この記事のポイント
- 決算賞与は決算日までにお金を払っていなくても今期の経費にできる場合があります
- 条件は3つ。①各人別に通知する②1か月以内に支払う③通知日の事業年度で損金経理する。1つでも欠くと使えません
- 最大の落とし穴は「支給日に在職している人にだけ払う」という決め方です
- 役員には使えません。役員の賞与は事前確定届出給与の届出が必要です
まず結論:3つの要件をすべて満たせば、払う前でも今期の経費になります
決算賞与は、決算日までに支払っていなくても、一定の要件を満たせばその事業年度の経費にできます。「利益を社員に還元したいが資金が足りない」という場面で使えます。
ただし要件は厳格で、ひとつでも欠けると、その賞与は翌期の経費になります。今期の節税が1年ずれるのが、よくある失敗です。
使用人賞与はいつの経費になるか
国税庁タックスアンサーNo.5350「使用人賞与の損金算入時期」は、賞与を3つに区分しています。
| 区分 | いつの事業年度の損金になるか |
|---|---|
| 1 支給予定日が到来している賞与(通知・損金経理が要件) | 支給予定日または通知日のいずれか遅い日の事業年度 |
| 2 後述の3要件を満たす賞与(=決算賞与の未払計上) | 通知をした日の事業年度 |
| 3 上記1・2以外の賞与 | その支払をした日の事業年度 |
何もしなければ「3」に当てはまり、払った期の経費になります。今期にしたいなら「2」に乗せます。
3つの要件(原文で確認します)
国税庁は、次の要件を満たす賞与は通知をした日の事業年度の損金になるとしています。
(1)その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。
(2)(1)の通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること。
(3)その支給額につき(1)の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
(国税庁タックスアンサーNo.5350「使用人賞与の損金算入時期」)
ポイント
(1)通知:「全社で〇〇万円」ではなく、一人ひとりに金額を伝えます。(2)支払:3月決算なら4月30日までに全員へ支払います。(3)損金経理:決算の帳簿で費用計上します。
数字でイメージすると
計算例
3月決算・3月31日までに20名へ各人別に通知 総額600万円を4月30日までに支払い、3月期に費用計上この600万円は3月期(今期)の損金です。支払いは翌期でも経費は今期です。
【最大の落とし穴】「支給日に在職している人だけ」と決めていると使えません
国税庁は通知の要件に次の注書きを置いています。見落とすと全部が翌期の経費になります。
注意
(注1)法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しません。(国税庁タックスアンサーNo.5350)
在職を条件にすると、通知の時点で金額が確定していないためです。退職すれば払わなくてよいなら、会社の債務として確定していません。
確認すべき書類
- 就業規則・賞与規程に「支給日に在職する者に支給する」という条項がないか
- 通知書に「支給日在籍を条件とする」と書いていないか
この条項がある会社は珍しくありません。慌てて確認しても規程の変更は簡単ではなく、前もって整えておく論点です。
パートタイマー等の区分について
パートタイマー等(他の使用人と同様の扱いをする者を除く)とその他の使用人を区分している場合は、その区分ごとに通知の有無を判定できるとしています。
通知した金額と違う額を払ったら
支払の要件は、通知をした金額を通知したすべての使用人へ払うことです。ここが崩れると要件を満たしません。
注意
- 資金繰りの都合で減額して払った
- 通知後に退職した人に払わなかった
- 1か月以内に払えなかった人が1人でもいた
これらに当たると、実際に支払った日の事業年度の損金になります。今期の決算対策としては効きません。
資金繰りとセットで考えてください
決算賞与は節税の前に現金が先に出ていきます。1か月以内に全額を払い切る必要があり、決算日直後の資金繰りが実際の判断材料になります。ここは決算前3か月にできる法人の決算対策と同じ考え方です。
役員には使えません
この取扱いは使用人(従業員)の賞与についてのものです。役員に賞与を出す場合は、事前に税務署へ届け出る事前確定届出給与の手続が必要で、届出がなければ原則として損金になりません。
ただし使用人兼務役員に支給する賞与のうち使用人としての職務に対応する部分は使用人賞与に含まれます。判定は個別性が高く、ご自身で判断せず、事前にご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 決算日までに決算賞与を払えません。今期の経費にできますか?
3要件を満たせばできます。各人別に全員へ通知し、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払い、通知日の事業年度で損金経理することです(国税庁タックスアンサーNo.5350)。1つでも欠けると支払った日の事業年度の損金になります。
Q2. 賞与規程に「支給日に在職する者に支給する」と書いてあります。問題ありますか?
問題になります。支給日在職者のみに支給する場合の通知は、要件の「通知」に該当しないとされています。この条項がある限り今期の損金にはできません。決算期前に規程の見直しを検討してください。
Q3. 通知したあとに退職した人がいます。その人の分を払わなくても大丈夫ですか?
支払の要件は、通知額を通知した全使用人へ支払うことです。1人でも支払っていない方がいると要件を満たさず、実際に支払った日の事業年度の損金になります。退職の可能性があるなら通知前にご相談ください。
Q4. 役員にも決算賞与を出したいのですが、同じ方法で経費にできますか?
できません。使用人(従業員)の賞与についての取扱いです。役員に支給して損金にするには、事前確定届出給与に関する届出書を期限までに提出し、届け出たとおりの時期・額を支給する必要があります。使用人兼務役員の使用人分は使用人賞与に含まれます。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は法人が使用人に支給する賞与を対象としており、役員賞与、使用人兼務役員の使用人分賞与の具体的な区分、賞与引当金の会計処理、社会保険料の計算については扱っていません。就業規則・賞与規程の変更は労働法上の手続を伴いますので、必要に応じて社会保険労務士等の専門家にもご相談ください。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁タックスアンサー No.5350「使用人賞与の損金算入時期」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm
- 法人税法施行令72条の3、法人税基本通達9-2-43〜9-2-44e-Gov法令検索
- 国税庁タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm
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