法人税・節税

企業型確定拠出年金の掛金は会社の損金
受け取りは退職所得か公的年金等です

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 会社が出す事業主掛金・中小事業主掛金は、その事業年度の損金になります(法人税法施行令135条3号・4号)
  • 現実に納付していないと未払金では損金にできません(法人税基本通達9-3-1)。決算日までの納付確認が必須です
  • 受け取りは2通り。一時金は退職所得、年金は公的年金等(雑所得)になります
  • 会社の掛金は拠出限度額(月5万5千円)の範囲内。本人が上乗せする分は本人の所得控除で、会社の損金とは別物です

まず結論:入口は会社の損金、出口は退職所得か公的年金等です

従業員や社長ご自身の退職金を準備する方法のひとつが、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。税務上は、入口(掛金を出すとき)と出口(受け取るとき)で扱いが変わります。根拠は、法人税法施行令135条です。

内国法人が、各事業年度において、次に掲げる掛金、保険料、事業主掛金、信託金等又は信託金等若しくは預入金等の払込みに充てるための金銭を支出した場合には、その支出した金額(……)は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
三 確定拠出年金法(……)第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約に基づいて同法第二条第八項(定義)に規定する企業型年金加入者のために支出した同法第三条第三項第七号(規約の承認)に規定する事業主掛金(……)
四 確定拠出年金法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第六十八条の二第一項(中小事業主掛金)の個人型年金加入者のために支出した同項の掛金(法人税法施行令135条)

三号が事業主掛金、四号が個人型年金(iDeCo)への中小事業主掛金です(通称「iDeCo+」)。

退職金の準備方法は、入口の損金と出口の所得区分をセットで比べます
退職金の準備方法は、入口の損金と出口の所得区分をセットで比べます

会社が出す掛金は、どういう形で損金になるのか

135条は「支出した場合には、その支出した金額は……損金の額に算入する」と定めます。資産に計上して何年かで取り崩す形ではなく、支出した事業年度に全額が損金になります。

2つの掛金の違い

区分根拠どういうお金か
事業主掛金法人税法施行令135条3号会社が企業型年金規約に基づき、企業型年金加入者のために支出する掛金
中小事業主掛金法人税法施行令135条4号会社が個人型年金規約に基づき、個人型年金加入者のために支出する掛金

どちらも「会社が支出したもの」が損金になります。従業員本人が自分の給与から出した掛金は、会社の損金ではありません。

中小事業主掛金の制度を始めるには、労使の合意が必要です(確定拠出年金法施行令35条の2第2項)。社長も厚生年金の被保険者であれば加入できる場合がありますが、範囲は規約の定めによります。

いちばんの落とし穴:現実に納付しないと、未払金では損金にできません

実務で特につまずきやすいのがここです。法人税基本通達9-3-1にこう書かれています。

法人が支出する令第135条各号《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》に掲げる掛金、保険料、事業主掛金、信託金等又は預入金等の額は、現実に納付(……)又は払込みをしない場合には、未払金として損金の額に算入することができないことに留意する。(法人税基本通達9-3-1)

期末までに現実の納付が済んでいなければ、その事業年度の損金にはなりません。

注意

決算前に確かめること

  • 何月分まで実際に引き落とされているか
  • 口座残高不足で引落しが飛んでいる月はないか
  • 未払計上の掛金が決算書に残っていないか

この取扱いは135条各号に共通します。中小企業退職金共済でもまったく同じことが起こります。そちらは中小企業退職金共済の掛金と、受け取った退職金の取扱いで詳しく書いています。

掛金が現実に納付されているかを、決算日を越える前に確かめます
掛金が現実に納付されているかを、決算日を越える前に確かめます

掛金には上限があります(確定拠出年金法施行令11条・36条)

拠出限度額は政令で定められています。まず企業型からです。

一 企業型年金加入者であって、次に掲げる者(……「他制度加入者」という。)以外のもの 五万五千円
二 企業型年金加入者であって、他制度加入者であるもの 五万五千円から他制度掛金相当額(……)を控除した額(当該額が零を下回る場合には、零とする。)(確定拠出年金法施行令11条)

「他制度加入者」には確定給付企業年金の加入者などが含まれ、すでに持っている会社では5万5千円をそのまま使えません。

数値で見るとこうなります(一定の前提を置いた目安です)

前提月額の拠出限度額
他制度加入者以外55,000円
他制度掛金相当額が20,000円の他制度加入者55,000円 - 20,000円 = 35,000円

計算例

例1:月5万5千円を12か月拠出した場合

55,000円 × 12か月 = 660,000円 660,000円 × 実効税率30%(前提) = 198,000円

実効税率は会社の規模・所在地・所得の水準で変わるため、30%はあくまで前提です。

本人が個人型年金にも入っている場合

個人型年金(iDeCo)の拠出限度額は同じ政令36条にあります。

三 第二号加入者であって、企業型年金加入者であるもの(次号に掲げる者を除く。) 二万円(事業主掛金の拠出に係る月であって、当該事業主掛金の額が三万五千円を上回るときは、二万円から、当該事業主掛金の額から三万五千円を控除した額を控除した額)(確定拠出年金法施行令36条)

計算例

例2:会社の事業主掛金が月40,000円のとき

20,000円 -(40,000円 - 35,000円)= 15,000円

会社の掛金が月30,000円なら35,000円を上回らないため枠は20,000円のままです。会社が多く出すほど、本人の枠は削られます。

ここに挙げた金額は、令和8年9月1日時点で施行されている政令の額です。拠出限度額は改正されることがあります。実際の設計にあたっては必ず最新の政令をご確認ください。

受け取るときの所得区分は2通りです

入口が損金でも出口の課税は別の話です。老齢給付金は受け取り方で所得区分が変わります。

一時金なら退職所得です

七 確定拠出年金法第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約又は同法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第二十八条第一号(給付の種類)(……)に掲げる老齢給付金として支給される一時金(所得税法施行令72条3項7号)

72条3項は、退職手当等とみなす一時金を並べた規定です。老齢給付金を一時金で受け取れば、退職手当等とみなされて退職所得になります。

年金なら公的年金等です

六 確定拠出年金法第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約又は同法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第二十八条第一号(給付の種類)(……)に掲げる老齢給付金として支給される年金(所得税法施行令82条の2第2項6号)

こちらは公的年金等とされる年金を並べた規定です。年金で受け取れば、公的年金等として雑所得の計算に入ります。

受け取り方所得区分根拠
一時金退職手当等とみなされ、退職所得所得税法施行令72条3項7号
年金公的年金等(雑所得)所得税法施行令82条の2第2項6号

同じお金でも受け取り方で計算が変わります。どちらが有利かは他の退職金・年金の状況次第で、一般論では決められません。

一時金は他の退職金との重なりで退職所得控除額の計算が変わることがあります(過去に受け取った退職手当等との調整)。この論点は小規模企業共済を受け取るときの出口の税金で扱っています。

会社の損金と、本人の所得控除は別の欄で計算します
会社の損金と、本人の所得控除は別の欄で計算します

会社の損金と、本人の所得控除は別のものです

企業型DCが分かりにくいのは、お金の出どころが2つあるためです。税務上の扱いは、それぞれ別の場所で決まります。

誰が出すか名称税務上の扱い
会社事業主掛金・中小事業主掛金会社の損金(法人税法施行令135条3号・4号)
本人企業型年金加入者掛金・個人型年金加入者掛金本人の小規模企業共済等掛金控除(国税庁タックスアンサーNo.1135)

本人が上乗せする掛金はマッチング拠出と呼ばれ、国税庁タックスアンサーNo.1135「小規模企業共済等掛金控除」に次のとおり明記されています。

(2)確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
控除できる金額は、その年に支払った掛金の全額です。(国税庁タックスアンサーNo.1135)

同じタックスアンサーには小規模企業共済の掛金も並んでいます。本人側から見ると、どちらも同じ「小規模企業共済等掛金控除」に入ります。詳しくは小規模企業共済とiDeCoの掛金は全額が所得控除になりますをご覧ください。

注意

会社の損金と本人の所得控除を混同しない

  • 会社が出した分は会社の決算書と法人税申告で処理
  • 本人が出した分は本人の年末調整・確定申告で控除
  • 会社分を本人控除に、本人分を会社損金にすることはできません

「会社で経費になって、本人も控除が受けられる」と二重に数えてしまう誤りが起きやすいところです。給与計算と年末調整の担当者と認識をそろえておくことをおすすめします。

導入を検討するときの進め方と、よくある勘違い

進め方

  • ①誰の退職金を、いつ、どれだけ準備したいか整理します(従業員・社長・両方)
  • ②中小企業退職金共済・小規模企業共済・役員退職金の積立てなど、他の方法と比べます
  • ③すでに確定給付企業年金などの他制度があるか確認します(拠出限度額が変わります)
  • ④毎月の納付を資金繰りの中で続けられるか確かめます
  • ⑤決算のたびに現実に納付されているかを点検する体制を作ります
  • ⑥受け取る時期が近づいたら、一時金と年金のどちらにするか検討します

注意

よくある勘違い

  • 未払計上でも損金になる → 現実の納付がなければ算入できません
  • 会社の経費かつ本人の控除にもなる → 出した人で入る場所が違います
  • 他制度があっても月5万5千円まで出せる → 他制度加入者は限度額が下がります
  • 受け取り方を決めずに導入する → 一時金と年金で所得区分が変わります
  • 拠出限度額を導入時のまま覚えている → 改正されることがあります

この先は、利益の見通し・他制度の有無・社長の退職時期によって答えが変わります。制度設計は個社ごとに異なるため、一般論としてお伝えできるのはここまでです。

企業型確定拠出年金について小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 企業型確定拠出年金の掛金は、いつの事業年度の損金になりますか?

法人税法施行令135条3号により支出した事業年度の損金になります。ただし法人税基本通達9-3-1により、現実に納付していない分は未払金として算入できません。決算前に掛金が何月分まで引き落とされているかご確認ください。

Q2. 会社が掛金を出したうえで、従業員本人の所得控除にもなるのですか?

会社が支出した事業主掛金・中小事業主掛金は施行令135条3号・4号により会社の損金です。本人が上乗せする掛金は国税庁タックスアンサーNo.1135のとおり本人の小規模企業共済等掛金控除の対象で、会社分を本人控除に、本人分を会社損金にすることはできません。

Q3. 受け取るときは、一時金と年金でどちらが有利ですか?

有利かどうかは他の退職金・年金の状況で変わるため一般論では決められません。所得区分は一時金なら退職所得(所得税法施行令72条3項7号)、年金なら公的年金等として雑所得(同令82条の2第2項6号)です。

Q4. 確定給付企業年金がある会社でも、月5万5千円まで掛金を出せますか?

出せるとは限りません。確定拠出年金法施行令11条により、他制度加入者は5万5千円から他制度掛金相当額を控除した額が限度です(例:控除額20,000円なら限度35,000円)。金額は令和8年9月1日時点の政令額で、改正されることがあります。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は企業型確定拠出年金の事業主掛金・中小事業主掛金の損金算入と、老齢給付金を受け取ったときの所得区分を扱っており、加入できる年齢の上限、受給を開始できる時期、脱退一時金の要件、運営管理機関の手数料・商品ラインナップ・運用の利回り、中小事業主掛金納付制度の対象となる事業主の要件、退職所得控除額の計算における過去の退職手当等との調整の当てはめについては扱っていません。掛金の額をいくらにすべきかという助言も本記事では行っていません。記事中の数値例は一定の前提を置いた目安であり、拠出限度額は令和8年9月1日時点で施行されている政令の額です。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

退職金の準備方法は、出口まで見てから決めませんか

企業型確定拠出年金は、入口では会社の損金になりますが、出口では受け取り方によって退職所得にも公的年金等にもなります。他の制度と並べて比べないと、選び方を誤ります。決算書と、いま加入している制度の資料をお手元にご用意いただければ、入口と出口の両方を整理してお伝えします。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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