不動産譲渡所得

賃貸マンション・アパート売却の税金
3,000万円控除は原則使えません

この記事の答え

  • 賃貸に出していた物件を売るときは、3,000万円の控除は原則として使えません。
  • 元の自宅を貸した人は、売る時期などの条件を満たせば使えることがあります。
  • 3,500万円で買い15年貸して4,000万円で売る例の税金は、約209万円です(目安)。
小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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賃貸に出していた物件に、3,000万円の控除は使えますか

賃貸アパートの外観
貸していた物件には、3,000万円の控除は原則として使えません

賃貸に出していたマンションやアパートを売るときは、3,000万円の控除は原則として使えません。この控除は、自分が住んでいる家や、以前に住んでいた家を売る人のための特例だからです。

自宅を売るときに税率が下がる特例や、自宅の買換えの特例も、同じ理由で原則として使えません。事業用の資産の買換えの特例は別の制度で、賃貸物件にも使えることがあります。

ただし、もともと自宅だった物件は、貸した後でも使えることがあります。次の図で確かめてください。

図1 3,000万円の控除を使える? 30秒チェック
質問1 売る物件は、あなた自身が住んでいた家ですか?
はい質問2へ進みます
いいえ原則として使えません
質問2 住まなくなった日から3年を経過する日が入る年の、12月31日までに売りますか?その間に貸していてもかまいません。令和5年6月に引っ越した人は、令和8年12月31日までです。今も住んでいる人は「はい」へ進みます。
はいほかの条件も満たせば使えます
いいえ原則として使えません

特例のためだけに入居した家は対象外です。親子や夫婦など特別の関係がある人に売る場合も使えません。一部だけ貸していた家は、住んでいた部分が対象です(おおむね90%以上なら全体)。転勤などで家族だけが住んでいた期間がある人は、数え方が変わることがあります。3年の数え方の記事もご覧ください。

売った金額から、買った値段をそのまま引けますか

建物の外壁を虫眼鏡で確かめる人
建物は、貸していた間に価値が減ったものとして計算します

建物の買った値段は、そのままでは引けません。貸していた間の減価償却費を差し引いた金額になります。減価償却費とは、建物の値段を毎年少しずつ経費にしていく金額です。土地は、買った値段のまま引きます。

不動産を売った利益を、譲渡所得といいます。税金は、この譲渡所得にかかります。

計算の式

譲渡所得 = 売った金額 − 取得費 − 売るのにかかった費用 取得費 = 土地の買った値段 + 建物の買った値段 − 減価償却費

取得費とは、その不動産を手に入れるためにかかった金額です。買うときの仲介手数料や、後から払った改良費も含みます。

売るのにかかった費用には、仲介手数料や、貸家を売るために借家人に払う立退料などがあります。修繕費や固定資産税は入りません。

会社員のAさんは平成23年に、新築の賃貸用マンション1室を3,500万円で買いました。内訳は、建物2,000万円と土地1,500万円です。Aさんは15年間貸しました。

図2 買った値段と取得費(Aさんの例)
建物土地
買った
値段
3,500万円
取得費
2,840万円

建物は、15年分の減価償却費660万円だけ減ります。土地は減りません。

注意

経費にしていなかった年があっても、その年の分も差し引きます。貸していた建物では、毎年の減価償却費の合計を差し引くと決まっているからです。

自宅として住んでいた期間は、計算のしかたが変わります。

賃貸マンションを売ると、税金はいくらになりますか

電卓で計算する手元
税率は、売った年の1月1日に持っていた期間で決まります

Aさんの税金は、所得税と住民税などを合わせて2,092,445円です。Aさんは令和8年に、このマンションを4,000万円で売りました。売るのにかかった費用は130万円です。

計算例

Aさんの税金(15年ちょうど貸した前提の目安)

減価償却費:2,000万円 × 0.022 × 15年 = 660万円 取得費:2,000万円 − 660万円 + 1,500万円 = 2,840万円 譲渡所得:4,000万円 − 2,840万円 − 130万円 = 1,030万円 税金:1,030万円 × 20.315% = 2,092,445円

0.022は、平成19年4月以後に買った鉄筋コンクリート造の住宅の、1年分の率です。平成19年3月以前に買った建物、中古の建物、木造など構造が違う建物は、計算が変わります。

税率は、売った年の1月1日に5年を超えて持っていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。買ってから5年を過ぎて売っても、1月1日の時点で5年以下なら39.63%です。5年の数え方の記事もご覧ください。

取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます。実際の取得費が5%より少ないときも同じです。Aさんがこの方法を使うと、取得費は200万円、譲渡所得は3,670万円になります。

図3 取得費の違いで変わるAさんの税金
所得税など住民税
実際の
取得費
2,092,445円
5%の
方法
7,455,605円

一定の前提を置いた目安です。令和9年分からは所得税などの内訳が変わりますが、合計の税率は同じです。

同じ物件でも、5%の方法では税金が5,363,160円増えます。

賃貸物件の売却で、どんな失敗がありますか

引き出しの中の古い書類
過去の申告書の控えが、取得費の計算の手がかりになります

5%の方法を選ぶ前に、過去の申告書を探してください。不動産の青色申告決算書や収支内訳書には、「減価償却費の計算」の欄があります。建物の買った値段や、まだ経費にしていない残りの金額が書いてあります。土地の値段は、買ったときの契約書で確かめます。控えがなくても、税務署で閲覧できることがあります。

失敗の例

  • 書類を探さずに5%で申告する例。Aさんの例では、税金が約536万円増えます。
  • 売却の利益だけを計算する例。売却とは別に、売った年の家賃の申告も必要です。
  • 消費税を見落とす例。消費税を納める義務がある人が貸していた建物を売ると、建物の代金に消費税がかかります。土地の代金にはかかりません。

どこまでご自身で計算できますか

木造の戸建て住宅の外観
自宅だった物件は、個別の確認が必要です

過去の申告書と売買契約書がそろえば、図2と同じ形の概算は、ご自身でできます。次の場合は、個別の判断が必要です。

  • 自宅だった物件や、一部に住んでいた物件を売る
  • 相続や贈与でもらった物件を売る
  • 契約書に土地と建物の内訳がない
  • 消費税を納める義務がある、または事業用の資産の買換えの特例を使いたい

税理士が入ると変わること

小松公認会計士・税理士事務所では、過去の申告書で毎年の減価償却費を確かめ、取得費を計算します。売った年の家賃の所得と消費税も合わせて計算し、手元に残る金額をお示しします。

賃貸物件の売却をご検討の方は、売買契約の前に試算をご依頼ください。

あわせて読みたい

よくある質問(FAQ)

Q1. 売る前に自分が住めば、3,000万円の控除を使えますか?

入居すれば使えるとは限りません。特例を受けるためだけに入居した家や、一時的な目的で入居した家は対象外です。その家が生活の拠点だったかを、入居の目的や日常生活の状況などから総合的に判断します。

Q2. 相続した賃貸アパートを売るときの取得費は?

原則として、亡くなった方の取得費と取得の時期を引き継ぎます。相続税がかかった人には、相続税の一部を取得費に足せる特例があります。売る期限は、亡くなった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。

Q3. 売って損が出たときは、どうなりますか?

別の土地や建物を売った同じ年の利益からは差し引けます。給与など他の所得とは相殺できず、翌年以降への繰越しもできません。自宅を売った損失の特例は、賃貸物件には原則として使えません。

Q4. 売った代金で次の物件を買えば、税金を先送りできますか?

事業用の資産の買換えの特例で、一部を先送りできることがあります。相当の対価で続けて貸している物件も対象になり得ます。売る物件と買う物件の組合せなどの条件があり、税金がなくなるわけではありません。

免責事項

本記事は令和8年11月時点の法令・国税庁の公表資料に基づく、個人の方向けの一般的な解説です。記事中の計算例は、15年ちょうど貸したものとして計算するなど、一定の前提を置いた目安です。実際の税額は、物件の取得の経緯、用途の変化、ほかの所得の状況によって異なります。具体的な事案については税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・判例出典

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制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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賃貸に出していた不動産を売るときは、売却の税金だけでなく、売った年の家賃の所得も計算します。消費税を納める義務がある人は、消費税も合わせて計算します。そこまで計算すると、手元に残る金額が見えてきます。過去の申告書がお手元になくても構いません。売却をご検討の段階でも、代表税理士が直接ご対応します。まずは無料相談をご利用ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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