この記事の答え
- 1億円以上の株などを持って出国すると、売っていなくても値上がり益に所得税がかかることがあります。
- 原則として、過去10年で日本に5年を超えて住んだ人が対象です。不動産や預貯金は数えません。
- 株の値上がり益が1億円なら、所得税などの目安は1,531万5,000円です。
出国税は、どんな人にかかりますか

1億円以上の株などを持って出国する人は、売っていなくても、値上がり益に所得税がかかることがあります。この制度を国外転出時課税といい、一般に出国税と呼ばれます。
ここでいう出国とは、赴任や移住で、日本に住所も、実際に住む場所もなくなることです。会社員が1年以上の予定で海外へ転勤すると、一般に日本に住所がない人と推定されます。
外国籍の人が、仕事や留学などの在留資格で日本にいた期間は数えません。永住者などの在留資格も、平成27年6月30日までの分は数えません。
1億円には、何を数えますか
数えるのは、株式や投資信託などです。不動産や預貯金は数えません。
| 数えるもの | 数えないもの |
|---|---|
| 株式(未上場も)・投資信託・債券 | 不動産 |
| 匿名組合の出資 | 預貯金 |
| 決済していない信用取引・デリバティブ取引など | 暗号資産そのもの |
| NISA口座の株式など | 譲渡制限が解けていない一定の株式報酬、一定のストックオプション |
株式報酬の課税は、RSU・ストックオプションの記事をご覧ください。
税金はいくらになりますか

株式や投資信託なら、税額の目安は値上がり益の15.315%です。
計算例
例:海外へ赴任する会社員のAさん(持っているのは上場株式だけ)
値上がり益 = 出国の時の時価1億5,000万円 − 買った値段5,000万円 = 1億円税額 = 1億円 × 15.315% = 1,531万5,000円Aさんは株を売っていなくても、この額を納めます。支払いを待つ制度は後で説明します。
計算例と図は、株の値上がり益の分だけを計算した、一定の前提を置いた目安です。所得がとても多い人には別の加算があります。令和9年分からは基準が1億6,500万円超に下がり、率も30%に上がります。図の金額だけなら、加算は出ません。
15.315%は、所得税15%と復興特別所得税を合わせた率です。令和9年分以後は内訳が変わりますが、合計の率は同じです。出国の翌年1月1日に日本に住所がなければ、出国した年の所得の住民税は原則としてかかりません。
いつまでに、何をしますか

出国の時までに納税管理人を税務署へ届け出るかどうかで、申告の期限が変わります。納税管理人は、あなたの代わりに申告や納税をする人です。日本に住む家族や税理士などに頼みます。
届出をして出国する
- 申告と納税:原則として翌年2月16日から3月15日まで
- 判定と計算に使う価額:出国の時の価額
- 支払いを待つ納税猶予:使える(担保などの条件あり)
届出をしないで出国する
- 申告と納税:出国の時まで
- 判定と計算に使う価額:出国予定日の3か月前の日の価額
- 納税猶予:使えない
届出をしないまま出国し、その後に申告すると、期限を過ぎた申告になります。計算は出国の時の価額で行い、納税猶予は使えません。3か月前の日より後に買った分は、買った時の価額を使います。
どちらも、申告にはその年の給与なども含めます。
税金を払えないときや、帰国するときはどうなりますか

納税猶予を使うと、この税金の支払いを、出国の日から5年間待ってもらえます。延長の届出をすれば10年間になります。納める期限は、その期間が終わった翌日から4か月後です。
条件は4つです。
- 出国の時までに、納税管理人の届出をする
- 確定申告書に猶予を受ける旨を書き、明細書などを付ける
- 申告の期限までに、税金と利息分に見合う担保を出す
- 毎年3月15日までに、猶予を続ける届出書を出す
注意
猶予された税金には、利息にあたる税金がかかります。率は年ごとに変わり、令和8年は年1.3%です。途中で株などを売ったり贈与したりすると、その分の税金を利息分と一緒に4か月以内に納めます。
出国から5年以内に帰国し、株などを持ち続けていれば、その分の課税を取り消せます。納税猶予を使わなかった人も同じです。延長の届出をした人は、10年以内の帰国が対象です。
取り消すには、帰国の日から4か月以内に手続き(更正の請求など)をします。申告で事実を隠したり偽ったりした部分は、取り消せません。
納税猶予を使っている人は、値下がりした株を売った時などに、4か月以内の手続きで税額を減らせます。この人が移住先で株を売り、二重に課税されるときも、調整できることがあります。
自分でできるのはどこまでですか

持っている株などを合計し、1億円以上かを確かめるところまでは、ご自身でできます。
失敗の例
- 海外の口座とNISA口座の株を数えず、1億円未満と判断した例です。合計すると1億円以上でした。
- 納税管理人の届出も申告もしないまま出国した例です。期限を過ぎた申告になり、納税猶予も使えません。
- 毎年の届出書を出し忘れた例です。原則として猶予が全部終わり、4か月後に税金と利息分を納めます。
次の人は、個別の判断が必要です。
- 上場していない会社の株がある人
- 株式報酬やストックオプションがある人
- 外国籍で、在留資格の確認が必要な人
小松公認会計士・税理士事務所では、出国の予定日から逆算して手続きの順番を決めます。株などの一覧を作り、1億円の判定と税額の試算をします。納税管理人の届出、担保の準備、申告書と明細書の作成、毎年の届出書の作成まで行います。
料金の目安
料金は、基本料金32,000円(税込35,200円)に、所得と控除ごとの単価を足した額です。個人の確定申告は、最低料金65,000円(税別・税込71,500円)からお引き受けしています。
出国税の申告と納税猶予の手続きは、内容を伺って個別にお見積りします。給与などほかの所得の料金は60秒見積りで確かめられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 海外赴任で3年だけ日本を離れます。それでも対象ですか?
対象になることがあります。日本の住所も実際に住む場所もなくなり、図1の2つの条件に当てはまれば、対象です。出国から5年以内に帰国し、株などを持ち続けていれば、帰国の日から4か月以内の手続きで、その分の課税を取り消せます。
Q2. 出国の直前に気づきました。今からできることはありますか?
まず、納税管理人の届出書を出国の時までに出せるかを確かめてください。届出をしないまま出国すると、申告の期限は出国の時までになり、納税猶予も使えません。
Q3. 出国の前に株を売れば、対象になりませんか?
出国の時に持っていない株は数えません。ただし、売った利益には通常どおり税金がかかります。売買の契約が済んでいても、出国の日までに引渡しが終わっていない株は、原則としてこの制度の対象です。
Q4. 海外に住む家族へ株を贈与・相続するときも、同じ課税がありますか?
あります。1億円以上などの条件に当てはまる人が、海外に住む親族などへ株などを贈与すると、渡した分の値上がり益に所得税がかかります。亡くなって相続で渡す場合も同様です。
免責事項
本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁「国外転出時課税制度(FAQ)」は令和5年6月最終改訂のものです。国外転出時課税は在留資格・資産の内容・出国時期によって結論が大きく異なり、期限を過ぎると取り返しがつかない手続が複数あります。計算例は一定の前提を置いた目安です。具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.1478「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1478.htm
- 国税庁「国外転出時課税制度」(パンフレット・FAQ・様式の案内)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/01.htm
- 国税庁「国外転出時課税制度(FAQ)」(平成27年4月・令和5年6月最終改訂)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/pdf/02.pdf
- 国税庁パンフレット「国外転出される方へ」(平成29年2月)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/pdf/01.pdf
- 国税庁「国外転出時課税制度関係の各種様式」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/yoshiki/index.htm
- 国税庁 A1-7「所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/07.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」(1年以上の予定の転勤、納税管理人)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1926.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2012.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1463「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(令和9年以後の防衛特別所得税と復興特別所得税の合計税率)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁タックスアンサー No.2270「特定の基準所得金額の課税の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2270.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1467「贈与により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1467.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1468「相続又は遺贈により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1468.htm
- 国税庁「延滞税の割合」((参考)利子税特例基準割合。令和8年は1.3%)https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_wariai.htm
- 所得税基本通達60の2-2、60の2-5、60の2-6、60の2-7(法第60条の2関係)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/12/03-2.htm
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」防衛特別所得税の創設等https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/PDF/p0141-0209.pdf
- 財務省「令和8年度 税制改正の解説」租税特別措置法等(所得税関係)の改正(特定の基準所得金額の課税の特例の改正)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/explanation/PDF/p0210-0436.pdf
- 所得税法2条1項17号・41号・42号、60条の2(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)、60条の3、95条の2、127条1項、130条、137条の2(納税猶予)、151条の2、153条の2、153条の6https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 所得税法施行令4条、15条1項、170条1項・3項(国内在住期間から除かれる在留資格)、平成27年政令第141号附則8条2項https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096
- 国税通則法117条(納税管理人)https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066
- 租税特別措置法37条の10、37条の11(株式等の譲渡所得等の税率)、41条の19(特定の基準所得金額の課税の特例)、93条(利子税の割合の特例)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 地方税法24条1項1号・294条1項1号(住所を有する個人)、39条・318条(賦課期日)、32条2項ただし書・313条2項ただし書(個人住民税の所得割の課税標準)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 総務省「金融資産性所得に対する個人住民税の課税時期と課税団体について」(個人住民税への導入の見送り、年の途中で出国した人の扱い)https://www.soumu.go.jp/main_content/000406457.pdf
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