不動産譲渡所得

親の援助(住宅取得等資金の贈与)で買った家を売る税金
取得費と非課税の注意点

小松優馬

小松 優馬

公認会計士(登録番号43196)・税理士(登録番号151214)

監査法人での上場企業監査・上場準備CFO経験を経て独立。港区浜松町で個人・法人の税務をサポート。YouTubeチャンネル「公認会計士・税理士 小松ゆうま」運営。

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この記事のポイント

  • 親の援助分も含めた購入代金が取得費の基です。建物は減価の額を引きます
  • 売るときの入口は3,000万円控除です。使うには確定申告が要ります
  • 居住の見込みで非課税を受け、翌年12月31日までに住まないと原則修正申告です
  • 精算課税を選んだ部分は相続のとき加算します。非課税の部分は加算しません

まず結論:援助分も取得費に入り、非課税は「住んだか」が分かれ目です

親の援助で買った家の税金は、売った年の譲渡所得と、援助を受けた年の贈与税に分けて考えます。

譲渡所得は、売った金額から取得費と売る費用を引いたもうけです。

取得費は、親の援助分も含め、ご本人が払った購入代金などが基になります。

贈与税の非課税の特例は、申告をしたうえで、期限までに住んだかが分かれ目です。

親の援助で買った家も、取得費はご本人が払った購入代金が基になります
親の援助で買った家も、取得費はご本人が払った購入代金が基になります

取得費は、お金の出どころではなく購入代金で決まります

譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。

(所得税法38条1項)

条文は「取得に要した金額」と定め、資金の出どころは要件にしていません。

住宅取得等資金は「金銭」で、家はご本人が買っています(措置法70条の2第2項5号)。

そのため、援助分を差し引かず、購入代金の全額が取得費の基になります。

購入手数料や、住まいなら登記費用・不動産取得税も入ります(タックスアンサー No.3252)。

所有期間も、ご本人が家を取得した日から数えます(No.3202)。

ポイント

家そのものを贈与で受けたときは、贈与した人の取得費と取得の時期を引き継ぎます(No.3270)。この記事は、お金の贈与でご本人が家を買った場合です。

夫婦の共有なら、持分と資金負担のずれの記事もご確認ください。

建物は減価の額を引くので、買値と同じで売っても利益が出ることがあります

住まいの建物は、購入代金などから減価の額を引いた額が取得費です。

算式は、建物の取得価額×0.9×償却率×経過年数です(取得価額の95%が限度。No.3261)。

償却率は、木造が0.031、鉄筋コンクリート造が0.015です。

計算例

例:令和6年5月10日、新築の木造住宅を5,000万円で購入(土地・建物とも2,500万円)。うち500万円は親の援助。令和8年11月20日に5,000万円で売り、売る費用は150万円

経過年数 2年6か月10日 → 6か月以上の端数は1年とし 3年 建物の減価の額 2,500万円 × 0.9 × 0.031 × 3年 = 2,092,500円 取得費 2,500万円 + 2,500万円 - 2,092,500円 = 47,907,500円 譲渡所得 5,000万円 - 47,907,500円 - 150万円 = 592,500円 3,000万円控除の後 0円 (参考)控除を使わない場合 592,500円 × 39.63%(短期の所得税・復興特別所得税・住民税)≒ 約23万円

数値は一定の前提を置いた目安です(購入手数料・登記費用は省略)。

詳しくは、建物の減価償却費の記事をご覧ください。

建物は年数とともに価値が減るため、減価の額を引いて取得費を出します
建物は年数とともに価値が減るため、減価の額を引いて取得費を出します

売るときの入口は3,000万円控除です。所有期間で税率も変わります

マイホームを売ると、要件を満たせば所有期間の長短に関係なく最高3,000万円を控除できます。

主な要件は次のとおりです(No.3302)。

  • 以前に住んでいた家は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないこと
  • 一定の書類を添えて確定申告をすること

転勤で住まなくなった家は、この売る期限を先に確かめます。

税率は、売った年の1月1日の所有期間で、5年超の長期と5年以下の短期に分かれます(No.3202)。

軽減税率の特例には、所有期間の要件があります(No.3305)。

売った年の1月1日で、家と敷地の所有期間がともに10年を超えることです。

全体像は、マイホーム売却の3,000万円控除の記事をご覧ください。

非課税を受けられなくなるのは、期限までに住まなかった場合などです

住宅取得等資金の非課税は、父母や祖父母など直系尊属からの贈与が対象です。

令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与に使えます。

限度額は、省エネ等住宅が1,000万円、それ以外の住宅が500万円です(No.4508)。

令和8年度の改正で、この特例の期間と限度額は変わっていません。

令和5年12月31日以前の贈与は、当時の規定で判定します(令和6年改正法附則54条4項)。

要件の1つは、贈与の翌年3月15日までに住むか、その後遅滞なく住むことが確実と見込まれることです。

贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、原則としてこの特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。

(国税庁 タックスアンサー No.4508)

この修正申告は、該当した日から2か月以内に出して納税します(措置法70条の2第4項)。

入居前の売却や転勤で、この要件を満たせないことがあります。

転勤で家族が住み、後で本人も住むなら、住んだものと扱われます(措置法通達70の2-2)。

翌年12月31日までに住み始めていれば、4項の場面には当たりません。

注意

非課税は、贈与の翌年3月15日までの申告で受ける特例です(措置法70条の2第14項)。期限後の申告では、原則として受けられません(措置法通達70の2-15)。全額が非課税の範囲内でも申告が要ります(No.4508 Q6)。受贈者が家の所有者(共有持分を含む)にならない場合は、特例を使えません。

贈与の翌年12月31日までに住まないと、原則として非課税は受けられません
贈与の翌年12月31日までに住まないと、原則として非課税は受けられません

相続時精算課税と併用したときは、相続のときの加算に注意します

非課税の枠を超える部分に、相続時精算課税を選ぶことがあります。

相続時精算課税とは、贈与税をいったん軽くし、相続税で精算する制度です。

住宅取得等資金なら、贈与者が60歳未満でも選べる特例があります(No.4503)。

令和8年12月31日までの贈与で、一定の要件を満たす場合です。

一度選ぶと、その人からの贈与は暦年課税に戻せません(No.4103)。

贈与者が亡くなると、精算課税の財産を相続税に加えます。

加える額は原則として贈与時の価額で、令和6年以後の贈与は基礎控除後の額です。

補足

例:令和8年に父から1,500万円。500万円は非課税、1,000万円は精算課税とします。前提は、省エネ等住宅以外・ほかの贈与なし・期限内申告です。基礎控除110万円を引いた890万円は特別控除の範囲内で、贈与税は0円です。父の相続のときは890万円を加え、非課税の500万円は加えません(No.4508 Q5)。

つまずきやすいのは、この5つの場面です

  • 援助分を取得費から外す ― 上の例では、譲渡所得が500万円多く計算されます
  • 利益が小さいので申告しない ― 3,000万円控除は、確定申告をして使う特例です
  • 住宅ローン控除を考えずに3,000万円控除を使う ― 住み替え先の控除を失うことがあります
  • 贈与税の申告をしていない ― 非課税は、期限内に申告書を出すことが条件です
  • 入居しないまま売る・家族ごと転勤する ― 原則として非課税を受けられません

入居の前後の一定の年に3,000万円控除を使うと、住宅ローン控除は受けられません(No.3302)。

住み替えでは、3,000万円控除と住み替え先の住宅ローン控除を並べて考えます
住み替えでは、3,000万円控除と住み替え先の住宅ローン控除を並べて考えます

ここまではご自身で、ここから先は個別判断です

資料をそろえるところまではご自身でできますが、特例の選び方は個別判断です。

  1. 購入時の売買契約書と、仲介手数料・登記費用の領収書をそろえる
  2. 贈与税の申告書の控えで、非課税の特例を受けた額を確かめる
  3. 住み始めた日と住まなくなった日を、住民票などで確かめる
  4. 売却時の売買契約書と、売る費用の領収書をそろえる

ここから先は、事情で結論が変わります。

土地と建物の分け方、控除の選び方、修正申告の要否、精算課税の加算額です。

税理士が入ると変わるのは、取得費の根拠と2つの税金の通し確認です

  • 購入時の資料から土地と建物の取得費を分け、減価の額を出す
  • 贈与税の申告書の控えで、非課税の額と住み始めた時期を確かめる
  • 3,000万円控除と住み替え先の住宅ローン控除を並べて試算する
  • 精算課税を選んでいた場合の、相続での加算額を整理する
  • 計算を譲渡所得の内訳書と確定申告書に反映する

小松公認会計士・税理士事務所では、資料の読み取りから適正申告までを担当します。

この論点で小松公認会計士・税理士事務所ができること

制度は複雑ですが、お客様がすべてを理解する必要はありません。難しいことは、専門家にお任せください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 親から援助を受けた分も、売るときの取得費に入りますか?

入ります。取得費は「その資産の取得に要した金額」です(所得税法38条1項)。住宅取得等資金の贈与で受けたのは金銭で、家はご本人が買っています。援助分を差し引かず、購入代金をもとに計算します。建物は、購入代金から減価の額を引きます。

Q2. 住み始めてから売ると、非課税は取り消されますか?

措置法70条の2第4項の修正申告は、居住の見込みで適用を受けた人が対象です。翌年12月31日までに住まなかったときに求められます。それまでに住み始めていれば、この場面には当たりません。入居しないまま売った場合は、原則として非課税を受けられません。

Q3. 住宅取得等資金の非課税は、いつの贈与まで使えますか?

令和8年10月時点の法令では、令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象です。限度額は省エネ等住宅が1,000万円、それ以外が500万円です(No.4508)。令和5年以前の贈与は、当時の規定で判定します。

Q4. 相続時精算課税と併用していた場合、家を売ると何か変わりますか?

精算課税を選んだ部分は、贈与者の相続のときに相続税の計算へ加算します(No.4103)。加算の基は、原則として贈与された金銭の贈与時の価額で、家の売値ではありません。非課税の特例を受けた部分は加算しません(No.4508 Q5)。

免責事項

本記事は令和8年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な解説です。所得税法38条1項・2項、租税特別措置法70条の2(1項・2項5号・2項6号・4項・14項)、所得税法等の一部を改正する法律(令和6年法律第8号)附則54条4項、措置法通達(相続税法の特例関係)70の2-2・70の2-15、国税庁タックスアンサー No.4508(Q&Aを含む)・No.4503・No.4504・No.4103・No.3202・No.3211・No.3252・No.3261・No.3270・No.3302・No.3305の内容を扱っています。非課税の特例の受贈者と家屋の要件の細目(合計所得金額・床面積・省エネ等住宅の証明・耐震基準・増改築等)、令和5年以前の贈与に適用される限度額と要件、災害の場合の特例、修正申告に伴う加算税と延滞税、相続時精算課税の選択届出の手続と相続税額の計算、住宅借入金等特別控除の要件と控除額、3,000万円控除のその他の要件、軽減税率の税額計算、譲渡損失の損益通算と繰越控除、売却代金を家族に分ける場合の贈与税、購入した家の取得の日の判定方法、土地と建物の取得価額の分け方、税額の端数処理は扱っていません。記事中の計算例は一定の前提を置いた目安であり、実際の金額は、購入代金の内訳、建物の構造、所有期間、売る費用、贈与の状況によって変わります。具体的な判断は必ず税理士にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害について、当事務所は責任を負いかねます。

参考資料・出典

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小松 優馬

公認会計士・税理士/元監査法人

大手監査法人にて上場企業の監査業務に従事。税務の専門性を高めるため独立。判例ベースの適正申告・節税にこだわり、お客様の人生設計を支える税務パートナーとして活動中。YouTubeチャンネル「税理士 小松ゆうま」では税務情報を発信中(登録者7,000人超)。

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