この記事のポイント
- 出向先が払う給与負担金は、出向先のその出向者に対する給与です
- 経営指導料などの名目で払っても同じ扱いになります
- 出向者が出向先の役員なら、役員給与のルールが働きます
- 出向元が補う給与の差額は、出向元の損金になります
まず結論:給与負担金は「出向先の給与」です
2社を経営していて、社員をもう1社で働かせている。給与は今までどおりA社から払い、B社からA社へお金を回している。よくある形です。
この場合、出向先が出向元に払う給与負担金は、出向先におけるその出向者に対する給与として扱われます。
出向先法人が自己の負担すべき給与(退職給与を除く。)に相当する金額(給与負担金)を出向元法人に支出したときは、当該給与負担金の額は、出向先法人におけるその出向者に対する給与(退職給与を除く。)として取り扱うものとする。(法人税基本通達9-2-45)
外注費でも支払手数料でもなく、給与です。この起点を外すと、後の判断がすべてずれます。

「経営指導料」という名目にしても同じです
通達には注書きがあります。
この取扱いは、出向先法人が実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用がある。(法人税基本通達9-2-45(注)1)
注意
名目を変えても中身で判断されます。経営指導料・業務委託料といった名前にしても、実質が給与負担金なら給与として扱われます。本当に指導や委託の実態があるのか、書面と実際の業務で示せるかを確認してください。
出向者が出向先の役員になっている場合
ここが実務でいちばん詰まるところです。出向者が出向先で取締役になっているとき、給与負担金の支出は役員給与の支給として法人税法34条が適用されます。
ただし、適用されるのは次のいずれにも該当するときです(法人税基本通達9-2-46)。
- その役員に係る給与負担金の額につき、出向先法人の株主総会、社員総会またはこれらに準ずるものの決議がされていること
- 出向契約等において、出向期間と給与負担金の額があらかじめ定められていること
ポイント
賞与に相当する部分を出したい場合、事前確定届出給与の届出は「出向先法人」が、その納税地の所轄税務署長に行います(同通達(注)1)。出向元が出す届出ではありません。
もう1つ、超過部分の扱いにも注意が必要です。出向先が支出した給与負担金が、出向元がその出向者に支給する給与の額を超える場合、その超える部分には給与負担金としての性格がありません(同通達(注)2)。「多めに払っておく」ができない、ということです。
役員給与そのもののルールは役員報酬と役員退職金の組み立て方で整理しています。

出向元が差額を補ったとき ― 較差補填金
出向先の給与水準が低いため、出向元が差額を払い足すことがあります。
出向元が給与条件の較差を補填するために出向者へ支給した給与の額は、出向元の損金になります(法人税基本通達9-2-47)。出向先を経て支給した金額も含みます。
通達は、次の2つも較差を補填するために支給したものとする、としています。
- 出向先が経営不振等で賞与を支給できないため、出向元が出向者に支給する賞与の額
- 出向先が海外にあるため出向元が支給する、いわゆる留守宅手当の額
補足
海外の子会社へ出す場合の留守宅手当が名指しで挙げられています。「出向先が海外だから寄附金では」と心配する必要はありません。
退職金の負担はどうするか
退職給与は、毎月の給与とは別に定めがあります。
| 場面 | 取扱い |
|---|---|
| あらかじめ定めた負担区分に基づき、出向期間に対応する額を定期的に出向元へ支出 | 支出する日の属する事業年度の損金(9-2-48) |
| 出向者が出向元を退職したとき、出向期間に係る部分を出向元へ支出 | 支出した日の属する事業年度の損金(9-2-49) |
| 出向先が負担しないとき | 負担しないことに相当な理由があれば認められる(9-2-50) |
9-2-48は、出向者が出向先で役員となっているときであっても、支出した事業年度の損金になるとしています。
なお、出向ではなく籍を移す転籍の場合、退職給与を通算して支給すると、明らかに相手方の負担分と認められる部分は相手方の法人への贈与とされます(9-2-52)。出向と転籍は分けて考えてください。

人を動かす前に、契約書で決めておく
ここまでの取扱いは、いずれも「あらかじめ定められていること」を前提にしています。あとから作った書面では説明が苦しくなります。
- 出向契約書に、出向期間・給与負担金の額・退職給与の負担区分を書く
- 出向先で役員にするなら、株主総会等の決議を先に取る
- 賞与を出すなら、出向先から事前確定届出給与の届出をする
- 経営指導料を別に取るなら、指導の実態を業務報告などで残す
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 出向先が払う給与負担金は、外注費として処理してよいですか?
国税庁は、給与負担金の額は出向先におけるその出向者に対する給与として取り扱うとしています(法人税基本通達9-2-45)。外注費ではありません。
Q2. 経営指導料という名目で受け取れば、給与にはなりませんか?
同通達の注書きは、実質的に給与負担金の性質を有する金額を経営指導料等の名義で支出する場合にも適用があるとしています。名目では変わりません。
Q3. 出向先の給与が低いので、出向元から差額を払っています。経費になりますか?
給与条件の較差を補填するために支給した額は、出向元の損金になります(同通達9-2-47)。海外出向の留守宅手当も較差補填とされています。
Q4. 出向者が出向先で役員です。賞与の届出はどちらの会社が出しますか?
出向先法人が、その納税地の所轄税務署長に対して、出向契約等に基づく給与負担金に係る定めの内容について行います(同通達9-2-46(注)1)。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税基本通達9-2-45〜9-2-52の範囲を扱っています。出向者に係る源泉徴収義務の所在、社会保険・労働保険の適用、労働者派遣法との関係、在籍出向と転籍の労務上の手続、消費税の課税関係、海外出向者の居住者・非居住者判定と租税条約の適用、グループ通算制度における取扱いは扱っていません。特定の支出が給与負担金に当たるか、経営指導料としての実態があるかは個別の事案ごとの判断であり、本記事はその当てはめを行うものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 法人税基本通達 第9款 転籍、出向者に対する給与等(9-2-45〜9-2-52)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_09.htm
- e-Gov法令検索 法人税法(第34条 役員給与の損金不算入)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
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