この記事のポイント
- 掛金はその事業年度に全額損金算入されます(措法66の11①二)。解約手当金は受け取った期の益金になります
- 🔴 節税ではなく課税の繰延べです。出口を決めずに入ると、解約した期に税金が戻ってきます
- 掛金は月5,000円〜20万円(5,000円単位)、残高800万円まで積み立てられます
- 🔴 40か月未満の解約は元本割れ。令和6年10月1日以後の解除は、以後2年間は再加入の掛金が損金になりません(措法66の11②)
まず結論:入口(掛金)だけを見て入ると、出口(解約)で税金が戻ってきます
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業の節税策としてよく名前が挙がる制度です。結論から言うと、税金を減らす制度ではありません。
掛金を払った期の所得は小さくなりますが、共済契約を解除して解約手当金を受け取った期には、その金額が益金になります。いったん外に置いた利益が解約時に会社へ戻ってくる、「課税の繰延べ」です。
本当に考えるべきは「いつ、どんな期に解約するか」です。解約手当金を受け止められる大きな損金が用意されているか。ここが設計のすべてです。何の準備もない期に解約すると、その期の利益が一気に膨らみます。
本記事では、制度の仕組み・課税の繰延べという性格・40か月の壁・令和6年10月からの重要な改正までを順に整理します。
補足
本記事は法人(法人税)を対象としています。個人事業主の必要経費算入、加入資格の細目、共済金の借入れの条件は扱いません。

経営セーフティ共済とはどんな制度か

本来の目的は「連鎖倒産を防ぐこと」です
運営するのは独立行政法人 中小企業基盤整備機構です。本来の目的は節税ではなく、取引先が倒産したときに無担保・無保証で借入れができる点にあります。売掛金が回収できなくなる連鎖を止めるための備えです。借入れの限度額や加入要件の細目は、機構の案内でご確認ください。
掛金は5,000円から20万円まで
掛金月額は5,000円から20万円まで、5,000円単位で選べ、加入後の増額・減額もできます。掛金残高が800万円に達するまで納付でき、この2つの数字が後述する「40か月」の根拠になります。
掛金は支出した事業年度の損金になります
国税庁の資料によれば、掛金を支出した場合、その支出した金額はその事業年度に損金算入することとされています(措法66の11①二)。本来は資産となる積立金を、特例として損金にできる点がこの制度の特徴です。
計算例
掛金月額20万円で積んだ場合の損金算入額
200,000円 × 12か月 = 2,400,000円これが1年間に損金算入される金額です。節税額は所得や適用税率により変わります。
確定申告書に明細書の添付が必要です
掛金を損金にするには、確定申告書に所定の明細書を添付する必要があります。添付を忘れると損金にできない事態になりかねません。様式は改正で変わることがあるため、提出時は国税庁の様式でご確認ください。
「節税」ではなく「課税の繰延べ」です
入口と出口を並べて見てください
経営セーフティ共済のお金の流れは、入口と出口の2つに分かれます。表に整理します。
| 入口(掛金を払うとき) | 出口(解約するとき) | |
|---|---|---|
| お金の動き | 会社から共済へ出ていく | 共済から会社へ戻ってくる |
| 税務上の扱い | 支出した事業年度の損金(措法66の11①二) | 受け取った事業年度の益金 |
| その期の所得 | 減る | 増える |
| 結果として | その期の税負担は軽くなる | その期の税負担は重くなる |
減らした所得はなくなったのではなく、将来へ移しただけです。
「節税になる」という説明は正確ではありません
掛金を損金にした金額と解約手当金として益金になる金額は、原則として対応します。会社の生涯で見れば、この制度は税金の総額を減らすわけではなく、課税される時期を自分で選べるようにする制度です。
それでも使う価値はあります
時期を選べること自体に価値があります。利益が大きく出た期に掛金を積み、利益が小さい期や大きな損金が出る期に解約手当金を受け取れば、会社全体の税負担はならされます。取引先の倒産への備えという本来の機能も同時に得られます。
問題は、この「時期の選択」を意識せずに加入している会社が多いことです。いつ解約するかは誰も決めていない——これが失敗の入口になります。
出口の設計:解約手当金と大きな損金を同じ期に合わせる
考え方はひとつだけです
解約手当金という益金が立つ期に、それを受け止める損金を用意しておく。これだけです。大きな益金と大きな損金が同じ期に並べば、所得の跳ね上がりは抑えられます。
大きな損金が出る場面をあらかじめ想定します
会社の一生でまとまった損金が生じる場面には、次のようなものがあります。
- 役員退職金を支給する期(社長の勇退・世代交代のタイミング)
- 大規模修繕を行う期
- 設備の除却を行う期
- その他、業績悪化で赤字が見込まれる期
とくに役員退職金は金額が大きく時期も決めやすいため、出口として意識されることが多い場面です。
「いつか考える」では間に合いません
出口は加入の時点で考え始めてください。40か月という期間の制約があること、令和6年度の改正で解約と再加入を繰り返す前提が崩れたことが理由です。掛金月額・積立期間・解約時期は、ひとつながりの設計として決める必要があります。
ここから先は個社ごとです
具体的な組み立ては、会社の利益の見通し・社長の年齢・設備投資の計画・資金繰りなど見るべき要素が多く、一般論では書けません。掛金の金額と解約の時期をセットで決めておかないと、この制度は機能しません。設計は個社ごとです。弊所で組み立てます。

40か月の壁 早く解約すると元本割れします
解約手当金の戻り方
中小企業基盤整備機構によれば、自己都合の解約でも12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上、40か月以上納めていれば掛金全額が戻ります。裏を返せば、40か月に満たないうちに解約すると掛金の全額は戻ってきません。12か月に満たない場合は8割以上という水準にも届きません。
元本割れは「損金にした意味」を失わせます
掛金は全額を損金にしていますが、戻る金額が掛金より少なければ会社の手元に残るお金は減ります。税負担が軽くなった分より戻らなかった元本のほうが大きければ、差引きで会社は損をします。
40か月と800万円は同じ地点でつながります
計算例
掛金月額20万円のときの到達点
200,000円 × 40か月 = 8,000,000円掛金月額20万円なら40か月で掛金残高の上限800万円に到達し、同時に解約手当金が掛金全額になる時期を迎えます。3年4か月がひとつの節目です。
掛金の月額は「払い続けられる水準」で決めます
上限だからといって、いきなり月20万円にしないでください。月20万円は年間240万円の資金が会社から出ていくということです。途中で資金繰りが苦しくなって解約すれば、40か月の壁に引っかかります。40か月払い続けても資金繰りに支障が出ない金額から始めるのが堅実です。
令和6年10月からの重要な改正:解約して入り直しても、2年間は掛金が損金になりません

従来よく行われていた「回し方」
かつては、掛金残高が上限の800万円に達したら解約し、解約手当金を受け取ったうえですぐに再加入して掛金を損金にし続けるという使い方が広く行われていました。
令和6年度の改正で、この方法は封じられました
国税庁「令和6年度 法人税関係法令の改正の概要」によれば、共済契約の解除があった後、同法の共済契約を締結した場合、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は本特例の適用ができず、支出時に損金不算入(資産計上)となります(措法66の11②)。掛金は払えますが、税務上は資産として計上されます。
いつから適用されるか
この改正は、令和6年10月1日以後に解除があった後共済契約を締結した法人が支出する掛金について適用されます(改正法附則53)。基準になるのは解除の日です。
何が変わったのか
- 解約と再加入を繰り返す前提の設計が成り立たなくなりました(2年間の空白ができるため)
- 「とりあえず解約する」判断のコストが上がりました。次に損金にできるまで2年待つことになります
解約のタイミングは、以前にも増して慎重に決める必要があります。出口を決めずに加入し資金が必要になって解約すると、その後2年間、この制度を税務上のメリットとして使えなくなります。
注意
いま確認していただきたい3点
①いま加入している契約の解約時期を決めているか
②解約手当金を受け取る期に当てられる損金の予定があるか
③過去に解除している場合、その解除の日はいつか(令和6年10月1日以後なら、いま払っている掛金の取扱いを確認してください)
よくある失敗
実務でよく見かける4つのつまずきを挙げます。
1. 出口を決めずに加入している
「今期は利益が出たから」という理由だけで加入し、数年後に解約手当金を受け取る期になって益金の大きさに驚くケースです。加入の段階で「この共済はいつ解約しますか」という問いに答えられるようにしてください。
2. 40か月未満で資金繰りに困って解約する
掛金を上限近くに設定して、途中で払いきれなくなるパターンです。月20万円なら年間240万円が会社から出ていきます。40か月に届かないうちに解約すれば掛金全額は戻りません。苦しくなったら、解約する前に減額という選択肢を思い出してください。
3. 解約手当金の入る期に、当てる損金の予定がない
社長の勇退時期がずれた、資金が必要で先に解約したなどの理由で、解約手当金だけが単独で益金になる期ができてしまうケースです。この期の所得は、各期に減らした所得がまとめて戻るため大きく膨らみます。解約の意思決定はその期の損益の見通しとセットで行ってください。
4. 解約と再加入を繰り返す前提で設計している
「800万円まで積んだら解約して、また入り直せばいい」という前提で組み立てているケースです。令和6年10月1日以後に解除があった後に入り直した場合、解除の日から2年を経過する日までに支出する掛金は損金になりません(措法66の11②)。古い情報のまま設計していると、想定していた損金が計上できず所得が大きく出ます。過去に「回す」前提で説明を受けた記憶がある方は、現状を確認してください。
経営セーフティ共済について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 経営セーフティ共済の掛金を払えば、その分だけ会社の税金が減るのですか?
掛金は支出した事業年度に損金算入されます(措法66の11①二)。ただし解約手当金は受け取った期の益金になるため、制度全体では税金を減らすのではなく課税の繰延べです。受け取る期に当てる損金を決めておくことが大切です。
Q2. 掛金はいくらまで積めますか。いつまで払い続けられますか?
掛金は月5,000円〜20万円(5,000円単位)で自由に選べ、増額・減額も可能です。残高800万円に達するまで納付できます(中小企業基盤整備機構)。詳しい損金額の計算は本文の計算例をご覧ください。
Q3. 「40か月の壁」とは何のことですか?
自己都合の解約でも12か月以上で掛金総額の8割以上、40か月以上で全額が戻ります(中小企業基盤整備機構)。40か月未満の解約は元本割れするため、払い続けられる金額で始めてください。
Q4. 800万円まで積んだら、いったん解約して入り直せばよいのではありませんか?
令和6年度の改正で使えなくなりました。共済契約の解除後2年を経過する日までに支出する掛金は、本特例の適用ができず資産計上になります(措法66の11②)。令和6年10月1日以後の解除が対象です(改正法附則53)。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。本記事は法人(法人税)を対象としており、個人事業主が掛金を必要経費に算入する場合の取扱いは扱っていません。また、加入資格(業種ごとの資本金・従業員数の基準)、共済金の借入れの条件、掛金の前納の取扱いについても本記事では扱っていません。これらは独立行政法人中小企業基盤整備機構の案内でご確認ください。確定申告書に添付する明細書の様式の番号・名称は改正により変わることがあるため、国税庁の様式でご確認ください。本記事の数値例は、掛金月額を20万円と仮定した計算上の目安であり、実際の損金算入額・税額を保証するものではありません。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁「令和6年度 法人税関係法令の改正の概要」(12 その他主な改正項目 ⑵ 特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例の見直し)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2024/pdf/O.pdf
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 制度の特長」https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/features/
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 掛金について」https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/tkyosai/installment/
入る前に、出口を決めてください
掛金の金額と解約の時期は、セットで決める必要があります。すでに加入されている場合も、解約時期の設計と、令和6年10月からの改正の影響の確認からお手伝いします。顧問契約のご相談も歓迎です。代表税理士が直接ご対応します。
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