この記事のポイント
- 海外渡航の旅費は業務上必要かつ通常必要と認められる部分の金額に限り旅費と認められます(No.5388)
- 観光目的の団体旅行等は原則として業務上必要な海外渡航に該当しません(法人税基本通達9-7-7)
- 視察と観光が混在するときは期間の比であん分し、必要と認められない部分は給与になります(9-7-9)
- 損金等算入割合が90パーセント以上なら全額損金、10パーセント以下なら全額が損金になりません
まず結論:会社の経費になるかは「日程」で決まります
「これは会社の経費になりますか」。海外視察のご相談で最初に出る質問です。答えの入口は次の一文にあります。
法人がその役員または使用人の海外渡航に際して支給する旅費(仕度金を含みます。以下同じです。)は、その海外渡航がその法人の業務の遂行上必要なものであり、かつ、その渡航のため通常必要と認められる部分の金額に限り、旅費としての法人の経理が認められています。(国税庁タックスアンサーNo.5388「海外渡航費の取扱い」)
条件は2つ。①業務の遂行上必要であること、②通常必要と認められる金額であること。この2つを満たす部分だけが旅費になります。
ポイント
満たさない部分は役員又は使用人に対する給与になります。旅行のほぼ全期間が明らかに業務上必要なら、全額を旅費にできます。
「経費にならない」で終わらないのが、この論点のこわいところです。観光が混ざった分だけ旅費から外れ、外れた分は社長個人への給与になります。よりどころは旅行日程です。
まず外れる3つの旅行 ―― 同業者団体のツアーはここに入りやすい
業務の遂行上必要かどうかは、次のように定められています。
9-7-7 法人の役員又は使用人の海外渡航が法人の業務の遂行上必要なものであるかどうかは、その旅行の目的、旅行先、旅行経路、旅行期間等を総合勘案して実質的に判定するものとするが、次に掲げる旅行は、原則として法人の業務の遂行上必要な海外渡航に該当しないものとする。
(1) 観光渡航の許可を得て行う旅行
(2) 旅行あっせんを行う者等が行う団体旅行に応募してする旅行
(3) 同業者団体その他これに準ずる団体が主催して行う団体旅行で主として観光目的と認められるもの(法人税基本通達9-7-7)
「実質的に判定する」ため、稟議書の表題だけでは決まりません。もうひとつは(3)の「主として観光目的と認められるもの」。組合や協会の記念旅行が当たるかが分かれ目です。ただし、この3つに当たっても1円も損金にならないと決まるわけではありません(後述)。
視察と観光が混ざったとき ―― 期間の比であん分する
視察も観光もある渡航のほうが、現実には多いはずです。
9-7-9 法人の役員又は使用人が海外渡航をした場合において、その海外渡航の旅行期間にわたり法人の業務の遂行上必要と認められる旅行と認められない旅行とを併せて行ったものであるときは、その海外渡航に際して支給する旅費を法人の業務の遂行上必要と認められる旅行の期間と認められない旅行の期間との比等によりあん分し、法人の業務の遂行上必要と認められない旅行に係る部分の金額については、当該役員又は使用人に対する給与とする。(法人税基本通達9-7-9 本文)
期間の比であん分します。金額のうちいくらが業務の分かを、日数で割り振ります。
商談が動機なら、往復の旅費は先に取り分ける
ただし、海外渡航の直接の動機が特定の取引先との商談、契約の締結等法人の業務の遂行のためであり、その海外渡航を機会に観光を併せて行うものである場合には、その往復の旅費(当該取引先の所在地等その業務を遂行する場所までのものに限る。)は、法人の業務の遂行上必要と認められるものとして、その海外渡航に際して支給する旅費の額から控除した残額につき本文の規定を適用する。(法人税基本通達9-7-9 ただし書き)
①往復の旅費を控除し、②残った額を期間の比等であん分します。前提は動機が商談・契約締結等であること、旅費が業務を遂行する場所までに限られることです。国内出張の日当は出張日当と旅費規程の作り方で扱っています。
同業者団体の海外視察には、計算のための処理基準があります
同業者団体等が主催する海外視察には、平成12年10月11日付の法令解釈通達(課法2-15ほか)が処理基準を置いています。
2 同業者団体等が行う視察等のための団体による海外渡航については、課税上弊害のない限り、その旅行に通常要する費用(その旅行費用の総額のうちその旅行に通常必要であると認められる費用をいう。以下同じ。)の額に、旅行日程の区分による業務従事割合を基礎とした損金又は必要経費算入の割合(以下「損金等算入割合」という。)を乗じて計算した金額を旅費として損金の額又は必要経費の額に算入する。(平成12年10月11日付 課法2-15ほか)
式は「旅行に通常要する費用の額 × 損金等算入割合」。例外は次のとおりです。
| 場合 | 取扱い |
|---|---|
| 損金等算入割合が90パーセント以上 | 費用の額の全額を旅費として損金に算入 |
| 損金等算入割合が10パーセント以下 | 費用の額の全額を損金に算入しない |
| 業務遂行上直接必要な場合(業務従事割合50パーセント以上) | 往復の交通費は全額、その他費用は損金等算入割合を乗じた額を旅費とする |
90パーセント・10パーセント・50パーセントは通達の数字で、これ以外に目安はありません。
割合の計算と日数の数え方
損金等算入割合は、業務従事割合を10%単位に区分し、10%未満は四捨五入したものです。
視察等の業務に従事したと認められる日数/(視察等の業務に従事したと認められる日数+観光を行ったと認められる日数)(平成12年10月11日付 課法2-15ほか・同通達の算式)
分母に入るのは「視察等」と「観光」だけで、移動に費やした旅行日は分子にも分母にも入りません。日数は昼間の業務時間おおむね8時間を1.0日とし、おおむね0.25日を単位に算出します。夜間の業務従事分は視察等に加算します。
視察等の日数には工場見学・展示会参加・市場調査・国際会議出席などが入り、業務上必要なものに限られます。私的な外出や儀礼的な訪問は観光の日数です。
7日間の海外視察で計算してみます
一定の前提を置いた目安です。実際は旅行日程・役職・業種業態で変わります。同業者団体主催の7日間の海外視察に社長が参加し、旅行に通常要する費用が60万円(往復の交通費20万円・その他の費用40万円)、日程は視察等3.5日・観光1.5日・旅行日2.0日に区分されたとします。
| 項目 | 金額・割合 | 計算 |
|---|---|---|
| 業務従事割合 | 70パーセント | 3.5日 ÷(3.5日 + 1.5日) |
| 損金等算入割合 | 70パーセント | 10パーセント単位に区分 |
| 原則による旅費の額 | 420,000円 | 600,000円 × 70パーセント |
| 社長に対する給与となる額 | 180,000円 | 600,000円 - 420,000円 |
| 2(3)に当てはまる場合の旅費の額 | 480,000円 | 400,000円 × 70パーセント + 200,000円 |
計算例
原則:600,000円 × 70パーセント = 420,000円(差額180,000円は給与) 直接必要な場合:400,000円 × 70パーセント + 200,000円 = 480,000円旅行日2.0日は割合の計算に入りません。使える計算は日程表次第です。
配偶者やご家族を同伴した場合
9-7-8 法人の役員が法人の業務の遂行上必要と認められる海外渡航に際し、その親族又はその業務に常時従事していない者を同伴した場合において、その同伴者に係る旅費を法人が負担したときは、その旅費はその役員に対する給与とする。(法人税基本通達9-7-8 本文)
原則は「役員に対する給与」です。ただし書きには、次の3つが例示されています。
- 常時補佐が必要な身体障害者である役員が補佐人を同伴する場合
- 国際会議への出席等で配偶者の同伴が必要な場合
- 外国語に堪能な者・高度の専門知識を有する者が必要で、社内に適任者がいないため親族等を同伴するとき
認められるのは「明らかに目的達成に必要な同伴」で、費用も通常必要な額までです。慰労目的の同行は当たりません。
観光目的の団体旅行でも、業務に直接関連する部分はあります
9-7-7に掲げる旅行に当たると、その渡航は原則として業務の遂行上必要な海外渡航に該当しません。しかし、そこで終わりではありません。旅行先・行った仕事の内容等からみて法人の業務にとって直接関連のある部分があれば、その部分に直接要した費用の額は旅費として損金の額に算入します(法人税基本通達9-7-10)。
旅行全体を割合であん分するのではなく、その部分に直接かかった費用を拾う形です。団体旅行の1日だけ抜けて取引先を訪問した場合などです。そのとき何をしたかを示せなければ拾えません。
現地の接待費や会員権の費用は別の判断です。交際費等の損金不算入、ゴルフクラブの入会金・年会費をご覧ください。
出発前にそろえておく資料と、よくある失敗
通達は「団体旅行の主催者、名称、旅行目的、旅行日程、参加費用」「参加者の氏名、役職、住所」を示す書類等に基づき、動機・業務関連性を検討するとしています。
- 主催者からの案内状・募集要項(名称・旅行目的・参加費用)
- 確定した旅行日程表。訪問先と時間帯まで分かるもの
- 視察等を行った記録(訪問先資料・面談記録・報告書)
- 自由行動の時間帯が分かるもの(観光日数は隠さず数えます)
注意
よくある失敗
①7日間のうち3.5日で50パーセントと計算する(旅行日は分母に入りません)。②差額を「経費にならない分」で終える(給与になる点が抜けます)。③日程表を残さない(0.25日単位で区分できません)。
実際の日程表・訪問先の記録・事業内容を拝見しないと判断できません。一般論としてお伝えできるのはここまでです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 同業者団体の海外視察ツアーに参加しました。参加費は全額が会社の経費になりますか?
日程次第です。観光目的の団体旅行は原則対象外ですが(法人税基本通達9-7-7(3))、視察等の渡航には費用に損金等算入割合を乗じる処理基準があります(平成12年10月11日付 課法2-15ほか)。90パーセント以上は全額損金、10パーセント以下は全額不算入です。
Q2. 商談のために海外へ行き、そのあと2日ほど観光しました。往復の航空券代はどうなりますか?
動機が商談・契約締結等で、機会に観光も行った場合は往復の旅費を先に控除し、残額をあん分します(法人税基本通達9-7-9 ただし書き)。対象は「業務を遂行する場所まで」の旅費に限られます。
Q3. 妻を同伴しました。妻の分の旅費は会社の経費になりますか?
原則として役員への給与になります(法人税基本通達9-7-8)。身体障害者である役員の補佐人、国際会議出席等での配偶者同伴、専門知識者が社内にいないための同伴などは例外です。認められるのは通常必要な費用までです。
Q4. 業務従事割合は、どのように数えればよいのですか?
「視察等の日数 ÷(視察等の日数+観光の日数)」で計算します(平成12年10月11日付 課法2-15ほか)。移動の旅行日は分子にも分母にも入りません。日数はおおむね0.25日を単位に算出し、10%単位に区分(10%未満は四捨五入)したものが損金等算入割合です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、法人が支給する海外渡航費について、業務の遂行上必要な海外渡航の判定、視察と観光を併せて行った場合の旅費のあん分、同業者団体等が行う視察等のための団体による海外渡航に係る損金等算入割合の計算、および同伴者の旅費の取扱いという基本的な枠組みを扱っています。旅費規程の作り方や国内出張の日当の金額、個人事業主の必要経費に算入する場合の細目、所得税基本通達に定める海外渡航費の内容、消費税の課税区分や外国における付加価値税の取扱い、給与とされた場合の源泉徴収税額の計算、外貨建ての費用の為替換算のレート、旅費に関する証憑の保存年限については、本記事では扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は旅行日程・訪問先・参加者の役職・会社の事業内容によって変わります。また、通達に定めのない「観光が何割までなら差し支えない」といった目安は示していません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5388「海外渡航費の取扱い」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5388.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第7節第2款 海外渡航費(9-7-6〜9-7-10)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_02.htm
- 国税庁 法令解釈通達「海外渡航費の取扱いについて」(平成12年10月11日付 課法2-15、課所4-24、査調4-29)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/001011/01.htm
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