この記事のポイント
- ワンストップ特例を申請していても、確定申告をするとその申請は効力を失います
- 医療費控除、住宅ローン控除の初年度、不動産の売却、副業の申告。確定申告をする理由は毎年どこかで発生します
- 寄附金控除を書き忘れると、ふるさと納税の控除がまるごと消えます。6万円の寄附なら約5万8,000円が失われます
- 気づいたら、原則として法定申告期限から5年以内なら更正の請求ができます(国税庁タックスアンサーNo.2026)
ふるさと納税の控除には「2つの経路」がある
控除を受ける方法はワンストップ特例と確定申告の2つで、両方は使えません。確定申告をした時点でワンストップ特例は効力を失います。
経路1:ワンストップ特例(住民税だけで完結する)
寄附先の自治体に申請書を出せば確定申告なしで控除を受けられます。所得税からの控除はなく、翌年度の個人住民税から控除されます。
経路2:確定申告(所得税と住民税の両方から控除する)
確定申告書に寄附金控除を書くと、次の3つに分かれます。
- 所得税分:(ふるさと納税額 − 2,000円)を所得から差し引く「所得控除」(国税庁タックスアンサーNo.1155)
- 住民税の基本分:(ふるさと納税額 − 2,000円)× 10% を税額から差し引く
- 住民税の特例分:(ふるさと納税額 − 2,000円)×(100% − 10% − 所得税の税率)を税額から差し引く
ポイント
3つの合計で自己負担は2,000円になります。ただし特例分には上限があり、住民税の所得割額の2割を超える部分は控除されません。これが「限度額」の正体です。
所得税の寄附金控除額は、支出した特定寄附金の額と総所得金額等の40%相当額のいずれか低い金額から2,000円を差し引いた金額です(国税庁タックスアンサーNo.1150)。

ワンストップ特例が使えるのはどんな人か
ワンストップ特例を使うには次の3条件があります。
- もともと確定申告をする必要のない給与所得者等であること
- 1年間(1月1日から12月31日)の寄附先が5団体以内であること
- 寄附するたびに申請書を提出していること(提出期限は寄附翌年の1月10日必着)
見落とされやすいのは1つ目です。「確定申告が不要か」は申告が終わるまで確定しません。医療費・不動産売却・副業などは後から発生します。
ワンストップ特例が無効になる5つのケース
当事務所のご相談で多いのが次の5つです。どれも「確定申告をすることになった」という一点で無効になります。
ケース1:医療費控除・セルフメディケーション税制を受けるとき
医療費控除には確定申告が必要で、その時点で無効になります。基準は医療費控除はいくらから使える?10万円の基準とセルフメディケーション税制の選び方のとおりです。
ケース2:住宅ローン控除の初年度
住宅ローン控除は初年度だけ確定申告が必要です。家を買った年に寄附もしていれば無効になります。住宅ローン控除は初年度だけ確定申告が必要 必要書類と手続きの流れ参照。
ケース3:不動産を売却して譲渡所得の申告をするとき
売った年は譲渡所得の申告が必要で、税額がゼロでも申告自体は必要なため無効になります。マンションを売却したら税金はいくら?計算手順と手取りシミュレーションの考え方参照。
ケース4:副業などの所得が20万円を超えたとき
給与以外の所得が20万円を超えると申告が必要です。20万円以下でも他の理由で申告するなら含めます。副業の確定申告はいくらから必要?「20万円ルール」の正しい理解と落とし穴参照。
ケース5:寄附先が6団体以上になった/申請書を出し忘れた
6団体以上で使えなくなります。回数ではなく自治体の数で数えます(同じ自治体に3回でも1団体)。

一番多い事故:申告書に寄附金控除を書き忘れる
無効になったと気づかず寄附金控除を書かないと、控除がまるごと消えます。
数字で見る:6万円を寄附していた方の場合
次の前提で、失われる金額を計算します。
- ふるさと納税額:60,000円
- 所得税の税率:20%(復興特別所得税を含めると20.42%)
- 住民税の所得割額は十分にあり、特例分の2割上限には達していないものとします
| 控除の内訳 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 所得税分 | 58,000円 × 20.42% | 11,843円 |
| 住民税 基本分 | 58,000円 × 10% | 5,800円 |
| 住民税 特例分 | 58,000円 ×(100% − 10% − 20.42%) | 40,356円 |
| 合計 | ― | 58,000円 |
注意
本来2,000円で済むはずの自己負担が、書き忘れで60,000円になります。58,000円分の控除がまるごと消えるということです。
気づいたときにできること
期限内なら訂正申告、期限後でも更正の請求があり、国税庁タックスアンサーNo.2026によれば原則として法定申告期限から5年以内にできます。
確定申告でふるさと納税を申告するときの実務
申告書のどこに書くか
確定申告書第二表の「寄附金控除に関する事項」と「住民税に関する事項」の特例控除対象欄の両方に記載します(国税庁タックスアンサーNo.1155)。住民税欄が抜けると住民税の特例分(先の例で40,356円)が反映されないおそれがあります。
必要な書類
寄附先からの受領証(領収書)を用意します(国税庁タックスアンサーNo.1150)。年末の駆け込み寄附は到着が年明けになることがあるため、早めの確認が安心です。
どこからが専門判断か
記載自体は簡単ですが、「申告すべきか」「住民税・社会保険料への影響」は年間の税負担全体で判断すべきです。
よくある質問(FAQ)
Q1. ワンストップ特例を申請済みですが、医療費控除のために確定申告をします。ふるさと納税の手続きはやり直しですか?
はい。確定申告でワンストップ特例は効力を失うため、確定申告書にふるさと納税分の寄附金控除を必ず記載してください。
Q2. 寄附先が5団体以内かどうかは、寄附の回数で数えますか?
自治体の数で数えます。同じ自治体への複数回の寄附も1団体です。ただし寄附のたびに申請書の提出は必要です。
Q3. ワンストップ特例と確定申告で、控除される合計額は変わりますか?
自己負担2,000円は同じで、違うのはどの税金から引かれるかです。ワンストップ特例は所得税でなく翌年度の住民税から控除されます。2割上限はどちらも共通です。
Q4. 去年の確定申告でふるさと納税を書き忘れました。もう取り返せませんか?
更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です(国税庁タックスアンサーNo.2026)。書き忘れた年分がこの期間内であれば手続きできる可能性があります。受領証の有無をご確認ください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。控除額の上限は所得やその他の控除の状況によって一人ひとり異なり、記載の数値例はあくまで前提を置いた試算です。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1150「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2026「確定申告を間違えたとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 所得税法78条(寄附金控除)、国税通則法23条(更正の請求)e-Gov法令検索
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