この記事のポイント
- 一の土地を持分どおりに分ければ譲渡はなかったものとされます(所得税基本通達33-1の7)
- 面積の比と持分が違っても、価額の比が持分割合とおおむね等しければ該当します
- 🔴 複数の物件を分け合う場合は「交換」として課税関係が生じます(国税庁 質疑応答事例)
- 交換に当たっても固定資産の交換の特例(所得税法58条)を使えることがあります
結論:一の土地を持分どおりに分けるなら、譲渡はなかったものとされます
1つの土地を持分どおりに分けるなら、税金はかかりません。複数の物件を分け合うと「交換」として課税されます。所得税基本通達33-1の7(共有地の分割)は、次のように定めています。
個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う。
共有物の分割は法律上、持分の交換または売買という性質を持ちますが、「譲渡はなかったもの」として扱われます。ただし、この取扱いには2つの前提があります。「一の土地」であること。そして「持分に応ずる」分割であることです。
前提1:面積の比と持分が違っていてもかまいません
同じ通達の(注)2は、次のように述べています。
分割されたそれぞれの土地の面積の比と共有持分の割合とが異なる場合であっても、その分割後のそれぞれの土地の価額の比が共有持分の割合におおむね等しいときは、その分割はその共有持分に応ずる現物分割に該当するのであるから留意する。
土地は場所によって単価が違うため、面積をきっちり半分にする必要はありません。価額の比が持分の割合におおむね等しくなるように分ければよいということです。面積を均等に分けるとかえって外れることもあります。分け方を決める前に、価額の比を確認してください。
前提2:「一の土地」でなければ、交換として課税されます
ここが最も誤解の多い論点です。国税庁の質疑応答事例「共有物の分割」は、次の照会に回答しています。
補足
照会の要旨(要約)
父の相続財産のうちA不動産は甲乙各2分の1、B土地は甲5分の3・乙5分の2で共有登記。分割でA不動産は乙、B土地は甲が取得。時価鑑定済みの等価分割で、課税関係は生じないか。
照会の共有物の分割は、一の土地についてその持分に応ずる現物分割が行われたものではありませんから、A不動産の甲の持分2分の1とB土地の乙の持分5分の2の交換として課税関係が生じます。
なお、固定資産の交換の特例(所法58)の適用要件を満たしている場合には、この特例の適用があります。
注意
等価であること、鑑定を受けていることは結論を変えません。「一の土地」の分割ではないという一点で、交換になります。相続で複数の不動産を共有取得し、後から単独名義にする整理も同様です。
交換に当たる場合は、交換の特例を検討します
交換に当たっても固定資産の交換の特例(所得税法58条)の要件を満たしていれば使えます。
税金がゼロになるのではなく将来に先送りされる(課税の繰延べ)仕組みです。要件を一つでも満たさなければ、通常の譲渡として課税されます。
共有物分割のつもりが交換だったと判明したとき、特例が使えるかどうかで結論が大きく変わります。分け方を決める段階で判定しておく必要があります。
分割に要した費用は取得費になります
通達33-1の7の(注)1は、次のように定めています。
その分割に要した費用の額は、その土地が業務の用に供されるもので当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、その土地の取得費に算入する。
分筆の測量費、登記費用などがこれに当たります。分割した時点では税額に影響しませんが、将来その土地を売ったときの取得費として効いてきます。分割の際の領収証や登記費用の明細は、売却するまで保管してください。
分け方の3つの型を整理します
共有を解消する方法は大きく3つに分かれ、課税関係が異なります。
| 方法 | 内容 | 課税関係の考え方 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 土地そのものを分けて、それぞれの単独所有にする | 一の土地について持分に応ずる現物分割であれば、譲渡はなかったものとして取り扱われます(通達33-1の7) |
| 代償による解消 (価格賠償) | 一方が単独所有になり、他方に金銭を支払う | 持分を対価を得て移転していますので、譲渡所得の課税関係を検討する必要があります |
| 換価による解消 | 共有のまま第三者に売却し、代金を持分に応じて分ける | 各共有者がそれぞれ自分の持分を譲渡したものとして、共有者ごとに譲渡所得を計算します |
相続財産の分け方と、共有になった後の解消は別の場面ですが、実務では連続します。遺産分割の段階で解消方法まで見通しておくと、選べる手が増えます。
実務で確認すべき4つのこと
1. 通達が対象としているのは「土地」です
通達33-1の7は「土地」を対象としており、建物を共有している場合の分割にそのまま当てはまるかは本記事では断定できません。個別に確認が必要な論点です。
2. 「一の土地」かどうかは登記の筆数では決まりません
対象となる土地がひとまとまりと言えるかどうかが問題になります。複数筆にまたがる一団の土地か、離れた場所にある別の土地かで、結論が分かれ得ます。
3. 価額の比を裏づける資料を残します
「価額の比が共有持分の割合におおむね等しい」ことを、説明できる必要があります。路線価図・不動産業者の査定・鑑定評価など、価額の比を示す資料を分割時点で残しておいてください。
4. 取得の日や取得費の引継ぎは、あわせて確認します
分割後の土地の取得の日や取得費の扱いは、通達33-1の7の本文に定めがありません。本記事では断定せず、将来の売却を見据えて個別に確認すべき事項としています。共有物分割を検討される際は、この点もあわせてご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 兄と2分の1ずつ共有している土地を、分筆してそれぞれの単独名義にします。税金はかかりますか?
1つの土地を持分どおりに分けるなら、譲渡はなかったものとして扱われます(所得税基本通達33-1の7)。面積の比と持分割合が違っても、価額の比がおおむね等しければ大丈夫です。
Q2. 2か所の土地を共有しています。1か所ずつ単独名義にする場合も同じ扱いですか?
同じ扱いにはなりません。一の土地の持分に応ずる現物分割ではないため、交換として課税関係が生じます(国税庁質疑応答事例)。等価でも変わりません。固定資産の交換の特例(所得税法58条)を使える場合があります。
Q3. 分筆の測量費や登記費用は、どう扱いますか?
その土地が事業用で必要経費に入れたものを除き、取得費に算入します(所得税基本通達33-1の7(注)1)。分割時点では税額に影響しませんが、将来売ったときの取得費として効いてきます。領収証や明細は売却まで保管してください。
Q4. 建物も共有しています。建物の分割も同じ取扱いになりますか?
所得税基本通達33-1の7は「土地」を対象としており、建物の分割が同じ扱いになるかは、この通達の文言からは確認できません。本記事では断定を避けています。個別に確認が必要な論点ですので、登記を進める前にご相談ください。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁の質疑応答事例「共有物の分割」は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成されたものであり、国税庁は「この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください」としています。所得税基本通達33-1の7は「土地」の共有を対象としており、本記事では建物の共有の分割、および分割後の土地の取得の日・取得費の取扱いについては断定していません。固定資産の交換の特例の適用要件も本記事では扱っていません。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁 所得税基本通達 法第33条《譲渡所得》関係 33-1の7「共有地の分割」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm
- 国税庁 質疑応答事例(譲渡所得)「共有物の分割」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/04.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3202「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm
- 国税庁タックスアンサー No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3270.htm
- 所得税法58条(固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例)https://elaws.e-gov.go.jp/
共有の解消は、登記をする前にご相談ください
共有物分割は、分け方によって課税関係が変わります。登記を済ませてからでは、選べる方法がなくなっていることがあります。相続で共有になった不動産をどう分けるか、まだ決めていない段階でのご相談を歓迎します。代表税理士が直接ご対応します。
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