後(予知前) | 調査を受けた後 |
|---|---|---|---|
| 無申告加算税 | 40,000円 | 95,000円 | 135,000円 |
| 延滞税(168日・年2.8%) | 10,300円 | 10,300円 | 10,300円 |
| 本税以外の負担 合計 | 50,300円 | 105,300円 | 145,300円 |
延滞税は800,000円×2.8%×168日÷365日=10,313円(100円未満切り捨てで10,300円)。提出日と納付日が同じなので全期間2.8%の区分です。
注意
提出だけして納付を遅らせると、2か月を過ぎた後は年9.1%に跳ね上がります。
自分から申告するか、調査を受けてから申告するか。それだけで負担は50,300円と145,300円、約2.9倍の差になります。税務署から連絡が来る前に動けば避けられます。
無申告加算税がかからない場合があります
期限後申告でも、次の要件をすべて満たせば無申告加算税はかかりません。
- 法定申告期限から1か月以内に、自分から申告していること
- 期限内に申告する意思があったと認められること(全額を法定納期限までに納付し、過去5年に無申告加算税等を課されたことがないこと)
ポイント
鍵は「1か月以内」と「全額納付」です。期限を過ぎた方が最初に目指すラインはここです(延滞税は日数分かかります)。
期限に遅れて「失うもの」は、上乗せの税金だけではありません
1. 青色申告特別控除が10万円に下がります
55万円・65万円の青色申告特別控除は、貸借対照表・損益計算書を付けた申告書を期限までに提出することが条件です(還付申告も同じ)。
期限を1日過ぎただけで、控除額は10万円になります。税率が各10%の方なら、65万円と10万円の差55万円で、およそ11万円の負担増です。
2. 振替納税が使えません
振替納税(口座振替)は期限内提出分が対象で、期限後・修正申告には使えません。
3. 特例が使えなくなることがあります
譲渡所得の特例など、提出期限が条件の制度は、過ぎるとその年は使えません。「税額ゼロだから急がなくてよい」という判断は危険です。
間に合わないときの現実的な3つの選択肢
選択肢1:概算でもよいので期限内に提出する
分かる範囲で期限内に提出すれば、青色申告特別控除も振替納税も守れます。後で違いが分かれば、多すぎは「更正の請求」、少なすぎは「修正申告」で直せます。ただしわざと少なく見積もってはいけません。根拠のある概算が前提です。
選択肢2:期限を過ぎていても、すぐに提出する
期限を過ぎている場合は、まず1か月以内の提出と全額納付を目指し、それも過ぎたら調査の事前通知が来る前の自主提出が目標です。
選択肢3:申告書より先に納付だけ済ませる
延滞税は本税への日数計算です。資金があれば概算額を先に納めれば延滞税の増加を抑えられます。納めすぎた分は申告後に戻ります。
やってはいけないこと
- 放置する――延滞税は増え続け、調査後の申告は加算税が最も重くなります。
- 収入の一部を除いて提出する――仮装隠蔽として重加算税の対象になり得ます。当事務所は金額の大小を問わずお受けしません。
- 連絡が来ていないから「知られていない」と考える――支払調書、法定調書、登記情報など、税務署が把握する経路は複数あります。
- 1年分だけ出して残りを放置する――複数年の無申告があれば他の年分の問題は残ります。全体の見通しを立ててから着手を。
よくある質問(FAQ)
Q1. 期限を過ぎてしまいました。今からでも青色申告特別控除65万円は使えますか?
使えません。55万円・65万円の青色申告特別控除は、期限までに貸借対照表・損益計算書を付けた申告書を出すことが条件です(タックスアンサーNo.2072)。期限後は控除10万円になりますが、青色申告の承認は取り消されません。
Q2. 税額が0円または還付になる場合でも急ぐ必要はありますか?
急ぐ必要があります。無申告加算税は問題になりませんが、期限内提出が条件の特例は多く、過ぎるとその年は使えません。還付申告でも青色申告特別控除には期限内提出が必要です。
Q3. 資料がそろっていなくても、とりあえず提出してよいのでしょうか?
根拠のある概算で期限内に提出するのは実務上あり得る対応です。違いが分かれば、多すぎは更正の請求、少なすぎは修正申告で直します。わざと少なく見積もることは認められません。事前にご相談ください。
Q4. 何年も申告していません。どこから手をつければよいですか?
まず何年分の申告が残っているかを確認し、年分ごとに所得資料を集め税額と加算税・延滞税を試算します。一部だけ出しても他の年分の問題は残るため、全体像をつかんでから動く方が負担は小さくなります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・国税庁公表資料に基づく一般的な解説です。記事中の加算税・延滞税の金額は前提を置いた試算であり、実際の金額は納付すべき税額、提出日・納付日、過去の加算税の賦課状況、端数処理によって変わります。延滞税の割合は年ごとに告示されるため、令和9年以後の期間については最新の国税庁公表資料をご確認ください。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.2024「確定申告を忘れたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2024.htm
- 国税庁タックスアンサー No.9205「延滞税について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
- 国税庁「延滞税の割合」https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 国税庁タックスアンサー No.9201「振替納税のお勧め」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9201.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2020「確定申告」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm
- 国税通則法18条・35条・60条・66条、租税特別措置法25条の2・94条 e-Gov法令検索
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期限に間に合わないこと自体は、めずらしいことではありません。問題は、そこから何日で提出できるかです。資料が半分しかそろっていない、何年分あるか分からない、という状態でも構いません。負担を最小にする順序を、代表税理士が直接ご説明します。
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