不動産譲渡所得

確定申告書第三表の書き方
不動産を売った年に内訳書の数字をどの欄へ写すか

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 第三表は内訳書3面「4」の数字を区分ごとに写す用紙です
  • 収入金額はA、所得金額は特別控除後のEを書きます
  • 特別控除額は下の事項欄と「特別控除額の合計額」に書きます
  • 第三表の税額合計は第一表の㉜へ転記します

まず結論:第三表は、内訳書の計算結果を区分ごとに写す用紙です

土地や建物を売った年は、第一表・第二表と「申告書第三表(分離課税用)」を使います。

分離課税とは、給与などと合計せずに税金を計算する仕組みです。

第三表には、内訳書3面「4」の数字を写します。

作成に当たっては、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」から転記します。

(国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」11ページ)

令和7年分以降用の様式と、国税庁の記載例で説明します。

第三表は、先に作った譲渡所得の内訳書を見ながら書き進めます
第三表は、先に作った譲渡所得の内訳書を見ながら書き進めます

内訳書のどの数字を、第三表のどの欄へ写すか

転記するのは主に4つの欄です。内訳書の書き方は譲渡所得の内訳書の書き方の記事で扱っています。

内訳書3面「4」第三表の欄気をつける点
A 収入金額収入金額(㋛〜㋟のうち該当区分)内訳書の①譲渡価額と同じ額(共有なら持分の額)
E 譲渡所得金額所得金額(67〜71欄のうち該当区分)特別控除を引いた後の金額
B 必要経費・C 差引金額下段「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」C の合計は100欄へ
D 特別控除額同じ事項欄の「特別控除額」合計を101欄へ

事項欄には区分(「長期・一般」「長期・軽課」など)と「所得の生ずる場所」(物件の所在地)も書きます。

特例を使う場合は、上部の「特例適用条文」欄に条文を書きます。

売却が2件以上なら、区分ごとに合計して各欄に書きます。

取引が複数ある場合には、譲渡所得の区分ごとに、その合計額を各欄に書いてください。

(同11ページ)

区分は、所有期間と使う特例の組み合わせで決まります

税率は区分で変わるため、区分の選択がいちばん大切です。

長期は、売った年の1月1日で所有期間5年超、短期は5年以下です(タックスアンサー No.3202)。

区分(所得金額の欄)主な対象所得税の税率
短期・一般分(67)売った年の1月1日で所有期間5年以下の土地や建物の一般の譲渡30%(住民税9%)
短期・軽減分(68)国や地方公共団体への譲渡の特例(措法32条3項)15%(住民税5%)
長期・一般分(69)売った年の1月1日で所有期間5年超の土地や建物の一般の譲渡15%(住民税5%)
長期・特定分(70)優良住宅地の造成等のための譲渡の特例(措法31条の2)2,000万円以下の部分は10%(住民税4%)、超える部分は15%(住民税5%)
長期・軽課分(71)所有期間10年超の居住用財産の譲渡(措法31条の3)6,000万円以下の部分は10%(住民税4%)、超える部分は15%(住民税5%)

(国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」31ページの早見表)

早見表は令和7年中の売却を前提に、令和2年1月1日以後の取得を短期としています。

令和8年中に売った場合は、令和2年12月31日以前に取得したものが長期です。

判定の詳細は短期譲渡と長期譲渡の判定の記事で説明しています。

区分の行を取り違えると税率が変わるため、所有期間と特例を先に確かめます
区分の行を取り違えると税率が変わるため、所有期間と特例を先に確かめます

税金の計算欄は、1,000円未満を切り捨てて欄ごとに税額を出します

税金の計算欄には、第一表の⑫(給与や年金など総合課税の所得の合計)と㉚(所得控除の合計)を写します。

⑫から㉚を引いた残りを78欄に、所得金額の各欄を79〜85欄に書きます。

どちらも金額ごとに1,000円未満を切り捨ててから税率を掛けます。

計算例

例:国税庁の記載例(事例2)。10年超住んだ自宅を6,900万円で売却し、3,000万円控除と軽減税率を適用

内訳書 C 差引金額 69,000,000円 - 38,076,060円 = 30,923,940円 内訳書 E 譲渡所得金額 30,923,940円 - 30,000,000円 = 923,940円 第三表 収入金額「長期・軽課分」69,000,000円/所得金額71欄 923,940円 78欄 580,000円 - 34,500円 = 545,500円 → 545,000円(千円未満切捨て) 86欄 545,000円 × 5% = 27,250円 80欄 923,000円(千円未満切捨て)→ 88欄 923,000円 × 10% = 92,300円 94欄 27,250円 + 92,300円 = 119,550円(第一表の㉜へ)

数値は一定の前提を置いた目安です。

事項欄と100欄には、差引金額30,923,940円を書きます。

事項欄と101欄には、特別控除額30,000,000円を書きます。

第一表とは、⑫㉚を受け取り、税額合計を㉜へ返す関係です

  • 第一表 → 第三表 ― ⑫と㉚を、税金の計算欄へ写す
  • 第三表 → 第一表 ― 94欄の税額合計を、第一表の㉜へ写す
  • 第一表の「分離」欄 ― 「1」を書く(令和8年9月24日以降に出す申告書)

事例2は第一表で復興特別所得税2,510円を加え、申告納税額は122,000円です。

合計所得金額には、特別控除前の差引金額(100欄)が入ります。

事例2は580,000円+30,923,940円=31,503,940円で基礎控除を受けられません。

自宅を売った年は、特別控除後の税額だけでなく合計所得金額への影響も確かめます
自宅を売った年は、特別控除後の税額だけでなく合計所得金額への影響も確かめます

書き間違えないよう確かめたい5つの欄

いずれも税額や申告内容の誤りにつながります。

  • 所得金額に特別控除前のCを書いた ― 所得金額は特別控除後のEです
  • 軽課分を一般分の行に書いた ― 10%ではなく15%で計算されます
  • 特別控除額の合計額(101欄)が空欄 ― 国税庁も注意を促しています
  • 短期と長期を取り違えた ― 所得税30%と15%で大きく変わります
  • 94欄を第一表の㉜へ写していない ― 分離課税の税額が漏れます

注意

事例2で71欄にC(30,923,940円)を書くと、88欄は3,092,300円になります。正しい額より3,000,000円多くなります。軽課分を一般分の15%で計算すると、46,150円多くなります。いずれも一定の前提を置いた目安です。

特例適用条文の「法」の欄には、措法なら「2」を書きます。条と項は「31条の3」「35条1項」のように書きます。

これは令和8年9月24日以降に出す申告書(新様式)の書き方です(国税庁「様式変更に伴う記入要領の変更点等」)。

ポイント

記載例(事例2・18ページ)にはこうあります。「条文の「項・号」について分からない場合は、その部分の記載を省略しても差し支えありません」。ただし、特例を使うための添付書類は別に必要です(同ページ)。

所得控除が引ききれないときは、分離課税の所得から差し引きます

⑫より㉚が大きい年は、78欄は0円とします。

記載例は、引ききれない金額を「原則として、」67〜77欄から順次差し引くとしています(12ページ)。

補足

例:⑫が30万円、㉚が100万円、71欄が923,940円の場合です。引ききれない70万円を71欄から差し引き、残りは223,940円です。80欄は223,000円、88欄は22,300円です。一定の前提を置いた目安です。

第一表だけで所得控除を終わらせると、分離課税の税額が過大になります。

詳しくは所得控除を引く順序の記事で扱っています。

第一表・第二表・第三表と内訳書の数字がつながっているかを最後に照合します
第一表・第二表・第三表と内訳書の数字がつながっているかを最後に照合します

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

数字の書き写しはご自身でできますが、区分と特例の判断は個別です。

  1. 内訳書3面「4」のA〜Eを完成させる
  2. 第一表の⑫と㉚を確定させる
  3. AとEを、該当する区分の行に写す
  4. 事項欄と100欄・101欄を埋め、94欄を第一表の㉜へ写す

ここから先は、所有期間の起算日と、軽課分や特定分に当たるかの判断です。

特例同士や、住宅ローン控除との関係も個別に確かめます。

記載例にも、居住用財産の特例と住宅借入金等特別控除は併用できないとあります(19ページ)。

対象となる年の範囲などの細目は、個別に確かめます。

税理士が入ると変わるのは、区分の根拠と3つの表の整合です

ひとつめは、取得日と売った年の1月1日から、短期・長期を判定し根拠を残すことです。

ふたつめは、軽課分や3,000万円控除などの要件を確かめ、条文と添付書類をそろえることです。

みっつめは、内訳書・第一表・第三表の金額の照合です。

よっつめは、合計所得金額の増加で所得控除が変わらないかの確認です。

小松公認会計士・税理士事務所では、内訳書の作成から第三表と第一表への反映まで一貫して担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 不動産を売った年は、第三表を必ず使いますか?

土地や建物の譲渡所得は分離課税のため、第一表・第二表とあわせて申告書第三表(分離課税用)を使います。第三表は「第一表・第二表と一緒に提出してください」と様式に記載されています。

Q2. 3,000万円の特別控除は、第三表のどこに書きますか?

下段の「分離課税の短期・長期譲渡所得に関する事項」の特別控除額欄に書きます。合計は101欄(特別控除額の合計額)に書きます。所得金額の欄には、控除後の譲渡所得金額(内訳書のE)を書きます。

Q3. 自宅を10年超所有していました。どの区分に書きますか?

所有期間10年超の居住用財産の軽減税率の特例(措法31条の3)を使う場合は、長期譲渡の軽課分です。事項欄の区分は「長期・軽課」と書きます。要件を満たすかは個別に確認が必要です。

Q4. 第三表の税額は、第一表のどこに写しますか?

第三表の94欄(86欄から93欄までの合計)を、第一表の㉜へ転記します。その後、第一表で復興特別所得税(令和8年分までは基準所得税額の2.1%)を加え、申告納税額を計算します。

免責事項

本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁「申告書第三表(分離課税用)」(令和七年分以降用)の様式と「様式変更に伴う記入要領の変更点等」、国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」の確定申告書の記載手順、事例1・事例2の記載例および「土地や建物を売却したときの税額の計算方法早見表」、国税庁タックスアンサー No.1440・No.3202・No.3208・No.3211の内容を扱っています。譲渡所得の内訳書の各面の書き方、短期譲渡・長期譲渡の所有期間の判定の詳細、軽減分・特定分・軽課分および各特別控除の適用要件、所得控除を差し引く詳しい順序、第三表の株式等・山林・退職所得・繰越損失の各欄、第一表㉛欄の扱い、住民税の計算、譲渡損失が生じた場合の書き方、確定申告書等作成コーナーの操作は扱っていません。記事中の計算例は国税庁の記載例の数値に基づく、または一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は譲渡価額・取得費・譲渡費用・所有期間・他の所得と所得控除によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

第三表を書く前に、区分と特例の判断を確かめませんか

第三表は内訳書の数字を写す用紙に見えますが、短期・長期や軽課分の区分、特別控除額の記載、所得控除の引ききれない分、合計所得金額への影響で結果が変わります。代表税理士が、購入時と売却時の資料から所有期間と特例の要件を確かめ、内訳書から第三表・第一表まで一貫して作成します。申告期限の前に、資料がそろった段階でご相談ください。

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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