この記事のポイント
- 令和元年7月8日以後の契約は、返戻率50パーセント超の定期保険等の保険料を一部資産計上します
- 資産計上額は返戻率50〜70%で40%、70〜85%で60%、85%超はさらに増加します
- 返戻率70%以下・年換算保険料30万円以下(1人につき)ならこの取扱いの対象外です
- 保険の「節税」は課税の繰延べ。出口を設計しなければ効果は消えます
まず前提:保険料は原則、期間に応じて経費になります
法人が支払う定期保険などの保険料は、原則として期間の経過に応じて経費(損金)になります(国税庁タックスアンサーNo.5364)。
ただし、保険金の受取人が役員または部課長その他特定の使用人(親族を含む)だけの場合は、その保険料はその人への給与として扱われます。
令和元年の通達改正で何が変わったのか
解約返戻率が高い保険ほど、保険料のうち経費にできる割合が小さくなりました。
令和元年6月28日付の法令解釈通達(課法2-13ほか)で法人税基本通達9-3-5の2が設けられ、国税庁タックスアンサーNo.5364-2によると保険期間3年以上・最高解約返戻率50パーセント超の定期保険等は次の取扱いになります。
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
|---|---|---|---|
| 50パーセント超 70パーセント以下 |
保険期間の開始の日から、その保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで | 当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額 | 保険期間の100分の75相当期間の経過後から、保険期間の終了の日まで |
| 70パーセント超 85パーセント以下 |
同上 | 当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額 | 同上 |
| 85パーセント超 | 最高解約返戻率となる期間の終了の日まで | 当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70を乗じて計算した金額(当初の一定期間) | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後から、保険期間の終了の日まで |
返戻率が高いほど資産計上の割合も大きくなり、「返戻率が高くて全額経費」という商品は成り立ちません。
年30万円以下の例外
最高解約返戻率70パーセント以下・年換算保険料が1人につき30万円以下の保険は、原則どおり経費にできます(法人税基本通達9-3-5の例)。
いちばん大事なこと:保険は「節税」ではなく「先送り」です
ポイント
経費にした分は、解約したときに収益として戻ってきます。税金が消えたのではなく、課税される時期が後ろにずれただけです。
保険が意味を持つのは次の2つの場合に限られます。
- 保障そのものが必要な場合(借入金の返済資金、事業承継の資金、従業員のご遺族への保障など)
- 解約する年に、対応する経費を用意できる場合(役員退職金の支給、大規模修繕、設備投資など)
出口の年に何も予定がないまま加入すると、先送りした課税が一度に戻るだけでなく、返戻率のピークを逃して元本割れするリスクも負います。
注意
出口の年がずれると効果は消えます
解約返戻金の収益(益金)と役員退職金などの経費(損金)は、同じ事業年度に対応させる必要があります。決算月・支給決議の時期・解約日を合わせる設計は、加入時点から逆算します。
加入を検討する前に確認したい3つのこと
1. 保障として本当に必要か
借入金の残高、運転資金、ご遺族への保障を金額で出し、必要な保障額を先に決めます。税金の取扱いから選ぶのは順序が逆です。
2. 解約時期の予定と資金力があるか
返戻率のピークと退職金の支給予定が重ならないなら先送りの意味は小さく、資金繰りが苦しくなり途中解約すれば元本割れします。
3. 経理処理を毎期正しく続けられるか
資産計上・取崩期間は契約ごとに違い、10年以上正しい処理が必要です。誤っていれば税務調査で複数年分まとめて指摘されます。
当事務所の考え方
小松公認会計士・税理士事務所では、保険を「節税商品」としてはご提案しません。必要な保障額を先に固め、そのうえで税金の取扱いを確認します。
すでにご加入の契約は、①経理処理が通達どおりか②返戻率のピークと出口の予定が合うか③保障が過不足ないかを確認します。見直しだけで資金繰りと税額の両方が改善することがあります。
※当事務所は保険の募集代理店ではなく、税務上の取扱いと資金繰りの観点から検討をお手伝いする立場です。
法人保険と税務について小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 解約返戻率が高い保険なら、いまでも保険料の全額を損金にできますか?
できません。令和元年7月8日以後の契約で最高解約返戻率が50パーセントを超える定期保険等は、区分に応じて一部を資産計上します(国税庁タックスアンサーNo.5364-2)。
Q2. 小さな保険なら資産計上しなくてよいと聞きました。
条件つきで、そのとおりです。最高解約返戻率70パーセント以下かつ年換算保険料1人30万円以下の保険は、期間の経過に応じて経費にできます(法人税基本通達9-3-5の例)。
Q3. 法人で入れば保険料は必ず経費になりますか?
なりません。受取人が役員・部課長その他特定の使用人(親族を含む)だけの場合、その保険料はその人への給与になります。
Q4. 保険で節税したのに、解約したら税金がかかったのはなぜですか?
保険の「節税」が課税の先送りだからです。解約返戻金は収益になります。解約する年に対応する経費を用意していなければ、先送りした課税がその年にまとめて生じます。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。保険契約の税務上の取扱いは、契約日・保険種類・保険期間・最高解約返戻率・受取人の設定によって異なります。本記事では特定の保険商品や具体的な設計手法は扱っていません。当事務所は保険の募集代理店ではありません。実際の取扱いは必ず税理士および保険会社にご確認ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.5364「定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5364-2「定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5364-2.htm
- 国税庁「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)」(令和元年6月28日付 課法2-13ほか)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/kaisei/190613/index.htm
- 国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/teikihoken_FAQ/index.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第3節 保険料等https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm
いま入っている保険が、出口まで設計されているか確認します
保険は加入した瞬間ではなく、解約する年に結果が出ます。返戻率のピークと退職金の時期が合っているか、経理処理が通達どおりに続いているか。すでにご加入の契約の点検だけでもお引き受けしています。特定の商品をおすすめする立場ではありませんので、中立的に検証いたします。
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