法人税・節税

補助金をもらったら税金がかかる?
圧縮記帳で課税を先送りできる仕組みと要件

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 補助金や保険金は益金ですが、圧縮記帳で同じ期に同額を損金にできます
  • 国庫補助金等は返還不要が期末までに確定していることが要件です(法42条)
  • 保険金等は保険差益金×圧縮基礎割合が圧縮限度額です(法令85条)
  • 確定申告書に明細の記載がなければ適用されません(法42条3項)

まず結論:補助金は益金ですが、圧縮記帳でその期の課税を抑えられます

補助金や保険金は、受け取った事業年度の益金になります。益金とは、税金の計算上の収益のことです。

ただし一定の要件を満たせば、圧縮記帳によって同じ事業年度に同額を損金にできます。

圧縮記帳とは、補助金でもらったお金に、その期は税金がかからないようにする処理です。買った固定資産の帳簿価額を減らすことで行います。

注意

これは課税の免除ではありません。帳簿価額を減らした分だけ、その後の減価償却費が少なくなります。税金は先送りされるだけです。

制度は、国庫補助金等(法人税法42条)と保険金等(同47条)に分かれています。順に見ていきます。

補助金は益金ですが、圧縮記帳でその期の課税を抑えられます
補助金は益金ですが、圧縮記帳でその期の課税を抑えられます

国庫補助金等の圧縮記帳 ― 要件と圧縮限度額

固定資産のための補助金を国や地方公共団体から受け、期末までに要件を満たせば、その額まで損金にできます。

法人税法42条1項が求めているのは、次の4つです。

  1. 固定資産の取得または改良に充てるための、国または地方公共団体の補助金・給付金等であること
  2. その返還を要しないことが、事業年度終了の時までに確定していること
  3. 事業年度終了の時までに、交付の目的に適合した固定資産を取得または改良していること
  4. 帳簿価額を損金経理により減額するか、確定した決算で積立金として積み立てる方法により経理していること

圧縮限度額は、交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額です。

補助金に代えて固定資産そのものの交付を受けたときは、その価額が圧縮限度額です(42条2項)。

計算例

例:返還不要が期末までに確定した補助金1,000万円を受け、交付の目的に適合した機械を2,500万円で取得した場合

圧縮限度額=交付を受けた補助金の額=1,000万円 圧縮後の帳簿価額=2,500万円-1,000万円=1,500万円 その期の益金1,000万円-損金算入額1,000万円=0円 将来の償却の基礎=1,500万円(圧縮しなければ2,500万円)

一定の前提を置いた目安です。圧縮した1,000万円の分だけ、将来の減価償却費の合計が少なくなります。

圧縮後の帳簿価額が、その後の減価償却の基礎になる取得価額になります。

圧縮限度額は、交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額です
圧縮限度額は、交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額です

期末までに返還不要が確定しないとき ― 特別勘定

期末までに返還不要が確定しないときは、特別勘定を設ける方法で損金にできます(法人税法43条1項)。

交付決定は受けたものの、額の確定通知が決算日に間に合わない。そうした場合の受け皿です。

その国庫補助金等の額以下の金額を、確定した決算で特別勘定を設ける方法により経理します。

返還すべきこと、または返還を要しないことが確定した場合等には、特別勘定を取り崩します(43条2項)。

取り崩すべきこととなった金額は、その事業年度の益金の額に算入します(43条3項)。返還不要が確定した期に、あらためて42条の圧縮記帳を検討することになります。

なお43条も、確定申告書に明細の記載がある場合に限り適用されます(43条4項)。

通達で押さえる境界線 ― どこからが「返還不要の確定」か

「条件に違反したら返す」といった一般的な条件が付いていても、返還不要の確定の判定には関係しません。

法人税基本通達10-2-1が挙げているのは、次の2つです。

  • 交付の条件に違反した場合には返還しなければならないこと
  • 一定期間内に相当の収益が生じた場合には返還しなければならないこと

では何をもって確定と見るのか。通達の注書きが答えです。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第15条《補助金等の額の確定等》の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当する。(法人税基本通達10-2-1(注))

一方で、そもそも対象にならないものもあります。工場誘致条例等に基づく補助金・奨励金等がその例です。実質的に税の減免に代えて交付されたことが明らかなときは、国庫補助金等に該当しません(通達10-2-4)。

補足

逆のケースもあります。工場誘致等のために都道府県または市町村から、固定資産を時価に比して著しく低い価額で取得したとします。その価額を帳簿価額とした場合は、法人税法42条により圧縮記帳をしたものとして取り扱われます(通達10-2-3)。山林の取得または改良に充てる補助金も、国庫補助金等に該当します(通達10-2-5)。

額の確定通知を受けているかどうかが、判断の分かれ目になります
額の確定通知を受けているかどうかが、判断の分かれ目になります

保険金等の圧縮記帳 ― 差益金と圧縮基礎割合で決まります

固定資産の滅失または損壊で保険金等を受け取ったときも、圧縮記帳ができます(法人税法47条1項)。期末までに代替資産を取得していることが前提です。

代替資産とは、その所有固定資産に代替する同一種類の固定資産です。所有権が移転しないリース取引による取得は除かれます。

対象は、滅失または損壊の日から3年以内に支払の確定した保険金等に限られます(法人税法施行令84条)。

圧縮限度額は、同施行令85条で次のように計算します。

項目計算
1号の金額保険金等の額 - 滅失または損壊により支出する経費の額
2号の金額1号の金額のうち、代替資産等の取得または改良に要した金額に達するまでの金額
圧縮基礎割合2号の金額 ÷ 1号の金額
保険差益金の額1号の金額 - 被害直前の帳簿価額のうち被害部分に相当する金額
圧縮限度額保険差益金の額 × 圧縮基礎割合

計算例

例:被害直前の帳簿価額1,000万円の資産が滅失。滅失により支出した経費50万円、保険金等2,000万円、代替資産の取得価額3,000万円

1号の金額=2,000万円-50万円=1,950万円 2号の金額=1,950万円(代替資産3,000万円>1,950万円のため1,950万円まで) 圧縮基礎割合=1,950万円÷1,950万円=1 保険差益金の額=1,950万円-1,000万円=950万円 圧縮限度額=950万円×1=950万円 代替資産の圧縮後の帳簿価額=3,000万円-950万円=2,050万円

国税庁タックスアンサーNo.5608の掲載例に、施行令85条の算式をあてはめたものです。一定の前提を置いた目安です。

支払を受けた事業年度に代替資産を取得できないときも、道は残ります。翌期首から原則として2年以内に取得・改良をする見込みであることが前提です。確定した決算で特別勘定を設ける方法により経理すれば、損金算入できます。

保険金等の支払に代えて代替資産の交付を受けた場合も、圧縮記帳の適用があります。

保険金等は3年以内に支払が確定したものに限られます
保険金等は3年以内に支払が確定したものに限られます

忘れると使えなくなるもの ― 申告書への明細の記載

圧縮記帳は、確定申告書に損金算入に関する明細の記載がある場合に限り適用されます。根拠は法人税法42条3項です。

保険金等の圧縮記帳では、原則として確定申告書に別表13(2)を添付します。

注意

決算で圧縮の経理をしていても、申告書の明細が抜けていれば適用を受けられません。42条4項には、記載のない申告書が提出された場合の救済規定があります。やむを得ない事情があると認めるときは適用できる、というものです。ただし税務署長の判断によります。あてにできるものではありません。

もう一つ落とし穴があります。所有権移転外リース取引による取得は、保険金等の代替資産から除かれています。設備をどう導入するかで、使える制度が変わります。

小松公認会計士・税理士事務所では、圧縮記帳を単独では考えません。設備投資で使える中小企業の2つの税制少額減価償却資産の取扱いとあわせて検討します。

圧縮記帳を使うかどうかは、その期の利益、繰越欠損金の残り、今後の設備計画によって答えが変わります。要件にあてはまるかどうかまではご自身でも確認できます。ただし、どの方法を選ぶかは個別の判断になります。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 補助金を受け取ると、その期にまとめて税金がかかりますか?

補助金は受け取った事業年度の益金になります。ただし要件を満たせば圧縮記帳により同額を損金にでき、その期の課税を抑えられます。免除ではなく、後の期の減価償却費が減る形で先送りされます。

Q2. 補助金の額の確定通知が、期末までに届きませんでした。

返還を要しないことが確定していないため、法人税法42条は使えません。この場合は同法43条により、確定した決算で特別勘定を設ける方法で経理すれば損金算入できます。確定申告書への明細の記載が必要です。

Q3. 交付の条件に違反したら返還する、という条件が付いています。

法人税基本通達10-2-1は、そうした一般的な条件が付いていることは、返還を要しないことが確定しているかどうかの判定には関係がないとしています。額の確定通知を受けているかで判断します。

Q4. 圧縮記帳をすれば、結局は得になりますか?

その期の課税は抑えられますが、帳簿価額を減らした分だけ後の減価償却費が少なくなります。有利かどうかは利益の見通しや設備計画によって変わるため、設計は個社ごとに異なります

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法42条・43条・47条、法人税法施行令84条・85条、法人税基本通達10-2-1・10-2-3・10-2-4・10-2-5、国税庁タックスアンサーNo.5608の範囲を扱っています。会計上の直接減額方式・積立金方式の呼称や圧縮積立金の税効果、消費税の取扱い、個別の補助金の名称・要件・金額、法人税法44条から46条および48条から51条の内容、特別勘定の取崩し額の具体的な計算方法、租税特別措置法の圧縮記帳は扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

補助金や保険金を受け取ったら、決算を締める前にご確認ください

圧縮記帳は、期末までに要件を満たしているか、申告書に明細を載せたかで結論が変わります。決算を締めてからでは選べる方法が限られます。代表税理士が、御社の設備計画と利益の見通しを踏まえて設計します。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者6,500人超)。

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