この記事のポイント
- 住宅ローン控除は入居翌年に確定申告が必要。2年目以降は年末調整で完結します
- 控除率は年末残高等×0.7パーセント、控除期間は原則13年間です
- 令和8年度改正で適用期限が令和12年12月31日入居分まで5年延長されました
- 申告を忘れても還付申告は翌年1月1日から5年間提出できます
住宅ローン控除は「初年度だけ」確定申告が必要な理由
会社員の方でも、入居した年の翌年は必ず確定申告が必要です。2年目以降は勤務先の年末調整で済みます。
制度の基本
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、年末のローン残高等に0.7パーセントを掛けた金額を所得税額から差し引く制度です(国税庁タックスアンサーNo.1211-1)。所得控除ではなく税額控除のため効果が大きく、控除期間は原則13年間です。引ききれない分は、一定額を限度に翌年度の住民税から控除されます。
2年目以降は年末調整で完結します
初年度は確定申告書に必要書類を添えて税務署に提出します。2年目以降は、給与所得者なら「住宅借入金等特別控除証明書」と「年末残高等証明書」を勤務先に提出するだけで、年末調整により控除を受けられます。
初年度の確定申告に必要な書類
国税庁が挙げる主な添付書類は次のとおりです。住宅の種類(新築・買取再販・中古・増改築)で、追加書類が必要になることがあります。
| 書類 | 入手先・備考 |
|---|---|
| (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署・国税庁HP。作成コーナーなら自動作成 |
| 登記事項証明書 | 法務局。床面積・取得年月日を確認 |
| 売買契約書または工事請負契約書の写し | 取得対価の額を確認(印紙付きの写し) |
| 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 | 借入先の金融機関から10月〜11月頃に郵送 |
| 本人確認書類(マイナンバーカード等) | e-Tax送信なら提示・写し提出は不要 |
| 住宅性能を証明する書類 | 認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅で必要 |
ポイント
省エネ性能の区分で、控除対象の借入限度額が変わります。性能証明書類は引渡し時に一式で受け取っていることが多く、後から取り寄せると時間がかかります。申告準備の前に引渡し書類一式を確認してください。
注意
年末残高等証明書は秋以降に金融機関から届きます。紛失時は再発行できますが繁忙期は日数がかかり、申告期限の直前に気づくと間に合わないおそれがあります。年内に手元にあるか確認しておきましょう。
適用要件のチェックリスト
国税庁タックスアンサーNo.1211-1が挙げる要件のうち、実務で問題になりやすいものです。
① 新築等の日から6か月以内に入居
入居しただけでは足りません。控除を受ける年分の12月31日まで引き続き住んでいることが必要です。転勤等で年末に住んでいなければ、その年は原則として控除を受けられません(再適用できる取扱いもあります)。
② 床面積50平方メートル以上(特例居住用家屋は40平方メートル以上50平方メートル未満)
床面積の2分の1以上を自分の住まいとして使っていることも必要です。店舗併用住宅はご注意ください。床面積は登記事項証明書の面積で判定し、販売パンフレットの壁芯面積とは異なることがあります。
③ 合計所得金額2,000万円以下(特例居住用家屋は1,000万円以下)
「年収」ではなく「合計所得金額」で判定します。買い換えた年は、前の家の売却益(譲渡所得)も合計所得金額に加算される点にご注意ください。
④ 償還期間10年以上の借入金
繰上返済にも注意が必要です。当初の借入日から返済終了までの期間が10年未満になると、それ以後は控除を受けられません。
⑤ 居住用財産の譲渡特例との併用制限
入居した年とその前後の一定期間に3,000万円特別控除などの特例を受けていると、住宅ローン控除は使えません。買い換えの場合は特に影響します。
令和8年度税制改正での変更点
令和8年度税制改正により、住宅ローン減税は次のとおり見直されました(国土交通省公表資料)。
- 適用期限を5年間延長――入居日が令和8年1月1日から令和12年12月31日までの場合に適用
- 床面積要件の緩和――新築・既存住宅ともに40平方メートル以上に緩和(合計所得金額1,000万円超の方等は50平方メートル以上)
- 省エネ性能の高い既存住宅は控除期間13年間に拡充し、借入限度額を引上げ
- 子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額の上乗せを継続し、省エネ基準適合以上の既存住宅にも拡充
- 建築確認が令和10年以降の省エネ基準適合住宅は対象外(登記簿上の建築日が令和10年6月30日までは対象)
借入限度額は住宅の性能区分と入居年で細かく分かれ、一律の金額は示せません。最新の表は国土交通省「住宅ローン減税」のページでご確認ください(参考資料欄にリンク)。
初年度の申告を忘れていた場合
あきらめる必要はありません。給与所得者で年末調整だけ受けていた方は、還付申告として提出できます。
国税庁タックスアンサーNo.2030は「還付申告書は、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出することができます」と案内しています。令和8年中であれば令和3年分以降が対象です。
注意
控除期間そのものは延びません。入居年から13年という期間は動かず、申告が遅れた年分はその年分として申告します。またすでに確定申告書を出している年分は「更正の請求」になります(原則として法定申告期限から5年以内)。
初年度に申告しないと「住宅借入金等特別控除証明書」が発行されません。初年度の申告は2年目以降の年末調整の入口でもあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 共働きで住宅ローンを夫婦それぞれが組んでいます。二人とも控除を受けられますか?
受けられます。ペアローンや連帯債務で夫婦それぞれがローンを負担し持分も持つ場合、各自の残高と持分に応じて控除できます(二人とも初年度の申告が必要)。連帯保証人のみの方は対象外です。
Q2. 借り換えをした場合、住宅ローン控除は続けられますか?
続けられます。借換え後の借入金が当初のローン返済のためと認められ、償還期間10年以上等も満たすことが条件です。控除期間は延びず当初の入居年から数え、当初残高を超えた部分は対象外です。
Q3. 控除しきれなかった分は住民税から引かれますか?
はい、引かれます。所得税から控除しきれない金額があるときは、一定額を限度に翌年度の個人住民税から控除されます。別途の申請はいりません。確定申告や年末調整の情報が市区町村へ送られ、自動的に反映されます。
Q4. 親から住宅の購入資金を援助してもらいました。住宅ローン控除に影響しますか?
含まれません。控除の対象は借入金の年末残高であり、贈与資金は借入金ではないためです。ただし住宅取得等資金の贈与税非課税特例を併用する場合、取得対価から贈与額を差し引く調整計算が必要です。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・国税庁および国土交通省の公表資料に基づく一般的な解説です。住宅ローン控除は住宅の性能区分・入居年・取得形態によって借入限度額や要件が細かく異なり、本記事の記載がすべての事案に当てはまるものではありません。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1211-1.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2030「還付申告」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
- 国土交通省「住宅ローン減税」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000017.html
- 国土交通省 報道発表「住宅ローン減税等の延長・拡充が閣議決定されました」https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000241.html
- 租税特別措置法41条(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)e-Gov法令検索
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