不動産譲渡所得

海外在住のまま日本の不動産を売却したら?
10.21%の源泉徴収と納税管理人

この記事の答え

  • 海外に住んでいても売却益は日本で課税されます。代金の10.21%が原則天引きされ、申告で精算します。
  • 個人が自分や親族の住まいに買い、代金1億円以下なら天引きなし。申告には納税管理人が必要です。
  • 6,000万円で売り利益2,800万円の例(5年超保有・特例なし)は、約184万円が戻る目安です。
小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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海外に住んでいても、日本で税金はかかりますか

パスポートと住宅模型
海外に住んだままでも、売却できます

日本にある不動産を売って利益が出ると、海外に住んでいても日本で税金がかかります。原則として確定申告が必要で、利益の計算方法は日本に住む人と同じです。

税法では、日本に住所がなく、日本に1年以上続けて住んでもいない人を「非居住者」といいます。日本の会社の海外支店などに1年以上の予定で勤務する人は、一般的に非居住者になります。

非居住者が売ると、買主は原則として、代金の10.21%を差し引いて税務署に納めます。この天引きを「源泉徴収」といいます。天引きは、利益ではなく代金の全体にかかります。6,000万円で売ると612万6,000円が引かれ、振り込まれるのは5,387万4,000円です。

図1 代金は天引きされる? 30秒チェック
質問1 あなたは非居住者ですか?通常は、物件を引き渡す日の状況で判定します。住民票だけでは決まりません。
はい質問2へ進みます
いいえ天引きされません
質問2 買主は、自分か親族が住むために買う個人ですか? 代金は1億円以下ですか?両方に当てはまれば「はい」です。
はい天引きされません
いいえ原則として、代金の10.21%が天引きされます

1億円以下かどうかは、売主ごとの代金で判定します。買主が国外で支払い、日本に住所や事務所などがないときは、天引きされないことがあります。天引きがなくても、利益が出れば原則として確定申告が必要です。

天引きされた10.21%は戻りますか

入金を確かめる通帳
天引きが多ければ、確定申告で差額が戻ります

10.21%は税金の前払いです。確定申告で実際の税額と比べ、差額を精算します。天引きのほうが多ければ差額が戻り、少なければ差額を納めます。

会社員Aさんは、海外赴任中の非居住者です。8年前に買ったマンションを、不動産会社に6,000万円で売ります。

計算例

例:Aさんの売却

買ったときの金額:3,000万円(建物の目減り分を引いた後) 売るための費用:200万円(仲介手数料など) 利益:6,000万円−3,000万円−200万円=2,800万円 実際の税額:2,800万円×15.315%=4,288,200円 天引きされた額:6,000万円×10.21%=6,126,000円 戻る額:6,126,000円−4,288,200円=1,837,800円

15.315%は、売った年の1月1日に5年を超えて持っていた場合の税率です。5年以下なら30.63%です。特例や他の所得がないなど、一定の前提を置いた目安です。

買ったときの金額が分からないと、税額が天引きを上回ることがあります。金額が分からない場合は、売った金額の5%で計算できます。Aさんなら300万円です。買ったときの契約書が見つからない場合の記事もご覧ください。

図2 Aさんの天引き額と実際の税額
天引きされた額実際の税額
天引き
6,126,000円
書類あり
4,288,200円
書類なし
8,423,250円

書類ありは約184万円が戻ります。書類なし(買ったときの金額を売った金額の5%で計算)は約230万円を追加で納めます。5年を超えて持ち、特例を使わない場合は、利益が代金の約3分の2を超えると、追加の納税になる目安です。

補足

住民税は、売った年の翌年1月1日に日本に住所があるかで決まります。この日に日本に住所がなければ、売却の利益に住民税はかかりません。

Aさんが令和8年に売り、令和9年1月1日までに帰国すると、住民税は利益の5%の140万円です。日本に住民票が残っている場合も、住民税がかかることがあります。

令和9年分からは税金の内訳が変わりますが、10.21%などの率は同じです。

納税管理人は、いつ、誰に頼みますか

空港と出発する飛行機
日本での手続きは、納税管理人に任せられます

納税管理人は、確定申告書を出すときまでに決め、届出書を税務署に出します。納税管理人とは、海外に住む人に代わって、日本で税金の手続きをする人です。

納税管理人には、確定申告書の提出、税務署の書類の受け取り、納税、戻る税金の受け取りを任せられます。

頼む相手は、日本に住む親族や税理士などです。個人でも法人でも構いません。

図3 海外に住む人の手続きの流れ
  1. 納税管理人を決めて、届出書を税務署に出す
  2. 買主から、天引き後の代金を受け取る
  3. 原則として翌年2月16日から3月15日までに確定申告をする

天引きの分が戻る人は、原則として翌年1月1日から5年間、申告できます。

売却の話が出た段階で頼む相手を決めておくと、手続きが遅れません。

どんな失敗がありますか

不動産の書類を虫眼鏡で確かめる手元
買ったときの書類は、売る前に探しておきます

次の3つは、売買契約の前に確かめておくと避けやすい失敗です。

失敗の例

  • 天引きで終わりと考えた例。確定申告をしないと、Aさんなら約184万円が戻りません。損が出た人も、申告しないと天引きの分は戻りません。
  • 住民票を見せて「日本に住んでいる」と伝えた例。東京高等裁判所は、生活の中心がアメリカにあった売主を非居住者と判断しました。買主の不動産会社には天引きの義務があったとされました。会社は、約7億6千万円の取引で約7,622万円を納めています。買主は、納めた税金を原則として売主に請求できます。非居住者は、契約の前に買主へ伝えます。
  • 自宅の特例の期限を過ぎた例。3,000万円の特例には、売る期限があります。住まなくなった日から3年を経過する日が入る年の12月31日までです。海外赴任で令和5年4月に住まなくなった人なら、令和8年12月31日です。

どこまで自分で判断できますか

戸建ての外観
自宅か貸していた物件かで、特例が変わります

天引きの有無を確かめ、売買契約書と買ったときの書類をそろえるところまでは、ご自身でできます。次の場合は、個別の判断が必要です。

  • 住民票が日本にある、海外勤務が1年未満の予定など、非居住者かどうかがはっきりしない
  • 自宅の3,000万円の特例など、特例を使いたい
  • 賃貸に出していた物件や、相続した物件を売る
  • 住んでいる国でも申告が必要になる

税理士が入ると変わること

小松公認会計士・税理士事務所では、売買契約の前に、天引き額と実際の税額を試算します。買ったときの金額は、契約書や通帳などの資料から確かめます。

特例の期限と条件は、住民票や契約書の日付で確かめます。納税管理人のご相談も承ります。時差のある方とも、メールとオンライン面談で進めます。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 買主が個人なら、天引きされませんか?

個人でも天引きされることがあります。天引きされないのは、個人が自分か親族の住まいとして買い、代金が1億円以下の場合です。投資用に買う場合や、1億円を超える場合は、個人の買主でも天引きします。

Q2. 売る年の途中で海外へ引っ越すときは、どうなりますか?

納税管理人を届け出て出国すれば、翌年の確定申告を任せられます。出国前に売った人が届け出ずに出国するときは、原則として出国の時までに確定申告が必要です。出国の後に売った分は、翌年に納税管理人を通じて申告します。

Q3. 海外赴任中に自宅を売ると、3,000万円の特例は使えますか?

海外に住んでいても、条件を満たせば使えます。特例を使う場合も、天引きは原則として行われます。他の所得がなく、特例で税額が0円になる人は、確定申告で天引き額の全額が戻ります。家族が住み続けている自宅は、別の扱いになることがあります。

Q4. 住んでいる国でも税金がかかりますか?

住んでいる国の税法によります。日本が結んだ多くの租税条約は、不動産がある国でも課税できるとしています。二重に課税されたときの調整のしかたは、国ごとに確かめます。

免責事項

本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく一般的な解説です。海外に住む人の税金の扱いは、住んでいる国の税制や租税条約の内容、出国・帰国の時期によって結論が変わることがあります。記載した計算例は、特例や他の所得がないなど、一定の前提を置いた目安です。具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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