不動産譲渡所得

親子間の不動産売買は相場より安くできる?
低額譲渡の贈与税と同族会社の場合

この記事の答え

  • 値段は自由に決められます。ただし相場より著しく安いと、差額に税金がかかることがあります。
  • 子に売るなら子の贈与税に注意します。自分の会社に売るなら、時価の2分の1が基準の一つです。
  • 親から買い、差額3,000万円が贈与とされた18歳以上の子の贈与税は、約1,036万円が目安です。
小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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親子で売買するとき、値段は自由に決められますか

家の模型を前に話し合う親子
親子の売買は、値段の決め方で税金が変わります

親子の間でも、売買の値段は自由に決められます。ただし、相場より著しく安いと、差額に税金がかかることがあります。

税金の判定に使う相場を「時価」といいます。土地や建物の時価は、通常の取引の値段です。相続税などの計算に使う路線価とは別のものです。

相場より安く売ること(低額譲渡)の税金は、売る相手が個人か会社かで変わります。

図1 安く売ると、どの税金が問題になる?
質問1 売る相手は会社ですか?親や子など個人なら「いいえ」です。
はい質問2へ進みます
いいえ値段が著しく安いと、買った人に贈与税がかかることがあります
質問2 値段は時価の2分の1未満ですか?
はい時価で売ったものとして、売った人の税金を計算します
いいえ売った人の税金は、実際の値段で計算するのが原則です

同族会社(家族などで株の過半数を持つ会社)では、2分の1以上でも時価で計算されることがあります。

子に安く売ると、どんな税金がかかりますか

家族の食卓で鍵を受け渡す場面
買った子の贈与税を確かめます

値段が著しく安いと、買った子に贈与税がかかることがあります。時価と値段の差額を、親からもらったものとみなすためです。この仕組みを「みなし贈与」といいます。

会社員のAさんは、父のBさんから時価5,000万円の土地を2,000万円で買いました。差額の3,000万円が、みなし贈与と判定された場合です。

計算例

Aさんの贈与税の目安

差額:5,000万円 − 2,000万円 = 3,000万円 贈与税の控除を引いた後:3,000万円 − 110万円 = 2,890万円 贈与税:2,890万円 × 45% − 265万円 = 10,355,000円

Aさんがその年の1月1日で18歳以上で、同じ年にほかの贈与を受けていない場合の目安です。親の年齢などの条件に合う人が、相続のときに精算する制度(相続時精算課税)を選ぶと、計算は変わります。

Aさんは、代金に加えて約1,036万円を納めることになります。

売った親の税金は、相手が個人なら実際の値段で計算します。ただし、時価の2分の1未満で売って損が出ても、その損はなかったものとされます。

Bさんの買った値段が3,000万円なら、形の上では1,000万円の損です。しかし、値段が時価の半分より安いので、Bさんはこの損をほかの不動産の利益と差し引けません。

いくらまでなら、安くしても問題になりませんか

家の模型と金額のカードと電卓
時価との開きを確かめます

「時価の何割までなら大丈夫」という決まった線はありません。国税庁は、売買の事情や当事者の関係などを総合して、個々の事案ごとに判定するとしています。会社に売るときの「時価の2分の1」とは別の基準です。

親が買った値段より安いときは、注意が必要です。国税庁の取扱い(通達)は、値下がりなどの合理的な理由がなければ、著しく安いものとしています。建物は、古くなった分を引いて比べます。裁判でこの扱いが通らなかった例もありますが、争いになるおそれがあります。

図2 税務署の処分を見直す機関(国税不服審判所)の判断が分かれた2つの例

著しく安いとされなかった例

  • 孫が銀行の融資で、祖母からアパートと土地を購入
  • 祖母は借入金の返済などのために売却
  • 税務署の主張どおりの時価でも、土地の代金は約8割
  • 土地と建物の代金の合計は、相続税の計算に使う評価額を上回る

著しく安いとされた例

  • 子が、父から借りていた土地を購入
  • 審判所が算定した時価との差額の約1,850万円が贈与とされた
  • 代金は、その時価の約6割

平成15年6月19日と平成13年4月27日の裁決です。左は地価が下がっていた時期の例です。どちらも個々の事情による判断で、8割なら大丈夫という基準ではありません。

ポイント

時価どおりなら差額が出ないので、みなし贈与の問題は起きません。安くするなら、理由と根拠を説明できるようにします。

自分の会社に安く売ると、どうなりますか

ビルの窓際の机に置いた手帳とペン
会社に売るときの基準を確かめます

会社に売る値段が時価の2分の1未満なら、時価で売ったものとして、売った人の税金を計算します。受け取っていないお金にも、税金がかかります。

Bさんが、同じ土地を自分の会社に2,000万円で売るとします。時価の半分の2,500万円より安いので、次の計算になります。

計算例

Bさんの税金の目安

収入:実際の2,000万円ではなく、時価の5,000万円 利益:5,000万円 − 3,000万円(買った値段) = 2,000万円 税金:2,000万円 × 20.315% = 4,063,000円

売った年の1月1日で5年を超えて持っていた土地で、売る費用がなく、特例を使わない場合の目安です。税率は所得税と住民税などの合計で、令和9年分も合計は同じです。

買った会社では、値段が2分の1以上でも、時価との差額が会社の利益とされ、法人税の対象になります。

時価の2分の1以上でも、時価で計算されることがあります。同族会社への売却で、株主などの所得税を不当に減らすと認められる場合です。

著しく安く売って株の価値が上がると、子などほかの株主に贈与税がかかることもあります。売値の決め方は、賃貸の建物を会社に売る記事でも説明しています。

どんな失敗があり、どこから税理士に頼みますか

和室で不動産の説明を受ける夫婦
相場の根拠は、契約の前にそろえます

値段は、契約の前に根拠をそろえて決めます。

失敗の例

  • 路線価で値段を決めた例。時価は通常の取引の値段なので、路線価だけでは根拠が足りないことがあります。
  • 半額以上なら大丈夫と考えた例。2分の1は、会社に売るときの線です。子に売るときは別の基準で判定します。
  • 代金を後で免除した例。親が子の代金の支払いを免除すると、免除した額は贈与とみなされることがあります。
  • 特例を使えると考えた例。親子や夫婦に売ると、売る人は自宅の3,000万円の特例を使えません。

ご自身でできること、個別の判断が必要なこと

不動産会社の査定や近くの取引事例を集めて、相場をつかむところまでは、ご自身でできます。売買にするなら、契約書を作り、代金は振り込みで払い、記録を残します。

相場より安く売る場合、同族会社に売る場合、特例を使う場合は、個別の判断が必要です。

税理士が入ると変わること

小松公認会計士・税理士事務所では、査定書や取引事例をもとに、値段の根拠を契約の前に整理します。売った親、買った子、買った会社の税金を相手別に試算し、贈与や相続で渡す場合とも比べます。売買の後は、確定申告や贈与税の申告も承ります。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 路線価で売れば、贈与税はかかりませんか?

言い切れません。路線価から求めた評価額と同じ値段で、著しく安いとされなかった判決はあります。ただし判決も、評価額が時価の8割より低いと明らかなときは例外としており、一律の基準ではありません。時価は通常の取引の値段で判定します。

Q2. 親子間の売買でも、3,000万円の特例や住宅ローン控除は使えますか?

親子や夫婦(生計が別でも)や、生計が同じ親族などに売ると、3,000万円の特例は使えません。住宅ローン控除は、買う時とその後も生計が同じ親族から買うと使えません。生計が別の親からなら使える場合がありますが、親族からの借入金は対象外です。

Q3. 親子間で売買したら、どんな申告が必要ですか?

売った親に利益が出れば、売った年の翌年2月16日から3月15日に確定申告をします。買った子に贈与税がかかるときは、翌年2月1日から3月15日に申告と納税をします。

Q4. 安く買っても贈与税がかからない例外はありますか?

買う人が財産を失い、借金を返せないときの例外があります。返済に充てるために親や子などの扶養義務者から安く買うと、返済が困難な部分は贈与とみなされません。

免責事項

本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。「著しく低い価額の対価」に当たるかどうかは、個々の具体的な事案に基づいて判定されます。記載した計算例は、特例を考えないなど、一定の前提を置いた目安です。実際の親族間の売買では時価の評価が結論を左右しますので、具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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