この記事のポイント
- 神社の祭礼への寄贈金や協賛金は、原則として「寄附金」です(法人税法第37条第1項)
- 寄附金は限度額を超える部分が損金不算入になります(例:56,250円)
- 広告宣伝費・交際費等・福利厚生費は寄附金から除かれます(法人税法第37条第7項)
- 学校法人などへの寄附には特別損金算入限度額があります(No.5283)
まず結論:神社の祭礼への寄贈金は「寄附金」になり、全額は経費になりません
神社の祭礼への寄贈金や商店会への協賛金は、原則として法人税法上の「寄附金」となり、支出した全額が経費になるわけではありません。
法人が寄附金を支出したときは、原則として一定額を超える部分の金額は損金の額に算入されないこととなっています。(国税庁タックスアンサーNo.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」)
ポイント
確かめる順番は3つです。①その支出は寄附金か、②支出先はどこか、③限度額はいくらか、の順に見ます。
資本金1,000万円・所得の金額800万円の会社が一般の寄附金を年間50万円支出した場合、損金にできるのは56,250円のみ。残り443,750円は損金になりません。
法人税法でいう「寄附金」は、名目では決まりません
「協賛金」「奉納金」などどんな名前で処理していても、見返りのない贈与かどうかという実質で寄附金にあたるかが決まります。
寄附金とは、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます。(国税庁タックスアンサーNo.5281)
法人税法上の寄附金に該当するかは個々の実態により判断しますが、例えば、社会事業団体、政治団体に対する拠金や神社の祭礼等の寄贈金などのように、事業に直接関係ない者に対する金銭でした贈与は、原則として寄附金として取り扱われます。(国税庁タックスアンサーNo.5281)
金銭以外の資産を贈与したときや経済的利益を無償で供与したときは、贈与時の時価で寄附金の額を計算します。低額譲渡でも、時価との差額のうち贈与と認められる金額は寄附金に含まれます(法人税法第37条第8項)。お金が動いていなくても対象になります。
寄附金から「除かれるもの」が実務の分かれ目です
事業遂行と直接関係がある広告宣伝費・交際費等・接待費・福利厚生費は、寄附金から除かれます。
金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与であっても、法人の事業遂行と直接関係のあると認められる広告宣伝および見本品の費用その他これらに類する費用ならびに交際費、接待費および福利厚生費とされるものは、寄附金から除かれます。(国税庁タックスアンサーNo.5281)
同じ趣旨は法人税法第37条第7項にも定められています。同じ「協賛金」でも、次のように行き先が分かれます。
| 区分 | 考え方 |
|---|---|
| 広告宣伝費など | 事業遂行と直接関係がある広告・見本品の費用 |
| 交際費等・接待費 | 事業に関係のある者への接待・供応・贈答の費用 |
| 福利厚生費 | 福利厚生費とされるもの |
| 役員等への給与 | 個人として負担すべき性格の支出 |
| 寄附金 | 上のいずれでもない、事業に無関係な者への贈与 |
ただし、寄附金から外れれば無条件に全額が経費になるわけではありません。交際費等になれば交際費等の損金不算入の計算に乗ります。詳しい計算は交際費の損金不算入の計算をご覧ください。
寄附金か交際費等かは個々の実態をよく検討して判定します(国税庁タックスアンサーNo.5262「交際費等と寄附金との区分」)。入会金・年会費の扱いは入会金・年会費の資産と経費の分かれ目で解説しています。
寄附金は「支出先」によって扱いが分かれます
寄附金だと決まったら、次は支出先を確認します。支出先によって損金算入の扱いが変わります(国税庁タックスアンサーNo.5281)。
| 支出先 | 損金算入の扱い |
|---|---|
| 一般の寄附金(下記以外) | 損金算入限度額の範囲内で算入 |
| 完全支配関係がある内国法人 | 一定のものは全額が不算入 |
| 国または地方公共団体 | 原則全額を損金算入 |
| 指定寄附金(財務大臣指定) | 原則全額を損金算入 |
特定公益増進法人への寄附金には別枠があります(後述)。神社の祭礼への寄贈金や商店会の協賛金は、通常「一般の寄附金」に入り、損金算入限度額に収まる分だけが経費になります。
一般の寄附金の損金算入限度額は、思っているより小さい
限度額は「資本の大きさ」と「所得の大きさ」から出した金額を足し、その4分の1にした金額です。
〔(期末の資本金の額および資本準備金の額の合計額または出資金の額)×当期の月数を12で割った数×1,000分の2.5+所得の金額×100分の2.5〕×4分の1=〔損金算入限度額〕(国税庁タックスアンサーNo.5281/法人税法施行令第73条第1項第1号)
数値例で確かめます
普通法人(当期の月数12か月)、期末の資本金の額1,000万円・資本準備金の額0円、法人税法施行令第73条第2項の所得の金額800万円、一般の寄附金の支出額50万円という前提です。一定の前提を置いた目安とお考えください。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 資本基準額 | 10,000,000円 ÷ 12 × 12か月 × 2.5 ÷ 1,000 | 25,000円 |
| 所得基準額 | 8,000,000円 × 2.5 ÷ 100 | 200,000円 |
| 損金算入限度額 | (25,000円 + 200,000円)× 1 ÷ 4 | 56,250円 |
| 支出した一般の寄附金 | ― | 500,000円 |
| 損金不算入額 | 500,000円 - 56,250円 | 443,750円 |
50万円を支出しても、経費にできるのは56,250円のみ。割合にすると1割強にとどまります。
寄附金を出せば税金が減る、という単純な関係にはありません。限度額を超える部分は損金の額に算入されず、税務上の所得のほうが会計上の利益より大きくなります。寄附は税金対策ではなく、地域との関係やお考えとして判断されるものとお考えください。
資本または出資を有しない法人や非営利型の一般社団法人などは、〔所得の金額×100分の1.25〕という別の算式です。
学校法人・社会福祉法人などへの寄附には別枠があります
寄附先が特定公益増進法人にあたる場合は、一般の寄附金とは別に特別損金算入限度額があります。
〔(期末の資本金の額および資本準備金の額の合計額または出資金の額)×当期の月数を12で割った数×1,000分の3.75+所得の金額×100分の6.25〕×2分の1=〔特別損金算入限度額〕(国税庁タックスアンサーNo.5283「特定公益増進法人に対する寄附金」)
一般の寄附金の算式より資本・所得の割合が大きく、掛ける割合も2分の1です。超える部分は一般の寄附金の枠内で算入されます。特定公益増進法人には公益社団法人・公益財団法人、私立学校法第3条の学校法人、社会福祉法第22条の社会福祉法人などがあります。
注意
適用には、確定申告書に「寄附金の損金算入に関する明細書」(別表14(2))を添付し、その法人が証する書類などを保存しておく必要があります(国税庁タックスアンサーNo.5283)。証明書類は寄附をした時点で、領収証とあわせて保管してください。
「いつ支出したか」は、帳簿ではなく支払いで見ます
寄附金は、現実にお金が支払われたときに支出があったものと扱われます。
法人税法上、寄附金については、法人の経理処理にかかわらず、現実に金銭等により支払いが行われたときにその支出があったものと認識することとされています。したがって、未払寄附金および手形払の寄附金で未決済のものは寄附金に含まれませんが、仮払寄附金は寄附金に含まれることとなります。(国税庁タックスアンサーNo.5281)
- 未払金に計上しただけ→その事業年度の寄附金に含まれません
- 手形払で未決済→含まれません
- 仮払金として資産計上済み→含まれます
「決算で費用計上したから今期の寄附金」とはなりません。決算では仮払金・立替金の中身も確かめてください。
自社で確かめる手順と、よくある勘違い
寄附金かどうかは、支出先と証明書類まで確かめて初めて判断できます。
確かめる手順
- ①元帳から贈与にあたる支出を拾う。雑費・交際費・広告宣伝費に紛れがちです
- ②1件ずつ相手先と見返りの有無を確認する
- ③寄附金となるものを支出先で分ける
- ④証明の書類をそろえる
- ⑤限度額を計算し、超える部分を把握する
補足
よくある勘違い
「寄附金として処理すれば全額経費」「協賛金という名前だから広告宣伝費」は誤りです。決算で未払計上しても支払うまでは寄附金に含まれず、資産の贈与や低額譲渡の差額も寄附金に含まれます。社長個人のお付き合いを会社が負担すれば給与になります。
個人として行う寄附は制度が別で、ふるさと納税をしたときの確定申告のように手続きが必要になるものもあります。ここから先は、資料を拝見しないと判断できません。
寄附金・協賛金の取扱いについて小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 毎年、地元の神社のお祭りに5万円を奉納しています。全額経費になりますか?
全額は損金にならない場合が多いです。神社の祭礼への寄贈金は原則、法人税法上の寄附金として扱われます(国税庁タックスアンサーNo.5281)。年間の寄附金総額と限度額をまず確認してください。
Q2. 会社名入りの看板やのぼりを出してもらう協賛金は、広告宣伝費にできますか?
実態によります。事業遂行と直接関係のある広告宣伝費は寄附金から除かれます(法人税法第37条第7項)。掲示内容・場所・支出額の釣り合いが分かる資料を残してください(No.5262)。
Q3. 決算が近いので、寄附をして利益を減らしておくのはどうでしょうか。
期待どおりにならないことが多いです。一般の寄附金は限度額を超える部分が不算入で、未払計上や未決済の手形払は今期の寄附金に含まれません(No.5281)。
Q4. 学校法人や社会福祉法人に寄附しました。一般の寄附金とは扱いが変わりますか?
変わります。特定公益増進法人への寄附には特別損金算入限度額があります(国税庁タックスアンサーNo.5283)。適用には別表14(2)の添付と証明書類の保存が必要です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は、法人税法上の寄附金の範囲、寄附金から除かれるものとの区分、支出先による扱いの違い、および一般の寄附金の損金算入限度額の計算という基本的な枠組みを扱っています。交際費等の損金不算入額の具体的な計算方法、本記事で取り上げていない種類の寄附金の取扱い、個人が行う寄附金控除の計算、完全支配関係がある法人の間の寄附に伴う受贈益の処理の細目、申告書の記載手順、寄附金に係る消費税の課税区分、政治団体への拠金に関する法人税法以外の法令上の可否については、本記事では扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の限度額は期末の資本金の額および資本準備金の額、当期の月数、所得の金額によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 タックスアンサー No.5281「寄附金の範囲と損金不算入額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5281.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5262「交際費等と寄附金との区分」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5262.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5283「特定公益増進法人に対する寄附金」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5283.htm
- e-Gov法令検索 法人税法(第37条 寄附金の損金不算入)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(第73条 一般寄附金の損金算入限度額)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
地元へ出している寄贈金や協賛金、税務上の区分を一度整理しませんか
神社の祭礼への寄贈金、商店会への協賛金、団体への会費。地域の会社ほど、こうした支出は毎年積み上がります。名目はさまざまでも、税務上は広告宣伝費・交際費等・福利厚生費・給与・寄附金のいずれかに振り分けて考えることになります。総勘定元帳と領収証、直近の申告書をお手元にご用意いただければ、1件ずつどの区分に入るのか、限度額はいくらになるのかを整理してお伝えします。決算を締める前のほうが、打てる手は多くなります。代表税理士が直接ご対応します。
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