この記事のポイント
- 固定資産税・都市計画税の精算金は税金の返金ではなく売買代金の一部として申告する
- 年税額24万円・3月1日引渡しの例で精算金は201,205円。入れ忘れは税額で約4万円の申告漏れに
- お金以外で受け取った物や権利は、その時価が収入になる
- 代金を2年以上に分けて受け取っても全額が売った年の収入になる
まず結論:申告する「収入」は売買代金だけではありません
不動産を売ったとき申告する収入は、売買代金だけではありません。その売却によって受け取ったすべてのものです。固定資産税の精算金も、その一つです。
国税庁タックスアンサーNo.3214では、次のように整理されています。
| 収入金額に含めるもの | 内容 |
|---|---|
| 売買代金 | 土地や建物の譲渡の対価として受け取る金銭の額 |
| 固定資産税・都市計画税の精算金 | 譲渡した日から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税に相当する額 |
| 金銭以外で受け取ったもの | 物や権利を受け取った場合の、その時価 |
| その他の経済的な利益 | 資産を譲り渡すことによって受けた経済的な利益 |
代金を2年以上に分けて受け取る場合も、全額が売った年の収入になります(詳しくは後述します)。
入れ忘れの筆頭「固定資産税・都市計画税の精算金」
精算金はなぜ発生するのか
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点の持ち主に1年分課され、年の途中で売っても納税義務者は売主のままです。
そこで実務では「精算」が広く行われています。引渡日を境に年税額を日割りして、引渡日以後の分を買主が売主に支払います。
日割りの起点を1月1日にするか4月1日にするかは法律で決まっておらず、売買契約の取り決めによります。契約書と精算書をご確認ください。
計算例:年税額24万円・3月1日引渡し
- 固定資産税・都市計画税の年税額:240,000円
- 引渡日:3月1日(引渡日以後の日数は306日、1月1日起算・365日で日割り)
240,000円 × 306日 ÷ 365日 = 201,205円(円未満切捨て)
この201,205円は、売買代金とは別に売主が受け取り、申告する収入に入れます。
入れ忘れると税額はどう変わるか
- 譲渡価額(売買代金):5,000万円
- 取得費:3,000万円/譲渡費用:160万円
- 所有期間:譲渡した年の1月1日で5年超(長期譲渡所得・税率20.315%=所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
| 項目 | 精算金を入れ忘れた場合 | 正しく算入した場合 |
|---|---|---|
| 収入金額 | 50,000,000円 | 50,201,205円 |
| 譲渡所得 | 18,400,000円 | 18,601,205円 |
| 所得税・住民税(20.315%) | 3,737,960円 | 3,778,835円 |
差額は40,875円です(1,000円未満切捨てなどの端数処理は省いています)。金額は大きくありませんが、本来の収入を申告していない状態になることが問題です。
「納めた固定資産税と相殺する」処理はできません
注意
「相殺」はできません
立て替えた税金の戻りと考え、相殺するのは誤りです。納税義務者は1月1日時点の持ち主である売主で、精算金は税金の納付ではなく売買代金の一部です。
売主が納めた固定資産税も譲渡費用にはなりません。国税庁タックスアンサーNo.3255では「維持管理のための費用は譲渡費用になりません」とされています。
お金以外で受け取ったもの・その他の経済的な利益
売買代金の一部を、現金以外の形で受け取ることがあります。
- 代金の一部を、買主の不動産や物で受け取った
- 売主が抱えていた借金を、買主に引き受けてもらった
- そのほか、売却にともなって経済的な利益を受けた
No.3214では、物や権利を受け取った場合はその時価が、そのほかの経済的な利益もその収入に含まれるとされています。
「現金が入っていないから収入ではない」という理解は誤りです。交換や借金の肩代わりを伴う取引は、専門的な検討が必要です。
代金を2年以上に分けて受け取るとき
高額な不動産の売買や、買主の資金の都合で、代金を何年かに分けて受け取ることがあります。
「受け取った年ごとに申告する」と考えがちですが、そうではありません。No.3214では、1つの契約の代金を2年以上に分けて受け取る場合、全額が売った年の収入になるとされています。
まだ受け取っていない代金の分も、売った年の申告に入れて納税します。資金繰りを考えておく必要があります。
入れ忘れに気づいたときの直し方
すでに出した申告書に精算金の入れ忘れが見つかったら、修正申告で直します。
事前通知の前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。連絡後や調査後はさらに重くなり、納期限の翌日から延滞税もかかります。
ポイント
早く動くほど負担は小さい
「連絡が来てから考える」が、いちばん不利です。気づいたらすぐに直しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 固定資産税の精算金は、自分が納めた固定資産税と相殺して申告できますか?
できません。精算金は税金の返金ではなく売買代金の一部で、全額を収入に入れます。売主が納めた固定資産税も、維持管理費用のため譲渡費用にはなりません(国税庁タックスアンサーNo.3255)。
Q2. 買主として精算金を支払いました。どのように扱いますか?
支払った精算金は、その不動産の取得価額の一部になります。将来売るときの取得費に含めますので、売買契約書と精算書は必ず保管してください。
Q3. 精算金の起算日は1月1日ですか、4月1日ですか?
法律で決まっているものではなく、売買契約の取り決めによります。契約書と精算書をご確認ください。受け取った精算金の額を、そのまま収入に入れます。
Q4. 売買代金を3年に分けて受け取ります。3年に分けて申告できますか?
できません。1つの契約に基づく代金なら、全額が売った年の収入になります(国税庁タックスアンサーNo.3214)。納税のお金の準備を早めに進めてください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。精算金の取扱いは売買契約の内容によって前提が変わることがあり、記載した計算例も端数処理を省略した簡略なものです。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.3214「土地建物を売ったときの収入金額に含める金額」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3214.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3255「譲渡費用となるもの」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 質疑応答事例「固定資産税等の未経過分に相当する額の支払を受けた場合」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/10.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3102「譲渡所得の申告期限」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3102.htm
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精算金や代金の分割受取がある売買は、契約書と精算書を確認しないと正しい収入金額が固まりません。当事務所では、決済関係の書類一式を拝見したうえで、収入金額・取得費・譲渡費用を積み上げて申告書を作成します。すでに提出した申告のご不安についてもご相談ください。
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