この記事のポイント
- 長期譲渡所得の住民税の分も上限の計算に入ります
- 3,000万円控除で課税譲渡所得がゼロなら、その分の上限は増えません
- 売った年は確定申告書に寄附金控除を書きます
- 寄附は売った年の12月31日までに済ませます
まず結論:売った年は上限が増えることがありますが、条件つきです
ふるさと納税の上限を決めるのは、住民税の所得割(所得に応じてかかる部分)の2割です。
譲渡所得の住民税が出る年は、それが所得割に加わり、上限も増えます。
ただし、特別控除で課税される譲渡所得がゼロになれば、その分の上限は増えません。

上限の「所得割」に、譲渡所得の分が合算されます
控除のうち「特例分」の上限は、次のとおりです。
当該金額が当該納税義務者の第三百十四条の三及び前条の規定を適用した場合の所得割の額の百分の二十に相当する金額を超えるときは、当該百分の二十に相当する金額
(地方税法314条の7第11項)
長期の譲渡所得は、給与などと分けて住民税5%を課します(附則34条)。
この分離課税の所得割を、上限に足す読替えがあります。
同条第十一項及び附則第五条の五第二項中「所得割の額」とあるのは「所得割の額並びに附則第三十四条第四項の規定による市町村民税の所得割の額の合計額」と
(地方税法附則34条6項4号)
上限の2割は、給与などの所得割と譲渡所得の所得割の合計にかかります。
道府県民税も、附則34条3項4号で同じ形です。
なお、令和9年中の寄附からは、特例分の上限が「所得割の2割」と「合計193万円」の低いほうになります。
令和8年の地方税法改正(37条の2第11項・314条の7第11項)によるものです。
数字で見ると、例では上限が10万円から30万円になります
計算例
例1:住民税の課税総所得金額500万円の給与所得者
前提 指定都市以外・所得控除は売った年も同じ・調整控除は考慮しない 給与などの所得割 5,000,000円 × 10% = 500,000円 売らない年の上限 500,000円 × 20% = 100,000円 長期譲渡所得2,000万円の所得割 20,000,000円 × 5% = 1,000,000円 売った年の上限 (500,000円 + 1,000,000円)× 20% = 300,000円寄附額の目安は、2,000円に「上限÷割合」を足した額です。
割合は、この例(330万円超695万円以下の区分)では69.58%です(地方税法附則5条の6)。
| ケース | 所得割の合計 | 特例分の上限 | 寄附額の目安 |
|---|---|---|---|
| 売らない年 | 500,000円 | 100,000円 | 145,719円 |
| 長期譲渡所得2,000万円 | 1,500,000円 | 300,000円 | 433,158円 |
| 3,000万円控除で課税譲渡所得0円 | 500,000円 | 100,000円 | 145,719円 |
いずれも前提を置いた目安で、実際の上限は市区町村が計算します。

3,000万円控除で課税譲渡所得がゼロなら、譲渡分の上限は増えません
マイホームを売ると、3,000万円控除を使えることがあります。
譲渡所得の住民税は、控除後の「課税長期譲渡所得金額」にかかります(附則34条1項・4項)。
これがゼロなら、譲渡所得の所得割もゼロです。
売却代金が大きくても、課税される譲渡所得がなければ、譲渡所得の分の上限は増えません。
ただし、控除前の譲渡益は合計所得金額に入ります(地方税法附則34条6項1号)。
配偶者控除や基礎控除・調整控除が外れ、上限がわずかに増えることはあります。
注意
例1の売った年の目安433,158円を寄附したとします。控除後の譲渡所得がゼロなら、上限は100,000円のままです。上限を超えた部分は控除されず、自己負担が2,000円を大きく超えます。
売却の税額はマンションを売ったときの税金の記事で扱っています。
特例分の割合は、給与所得がある方ならふつう変わりません
特例分は「寄附額−2,000円」に割合を掛けて出します。
割合は、90%から所得税率(復興特別所得税を含む)を引いた率です。
この所得税率は、住民税の課税総所得金額から求めます(総務省)。
正確には、そこから人的控除差調整額(所得税と住民税の控除額の差)を引いた額です。
給与などの課税所得がある方は、譲渡所得が増えても割合はふつう変わりません。
割合が変わるのは、課税総所得金額がない場合などです(附則5条の5)。
同項第五号中「百分の七十五」とあるのは「百分の七十四・六八五」とする。
(地方税法附則5条の6第2項)
ポイント
74.685%は、90%から長期譲渡所得の所得税率15%(復興特別所得税を加えた率)を引いた値です。課税総所得金額がなく長期譲渡所得2,000万円なら、上限20万円、目安は269,791円です。
所得税の40%の枠にも、長期譲渡所得が入ります
所得税の寄附金控除には、総所得金額等の40%の枠があります。
その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(当該合計額がその者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の四十に相当する金額を超える場合には、当該百分の四十に相当する金額)
(所得税法78条1項1号)
この「総所得金額」は、長期譲渡所得がある年は読み替えられます。
所得税法第七十一条及び第七十二条から第八十七条までの規定の適用については、これらの規定中「総所得金額」とあるのは、「総所得金額、長期譲渡所得の金額」とする。
(租税特別措置法31条3項3号)
住民税の基本分の30%の枠も、附則34条6項4号で広がります。
特別控除がある年の枠は、売った年の合計所得金額の記事とあわせて個別に確かめます。

譲渡益が出た年は、ワンストップ特例ではなく確定申告書に書きます
3,000万円控除は、確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.3302)。
確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります。
(国税庁タックスアンサー No.1155)
第二表の寄附金控除欄と、住民税に関する事項の欄の両方に書きます。
書き忘れたときはワンストップ特例が無効になるケースの記事をご覧ください。
寄附は、売った年の12月31日までに済ませます
所得税は「その年中に支出した」寄附金が対象です(所得税法78条1項)。
住民税は「前年中に」支出した寄附金を、翌年度に控除します(地方税法314条の7第1項)。
売った年の上限を使えるのは、その年の12月31日までの寄附だけです。
譲渡所得がどの年に入るかは、引渡しの日が原則です(所得税基本通達36-12)。
契約の効力発生の日を選んで申告することもできます。
補足
年末に契約し翌年に引き渡すときは、申告する年を寄附の前に決めます。上限が増える年も変わるためです。
つまずくのは、だいたいこの5つです
- 3,000万円控除を使うのに、売却代金で上限を見積もった ― 譲渡所得の分の上限は増えません
- ワンストップ特例の申請で済ませた ― 確定申告をすると申請は無効です
- 第二表の住民税の欄に書かなかった ― 特例分が控除されないおそれがあります
- 翌年の申告の時期に寄附した ― 売った年の上限には入りません
- 給与の額だけで上限を見積もった ― 譲渡所得の所得割が入っていません
ひとつめは例1なら、約29万円の寄附が枠を超えます。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
ご自身でできるのは、次の4点です。
- 売買契約書で、引渡しの日と契約の日を確かめる
- 特別控除を使うかどうかを確かめる
- 前年の住民税の通知書で、所得割の額を書き写す
- その年の寄附額と寄附先を、受領証で一覧にする
譲渡所得の見込額と、それに応じた上限の試算は個別判断です。
取得費や特例の選び方で、課税される譲渡所得が変わるためです。

税理士が入ると変わるのは、年内に上限を試算できることです
小松公認会計士・税理士事務所では、譲渡所得の計算から申告書への反映まで通して担当します。
- 取得費と譲渡費用を集め、課税長期譲渡所得金額を見込みます
- 特別控除の有無で変わる上限を並べます
- 総合分と分離分の所得割を分けて出し、上限を試算します
- 受領証をもとに、第二表の両方の欄へ記載します
- 引渡しの日と契約の日のどちらで申告するかを検討します
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
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よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産を売った年は、ふるさと納税の上限が必ず増えますか?
必ずではありません。上限は住民税の所得割の2割で、長期譲渡所得の所得割が合算されます(地方税法附則34条6項4号)。3,000万円控除などで課税長期譲渡所得金額がゼロなら、譲渡所得の所得割もゼロです。その分の上限は増えません。
Q2. 売った年もワンストップ特例は使えますか?
譲渡益が出た年や特例を使う年は、使えません。3,000万円控除などの特例は確定申告が必要です(国税庁タックスアンサー No.3302)。No.1155は、確定申告を行う方はワンストップ特例の申請が無効になるとしています。確定申告書の第二表に、寄附金控除と住民税の欄の両方を書きます。
Q3. 譲渡所得がある年は、特例分の割合も変わりますか?
給与などの課税総所得金額がある方は、ふつう変わりません。割合が75%(復興特別所得税分を読み替えて74.685%)になるのは、課税総所得金額がないなどの場合に限られます(地方税法附則5条の5・5条の6)。
Q4. 売却の翌年の2月に寄附しても、売った年の分になりますか?
なりません。所得税は「その年中に支出した」寄附金が対象で(所得税法78条1項)、住民税も「前年中に」支出した寄附金を控除します(地方税法314条の7第1項)。売った年の上限を使うには、その年の12月31日までに寄附します。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。地方税法35条・37条の2・314条の3・314条の7、地方税法附則5条の5・5条の6・34条、所得税法78条、租税特別措置法31条3項・35条1項、所得税基本通達36-12、国税庁タックスアンサー No.1150・No.1155・No.3302、総務省ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」の内容を扱っています。所得税の40%・住民税の30%の枠に入る長期譲渡所得の金額が特別控除の前か後か、調整控除や人的控除差調整額の具体額、所得割額の厳密な算定、均等割と端数処理、指定都市に住所がある場合の配分、短期譲渡所得や株式等の分離課税がある場合の割合、居住用財産の軽減税率を使う場合、返礼品や自治体の指定制度、ワンストップ特例の申請期限、更正の請求の手続、寄附の支出時期の判定、合計所得金額による扶養や保険料への影響は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の上限額は所得の内訳・所得控除・住所地によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- e-Gov法令検索「地方税法」(314条の7・附則5条の5・附則5条の6・附則34条)https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(31条3項・35条1項)https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- e-Gov法令検索「所得税法」(78条)https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 国税庁 タックスアンサー No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
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不動産を売った年は、長期譲渡所得にかかる住民税の2割だけ、特例分の上限が増えることがあります。一方、3,000万円控除などで課税される譲渡所得がゼロなら、譲渡所得の分の上限は増えません。譲渡益が出た年は原則として確定申告が必要になり、ワンストップ特例は使えません。寄附はその年の12月31日までに済ませる必要があります。代表税理士が、課税長期譲渡所得金額の見込み、特別控除を使う場合と使わない場合の上限の比較、第二表への記載まで通して対応します。寄附の前、売買契約を結んだ時点でご相談ください。
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