この記事のポイント
- 給与総額を前年より1.5%以上増やした中小企業は、増加分の15%を法人税から控除できます
- 増加率や研修費の上乗せで最大45%まで拡大。対象は令和9年3月31日までに開始する事業年度です
- 🔴 明細書を申告書に添付した場合だけ使え、付け忘れはあとから取り返せません
- 設立1年目と役員報酬の増加は対象になりません
まず結論:給与を増やすと、法人税が直接安くなります
給与を上げれば経費になりますが、賃上げ促進税制はさらに、増やした給与の15〜45%を法人税から直接差し引ける「税額控除」の制度です。
人を増やした、賞与を増やした、ベースアップをした——給与総額が増えていれば対象になることが多く、「使い忘れ」が一番多い制度のひとつです。
基本の条件は「前の年より1.5%増」だけ
ポイント
国内の従業員に払った給与の総額が、前の事業年度より1.5%以上増えていること。対象は平成30年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度です(国税庁タックスアンサーNo.5927-2)。
- 役員報酬は対象外です(特殊関係者の給与も除く)
- 国内の賃金台帳に載る人の給与で数えます
- 給与に充てた国の補助金は原則差し引きます(雇用調整助成金等は除く)
上乗せ条件で、最大45%まで増えます
基本の15%に、次の3つが上乗せされます。
| 条件 | 控除率 |
|---|---|
| 基本:給与総額が前年より1.5%以上増 | 15% |
| ①増加率2.5%以上 | +15% |
| ②教育訓練費が前年比5%以上増(給与総額比0.05%以上) | +10% |
| ③くるみん・えるぼし等の認定 | +5% |
すべて満たすと15+15+10+5=45%です。
注意
②は外部研修費・外部講師の謝礼が対象です(社内講師の分は対象外)。研修の内容・金額を記録した書類の保存が条件です。
数字で見てみましょう
計算例
例:資本金1,000万円の会社。給与総額が前年3,000万円→今年3,150万円(150万円増・増加率5%)。今年の利益は1,000万円。
控除率 基本15%+上乗せ15%=30%(研修・認定の上乗せなし) 控除額 150万円 × 30% = 45万円 上限 法人税(約166万円)の20% = 約33万円 今年の控除額は33万2,800円。残り11万7,200円は翌年以降5年間に繰越給与を150万円増やして、法人税は約33万円安くなる計算です。
繰り越した分を翌年使うには、翌年も給与総額が前年を上回っている必要があります。
使えない場合もあります
- 設立1年目(比べる「前の年」がないため)
- 解散した年、清算中の年
- 青色申告をしていない会社
- 直近3年の平均所得が15億円を超える会社(適用除外事業者)
対象の「中小企業者」は資本金1億円以下の会社です(大企業の子会社等は除く)。
一番大事な注意:明細書を付け忘れたら終わりです
国税庁タックスアンサーNo.5927-2は、「控除額の明細を書いた書類を申告書に添付した場合に限り」適用するとしています。あとから修正・更正の請求をしても、当初申告に付けた明細書の金額が上限です。
- 明細書を付け忘れたら、使えません
- 「申告後に気づいた」は、取り返せません
毎年の決算で「給与は増えたか」を必ずチェックしてください。繰越を使う年も、明細書の添付が必要です。
決算前に気づけば、打ち手があります
決算日を過ぎたら数字は動かせません。決算前なら間に合います。
- 増加率1.4%で止まっている → 決算賞与で1.5%に届くか検討
- 研修費があと少しで5%増 → 予定研修を決算日までに実施
決算の2〜3か月前が、いちばん打ち手の多いタイミングです。
賃上げ促進税制について小松公認会計士・税理士事務所ができること
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よくある質問(FAQ)
Q1. 社長の役員報酬を増やしました。賃上げ促進税制は使えますか?
いいえ。対象は従業員の給与だけで、役員や役員の親族の給与は含みません。従業員給与総額が前年より1.5%以上増えたかで判定します。
Q2. 今年設立した会社です。従業員を雇いましたが使えますか?
設立1年目は使えません。比べる「前の事業年度」がないためです。2年目以降、給与総額が増えていれば検討できます。
Q3. 決算が終わってからこの制度を知りました。あとから取り戻せますか?
原則できません。明細書を申告書に添付した場合に限り使える制度で、当初添付した金額が上限になります(国税庁タックスアンサーNo.5927-2)。毎年の決算でチェックしてください。
Q4. 控除しきれなかった分は、翌年必ず使えますか?
条件つきです。5年間繰り越せますが、繰越す年も給与総額が前年を上回る必要があり、使わない年も含め毎年明細書を付け続ける必要があります。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。引用した国税庁タックスアンサーNo.5927-2およびNo.5759は、いずれも令和7年4月1日現在の法令等に基づくものです。本記事の数値例は法人税のみで計算しており、地方法人税・法人住民税・法人事業税は含めていません。全企業向け賃上げ促進税制(コード5927)および中堅企業向け賃上げ促進税制(コード5927-3)の要件は本記事では扱っていません。グループ通算制度を適用している法人については取扱いが異なります。制度の詳細は中小企業庁ホームページもあわせてご確認ください。実際の判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.5927-2「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5927「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(全企業向け賃上げ促進税制)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927.htm
- 国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
- 租税特別措置法42条の12の5(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)https://elaws.e-gov.go.jp/
使えるかどうかは、給与台帳を見れば分かります
この制度は、申告書に明細書を付け忘れると使えません。決算が終わってから気づいても、取り返しがつかないことがあります。前の年と今年の給与台帳をご用意いただければ、使えるかどうかと戻る金額の目安をお示しします。代表税理士が直接ご対応します。
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