この記事の答え
- 掛金は必要経費になりません。その年に支払った全額が所得控除になります。
- 個人事業主は、掛金を帳簿の経費に入れず、確定申告書の控除の欄に書きます。
- 課税所得500万円の人が年60万円払うと、税金は約18万3千円減ります(目安)。
小規模企業共済とiDeCoの掛金は経費になりますか

掛金は、事業の必要経費になりません。その代わり、その年に支払った全額が所得控除になります。所得控除とは、税金を計算する前に所得から差し引ける金額です。
控除の名前は「小規模企業共済等掛金控除」です。小規模企業共済は、個人事業主などの退職金の制度です。iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で運用する年金です。
どちらの掛金も、事業の費用ではなく、あなた自身の将来のために払うお金です。小規模企業共済を運営する中小機構も、共済の掛金は必要経費にできないと案内しています。
正しい処理
- 帳簿の経費に入れません
- 事業の口座から払ったときは「事業主貸」で記録します
- 確定申告書の控除の欄に金額を書きます
- 掛金の証明書を添付するか、提示します
誤った処理
- 「保険料」などの経費に入れます
- 経費に入れたうえで、控除の欄にも書きます
- まだ払っていない掛金まで控除します
事業主貸は、事業のお金を家計に回したときに使う帳簿の科目です。令和8年分以後の申告書を令和9年1月1日以後に出すときは、証明書の代わりに一定の明細書も使えます。証明書は捨てずに取っておき、税務署に求められたら示します。会社員の人は、年末調整でも控除を受けられます。
経費に入れても控除にしても同じ、ではありません。掛金の控除を差し引くのは、所得税と住民税の計算です。個人事業税や国民健康保険料の計算では差し引きません。掛金を経費に入れると、これらの計算まで変わることがあります。
掛金はいくらまで払えますか

小規模企業共済の上限は月7万円です。個人事業主の人のiDeCoの上限は、令和8年12月分の掛金から月7万5千円に上がります。
(年81万6千円)
(年90万円)
国民年金基金の掛金や付加保険料を払っている人は、その分だけiDeCoの上限が下がります。会社員の人など、ほかの立場の人は上限が違います。
控除になるのは、その年に実際に払った掛金です。iDeCoの掛金は原則として翌月に引き落とされるので、令和8年12月分を払うのは令和9年1月です。上限の引上げが控除に表れるのは、令和9年分からです。上限が上がっても掛金は自動では増えず、増やすには手続きが必要です。
税金はいくら減りますか
減るのは掛金の全額ではなく、掛金に税率を掛けた分です。所得税の税率は所得が多いほど高いので、同じ掛金でも、減る税金は人によって違います。
個人事業主のAさんは、小規模企業共済に月3万円、iDeCoに月2万円、合わせて年60万円を払います。掛金を引く前の、Aさんの課税所得は500万円です。課税所得とは、税金を計算するもとになる所得です。
左の金額は、掛金を引く前の課税所得です。所得税は復興特別所得税(令和8年分は2.1%)を含みます。住民税は税率10%で6万円です。
図の500万円の行がAさんです。所得税が122,520円、住民税が60,000円減ります。図は、所得税と住民税の課税所得を同じとした、一定の前提を置いた目安です。
Aさんが両方を上限まで払うと、令和8年分の掛金は165万6千円です。減る税金の目安は、約50万4千円です。
掛金を払った分だけ得になりますか

払った分だけ得とは限りません。課税所得がない年は、掛金を払っても税金は減りません。
掛金は、自由には引き出せません。iDeCoは原則60歳まで引き出せず、運用の結果で受取額が掛金を下回ることもあります。
小規模企業共済は、掛金を納めた期間が20年未満で任意に解約すると、受取額が掛金の合計を下回ります。納めた期間が12か月未満なら、受け取れません。
受け取るときも、税金の計算の対象になります。一括なら退職金、分割なら公的年金と同じ扱いが基本です。65歳未満で共済を任意に解約したときなどは、別の扱いになります。くわしくは、共済の受け取り方と受け取る順番の記事をご覧ください。
自分でできるのはどこまでですか

掛金の証明書を確かめて、控除の欄に金額を書くところまでは、ご自身でできます。
失敗の例
- 掛金を経費に入れ、控除の欄にも書いた例です。同じ掛金を2回引いているので、修正申告が必要です。
- 11月か12月にオンラインで小規模企業共済を申し込んだ例です。最初の引落しが翌年になるので、その年の控除はありません。年末の注意点も確かめてください。
次の人は、個別の判断が必要です。
- 過去の申告で、掛金を経費に入れていた人
- 掛金の額を、所得の見込みと資金繰りに合わせて決めたい人
- 廃業や、個人事業を会社にすることを考えている人
税理士に頼むと何が変わりますか

税理士に頼むと、帳簿の確認から申告書の提出までを任せられます。
小松公認会計士・税理士事務所では、帳簿や決算書を見て、掛金が経費に入っていないかを確かめます。証明書と照らして控除額を確かめ、申告書の作成と電子申告まで行います。掛金の額を変えたときの税金も試算します。
料金の目安
料金は、基本料金32,000円(税込35,200円)に、所得と控除ごとの単価を足した額です。個人の確定申告は、最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
通常料金での計算例です。売上500万円の個人事業主の人は、事業所得49,000円を足します。この控除を含むその他控除セット6,000円も足します。合計は87,000円(税込95,700円)です。消費税の申告や記帳代行がない場合の、一定の前提を置いた目安です。
ご自身の料金は60秒見積りで確かめられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 掛金を経費に入れて申告してしまいました。どうすればよいですか?
控除の欄にも書いた年は、同じ掛金を2回引いているので、修正申告で直します。経費に入れただけの年も、個人事業税や国民健康保険料に影響することがあります。申告書を確かめて、直し方を決めてください。
Q2. 小規模企業共済とiDeCoは、両方に入れますか?
それぞれの条件を満たせば両方に入れます。掛金は合計して控除できます。小規模企業共済は従業員の数に条件があり、会社に雇われている人は入れません。iDeCoは、国民年金の保険料を免除されている人などは原則として入れません。
Q3. 小規模企業共済の掛金を前納したら、払った年の控除になりますか?
1年以内の前納は、全額を払った年の申告書に書けば、その年の控除にできます。前納減額金を受け取った年は、その分を差し引きます。この扱いは最初の申告で選びます。後の更正の請求では使えません。
Q4. 配偶者のiDeCoの掛金を、私の所得から控除できますか?
できません。iDeCoの掛金は、加入している本人の分しか所得控除の対象になりません。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。小規模企業共済およびiDeCoの加入資格・掛金の上限・受け取るときの取扱いは、制度改正の対象となることがあります。加入や増額の際は、各制度の公式サイトで最新の内容をご確認ください。計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の税額を保証するものではありません。本記事は特定の金融商品への加入を勧誘するものではありません。具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 所得税基本通達74・75-1、74・75-2(その年に支払った掛金、前納した掛金の特例)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/16/02.htm
- 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」(事業主貸の説明)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/kichou03.pdf
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済の掛金」https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/installment/
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度の概要」https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/features/index.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 加入資格」https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/entry/index_02.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「共済金等請求・解約」(解約手当金、税法上の取扱い)https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/index.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済のオンライン手続きによる加入申込について【令和8年分の所得控除の対象は10月申込分まで】」https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/news/2026/qsktgp000000cx1u.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「令和8年「小規模企業共済掛金控除証明書」について」(前納減額金の扱い)https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/news/2026/qsktgp000000fds1.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済とiDeCoは併用できる?違いやそれぞれの特徴を解説!」(併用できること。令和7年7月時点の記事で、iDeCoの上限の数字は改正前)https://skyosai.smrj.go.jp/skyosai-ideco/
- 厚生労働省「iDeCoの概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「制度改正について」(令和8年12月1日からの拠出限度額・加入可能年齢)https://www.ideco-koushiki.jp/library/2022kaisei/
- 国民年金基金連合会「iDeCoの拠出限度額の引き上げにあわせてiDeCo掛金額変更をご希望の方へ、お手続きのご案内」(令和8年12月分の掛金からの引上げ、掛金額の変更の手続き)https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/notice202612-02.pdf
- 厚生労働省「iDeCoの加入者、加入ご検討中の皆さまへ」(拠出限度額の引上げと、掛金額の変更の手続き)https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/001726959.pdf
- 厚生労働省年金局長通知「国民年金基金令等の一部を改正する政令の公布について」(年発1224第1号)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9646&dataType=1&pageNo=1
- iDeCo公式サイト「iDeCo加入手続きについて」(掛金の納付日、掛金の額)https://www.ideco-koushiki.jp/start/entry.html
- iDeCo公式サイト「iDeCoの特徴」(原則60歳まで引き出せないこと、給付額の変動)https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
- iDeCo公式サイト「iDeCoのメリット」(受け取るときの控除)https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
- iDeCo公式サイト「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
- iDeCo公式サイト「よくあるご質問」(掛金の所得控除の手続き、本人の掛金のみが控除の対象であること)https://www.ideco-koushiki.jp/faq/
- 総務省「個人住民税」(所得割の税率)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
- 所得税法37条(必要経費)、45条1項1号(家事上の経費)、75条(小規模企業共済等掛金控除)、120条(確定所得申告。6項・7項の明細書は令和9年1月1日施行)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 所得税法施行令64条2項(必要経費に算入する掛金)、72条3項(退職手当等とみなす一時金)、82条の2第2項(公的年金等とされる年金)、262条(確定申告書に関する書類等の提出又は提示)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 確定拠出年金法施行令36条(拠出限度額。令和7年政令第442号による改正後の規定は令和8年12月1日施行)https://laws.e-gov.go.jp/law/413CO0000000248
- 確定拠出年金法70条(個人型年金加入者掛金の納付)https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000088
- 地方税法34条1項4号・314条の2第1項4号(住民税の小規模企業共済等掛金控除)、72条の49の11・72条の49の12・72条の49の14(個人事業税の課税標準、事業主控除)、703条の4第6項(国民健康保険税の所得割額)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 国民健康保険法施行令29条の7第2項4号(保険料の所得割額)https://laws.e-gov.go.jp/law/333CO0000000362
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