この記事のポイント
- 内訳書は1つの契約ごとに1枚。売った年の様式を使います
- 2面は売った物件と代金、3面は買った代金・費用・計算です
- 建物は償却費相当額を引いた額が取得費になります
- 特例を使うなら特例適用条文の欄を必ず埋めます
まず結論:内訳書は契約ごとに1枚、2面と3面が中心です
土地や建物を売ったら、確定申告書に「譲渡所得の内訳書」を付けます。
正式名は「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」です。
譲渡所得とは、売った金額から買った金額と売る費用を引いたもうけのことです。
この内訳書は、一の契約ごとに1枚ずつ使用して記載し、「確定申告書」とともに提出してください。
(国税庁 譲渡所得の内訳書【土地・建物用】1面「記載上の注意事項」)
売った物件は2面、買った代金と売る費用、譲渡所得金額の計算は3面に書きます。
この記事は、国税庁の令和7年分の様式と「譲渡所得の申告のしかた」の記載例に沿って説明します。

どの面を書くかは、使う特例で決まります
様式は1面〜4面で1組です。別に5面があります。
1面の注意事項に、特例ごとに書く面が示されています。
| ケース | 書く面 |
|---|---|
| 交換・買換え(代替)の特例も、空き家の特例も使わない | 1面・2面・3面 |
| 交換・買換え(代替)の特例を使う | 1面・2面・3面(「4」を除く)・4面 |
| 被相続人の居住用財産(空き家)の特別控除を使う | 1面・2面・3面・5面 |
1面は、住所・氏名・職業などです。
売った年の1月1日以後に転居した方は、前の住所も書きます。
2つ以上の契約があれば、合計額をいずれか1枚に二段書きします。
二段書きとは、1つの欄に上下2段で書く方法です。複数の契約では、上段に合計額を書きます。
2面:売った物件と代金は、売買契約書から写します
2面は、主に売却時の売買契約書と領収書から書けます。
| 2面の欄 | 転記元の資料 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 所在地番 | 売買契約書 | 契約書の物件の所在地を書く |
| 面積(実測・公簿等) | 契約書・登記事項証明書 | 実測で売ったら実測面積も書く |
| 売買契約日 | 売買契約書 | 契約書の契約年月日 |
| 引き渡した日 | 残代金の領収書など | 通常は最終代金を受領した日 |
| ① 譲渡価額 | 契約書・精算書 | 未経過固定資産税等を含める |
| 代金の受領状況 | 手付金・残金の領収書 | 手付金、残金などの別に書く |
売却時の精算で、固定資産税の日割り分を受け取ることがあります。
なお、譲渡代金のほかに、譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税および都市計画税(未経過固定資産税等)に相当する額の支払を受けた場合には、その額は譲渡価額に算入されます。
(国税庁 タックスアンサー No.1440)
共有なら、全体の譲渡代金と持分に応じた譲渡代金を二段書きします。
共有者の住所・氏名と持分の欄も埋めます。

3面の前半:買った代金は土地と建物に分け、建物は償却費を引きます
3面の「2」には、買ったときの代金を土地と建物に分けて書きます。
転記元は、購入時の売買契約書や建築の請負契約書、仲介手数料の領収書です。
購入時の仲介手数料や、非業務用資産の登記費用なども含まれます。
建物は、使うほど価値が減る資産です。
建物は、買った代金から「償却費相当額」を引いた額が取得費です。
住まいなど事業に使っていない建物の算式は、次のとおりです。
建物の取得価額×0.9×償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)
(国税庁 タックスアンサー No.3261)
償却率は1面にあり、鉄筋コンクリート造は0.015、木造は0.031です。
計算例
例:国税庁の記載例(事例2)。昭和61年3月に4,200万円で買ったマンションを6,900万円で売却(土地と建物の内訳なし)
建物(標準的な建築価額表)149,500円/㎡ × 80.00㎡ = 11,960,000円 土地 42,000,000円 - 11,960,000円 = 30,040,000円 経過年数 38年11か月 → 6か月以上は1年とし 39年 償却費相当額 11,960,000円 × 0.9 × 0.015 × 39 = 6,296,940円 ② 取得費 30,040,000円 + 11,960,000円 - 6,296,940円 = 35,703,060円数値は国税庁の記載例をもとにした、一定の前提を置いた目安です。
内訳が契約書にない場合の分け方は土地と建物の按分の記事で扱っています。
3面の後半:譲渡費用を書き、特例の条文を記入して計算します
3面の「3」は、売るために直接かかった費用です。
仲介手数料、収入印紙代、測量費などを、支払先と日付とともに書きます。
様式にも「修繕費、固定資産税などは譲渡費用にはなりません」とあります。
費用の線引きは測量費や取壊し費用の線引きの記事をご覧ください。
最後の「4」で、A 収入金額からE 譲渡所得金額までを計算します。
特例を使うときは「特例適用条文」の欄に条文を書きます。
記載例(事例2)では「措」に○を付け、「31条の3」と「35条1項」を二段書きしています。
ポイント
3面「4」で計算した内容は、「申告書第三表(分離課税用)」に転記します。内訳書は計算の明細であり、確定申告書本体とあわせて1組です。

書き間違いが多いのは、この6つの欄です
金額が変わる誤りは、申告漏れや過大な申告につながります。
- 償却費相当額を引いていない ― 取得費が過大になります
- 未経過固定資産税等を譲渡価額に入れていない ― 収入金額が不足します
- 修繕費や固定資産税を譲渡費用に入れた ― 譲渡費用になりません
- 共有なのに全体の金額だけを書いた ― 持分の金額を二段書きします
- 建物の構造と償却率が合っていない ― 償却費相当額が変わります
- 特例適用条文の欄が空欄 ― 使う特例が内訳書から読めません
注意
記載例(事例2)で償却費相当額を引き忘れると、取得費は6,296,940円多くなります。差引金額は24,627,000円に下がります。3,000万円控除の後の譲渡所得金額が923,940円から0円になり、申告漏れになります。
購入代金が分からないときや、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ないときは、5%を取得費にできます。3面「2」の「購入・建築代金又は譲渡価額の5%」欄に書きます(記載例の事例1)。
ここまではご自身で、ここから先は個別判断です
資料の書き写しはご自身でできますが、取得費と特例の判断は個別です。
- 売却時の売買契約書と精算書から、2面の欄を埋める
- 手付金・残金の領収書で、代金の受領状況と引き渡した日を確かめる
- 購入時の契約書と仲介手数料・登記費用の領収書をそろえる
- 売却時の仲介手数料・印紙代・測量費の領収書をそろえる
そろえる書類の全体像は必要書類チェックリストの記事にまとめています。
ここから先は、資料と事情で結論が変わります。
内訳のない購入代金の分け方、事業用だった建物の扱い、使う特例の選択と要件の確認です。
補足
国税庁の記載例では、事業用の建物は上の算式によりません。原則として譲渡した日時点の未償却残高が取得費です。相続で取得した物件は、被相続人の購入年月日と購入価額を引き継ぎます。

税理士が入ると変わるのは、取得費の根拠と特例の記載です
ひとつめは、購入時の資料から土地と建物の取得費を分け、根拠を残す作業です。
ふたつめは、建物の構造・経過年数・償却率を確かめて償却費相当額を出すことです。
みっつめは、譲渡価額と譲渡費用の漏れと、入れてはいけない費用の確認です。
よっつめは、使える特例の要件確認と、特例適用条文・添付書類の準備です。
いつつめは、内訳書の数字を第三表と確定申告書に反映することです。
小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから内訳書の作成、適正申告までを担当します。
この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること
制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。
登録者6,900人超
小松公認会計士・税理士事務所 代表
小松 優馬公認会計士・税理士
- お話を伺って、「あなたの場合はどうなるか」をはっきりお答えします
- 必要な書類のご案内から申告まで、まるごとお任せいただけます
- 料金は先にお見積り。全国どこでも、オンラインで完結できます
YouTube「税理士 小松ゆうまチャンネル」(登録者6,900人超)で、税金の話を分かりやすく解説しています。動画を見てみる
初回相談は無料です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 譲渡所得の内訳書は、何枚書けばよいですか?
1面の注意事項に、一の契約ごとに1枚ずつ使うとあります。長期・短期のそれぞれで2つ以上の契約があるときは、合計額を二段書きします。書くのは、いずれか1枚の3面「4」の各欄の上段です。
Q2. 4面や5面も書く必要がありますか?
4面は交換・買換え(代替)の特例を使う場合だけ書きます。5面は被相続人の居住用財産(空き家)の特別控除を使う場合に書きます。どちらも使わないなら、1面・2面・3面です。
Q3. 固定資産税の精算金は、譲渡価額に含めますか?
含めます。譲渡から年末までの期間に対応する固定資産税・都市計画税の相当額を、未経過固定資産税等といいます。その支払を受けたら、譲渡価額に算入されます(タックスアンサー No.1440)。
Q4. 建物の償却費相当額は、どう計算しますか?
事業に使っていない建物は、取得価額×0.9×償却率×経過年数です(タックスアンサー No.3261)。経過年数は6か月以上の端数を1年とし、取得価額の95%が限度です。事業用の建物は、原則として未償却残高が取得費です。
免責事項
本記事は令和8年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。国税庁「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」(令和7年分以降用)の様式と記載上の注意事項、国税庁「令和7年分 譲渡所得の申告のしかた」の事例1・事例2の記載例および【参考3】、国税庁タックスアンサー No.1440・No.3202・No.3252・No.3255・No.3261の内容を扱っています。4面(交換・買換え)と5面(被相続人の居住用財産)の各欄の書き方、各特例の適用要件と条文の選び方、建物の標準的な建築価額表の単価、土地と建物の取得価額の按分方法、事業用建物の未償却残高の計算、相続税の取得費加算の計算、税額と住民税の計算、提出期限と提出方法は扱っていません。記事中の計算例は国税庁の記載例の数値に基づく一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は取得価額・譲渡価額・譲渡費用・建物の構造と所有期間によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。
参考資料・出典
- 国税庁 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】(1~4面)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/syotoku/pdf/r07_joto_01.pdf
- 国税庁 令和7年分譲渡所得の申告のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kisairei/joto/index.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3261 建物の取得費の計算https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3261.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3255 譲渡費用となるものhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm
譲渡所得の内訳書を書く前に、取得費と特例の判断を確かめませんか
内訳書は資料の書き写しに見えますが、土地と建物の取得費の分け方、建物の償却費相当額、譲渡費用に入れてよい費用、特例適用条文の記載で結果が変わります。代表税理士が、購入時と売却時の契約書・領収書から取得費の根拠を整え、内訳書と第三表まで一貫して作成します。申告期限の前に、資料がそろった段階でご相談ください。
無料相談を申し込む 不動産売却の確定申告サポートを見る 約60秒で料金を自動見積り