法人税・節税

会社の赤字は10年間使えます
欠損金の繰越控除と、前期の法人税が戻る繰戻し還付

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 会社の赤字(欠損金)は翌年以降10年間、黒字と相殺できます
  • 中小企業は黒字の全額まで相殺可能。大企業は黒字の半分までです
  • 条件は赤字の年の青色申告毎年欠かさぬ申告の継続
  • もうひとつの選択肢が「繰戻し還付」。前年の法人税が現金で戻ります(期限内申告が必須)

まず結論:赤字は「捨てるもの」ではありません

税金の世界では、赤字は「欠損金(けっそんきん)」という財産のようなものになります。使い道は2つです。

  • ① 繰越控除(くりこしこうじょ):赤字を取っておいて、将来の黒字と相殺する
  • ② 繰戻し還付(くりもどしかんぷ):赤字を前年にぶつけて、納めた法人税を返してもらう

「赤字だから申告は後回しでいいか」が一番もったいないパターンです。

赤字から黒字への業績推移
会社の赤字は10年間繰り越して黒字と相殺できます

① 繰越控除:赤字は10年間、取っておけます

青色申告をした年の赤字は、その後10年間の黒字から差し引けます(平成30年4月1日より前に始まった事業年度の赤字は9年間、タックスアンサーNo.5762)。

計算例

:繰り越してきた赤字が150万円。今年の黒字が100万円。

黒字100万円は赤字と相殺されて、今年の課税所得は0円。法人税はかかりません。 使い切れなかった赤字50万円は、翌年以降にさらに繰り越せます。

創業期の会社にとって、とても大きな制度です。赤字が複数の年にある場合は、古い年の赤字から順に使います。

中小企業は「黒字の全額」まで相殺できます

ここが中小企業の強みです。

会社の区分相殺できる範囲
中小法人等(資本金1億円以下など)その年の黒字の全額まで
それ以外の法人(大企業など)その年の黒字の50パーセントまで(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)

注意

資本金1億円以下でも資本金5億円以上の会社の100パーセント子会社などは「中小法人等」に入りません。

条件は「赤字の年に青色申告」+「毎年欠かさず申告」

  • 赤字が出た年に、青色申告で確定申告書を出していること
  • その後の年も、連続して確定申告書を出し続けていること(白色申告でもOK)

1年でも申告しない年があると、そこで赤字は使えなくなります。数年後の黒字化で、この空白が数百万円の差になります。赤字でも休眠でも、申告は毎年続けてください。

② 繰戻し還付:前の年に納めた法人税が戻ってきます

今年の赤字を前年の黒字にぶつけ、納めた法人税を返してもらう制度です(タックスアンサーNo.5763)。実質的に中小企業向けの制度です。

将来の節税でなく、いま現金が戻るのが最大の特徴です。資金繰りが苦しい赤字の年に効きます。

計算例

数字のイメージ(資本金1,000万円の中小企業)

前の年:黒字1,000万円 → 法人税を約166万円納めた 今年:赤字800万円 戻ってくる金額の目安 = 166万4,000円 × 800万円 ÷ 1,000万円 ≒ 約133万円

※法人税のみの計算です。地方税の扱いは本記事では触れていません。

年度別に保管された申告書類
繰戻し還付で前期の法人税が戻る場合もあります

繰戻し還付は条件が厳しめです。特に「期限」

繰戻し還付を使うには、次の3つがすべて必要です(タックスアンサーNo.5763)。

  • ① 前の年から続けて青色申告をしていること
  • ② 赤字の年の申告書を期限までに出すこと
  • ③ 申告書と同時に、還付請求書を出すこと

繰越控除と違い、期限に1日でも遅れたら使えません。

繰り越すか、繰り戻すか——選び方の目安

同じ赤字を両方にフルに使うことはできません。繰戻しに使った分は、繰越しの残高から消えます。

① 繰越控除② 繰戻し還付
お金の動き将来、黒字が出た年の税金が減るいま現金が戻る
向いている会社来年以降、大きな黒字が見込める前の年に法人税を納めていて、資金繰りを楽にしたい
期限内申告条件ではない(連続申告は必要)必須条件

先ほどの例(赤字800万円)で比べると、繰戻し還付は約133万円が今すぐ戻り、繰越控除は翌年の黒字が800万円なら翌年の法人税が約120万円減ります

繰戻しのほうが金額も大きく、1年早く現金になります。翌年以降に大きな黒字が見込めるなら、繰越しが有利なこともあります。

役員会議
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欠損金の取扱いについて小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 赤字だったので申告書を出しませんでした。翌年に黒字が出たら、この赤字は使えますか?

使えません。繰越控除は赤字の年の青色申告と、その後の連続申告が条件です(国税庁タックスアンサーNo.5762)。

Q2. 繰戻し還付と繰越控除は、両方使えますか?

両方をフルに使うことはできません。繰戻しに使った分は、繰り越せる赤字から差し引かれます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。

Q3. 申告期限を過ぎてしまいました。繰戻し還付は請求できますか?

できません。繰戻し還付は、赤字の年の申告書を期限内に出し、同時に還付請求書を出すことが条件です(国税庁タックスアンサーNo.5763)。期限後の申告では使えません。

Q4. 資本金1億円以下ですが、親会社は大企業です。中小企業の扱いになりますか?

資本金の額だけでは決まりません。資本金5億円以上の会社に100パーセント保有されている会社などは、資本金1億円以下でも「中小法人等」から外れます(国税庁タックスアンサーNo.5762)。

免責事項

本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.5762・No.5763・No.5759は、いずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。本記事に記載した還付金額および税額の目安は、法人税のみで計算しており、地方法人税・法人住民税・法人事業税は含めていません。欠損金の繰戻しによる還付における地方税の取扱いは、本記事では扱っていません。グループ通算制度を適用している法人については計算方法が異なります。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

赤字の年こそ、申告のしかたで差がつきます

赤字を将来に繰り越すか、前の年の税金を返してもらうか。選べるのは申告のときだけです。しかも期限に1日でも遅れると使えなくなる制度があります。赤字が見えてきた段階でご相談いただければ、選べる手が残ります。代表税理士が直接ご対応します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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