この記事の答え
- 値段は自由に決められます。ただし相場より著しく安いと、差額に税金がかかることがあります。
- 子に売るなら子の贈与税に注意します。自分の会社に売るなら、時価の2分の1が基準の一つです。
- 親から買い、差額3,000万円が贈与とされた18歳以上の子の贈与税は、約1,036万円が目安です。
親子で売買するとき、値段は自由に決められますか

親子の間でも、売買の値段は自由に決められます。ただし、相場より著しく安いと、差額に税金がかかることがあります。
税金の判定に使う相場を「時価」といいます。土地や建物の時価は、通常の取引の値段です。相続税などの計算に使う路線価とは別のものです。
相場より安く売ること(低額譲渡)の税金は、売る相手が個人か会社かで変わります。
同族会社(家族などで株の過半数を持つ会社)では、2分の1以上でも時価で計算されることがあります。
子に安く売ると、どんな税金がかかりますか

値段が著しく安いと、買った子に贈与税がかかることがあります。時価と値段の差額を、親からもらったものとみなすためです。この仕組みを「みなし贈与」といいます。
会社員のAさんは、父のBさんから時価5,000万円の土地を2,000万円で買いました。差額の3,000万円が、みなし贈与と判定された場合です。
計算例
Aさんの贈与税の目安
差額:5,000万円 − 2,000万円 = 3,000万円 贈与税の控除を引いた後:3,000万円 − 110万円 = 2,890万円 贈与税:2,890万円 × 45% − 265万円 = 10,355,000円Aさんがその年の1月1日で18歳以上で、同じ年にほかの贈与を受けていない場合の目安です。親の年齢などの条件に合う人が、相続のときに精算する制度(相続時精算課税)を選ぶと、計算は変わります。
Aさんは、代金に加えて約1,036万円を納めることになります。
売った親の税金は、相手が個人なら実際の値段で計算します。ただし、時価の2分の1未満で売って損が出ても、その損はなかったものとされます。
Bさんの買った値段が3,000万円なら、形の上では1,000万円の損です。しかし、値段が時価の半分より安いので、Bさんはこの損をほかの不動産の利益と差し引けません。
いくらまでなら、安くしても問題になりませんか

「時価の何割までなら大丈夫」という決まった線はありません。国税庁は、売買の事情や当事者の関係などを総合して、個々の事案ごとに判定するとしています。会社に売るときの「時価の2分の1」とは別の基準です。
親が買った値段より安いときは、注意が必要です。国税庁の取扱い(通達)は、値下がりなどの合理的な理由がなければ、著しく安いものとしています。建物は、古くなった分を引いて比べます。裁判でこの扱いが通らなかった例もありますが、争いになるおそれがあります。
著しく安いとされなかった例
- 孫が銀行の融資で、祖母からアパートと土地を購入
- 祖母は借入金の返済などのために売却
- 税務署の主張どおりの時価でも、土地の代金は約8割
- 土地と建物の代金の合計は、相続税の計算に使う評価額を上回る
著しく安いとされた例
- 子が、父から借りていた土地を購入
- 審判所が算定した時価との差額の約1,850万円が贈与とされた
- 代金は、その時価の約6割
平成15年6月19日と平成13年4月27日の裁決です。左は地価が下がっていた時期の例です。どちらも個々の事情による判断で、8割なら大丈夫という基準ではありません。
ポイント
時価どおりなら差額が出ないので、みなし贈与の問題は起きません。安くするなら、理由と根拠を説明できるようにします。
自分の会社に安く売ると、どうなりますか

会社に売る値段が時価の2分の1未満なら、時価で売ったものとして、売った人の税金を計算します。受け取っていないお金にも、税金がかかります。
Bさんが、同じ土地を自分の会社に2,000万円で売るとします。時価の半分の2,500万円より安いので、次の計算になります。
計算例
Bさんの税金の目安
収入:実際の2,000万円ではなく、時価の5,000万円 利益:5,000万円 − 3,000万円(買った値段) = 2,000万円 税金:2,000万円 × 20.315% = 4,063,000円売った年の1月1日で5年を超えて持っていた土地で、売る費用がなく、特例を使わない場合の目安です。税率は所得税と住民税などの合計で、令和9年分も合計は同じです。
買った会社では、値段が2分の1以上でも、時価との差額が会社の利益とされ、法人税の対象になります。
時価の2分の1以上でも、時価で計算されることがあります。同族会社への売却で、株主などの所得税を不当に減らすと認められる場合です。
著しく安く売って株の価値が上がると、子などほかの株主に贈与税がかかることもあります。売値の決め方は、賃貸の建物を会社に売る記事でも説明しています。
どんな失敗があり、どこから税理士に頼みますか

値段は、契約の前に根拠をそろえて決めます。
失敗の例
- 路線価で値段を決めた例。時価は通常の取引の値段なので、路線価だけでは根拠が足りないことがあります。
- 半額以上なら大丈夫と考えた例。2分の1は、会社に売るときの線です。子に売るときは別の基準で判定します。
- 代金を後で免除した例。親が子の代金の支払いを免除すると、免除した額は贈与とみなされることがあります。
- 特例を使えると考えた例。親子や夫婦に売ると、売る人は自宅の3,000万円の特例を使えません。
ご自身でできること、個別の判断が必要なこと
不動産会社の査定や近くの取引事例を集めて、相場をつかむところまでは、ご自身でできます。売買にするなら、契約書を作り、代金は振り込みで払い、記録を残します。
相場より安く売る場合、同族会社に売る場合、特例を使う場合は、個別の判断が必要です。
税理士が入ると変わること
小松公認会計士・税理士事務所では、査定書や取引事例をもとに、値段の根拠を契約の前に整理します。売った親、買った子、買った会社の税金を相手別に試算し、贈与や相続で渡す場合とも比べます。売買の後は、確定申告や贈与税の申告も承ります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 路線価で売れば、贈与税はかかりませんか?
言い切れません。路線価から求めた評価額と同じ値段で、著しく安いとされなかった判決はあります。ただし判決も、評価額が時価の8割より低いと明らかなときは例外としており、一律の基準ではありません。時価は通常の取引の値段で判定します。
Q2. 親子間の売買でも、3,000万円の特例や住宅ローン控除は使えますか?
親子や夫婦(生計が別でも)や、生計が同じ親族などに売ると、3,000万円の特例は使えません。住宅ローン控除は、買う時とその後も生計が同じ親族から買うと使えません。生計が別の親からなら使える場合がありますが、親族からの借入金は対象外です。
Q3. 親子間で売買したら、どんな申告が必要ですか?
売った親に利益が出れば、売った年の翌年2月16日から3月15日に確定申告をします。買った子に贈与税がかかるときは、翌年2月1日から3月15日に申告と納税をします。
Q4. 安く買っても贈与税がかからない例外はありますか?
買う人が財産を失い、借金を返せないときの例外があります。返済に充てるために親や子などの扶養義務者から安く買うと、返済が困難な部分は贈与とみなされません。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。「著しく低い価額の対価」に当たるかどうかは、個々の具体的な事案に基づいて判定されます。記載した計算例は、特例を考えないなど、一定の前提を置いた目安です。実際の親族間の売買では時価の評価が結論を左右しますので、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 民法521条2項(契約の内容の自由)e-Gov法令検索
- 国税庁タックスアンサー No.3217「時価より低い価額で売ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3217.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4408「贈与税の計算と税率(暦年課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4103「相続時精算課税の選択」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4402「贈与税がかかる場合」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3102「譲渡所得の申告期限」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-3.htm
- 国税庁 個別通達(平成元年3月29日付 直評5ほか)「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/890329/01.htm
- 所得税基本通達59-3(同族会社等に対する低額譲渡)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/12/02.htm
- 相続税法基本通達7-1(著しく低い価額の判定)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/05.htm
- 相続税法基本通達9-2(株式又は出資の価額が増加した場合)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/06.htm
- 国税不服審判所 平成13年4月27日裁決(裁決事例集No.61 533頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/61/41/index.html
- 国税不服審判所 平成15年6月19日裁決(裁決事例集No.65 576頁)https://www.kfs.go.jp/service/JP/65/40/index.html
- 国税不服審判所 平成元年5月26日裁決(裁決事例集No.37 153頁)の要旨「受贈益」https://www.kfs.go.jp/service/MP/03/0202070000.html
- 東京地方裁判所 平成19年8月23日判決(判例タイムズ1264号184頁)。判示の内容は、税務大学校 税大論叢65号「相続税法第7条及び第9条の適用範囲に関する一考察」の引用(306頁・309頁・312頁)によるhttps://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/65/06/pdf/006.pdf
- 所得税法59条・157条e-Gov法令検索、所得税法施行令169条e-Gov法令検索
- 相続税法7条・8条・9条e-Gov法令検索
- 租税特別措置法31条・35条・41条・70条の2の4・70条の2の5e-Gov法令検索、租税特別措置法施行令20条の3・23条・26条e-Gov法令検索
- 法人税法2条10号・22条2項e-Gov法令検索
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法13条(令和8年法律第12号による改正後。令和9年分以後)e-Gov法令検索
- 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の5・5条の9(令和9年分以後)e-Gov法令検索
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