この記事のポイント
- 事業年度は定款等に定める会計期間です。会社側で変更できます(法13条1項)
- 変更したら遅滞なく所轄税務署長に届け出ます(法15条)。提出時期は速やかに
- 会計期間は1年を超えられません。超える部分は1年ごとに区分されます
- 変更した期は1年未満になり、役員報酬を決める期限の起算日も動きます
まず結論:決算期は変更できます。ただし税務署への届出が要ります
決算と繁忙期が重なってつらい。利益が読めないまま決算日を迎えてしまう。
そうしたときは、決算期そのものを見直せます。
事業年度とは、法令または定款等に定める「会計期間」のことです。
定款等とは、会社のいちばん基本のルールを書いた書類のことです。会社が自分で定めています。
だから会社側の手続で変えられます。設立時に何となく決めた決算月でも、見直しは可能です。
ただし税務では、変更したら税務署に届け出なければなりません。根拠は法人税法15条です。
ポイント
この記事で扱うのは法人税の手続です。会社側で定款の定めを変更したうえで、変更前の会計期間と変更後の会計期間を所轄税務署長に届け出る、という流れになります。

そもそも「事業年度」とは何か ― 法人税法13条1項
事業年度は、法人の財産と損益を計算する単位となる期間です。
法人税法13条1項が、次のように定義しています。
この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい、…(法人税法13条1項)
短い条文ですが、決算期の変更を考えるうえで大事なことが3つ入っています。
- 事業年度は、財産と損益を計算する単位となる期間であること
- その期間を「会計期間」と呼ぶこと
- 会計期間は、法令で定めるものか、定款等に定めるものであること
会社が定款等で定めているのですから、会社の意思で変えられます。決算期の変更ができるのは、この定義があるからです。
補足
法令にも定款等にも会計期間の定めがない法人については、別の扱いがあります。法人税法13条2項は、そうした法人が一定の日以後2月以内に、会計期間を定めて納税地の所轄税務署長に届け出なければならないと定めています。すでに決算期がある会社は、この2項ではなく15条の届出の話になります。
会計期間は1年を超えられません
決算の間隔を1年より長くすることはできません。
「今期は業績が読めないので、1回とばして15か月にしたい」。そうした発想は税務では通りません。
法人税法13条1項のただし書きが、次のように定めています。
ただし、これらの期間が一年を超える場合は、当該期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、その一年未満の期間)をいう。(法人税法13条1項ただし書き)
1年を超える期間を定めても、税務上は勝手に区切られる、ということです。
計算例
例:4月1日から翌年6月30日までの15か月を、ひとつの期間として定めた場合
開始の日以後1年ごとに区分 → 1つ目=4月1日〜翌年3月31日(12か月) 最後に1年未満の期間 → 2つ目=翌年4月1日〜6月30日(3か月) 12か月+3か月=15か月(2つの事業年度に分かれる)暦のうえで数えた月数です。一定の前提を置いた目安です。
決算を先延ばしにする目的では使えません。決算期の変更は、決算の回数を減らす手段ではありません。

変えたら届け出る ― 法人税法15条
会計期間を変更したら、遅滞なく所轄税務署長に届け出る義務があります。
法人税法15条の全文は、次のとおりです。
法人がその定款等に定める会計期間を変更し、又はその定款等において新たに会計期間を定めた場合には、遅滞なく、その変更前の会計期間及び変更後の会計期間又はその定めた会計期間を納税地の所轄税務署長に届け出なければならない。(法人税法15条)
読み落としやすいのは、届け出る中身です。
届け出るのは変更前の会計期間と変更後の会計期間の両方です。新しい決算月だけを伝えれば足りるわけではありません。
期限は「遅滞なく」です。何月何日までという日付の定めはありません。
注意
日付が書かれていないぶん、後回しになりやすい届出です。会社側で会計期間を変更したその場で、届出まで済ませてしまうのが安全です。
実際の手続 ― 「異動事項に関する届出」
使う手続は、国税庁の手続案内C1-8「異動事項に関する届出」です。
これは事業年度等の変更のほか、納税地の異動、商号の変更、代表者の変更などをした場合の手続です。決算期の変更も、この「異動事項」に含まれます。
案内に書かれている内容を、順に確認します。
- 手続対象者を確認する ― 異動等を行った法人です
- 提出時期を確認する ― 異動等後速やかに、とされています
- 提出先を確認する ― 異動前の納税地の所轄税務署長です
- 添付書類を確認する ― なし、とされています。ただし異動事項の内容確認のため、定款等の写しを確認させていただく場合があります
- 提出方法を決める ― e-Taxソフトで届出書を作成・提出します。書面で作成される場合は、届出書を1部、提出先に持参または送付します
手続根拠は、法人税法第15条、第20条、法人税法施行令第18条です。
添付書類は「なし」とされていますが、定款等の写しを確認される場合があります。会計期間を変更した定款等は、手元に整えておくと話が早く進みます。

変更した期は、1年未満の事業年度になります
決算期を変えると、変更した期だけが1年に満たない事業年度になります。
期の途中に新しい決算日が来るためです。ここがいちばん見落とされます。
計算例
例:3月31日決算の会社が、12月31日決算に変更した場合
変更前の会計期間=4月1日〜翌年3月31日(12か月) 変更後の会計期間=1月1日〜12月31日(12か月) 変更した期=4月1日〜12月31日=9か月(275日)暦のうえで数えた月数です。一定の前提を置いた目安です。
この9か月も、ひとつの事業年度です。決算を組み、申告をします。
つまり変更した年は、決算作業が2回来ます。手間が一時的に増えることは、先に知っておいてください。
短くなった期は、利益の水準も普段と変わります。締める前に手を打てることを整理しておきたい方は、決算前3か月にできる決算対策もあわせてご確認ください。
赤字が出た期の扱いも、事業年度を単位として考えます。欠損金の繰越控除の記事で、その考え方を説明しています。
役員報酬を決める期限も動きます
決算期を変えると、役員報酬を決める期限の起算日も一緒に動きます。
役員報酬を毎月同額で支給する形を、定期同額給与といいます。その金額を見直せる原則の時期が、法令で決まっています。
法人税法施行令69条1項1号イは、通常の改定を「当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月…を経過する日」までにされたものと定めています。
起算点は、会計期間の開始の日です。だから決算月が変われば、この期限もまるごと動きます。
3月決算なら、会計期間の開始の日は4月1日です。12月決算に変えれば、開始の日は1月1日になります。
役員報酬を決める役員会や株主総会の時期も、これに合わせて組み直すことになります。
期の途中で報酬を変えられる場面は限られています。詳しくは期の途中で役員報酬を変えられる2つの事由をご覧ください。

実務で確認すること/ここからは個別判断
ここまでは、ご自身でも確認できます。
- いまの定款等に、会計期間がどう書かれているか
- 変更後の会計期間が、1年を超えていないか
- 変更した期が何か月になるか(暦で数える)
- 変更前の会計期間と変更後の会計期間を、届出に両方書けているか
- 役員報酬を決める時期を、新しい会計期間に合わせて組み直せているか
ここからは個別の判断になります。「決算期を変えれば税金が減る」ということではありません。
できるのは、利益の見通しが立つ時期に決算を迎えること、繁忙期と決算作業を重ねないこと。その枠組みまでです。
どの月に寄せるのが自社に合うかは、売上の季節性や人員の配置で変わります。
小松公認会計士・税理士事務所では、決算期の変更を単独では考えません。決算作業の山、役員報酬を決める時期、資金繰りの谷を一枚の年間カレンダーに並べたうえで、決算月の候補を絞り込みます。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 決算期は自由に変えられますか?
事業年度は定款等に定める会計期間なので、会社側で変更できます(法人税法13条1項)。ただし変更したら、遅滞なく変更前と変更後の会計期間を納税地の所轄税務署長に届け出る必要があります(同15条)。
Q2. 届出はいつまでに出せばよいですか?
法人税法15条は「遅滞なく」と定めています。国税庁の手続案内C1-8「異動事項に関する届出」でも、提出時期は異動等後速やかにとされています。日付の定めがないぶん、後回しにしないことが大切です。
Q3. 決算を1回とばして、15か月の事業年度にできますか?
できません。法人税法13条1項ただし書きにより、1年を超える期間は開始の日以後1年ごとに区分されます。15か月なら12か月と3か月の2つの事業年度に分かれ、それぞれ決算と申告が必要になります。
Q4. 届出に添付書類は必要ですか?
国税庁の手続案内C1-8では、添付書類は「なし」とされています。ただし異動事項の内容確認のため、定款等の写しを確認させていただく場合がありますと記載されています。手元に整えておくと安心です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税法13条1項・13条2項・15条、法人税法施行令69条1項1号イ、国税庁の手続案内C1-8「異動事項に関する届出」の範囲を扱っています。地方税(都道府県民税・市町村民税・事業税)の異動届出の要否や様式、消費税の課税期間や課税事業者の判定に与える影響、均等割の月割計算、中間申告の要否、減価償却の月割計算、会社法上の定款変更の手続、変更できる回数や頻度は扱っていません。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索 法人税法(第13条 事業年度の意義・第15条 事業年度を変更した場合等の届出)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 国税庁 C1-8「異動事項に関する届出」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_5.htm
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(第69条 定期同額給与の範囲等)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097
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