この記事のポイント
- 役員賞与は事前確定届出給与の届出をしないと損金になりません
- 届出期限は決議から1か月と期首から4か月の早い日です
- 届け出た金額・時期と1円でもずれると全額が損金不算入になります
- ずれても他の役員は巻き添えにならず、翌期分だけの問題にできる場合もあります
まず結論:役員の賞与は「先に届け出て、そのとおりに払う」ことが条件です
社長や役員に賞与を出しても、そのままでは会社の経費になりません。次の3つのどれかに該当しないと損金になりません。
法人が役員に対して支給する給与の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与または一定の業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されません。(国税庁タックスアンサーNo.5211「役員に対する給与」)
3つの型のちがい
| 型 | どんな給与か | 中小企業での使いやすさ |
|---|---|---|
| 定期同額給与 | 1か月以下の期間ごとに、毎回同じ額を払う給与(=毎月の役員報酬) | ◎ 標準。ただし期の途中で自由には変えられません |
| 事前確定届出給与 | あらかじめ時期と金額を決めて届け出て、そのとおりに払う給与(=役員賞与) | ◎ 本記事のテーマ |
| 業績連動給与 | 利益や株価などの指標で算定する給与 | △ 同族会社は原則使えず、開示などの要件も重い |
中小企業の社長が使えるのは実質的に上の2つです。

事前確定届出給与とはどんな制度か
国税庁は次のように定義しています。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、確定した額の金銭または確定した数の株式……を交付する旨の定めに基づいて支給される給与で、上記の「定期同額給与」および下記の「業績連動給与」のいずれにも該当しないもの……をいいます。(国税庁タックスアンサーNo.5211)
どんな場面で使われているか
- 年1〜2回まとめて役員に賞与を出す場合
- 非常勤役員に年1回まとめて払う場合
- 役員にも決算賞与と同時期に賞与を出したい場合
同族会社(多くの中小企業が該当します)は、届出をしなければ損金にできないとお考えください。
届出の期限 ―― 「決議から1か月」と「期首から4か月」の早いほう
ここが実務で最も落としやすい点です。
事前確定届出給与に関する定めをした場合は、原則として、次の(1)または(2)のうちいずれか早い日(新設法人がその役員のその設立の時に開始する職務についてその定めをした場合にはその設立の日以後2か月を経過する日)までに所定の届出書を提出する必要があります。
(1)株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日(その決議をした日が職務の執行を開始する日後である場合にはその開始する日)から1か月を経過する日
(2)その会計期間開始の日から4か月……を経過する日(国税庁タックスアンサーNo.5211)

3月決算の会社で考えてみます
6月26日の定時株主総会で役員賞与を決議した3月決算の会社の場合です。
| 基準 | その日 |
|---|---|
| (1)決議をした日から1か月を経過する日 | 7月26日 |
| (2)会計期間開始の日(4月1日)から4か月を経過する日 | 7月31日 |
| 届出期限(いずれか早い日) | 7月26日 |
「期首から4か月あるから大丈夫」と考えて7月30日に提出すると、期限に間に合いません。
そのほかの期限
- 新設法人:設立の日以後2か月を経過する日
- 臨時改定事由:事由が生じた日から1か月を経過する日と原則の期限の、いずれか遅い日
- 届出内容を変更する場合:臨時改定事由なら事由発生日から1か月、業績悪化改定事由(減額時)なら変更決議日から1か月を経過する日
注意
「やむを得ない事情」があれば例外もありますが、期限を守ることが大前提です。
【最重要】届け出た額と1円でも違うと、その役員の分は全額が損金不算入
ここが、この制度で最も痛い失敗です。届け出た金額より少なく払った場合、「払った分だけは損金」にはなりません。
この事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額の金銭等を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額又は株式数等が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます(法基通9-2-14)。したがって、所轄税務署長へ届け出た支給額又は株式数等と実際の支給額又は株式数等が異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなります……
(国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」)
国税庁が挙げている例
例えば、3月決算法人が、X年6月26日からX+1年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、X年12月及びX+1年6月にそれぞれ200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、X年12月には100万円しか支給せず、X+1年6月には満額の200万円を支給したときは、その職務執行期間に係る支給の全てが定めどおりに行われたとはいえないため、その支給額の全額(300万円)が事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。
注意
払ったのに経費にならない、という最も避けたい形です。受け取った役員側にも所得税・住民税・社会保険料がかかります。
ずれる原因は、たいてい次のどれかです
- 資金繰りが厳しくなり、賞与を減額して払った
- 業績が良かったので、届出額より多く払った(増額も「異なる支給」です)
- 支給日を後ろにずらした(時期も定めどおりである必要があります)
- 役員が期の途中で辞任し、日割りのような形で払った

それでも救われる場面が2つあります
1.ほかの役員の分は巻き添えになりません
「事前確定届出給与に関する届出書」の記載額と同額を支給したA役員以外の他の役員に係る役員給与については、法人税法第34条第1項第2号に該当し、損金算入することができます。(国税庁 質疑応答事例「『事前確定届出給与に関する届出書』を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い」)
ポイント
損金不算入になるのは、ずれた本人の分だけです。法人税法の規定が「その役員」ごとに定められているためです。
2.当期は定めどおりに払っていれば、翌期分だけの問題にできます
……3月決算法人が当該事業年度(X+1年3月期)中は定めどおりに支給したものの、翌事業年度(X+2年3月期)において定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度(X+1年3月期)の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度(X+2年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えないものと考えられます。(同上)
ただしこれは「翌期にずれ込んだ場合」の話です。同じ事業年度の中でずれた場合には当てはまりません。

実務で多い失敗
- 届出書そのものを出していない。決議・議事録があっても届出を忘れるケースです
- 期限を1日でも過ぎた。「決議から1か月」「期首から4か月」の早いほうを見落としがちです
- 決議の証拠が残っていない。株主総会議事録がないと定めの内容を示せません
- 払えるあてがないのに高い金額で届け出た。減額すれば全額が損金不算入です
- 社会保険料の負担を考えていない。役員賞与にも社会保険料がかかります
- 使用人兼務役員の「使用人としての賞与」と混同している。従業員の賞与として別のルール(決算賞与の3要件)で判定します
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よくある質問(FAQ)
Q1. 役員に賞与を出しました。届出はしていませんが、経費にできますか?
原則としてできません。役員給与は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当しないと損金になりません(国税庁タックスアンサーNo.5211)。同族会社は届出がなければ原則損金不算入です。
Q2. 届出は「決議から1か月」と「期首から4か月」のどちらで見ればよいのですか?
いずれか早い日です。決議から1か月を経過する日と、期首から4か月を経過する日を比べ、早いほうが期限です。新設法人は設立の日以後2か月を経過する日です。
Q3. 資金繰りが苦しくなりました。届け出た300万円を200万円に減らして払ってもよいですか?
できません。届出額と実際の支給額が異なると事前確定届出給与に該当せず、その職務執行期間の支給額の全額が損金不算入となります。支給前に必ずご相談ください。
Q4. 役員が3人います。1人だけ届出額と違う額を払ってしまいました。全員だめになりますか?
なりません。届出書の記載額どおりに支給した他の役員の給与は損金算入できます。損金不算入になるのは、届出額と異なる支給をした役員本人の分だけです。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は法人が役員に支給する金銭による給与を前提としており、株式・新株予約権による給与、特定譲渡制限付株式、業績連動給与、退職給与の取扱いは扱っていません。また、届出書および付表の様式の番号・記載方法、社会保険料の計算、不相当に高額な部分の判定については本記事では扱っていません。届出書の様式は国税庁の最新のものをご確認ください。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
- 国税庁 質疑応答事例「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/16.htm
- 国税庁 質疑応答事例「『事前確定届出給与に関する届出書』を提出している法人が特定の役員に当該届出書の記載額と異なる支給をした場合の取扱い(事前確定届出給与)」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/11/13.htm
- 法人税法34条1項2号、法人税法施行令69条、法人税基本通達9-2-14e-Gov法令検索
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