不動産譲渡所得

別荘・セカンドハウスを売ったときの税金
3,000万円特別控除が使えない理由と損の扱い

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 別荘の売却にマイホームの3,000万円特別控除は使えません
  • 税法上の別荘は生活に通常必要でない資産(所得税法施行令178条1項2号)
  • 損が出ても給与所得などとは損益通算できません
  • 取得費と譲渡費用の積み上げが、そのまま税額を左右します

まず結論:別荘の売却に3,000万円特別控除は使えません

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、別荘には使えません。趣味や保養のために持っている家屋は、はじめから対象外とされています。

国税庁は、この特例が適用されない家屋を次のように示しています。

このマイホームを売ったときの特例は、次のような家屋には適用されません。(1)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋(2)居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋(3)別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋(国税庁タックスアンサーNo.3302)

この特例は、いま現に自分が住んでいる家屋を売る場合の制度です。以前に住んでいた家屋も対象になります。ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られます。制度の全体像はマイホームを売ったときの3,000万円特別控除にまとめています。

注意

特例が使えないことと、申告が不要なことは別です。利益が出れば確定申告と納税が必要です。控除で消せないぶん、税額の計算そのものが結果を決めます。

別荘やセカンドハウスの売却に、マイホームの3,000万円特別控除は使えません
別荘やセカンドハウスの売却に、マイホームの3,000万円特別控除は使えません

税法上の「別荘」とは何を指すのか

税法は、別荘を「生活に通常必要でない資産」として扱います。建物の名前や見た目ではなく、どう使っていたかで決まります。

所得税法施行令178条1項2号は、次のように定めています。

通常自己及び自己と生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で主として趣味、娯楽又は保養の用に供する目的で所有するものその他主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する資産(前号又は次号に掲げる動産を除く。)(所得税法施行令178条1項2号)

要件は2つです。ふだん自分や生計を一にする親族が住んでいないこと。そして、主な目的が趣味・娯楽・保養であることです。

週末だけ使う海辺の家、年に数回泊まるだけの山荘、親から引き継いだリゾートマンション。いずれもこの2号に当たる可能性が高い資産です。

補足

「生活に通常必要でない資産」という区分は、所得税法62条1項を受けて政令が定めているものです。62条1項は、災害による損失についての規定です。あとで説明する損失の扱いも、この区分から出てきます。

では、税金はどう計算するのか

特例が使えないので、原則どおりに計算します。譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。

税率は所有期間で2つに分かれます。所有期間は、譲渡した年の1月1日で判定します。売った日ではありません。

区分所有期間(譲渡した年の1月1日現在)所得税住民税
長期譲渡所得5年超15%5%
短期譲渡所得5年以下30%9%

これに加えて、平成25年から令和19年までは復興特別所得税がかかります。金額は基準所得税額の2.1パーセントです。所得税と併せて申告・納付します(国税庁タックスアンサーNo.3208・No.3211)。

ポイント

所有期間が5年前後のときは、引渡しを年内にするか翌年にするかで区分が変わることがあります。長期と短期では所得税の税率が15%と30%で倍違います。売却の日程を決める前にご確認ください。

所有期間は譲渡した年の1月1日で判定し、長期と短期で税率が変わります
所有期間は譲渡した年の1月1日で判定し、長期と短期で税率が変わります

損が出ても、給与所得とは相殺できません

買ったときより安く売って損が出ても、その損失を給与所得から引くことはできません。

個人が、土地や建物を譲渡して長期譲渡所得または短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を他の土地や建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。(国税庁タックスアンサーNo.3203)

同じ年に別の土地建物を売って利益が出ていれば、そこから引くことはできます。引ききれなかった部分は、そこで切り捨てになります。

別荘には、さらに強い制限があります。所得税法69条2項は、生活に通常必要でない資産の損失のうち政令で定めるものを、他の生活に通常必要でない資産に係る所得から控除するとしています。そのうえで、それ以外のものと控除しきれないものは「生じなかつたものとみなす」と定めています。

マイホームには譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例がありますが、これは居住用財産であることが前提のため、別荘には使えません。マイホームの場合の扱いは不動産の譲渡損失の損益通算と繰越控除で整理しています。

別荘の譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できません
別荘の譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できません

特例がないからこそ、取得費と譲渡費用で決まります

別荘の税額を左右するのは、取得費と譲渡費用をどこまで積み上げられるかです。控除で消せないぶん、この2つが唯一の勝負どころになります。

気をつける点が2つあります。建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。そして取得費が分からないときなどは、譲渡価額の5パーセントを取得費とすることができます(概算取得費)。

計算例

例:譲渡価額3,800万円・譲渡費用130万円の別荘を売った場合(長期譲渡所得)

実額の取得費2,400万円(減価償却費相当額を差し引いた後)が分かるとき

譲渡所得 38,000,000円-24,000,000円-1,300,000円=12,700,000円 所得税 12,700,000円×15%=1,905,000円 復興特別所得税 1,905,000円×2.1%=40,005円 住民税 12,700,000円×5%=635,000円 合計2,580,005円

取得費が分からず、概算取得費(5パーセント)によるとき

概算取得費 38,000,000円×5%=1,900,000円 譲渡所得 38,000,000円-1,900,000円-1,300,000円=34,800,000円 所得税 34,800,000円×15%=5,220,000円 復興特別所得税 5,220,000円×2.1%=109,620円 住民税 34,800,000円×5%=1,740,000円 合計7,069,620円

差は約449万円です。古い売買契約書が1通見つかるだけで、これだけ変わることがあります。この金額は一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。

どこまでが取得費・譲渡費用になるかは不動産売却の取得費と譲渡費用で整理しています。小松公認会計士・税理士事務所では、購入時の資料が手元にない別荘も扱っています。入れ忘れを防ぐという観点から、資料の探し方からご一緒します。

購入時の資料が1通見つかるだけで、税額が大きく変わることがあります
購入時の資料が1通見つかるだけで、税額が大きく変わることがあります

災害で損害を受けたときの規定と、ここから先の個別判断

別荘が災害・盗難・横領で損害を受けたときには、別の規定が置かれています。所得税法62条1項です。

居住者が、災害又は盗難若しくは横領により、生活に通常必要でない資産として政令で定めるものについて受けた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除く。)は、政令で定めるところにより、その者のその損失を受けた日の属する年分又はその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなす。(所得税法62条1項)

こうした規定があること自体は、知っておく価値があります。ただし、どの譲渡所得から控除できるかは資産の種類や課税の方法によって変わります。適用できるかどうかは個別に確認が必要です。この記事で断定はしません。

ここまでは、ご自身でも確認できる部分です。別荘に3,000万円特別控除は使えないこと。税率は譲渡した年の1月1日時点の所有期間で決まること。損が出ても他の所得とは相殺できないこと。

注意

ここから先は、資料と使用の実態を見ないと決められません。その家屋が税法上の別荘に当たるか。取得費としてどこまで根拠づけて算入できるか。災害による損失の規定を使えるか。設計は個別の事情ごとに異なります。ご自身の判断で申告書を作る前に、一度ご相談ください。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

小松公認会計士・税理士事務所 代表 小松優馬 登録者6,900人超

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よくある質問(FAQ)

Q1. 親から相続した別荘を売ります。3,000万円特別控除は使えますか?

主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋には、マイホームを売ったときの特例は適用されません(国税庁タックスアンサーNo.3302)。相続したかどうかではなく、使用の実態で判断します。他に使える制度がないかは個別に確認します。

Q2. 週末は家族で泊まっています。自宅として扱えませんか?

判定は使用の実態によります。通常、自分や生計を一にする親族が居住の用に供しない家屋で、主として趣味、娯楽または保養の用に供する目的で所有するものは、生活に通常必要でない資産に当たります(所得税法施行令178条1項2号)。

Q3. 別荘を売って損が出ました。給与から引けますか?

引けません。土地建物の譲渡損失は他の土地建物の譲渡所得から控除できますが、控除しきれない部分を事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません(国税庁タックスアンサーNo.3203)。

Q4. 買ったときの契約書が見つかりません。どうなりますか?

取得費が分からないときなどは、譲渡価額の5パーセントを取得費とすることができます(国税庁タックスアンサーNo.3208)。ただし税額は大きくなります。まずは購入時の資料が残っていないかを探すことをおすすめします。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法62条1項・69条2項、所得税法施行令178条1項、国税庁タックスアンサーNo.3302・No.3203・No.3208・No.3211の範囲を扱っています。別荘を貸別荘として貸し付けていた場合の不動産所得や事業性の判定、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例・買換えの特例・軽減税率の特例の要件、減価償却費相当額の具体的な計算方法、別荘に係る固定資産税・不動産取得税などの地方税の取扱い、所得税法62条1項の控除をどの所得から行うかの判断は扱っていません。本記事の税額の計算は、長期譲渡所得として一定の前提を置いた目安であり、個別の税額を計算したものではありません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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