法人税・節税

定期保険の受取人を遺族にするとき
保険料が給与になる場合と規程との関係

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 保険料は受取人が会社でも遺族でも、原則は期間の経過に応じて損金です
  • 受取人が遺族で役員など特定の人だけが被保険者なら、保険料はその人の給与です
  • 遺族受取なら、同族関係者が大部分の会社は全員加入でも同族関係者の分が給与です(所得税の通達)
  • 遺族が受け取る保険金は、会社が退職金として支給すると決めているかで相続税の扱いが変わります

まず結論:遺族受取で「特定の人だけ」を被保険者にすると、保険料は給与です

従業員や役員の死亡保障に使う定期保険は、決まった期間内に亡くなったときだけ保険金が出ます。

保険料は、受取人が会社でも遺族でも、原則として期間の経過に応じて損金になります。

損金は、税金の計算で差し引ける費用です。

被保険者は、亡くなると保険金が出る対象の人です。

ただし、受取人が遺族で、役員や部課長など特定の人だけを被保険者にすると、保険料はその人への給与です。

遺族受取で特定の人だけを被保険者にすると、保険料は給与になります
遺族受取で特定の人だけを被保険者にすると、保険料は給与になります

受取人ごとの扱いは、法人税基本通達9-3-5が決めています

遺族受取の場合は、次のとおりです。

(2) 保険金又は給付金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、原則として、期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

(法人税基本通達9-3-5)

受取人が会社の場合の(1)には、このただし書がありません。

受取人が会社なら、役員だけを被保険者にしても、保険料は給与になりません。

保険金の受取人被保険者の範囲保険料の扱い
会社特定の人に限らない期間の経過に応じて損金
会社役員だけ期間の経過に応じて損金
遺族特定の人に限らない期間の経過に応じて損金
遺族役員・部課長など特定の人だけその人への給与

表の3段目でも、同族関係者が大部分の会社は注意が要ります(後述)。

補足

保険期間3年以上で最高解約返戻率50%超なら、原則として9-3-5の2で一部を資産計上します。令和元年7月8日以後の契約が対象です。最高解約返戻率は、払った保険料に対して解約で戻るお金の割合の最高値です。詳しくは法人保険と通達改正の記事をご覧ください。遺族受取で特定の人だけが被保険者なら、この場合も給与です(9-3-5の2の注6)。

給与になると、源泉徴収と本人の所得税まで処理がつながります

給与とされた保険料は、本人の所得税にもつながります。

国税庁の趣旨説明は、遺族受取の保険料を「一種の福利厚生費」とみて損金を認めています。

特定の人だけなら経済的な利益を与えたとみて給与とし、所得税も同様としています。

  • 本人の給与として、源泉徴収の対象になります(所得税法183条1項)
  • 本人の生命保険料控除の対象になります(タックスアンサーNo.5364)
  • 役員の分は、会社が経常的に負担していれば定期同額給与になります(同No.5364の注5)

定期同額給与は、損金にできる役員給与の一つです。

計算例

例:役員2名・従業員8名の会社(1人あたり年間保険料36,000円・最高解約返戻率50%以下と仮定)

① 10名全員・遺族受取 36,000円 × 10名 = 360,000円 → 損金 ② 役員2名だけ・遺族受取 36,000円 × 2名 = 72,000円が役員の給与 ③ 役員2名だけ・会社受取 36,000円 × 2名 = 72,000円 → 損金

金額は一定の前提を置いた目安で、同族関係者が大部分の会社ではない前提です。②も、会社が経常的に負担していれば定期同額給与として損金です。

役員だけを被保険者にして受取人を遺族にすると、保険料は役員への給与です
役員だけを被保険者にして受取人を遺族にすると、保険料は役員への給与です

「特定の人だけ」かは、合理的な基準で全員に機会があるかで見ます

所得税の通達は、合理的な基準で普遍的に設けた差かどうかを見ています。

目安は所得税の通達にあり、定期保険の36-31の2の注2が36-31の注2を準用しています。

(1) 保険加入の対象とする役員又は使用人について、加入資格の有無、保険金額等に格差が設けられている場合であっても、それが職種、年齢、勤続年数等に応ずる合理的な基準により、普遍的に設けられた格差であると認められるときは、ただし書を適用しない。

(2) 役員又は使用人の全部又は大部分が同族関係者である法人については、たとえその役員又は使用人の全部を対象として保険に加入する場合であっても、その同族関係者である役員又は使用人については、ただし書を適用する。

(所得税基本通達36-31(注)2)

(1)については、国税不服審判所(税務署の処分への不服を審査する機関)の裁決があります。

平成5年8月24日の、養老保険の事案です。

審判所は、全員加入を定めた法令や通達はないと認めました。

そのうえで、少なくとも全従業員に恩恵を受ける機会が要るとしました。

「主任以上」で選んだ被保険者は、全員が主任になれるとは限らないとして、特定の使用人とされました。

ポイント

(2)は、役員・従業員の全部か大部分が、オーナー一族などの同族関係者の会社です。遺族受取なら、全員を被保険者にしても、同族関係者の分は給与になります。ご家族経営の会社は、まずここを確かめます。

加入の基準は、全員に加入の機会があるかどうかが問われます
加入の基準は、全員に加入の機会があるかどうかが問われます

弔慰金・死亡退職金の規程は、保険金の行き先とセットで決めます

規程の役割は、受取人が会社か遺族かで変わります。

受取人が会社なら、保険金は会社に入り、規程に基づいてご遺族へ死亡退職金や弔慰金を払う形です。

受取時の税金は、会社が受け取る死亡保険金の記事で扱っています。

注意

規程どおりでも、全額が損金になるとは限りません。会社受取の定期保険の入院給付金で、役員に見舞金を払った事案です(平成14年6月13日裁決)。規程は給付金の半額を払う定めでした。審判所は、額が社会通念上相当か(世間の常識に照らして妥当か)で判断しました。規程に従ったかや、保険金が原資かでは左右されないとしています。超えた部分は役員への給与(当時の賞与)とされ、損金になりませんでした。

受取人が遺族なら、保険金は会社を通らずにご遺族へ入ります。

相続税では、会社が払った保険料も本人負担とみて、原則は死亡保険金です(相続税法基本通達3-17)。

ただし、雇用主が当該保険金を従業員の退職手当金等として支給することとしている場合には、当該保険金は法第3条第1項第2号に掲げる退職手当金等に該当するものとし、この取扱いを適用しない。

(相続税法基本通達3-17)

保険金を退職金として支給すると会社が決めていれば、退職手当金等になります。

退職手当金等に当たるかは、規程があれば規程で、なければ地位や功労などで判定します(同3-19)。

非課税枠などは、死亡退職金と弔慰金の記事で扱っています。

保険金が会社に入るか、ご遺族に直接入るかで、その後の扱いが変わります
保険金が会社に入るか、ご遺族に直接入るかで、その後の扱いが変わります

注意したい4つの失敗パターン

次の4つは、被保険者の範囲か規程でつまずく形です。

  • 役員や部課長だけを被保険者にして、受取人を遺族にした。保険料はその人への給与です(法人税基本通達9-3-5)。
  • ご家族中心の会社で「全員加入なら大丈夫」と考えた。遺族受取で同族関係者が大部分なら、その人たちの分は給与です。
  • 規程どおりなら、いくら渡しても損金になると考えた。相当額を超えた見舞金が給与とされた裁決があります。
  • 規程に保険金の扱いを書いていない。保険金を退職金に充てるのかを、規程で示せません(相続税法基本通達3-17)。

どれも、加入の前に被保険者の範囲と規程を確かめることが出発点です。

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

ご自身で確かめられるのは、次の4点です。

  1. 保険証券で、契約者・被保険者・受取人・保険期間を確かめる
  2. 被保険者の一覧と、加入の基準を書き出す
  3. 役員・従業員のうち、社長のご家族やご親族を書き出す
  4. 弔慰金規程・死亡退職金規程に、保険金の扱いが書いてあるかを確かめる

基準が合理的で普遍的か、同族関係者が「大部分」かは、事実に応じた個別判断です。

規程の金額や、ご遺族の相続税の扱いも、個別に確かめます。

税理士が入ると変わるのは、判定の根拠と給与・規程の処理です

小松公認会計士・税理士事務所では、次の作業を行います。

  • 保険証券と被保険者の一覧から、表の4つの形のどれかを判定します
  • 加入の基準が、職種・年齢・勤続年数などに応じたものかを確かめます
  • 給与になる保険料の源泉徴収・生命保険料控除・定期同額給与の処理を確認します
  • 弔慰金規程・死亡退職金規程の条文と金額を、保険金との関係まで確認します
  • 決算書と申告書に反映し、税務調査での想定問答を用意します

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 役員だけを被保険者にした定期保険の保険料は、損金になりますか?

受取人が会社なら、原則として期間の経過に応じて損金です(法人税基本通達9-3-5)。受取人が遺族で、役員など特定の人だけが被保険者なら、保険料はその人への給与です。役員の分は、会社が経常的に負担していれば定期同額給与になります(タックスアンサーNo.5364)。

Q2. 従業員全員を被保険者にすれば、給与になることはありませんか?

受取人が会社なら、給与にはなりません。遺族受取でも、原則として給与にはなりません。ただし、役員・従業員の全部か大部分が同族関係者の会社は別です。遺族受取なら、全員加入でも同族関係者の分が給与です(所得税基本通達36-31の2(注)2)。

Q3. 勤続年数などで、加入する人を絞ってもよいですか?

遺族受取の場合の線引きです。職種・年齢・勤続年数などの合理的な基準で普遍的に設けた差なら、給与にしないとされています。根拠は所得税基本通達36-31の2(注)2です。平成5年8月24日の裁決では、「主任以上」で選んだ養老保険の保険料の一部が給与とされました。

Q4. 遺族が受け取った保険金は、相続税でどう扱われますか?

会社が負担した保険料は、本人が負担したものとみます。そのうえで、原則として死亡保険金として扱います(相続税法基本通達3-17)。ただし、会社が保険金を退職手当金等として支給することとしている場合は、退職手当金等になります。規程の定めを確かめてください。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(注)6・9-2-9(12)・9-2-11(5)、所得税基本通達36-31(注)2・36-31の2・76-4、相続税法基本通達3-17・3-19、所得税法183条1項、国税庁タックスアンサーNo.5364(令和7年4月1日現在法令等)、令和元年6月28日付課法2-13ほかの趣旨説明(9-3-5)、国税不服審判所の平成5年8月24日・平成14年6月13日の各裁決の内容を扱っています。特定の保険商品の名称と内容、最高解約返戻率が50%を超える定期保険等の資産計上額と取崩しの計算、解約返戻金相当額のない短期払の保険料の特例、第三分野保険、傷害特約などの特約の保険料、養老保険・定期付養老保険、令和元年7月8日前に契約した保険、年払保険料の期間按分、会社が受け取った保険金の益金の計算と計上時期、役員退職給与と弔慰金の損金算入の限度、同族関係者の範囲と「大部分」の判定基準、源泉徴収税額の計算と年末調整、社会保険料の扱い、ご遺族の相続税の非課税限度額と税額の計算は扱っていません。紹介した裁決はいずれも当時の規定による事案で、平成5年8月24日裁決は養老保険、平成14年6月13日裁決は入院の見舞金の事案です。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の保険料と税額は契約の内容と会社ごとの事実によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

定期保険の受取人と被保険者の範囲を、加入の前に確かめませんか

会社で入る定期保険の保険料は、受取人が会社でも遺族でも、原則として期間の経過に応じて損金です。ただし、受取人が遺族で役員など特定の人だけが被保険者なら、その人への給与になります。所得税の通達では、遺族受取なら、同族関係者が大部分の会社は全員加入でも同族関係者の分が給与です。代表税理士が、保険証券と被保険者の一覧から判定表を作ります。加入の基準、源泉徴収、規程と保険金の関係まで確認します。加入や受取人の変更、規程の見直しの前にご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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