この記事のポイント
- 準確定申告の期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内です
- 医療費控除等は死亡の日までの支払分。配偶者控除等は死亡当日の現況で判定します
- 納める税金は相続税の債務控除の対象です(国税庁タックスアンサーNo.4126)
- 還付金は相続税、還付加算金は所得税の対象という違いがあります
準確定申告とは何か
準確定申告とは、亡くなった方の1月1日から死亡の日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。期限は4か月。相続税の10か月より先に来ます。
国税庁タックスアンサーNo.2022は、年の途中で亡くなった方の所得と税額を、相続人が計算して申告・納税すると定めています。
ご家族を亡くされた直後はやるべきことが一度に押し寄せますが、準確定申告は「相続税より先に来る期限」として最初に取りかかるべきものです。

期限は4か月。相続税の10か月より先に来る
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。相続税の申告期限(10か月以内)より半年早く到来します。
具体的な日付で確認する
令和8年5月10日に亡くなり、相続人がその日に相続の開始を知った場合、期限は次のようになります。
| 手続き | 起算 | 期限 |
|---|---|---|
| 所得税の準確定申告・納税 | 知った日の翌日から4か月 | 令和8年9月10日 |
| 相続税の申告・納税 | 知った日の翌日から10か月 | 令和9年3月10日 |
注意
遺産分割の話し合いが終わっていなくても、準確定申告の期限は待ってくれません。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税の対象になり得ます(確定申告をしていないとどうなる?無申告加算税・延滞税と期限後申告の進め方)。

準確定申告が必要な人・不要な人
生前に確定申告が必要だった方は、準確定申告も必要になるのが基本です。
必要になりやすいケース
- 個人事業を営んでいた(事業所得がある)
- アパート・駐車場などの不動産所得があった(賃貸用不動産の譲渡を検討していた方も含みます)
- 亡くなった年に不動産を売却していた(譲渡所得が発生します)
- 公的年金等の収入が400万円を超えていた、または年金以外の所得が20万円を超えていた(年金受給者の確定申告は必要?400万円ルールと申告したほうが得なケース)
- 給与の年間収入金額が2,000万円を超えていた
- 2か所以上から給与を受けていた
申告義務はなくても、還付を受けられることがある
ポイント
源泉徴収されていた方は、年の途中で亡くなった分だけ1年分の所得控除を使い切れず、納めすぎのことがあります。準確定申告で税金が戻ります。「義務がない」と「したほうが得」は別です。
控除の判定は「死亡の日」で切る
ここが最も間違えやすい部分です。国税庁タックスアンサーNo.2022は、各種控除の取扱いを次のように整理しています。
| 控除 | 判定のしかた |
|---|---|
| 医療費控除 | 死亡の日までに被相続人が支払った医療費が対象 |
| 社会保険料控除・生命保険料控除・地震保険料控除 | 死亡の日までに支払った金額が対象 |
| 寄附金控除 | 死亡の日までに支出した特定寄附金が対象 |
| 配偶者控除・扶養控除 | 死亡の日の現況により判定し、月割計算は行わない |
死亡後に支払った医療費はどうなるか
亡くなった後に相続人が支払った入院費などは、準確定申告の医療費控除には入れられません。ただし生計を一にしていた親族が払ったのであれば、払った人自身の医療費控除の対象になる余地があります(国税庁タックスアンサーNo.1120)。支払日と支払者は必ず記録してください。医療費控除の基本は医療費控除はいくらから使える?10万円の基準とセルフメディケーション税制の選び方をご覧ください。

手続きの実務――付表・提出先・e-Tax
相続人が複数いる場合は「付表」を添付する
準確定申告書には各相続人の氏名・住所・続柄を記載した付表を付けます。相続人が2人以上なら原則全員の連署が必要ですが、他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。
提出先は被相続人の死亡当時の納税地
提出先は相続人の住所地ではなく、亡くなった方の死亡当時の納税地を所轄する税務署です。遠方にお住まいの相続人ほど勘違いしやすい点です。
e-Taxにも対応している
準確定申告は令和2年分以降e-Taxでも提出できます。税理士が代理送信する場合、税理士の電子署名で相続人各自の電子署名を省けます。相続人が全国に散らばっているケースで大きな違いになります。
相続税との接点――納付税額・還付金の扱い

準確定申告は所得税の手続きですが、その結果は相続税の計算にも影響します。
準確定申告で納める税金は債務控除できる
国税庁タックスアンサーNo.4126によれば、死亡後に相続人が納めた所得税などは、死亡のときに確定していないものであっても債務として遺産総額から差し引けます。ただし、相続人の責任で生じた延滞税や加算税は差し引けません。4か月の期限を守る実利はここにもあります。
還付金と還付加算金は税目が違う
還付を受けた場合の扱いは、国税庁の質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」に整理されています。
| 受け取るもの | 性格 | 課税関係 |
|---|---|---|
| 還付金(還付金請求権) | 被相続人が納めすぎた税金の返還 | 相続財産として相続税の課税対象 |
| 還付加算金 | 相続人が請求により取得する利息的なもの | 相続人の雑所得として所得税の課税対象 |
注意
還付金を相続財産に入れ忘れると、相続税の申告漏れになります。準確定申告と相続税申告を別々の担当者が行う場合に、起きやすい漏れです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 相続人が複数いる場合、代表者だけで準確定申告できますか?
原則として相続人全員の連署が必要です。ただし他の相続人の氏名を付記すれば各人が別々に提出することも認められます。単独で完結する手続きではありません。
Q2. 遺産分割が終わっていませんが、準確定申告は待てますか?
待てません。期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。遺産分けの進み具合とは関係なく到来します。
Q3. 亡くなった父は青色申告をしていました。準確定申告でも青色申告特別控除は使えますか?
要件を満たせば使えます。ただし事業を引き継ぐ相続人が自分の申告で青色申告をするには、相続人自身の承認申請が必要です。承認はそのまま引き継がれません。
Q4. 亡くなった年に不動産を売却していた場合はどうなりますか?
生前に売っていたのであれば、その譲渡所得は準確定申告に含めます。取得費や特例の判定は通常の譲渡所得と同じです。相続人が相続後に売った場合は、相続人自身の確定申告で処理します。
免責事項
本記事は令和8年8月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。準確定申告の要否や控除の適用は個別の事情によって結論が変わり、相続税の申告と一体で検討すべき論点も含みます。具体的な事案については必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・判例出典
- 国税庁タックスアンサー No.2022「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm
- 国税庁タックスアンサー No.4126「相続財産から控除できる債務」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm
- 国税庁タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁 質疑応答事例「被相続人の準確定申告に係る還付金等」https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/sozoku/02/01.htm
- 国税庁「所得税及び復興特別所得税の準確定申告のe-Tax対応について」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/jyunkaku/index.htm
- 所得税法124条・125条(年の中途で死亡した場合の確定申告)、相続税法13条(債務控除)e-Gov法令検索
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4か月の期限は思ったより早く来ます
ご家族を亡くされた直後に、所得税と相続税の両方を並行して進めるのは大きな負担です。当事務所では準確定申告から相続税申告までを一貫してお引き受けし、還付金の計上漏れや債務控除の抜けが生じないよう整理します。まずは無料相談で状況をお聞かせください。
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