この記事のポイント
- 満期保険金は、払込保険料と50万円の特別控除を引いて残りが出なければ税金はかかりません
- 課税されても、ほかの所得と合算するのは一時所得の2分の1だけです(国税庁タックスアンサーNo.1490)
- 保険料の負担者と受取人が同じなら所得税、違うなら贈与税です(No.1755)。契約者の名義でなく実際に払った人で判定します
- 年金形式で受け取ると公的年金等以外の雑所得になり、50万円控除も2分の1の計算もありません
まず結論:課税されるのは「増えた分」だけです
満期保険金は、「受け取った金額」ではなく「増えた分」に課税されます。そこからさらに2段階で小さくなるため、税金がかからない方も少なくありません。
国税庁タックスアンサーNo.1490は、一時所得の金額を次のように計算するとしています。
総収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除額(最高50万円)= 一時所得の金額
さらに、「一時所得は、その所得金額の2分の1に相当する金額を給与所得などの他の所得の金額と合計して総所得金額を求めた後、納める税額を計算します」とされています。
①保険料を引く、②50万円を引く、③残りを半分にする。この3段階を経た金額だけが、ほかの所得と合算されます。

誰が保険料を負担したかで税金の種類が変わります
国税庁タックスアンサーNo.1755は、「保険料の負担者、保険金受取人が誰であるかにより、所得税、贈与税のいずれかの課税の対象になります」としています。
| 保険料の負担者 | 保険金受取人 | 課税される税金 |
|---|---|---|
| 本人 | 本人 | 所得税(一時所得または雑所得) |
| 本人 | 本人以外 | 贈与税 |
注意
判定基準は「契約者が誰か」ではなく「実際に払ったのは誰か」です。名義が配偶者やお子様でも自分の口座から払えば負担者は自分で、名義人が受け取れば贈与税の対象です。満期前に確認しましょう(死亡保険金は別の扱いです)。
計算例で確認する
ケース1:課税される場合
- 満期保険金:500万円
- 払い込んだ保険料の総額:420万円
- その年に他の一時所得はない
- 保険料の負担者と受取人はいずれも本人
一時所得 = 500万円 − 420万円 − 50万円 = 30万円
総所得金額に算入する額 = 30万円 × 1/2 = 15万円
この15万円が給与所得などと合算されます。課税総所得金額330万円超695万円以下(税率20パーセント)の方なら、増える税負担はおおよそ次のとおりです。
| 税目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 所得税 | 150,000円 × 20% | 30,000円 |
| 復興特別所得税 | 30,000円 × 2.1% | 630円 |
| 住民税(標準税率10%) | 150,000円 × 10% | 15,000円 |
| 合計 | 45,630円 |
500万円を受け取り、税負担は約4万6千円です(端数処理は考慮していません。実際の税額は他の所得や所得控除で変わります)。
ケース2:課税されない場合
同じ500万円でも、払込保険料の総額が450万円なら次のようになります。
500万円 − 450万円 − 50万円 = 0円
一時所得は生じず、課税されません。「受け取ったから申告が必要」と決めつける前に、払込保険料の総額を支払通知書で確認してください。

年金で受け取ると雑所得になります
No.1755は、「満期保険金等を年金で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります」としています。雑所得は、受け取った年金額から対応する払込保険料を差し引いた金額です。
注意
雑所得には50万円の特別控除も半分計算もありません。一時金か年金かで税負担が変わるため、選べる契約なら比べる価値があります。
一時所得になるのは保険金だけではありません
No.1490では、一時所得の例として次のものが挙げられています。
- 懸賞や福引きの賞金品(業務関連を除く)
- 競馬や競輪の払戻金(継続的行為によるものを除く)
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等
- 法人から贈与された金品
- 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
ポイント
特別控除の50万円は、その年の一時所得を合計してから引きます。1件ごとには引けず、同じ年に満期が重なると枠を使い切ります。時期を選べるなら年を分けると変わる可能性があります。
給与所得者の「20万円ルール」との関係

会社員などの給与所得者は、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。一時所得はどの段階の金額で判定するか誤解しやすい点です。迷ったら税務署か税理士にご確認ください。
所得税の申告がいらない場合でも、住民税の申告は別に必要な場合があります。20万円ルールに当たる取扱いが住民税にはないためです。市区町村にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 満期保険金を受け取りました。必ず確定申告が必要ですか?
必ずではありません。受取額から払込保険料と特別控除50万円を引いて残りがなければ、一時所得は生じません。支払通知書で確かめてください。
Q2. 契約者は妻ですが、保険料は夫が払っていました。誰の税金になりますか?
判定は実際に払った人で行います。夫が払い妻が受け取れば、贈与税の対象です(国税庁タックスアンサーNo.1755)。名義だけで判断せず、満期前にご確認ください。
Q3. 同じ年に2つの保険が満期になりました。特別控除50万円は2回使えますか?
使えません。特別控除は最高50万円で一時所得を合計してから差し引きます。同じ年に満期が重なると枠を使い切るため、時期を選べるなら分けると変わる可能性があります。
Q4. 一時金で受け取るのと年金で受け取るのとでは、税金が変わりますか?
変わります。一時金は一時所得で50万円控除と半分にする計算があります。年金は公的年金等以外の雑所得で、年金額から払込保険料を引いた額が課税対象、控除も半分計算もありません。選べるなら比べてください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。保険金の課税関係は契約の内容・保険料の負担状況・受取方法によって結論が異なり、記載した計算例も端数処理を省略した簡略なものです。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1490「一時所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1490.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1755「生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 総務省「個人住民税」(所得割の標準税率)https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
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