この記事のポイント
- 会社の赤字(欠損金)は翌年以降10年間、黒字と相殺できます
- 中小企業は黒字の全額まで相殺可能。大企業は黒字の半分までです
- 条件は赤字の年の青色申告と毎年欠かさぬ申告の継続
- もうひとつの選択肢が「繰戻し還付」。前年の法人税が現金で戻ります(期限内申告が必須)
まず結論:赤字は「捨てるもの」ではありません
税金の世界では、赤字は「欠損金(けっそんきん)」という財産のようなものになります。使い道は2つです。
- ① 繰越控除(くりこしこうじょ):赤字を取っておいて、将来の黒字と相殺する
- ② 繰戻し還付(くりもどしかんぷ):赤字を前年にぶつけて、納めた法人税を返してもらう
「赤字だから申告は後回しでいいか」が一番もったいないパターンです。
① 繰越控除:赤字は10年間、取っておけます
青色申告をした年の赤字は、その後10年間の黒字から差し引けます(平成30年4月1日より前に始まった事業年度の赤字は9年間、タックスアンサーNo.5762)。
計算例
例:繰り越してきた赤字が150万円。今年の黒字が100万円。
黒字100万円は赤字と相殺されて、今年の課税所得は0円。法人税はかかりません。 使い切れなかった赤字50万円は、翌年以降にさらに繰り越せます。創業期の会社にとって、とても大きな制度です。赤字が複数の年にある場合は、古い年の赤字から順に使います。
中小企業は「黒字の全額」まで相殺できます
ここが中小企業の強みです。
| 会社の区分 | 相殺できる範囲 |
|---|---|
| 中小法人等(資本金1億円以下など) | その年の黒字の全額まで |
| それ以外の法人(大企業など) | その年の黒字の50パーセントまで(平成30年4月1日以後に開始する事業年度) |
注意
資本金1億円以下でも資本金5億円以上の会社の100パーセント子会社などは「中小法人等」に入りません。
条件は「赤字の年に青色申告」+「毎年欠かさず申告」
- 赤字が出た年に、青色申告で確定申告書を出していること
- その後の年も、連続して確定申告書を出し続けていること(白色申告でもOK)
1年でも申告しない年があると、そこで赤字は使えなくなります。数年後の黒字化で、この空白が数百万円の差になります。赤字でも休眠でも、申告は毎年続けてください。
② 繰戻し還付:前の年に納めた法人税が戻ってきます
今年の赤字を前年の黒字にぶつけ、納めた法人税を返してもらう制度です(タックスアンサーNo.5763)。実質的に中小企業向けの制度です。
将来の節税でなく、いま現金が戻るのが最大の特徴です。資金繰りが苦しい赤字の年に効きます。
計算例
数字のイメージ(資本金1,000万円の中小企業)
前の年:黒字1,000万円 → 法人税を約166万円納めた 今年:赤字800万円 戻ってくる金額の目安 = 166万4,000円 × 800万円 ÷ 1,000万円 ≒ 約133万円※法人税のみの計算です。地方税の扱いは本記事では触れていません。
繰戻し還付は条件が厳しめです。特に「期限」
繰戻し還付を使うには、次の3つがすべて必要です(タックスアンサーNo.5763)。
- ① 前の年から続けて青色申告をしていること
- ② 赤字の年の申告書を期限までに出すこと
- ③ 申告書と同時に、還付請求書を出すこと
繰越控除と違い、期限に1日でも遅れたら使えません。
繰り越すか、繰り戻すか——選び方の目安
同じ赤字を両方にフルに使うことはできません。繰戻しに使った分は、繰越しの残高から消えます。
| ① 繰越控除 | ② 繰戻し還付 | |
|---|---|---|
| お金の動き | 将来、黒字が出た年の税金が減る | いま現金が戻る |
| 向いている会社 | 来年以降、大きな黒字が見込める | 前の年に法人税を納めていて、資金繰りを楽にしたい |
| 期限内申告 | 条件ではない(連続申告は必要) | 必須条件 |
先ほどの例(赤字800万円)で比べると、繰戻し還付は約133万円が今すぐ戻り、繰越控除は翌年の黒字が800万円なら翌年の法人税が約120万円減ります。
繰戻しのほうが金額も大きく、1年早く現金になります。翌年以降に大きな黒字が見込めるなら、繰越しが有利なこともあります。
欠損金の取扱いについて小松公認会計士・税理士事務所ができること
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 赤字だったので申告書を出しませんでした。翌年に黒字が出たら、この赤字は使えますか?
使えません。繰越控除は赤字の年の青色申告と、その後の連続申告が条件です(国税庁タックスアンサーNo.5762)。
Q2. 繰戻し還付と繰越控除は、両方使えますか?
両方をフルに使うことはできません。繰戻しに使った分は、繰り越せる赤字から差し引かれます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。
Q3. 申告期限を過ぎてしまいました。繰戻し還付は請求できますか?
できません。繰戻し還付は、赤字の年の申告書を期限内に出し、同時に還付請求書を出すことが条件です(国税庁タックスアンサーNo.5763)。期限後の申告では使えません。
Q4. 資本金1億円以下ですが、親会社は大企業です。中小企業の扱いになりますか?
資本金の額だけでは決まりません。資本金5億円以上の会社に100パーセント保有されている会社などは、資本金1億円以下でも「中小法人等」から外れます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.5762・No.5763・No.5759は、いずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。本記事に記載した還付金額および税額の目安は、法人税のみで計算しており、地方法人税・法人住民税・法人事業税は含めていません。欠損金の繰戻しによる還付における地方税の取扱いは、本記事では扱っていません。グループ通算制度を適用している法人については計算方法が異なります。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.5762「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5763「欠損金の繰戻しによる還付」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 法人税法57条(欠損金の繰越し)・80条(欠損金の繰戻しによる還付)https://elaws.e-gov.go.jp/
赤字の年こそ、申告のしかたで差がつきます
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